詐騎士(ラノベ・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『詐騎士』とは、かいとーこにより2011年に『レジーナブックス』から発売された小説を原作として、麻菜摘により2016年に『アルファポリス』にて漫画化された新感覚王道騎士ファンタジー。王国騎士に所属するルーフェスは、傀儡術(かいらいじゅつ)という特殊な魔術を使う優秀な騎士である。しかし、腹黒で口が達者なため周りからは「詐騎士」と呼ばれている。そんなルーフェスだが、実は性別も、年齢も、身分も、余命すらも詐称であったのだ。武力も口も達者な男装少女が主人公という、新感覚な王道騎士物語が魅力な作品である。

『詐騎士』の概要

『詐騎士』とは、かいとーこにより2011年に『レジーナブックス』から発売された小説を原作として、麻菜摘により2016年に『アルファポリス』にて漫画化された新感覚王道騎士ファンタジー。
原作小説は単行本だけでなく文庫化もされており、漫画版も幾度も増刷されるほどの人気を博している。
本作は魔物や魔法も存在する世界の、とある王国が舞台である。
王国騎士に所属するルーフェスは、傀儡術(かいらいじゅつ)という特殊な魔術を使う優秀な騎士として注目を集めた。
しかし、腹黒で口が達者なため周りからは「詐騎士」と呼ばれてしまっていた。そんなルーフェスだは、実は性別も、年齢も、身分も、余命すらも詐称しているルゼという少女であったのだ。
本来のルーフェスのため、そして自分の復讐のため、ルゼはルーフェスの身代わりとして騎士としての道を歩んでいくのだった。
武力も口も達者な男装少女が主人公という、新感覚な王道騎士物語が魅力であり、また主人公たちのテンポの良い会話も小気味よい作品である。

『詐騎士』のあらすじ・ストーリー

騎士のはじまり

ランネル王国の貴族家には、複数の男児がいる場合に兵役義務が発生する。
エンベール地方のある領主の第二子息であるルーフェス・デュサ・オブゼークにも兵役の時期がやってきていた。
しかしルーフェスは余命2年の宣告がされているほどに体が弱く、兵役には耐えられるはずがなかった。
そのため領内の孤児院で育ち、ルーフェスやその親友であるゼクセン・ホライストとも幼馴染であるルゼが、領主の依頼の元ルーフェスに成り代わって騎士を務めることになるのだった。
少女であるルゼが選ばれた理由は、その類まれなる傀儡術の腕を認められたからだ。
周囲のものを傀儡として動かすことができる傀儡術だが、ルゼはその魔術を使って自身を浮かせたり相手の体を壊さないように操ったりと、繊細な操作が可能であった。
そうしてルゼはルーフェスのため、そして過去にあった出来事の復讐のため、男装をして騎士の道を歩み始める。

詐騎士誕生

ルーフェスに成り代わって騎士の務めを果たすルゼだったが、類まれなる傀儡術(かいらいじゅつ)の才能によって、その実力は周囲に知れ渡るほどであった。
上官でありこの国の王子でもあるギルネストや、その妹である王女のグランディナに気に入られたルゼは、様々な事件を解決していくことになる。
そんな中、実力もさることながら口もかなり達者であるルゼは、周囲の騎士たちに「詐騎士」と呼ばるようになってしまう。
きっかけは、グランディナの婚約者でありギルネストの付き人でもあるエディアニースが、ルゼとグランディナの仲を勘違いして決闘を挑んできたことである。
周囲が姫をかけての決闘だとまくしたてる中、ルゼは冷静にかつエディアニースをからかうように自ら負けを宣言し、病弱な演技でことを収束させるのだった。
その際にエディアニースをのらりくらりとかわす口の上手さや、血糊まで用意していた姿から、ギルネストに「とんだ詐騎士(さぎし)だな」と言われたことが周囲に広まったことが原因である。

騎士の日常業務

ルゼは、傀儡術の腕を見込まれてギルネストから娼婦ばかりを狙った連続殺人事件の囮捜査を依頼される。
売れ残りのやせ細った娼婦ばかりが狙われているため、ルゼは寒空の下みすぼらしい恰好に変装して犯人のあぶり出しを開始する。
すると、親切を装った青年がルゼに声をかけ、温かい食事をあげるからと家に案内をされることになった。
食事に薬が仕込まれていることを想定したルゼは、傀儡術を使って出された食事をこっそりと破棄し、眠ったふりをして様子をうかがう。
そしてルゼが眠ったと勘違いした青年が、ルゼを実験用の怪しげな部屋に移したため、現行犯として捕縛することに成功するのだった。
しかし連続殺人の犯人としては家に使用人という第三者が居たり、これまでの被害者には痕跡が見られなかった電撃の魔術を使っていたりと、おかしな点が多いことをルゼたちは疑問に思う。
そんなルゼたちの元へ、グランディナが現れてとある老婆の身を差し出してきた。
ルゼの身を案じて後をつけていたグランディナはその老婆に襲われたため反撃して捕縛したのだが、実はその老婆の方が連続殺人の犯人だったのだ。
変装もなく老婆に娼婦と間違われたグランディナをからかうギルネストと、本心では身を案じつつも素直に言葉にできずにまた喧嘩となるエディアニースなのであった。

魔族との交流

かつて、その歌声でルーフェスの体の治療をしていた天族の少女ノイリは、ルゼの育った孤児院の隣の教会でお世話になっていた。
しかしある日、孤児院や教会が襲われ、ノイリは連れ去らわれてしまう。
ルゼも足に怪我を負って傀儡術無くしての歩行が難しくなり、他の人間たちもほとんどが殺され、治療を中断されたルーフェスには命の期限が迫っていた。
ルゼは大好きだったノイリを取り返すために実力をつけ、いつか、ランネル王国の地下に広がる魔物たちの世界である魔界に向かうことを目的としたのだ。
そのため騎士となったルーフェス改めルゼは、ゼクセンや身分を隠して同行したギルネストと共に、魔物の脅威が強い任地へと赴いていた。
そしてその地で、魔族との商売を望むテルゼと魔族とのハーフだというローレンという青年たちに出会い、集落へ魔物の襲撃の予定があることを知らされるのだった。
テルゼたちを怪しんだルゼは、渡された伝書用の魔鳥に傀儡術の応用で意識を移し、テルゼたちの様子を探ることにした。
すると、テルゼたちは人ではなく完全な魔族であることが判明し、しかし人間との友好的な商売を望んでいることは間違いではないという。
加えてともにいた少年が実は天族であったことも分かったため、ルゼはギルネストたちにこのことを報告する前に、天族の癒しの力をルーフェスに使うことを条件に人間との商売の口利きをすることを約束するのだった。
合わせてルゼの正体も明かし、魔族であることを隠し通すつもりがないと言うテルゼたちの様子から、襲撃の際に折を見て正体を明かすのが良いと判断するのだった。
そして事前の情報もあり、襲撃自体は何とか撃退したルゼたちだったが、その際に地下から忍び込んでいた魔物にギルネストや集落の女性たちが連れ去られてしまった。
ルゼの尽力によりギルネストたちはローレンが手配した魔族に救出されるも、傀儡術を酷使しすぎたせいでルゼは魔力を使い果たし瀕死になってしまう。
ルゼの意識がない中、ギルネストはローレンの兄だと言う魔界の王の一角にルゼが女性であること知らされ、それと同時にノイリが魔界で元気に過ごしていることも知らされるのだった。
ギルネストから魔力を受け取ったルゼはなんとか意識を取り戻したが、ルゼの正体が露見したこととノイリの居場所が見つかったことで、自身のルーフェスとしての役目の終わりを感じ取るのだった。

天使との再会

ノイリの居場所を知ったルゼだったが、なんとノイリはテルゼたちとは別の区域で魔界の王の弟と結ばれ、その子供まで身籠っているという。
衝撃の事実もあったが、魔族たちとの交渉によりルーフェスを魔界にて療養させることが決定したルゼたちは、ギルネストたちに正体が露見した件も含めて一度ルーフェスの実家に赴くこととなった。
そして、全てを詐称していたルゼの今後やルーフェスの経歴を守るためにも、ルゼの身分をルーフェスの妹とすることになったのだった。
元々病弱だという設定であったため、「今回の任地での騒動で体調が悪化し、領地での療養に入ることになったが、その実力を惜しんだギルネストのために同等の実力である妹が代わりに職務に当たることになった」という筋書きだ。
そうして再びギルネストたちのもとに居ることが決定したルゼは、とうとうノイリとの再会のために再び魔界に向かうことになった。
魔界での療養のためにルーフェスを連れノイリのもとを訪れたルゼだったが、待機している部屋に近づくノイリの気配だけで喜びのあまり傀儡術が暴走してしまう。
周囲のものを浮かせたり壊したりと、周りの者が慌てふためく中で、ルゼはとうとうノイリとの再会を果たす。
互いの無事に安堵しつつ、6年という歳月で変わった姿を確認しながら、再び逢えたことを喜び合うのだった。

新たな聖女

ギルネストやゼクセンたちが雪国での任務にあたる中、留守番となったルゼの元へ新たな聖女が現れたという知らせが届く。
かつて、その歌声で人を癒すことができたノイリは聖女として育てられていたが、魔物に誘拐されてからはその座は空白となっていた。
そんな中新たな聖女候補の者が現れたことで、国が聖女を保護する前に我が物にしようと、権力者たちが聖女の身を狙っていることが判明する。
普通の旅程では保護が間に合わないため、竜を保有しているルゼならいち早く駆けつけることができるからと、陛下に直談判をするのだった。
その結果ルゼは実力を見せつける為に既存の聖騎士候補の全てをなぎ倒し、初の女性騎士であり聖騎士の座を獲得し、聖女であるエリネの元へ急ぐのだった。
権力者の寄越した者たちを蹴散らし、無事に聖女を保護したルゼだったが、権力者とは別口で聖女の命を狙う者たちに襲われてしまう。
かつてノイリの誘拐に加担した者たちが、今回も同じように新たな聖女を狙っていたのだ。
襲撃者を撃退したルゼは、任務帰りのギルネストたちと合流し、そのままエリネの聖騎士として仕えることになるのだった。
そうして春には、王都で開催される花祭りにて聖女のお披露目がされることが決定した。
盛大なパレードで聖女をお披露目する以上、襲撃者たちがこの機会を逃すはずがないと警戒するルゼたちの予想を裏切らず、聖女は傀儡術の使い手の襲撃者たちに襲われる。
襲撃者は傀儡術を使うため、その力を理解しているルゼが率先して対処することで、何とか襲撃者を撃退することに成功した。
しかし、不意を突かれて襲撃者自体には逃げられてしまうのだった。

ルゼとギルネストの結婚

聖女のお披露目のパレードで襲撃者を撃退したルゼだったが、その祝杯の場でギルネストから指輪を渡されてプロポーズの予告宣言をされてしまう。
ギルネストは恋人を作る度に、実母の第二王妃からの嫌がらせで長続きすることがなく、ひどい時には命の危機があることもあったほどだ。
そんな中でもルゼは王妃のいびりも平然とかわし、命の危機にあっても自分で対処が可能な貴重な人材だったため、ルゼを逃せば結婚自体ができない可能性もあった。
そうでなくても賢く芯のあるルゼのことを気にいっていたギルネストは本気でルゼを口説きにかかるのだった。
外堀を埋めにかかるギルネストに対して、恋愛に不慣れなルゼはたじたじになってしまう。
そんな恋愛モード全開な騎士たちであったが、ある日エリネとルゼが共に誘拐される事件が起こる。
自力で誘拐犯の仲間であった傀儡術師たちを懐柔していたルゼだったが、助けに来たギルネストからどさくさに紛れて婚約成立の言質を取られてしまうのだった。
苦節ありつつも、ルゼはギルネストと結婚することに了承し、物語の最後には新たな命を授かり笑顔溢れるハッピーエンドで幕を閉じることになる。

『詐騎士』の登場人物・キャラクター

主人公

ルゼ(ルゼ・デュサ・オブゼーク)

本作の主人公である天才的な傀儡術の使い手である少女。
物語開始時は13歳であったが、平均よりもかなり高い身長を活かして3歳年上のルーフェスの身代わりをこなす。
出身はオブゼーク家が治める領地の孤児院で、その隣にある教会に身を寄せていたノイリや、ノイリから治療を受けていたルーフェスとは幼馴染のように育った。
ノイリを奪われた際に多くの犠牲者がでており、自身の足も後遺症が残るほどの怪我を負ったため魔物を憎んでいるが、一部の魔族の様に好意的な相手は別のようである。
ギルネストたちに正体がばれてからはルーフェスの妹として公にされており、淑女教育などを経て貴族家のお嬢様の猫かぶりもできるようになった。
非常に人の名前を覚えることが苦手であり、無意識の魔力による変質によって作る料理の全てが苦くなってしまうという欠点もあるが、ギルネスト曰く「それ以外は本当に何でもできる」ほど万能である。
かわいいものに目が無く、もふもふとした動物やノイリのような金髪碧眼の綺麗な相手が大好きである。

騎士

ルーフェス・デュサ・オブゼーク

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