それでも歩は寄せてくる(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『それでも歩は寄せてくる』とは、2019年より山本崇一朗が『週刊少年マガジン』で連載している漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。アニメ放送は2022年7月から9月。
将棋部の先輩後輩の間柄である、うるしと歩(あゆむ)の日常を描いたラブコメ作品。恋の駆け引きを将棋の勝負になぞらえたストーリーが特徴。
先輩のうるしに将棋で勝ったら告白すると胸に誓っている歩。告白こそしていないものの、あからさまにうるしのことが好きだと思わせるような真っ直ぐな発言でうるしのことを照れさせている。

『それでも歩は寄せてくる』の概要

『それでも歩は寄せてくる』は、『からかい上手の高木さん』、『くの一ツバキの胸の内』で知られる山本崇一朗が手がける『週刊少年マガジン』で連載している漫画作品。
1クール12話でアニメ化もされた。アニメ化されたのはコミックス8巻の修学旅行の話まで。※アニメとコミックスでは、うるしの両親が登場する場面と前後しているので実際には9巻までとなる。
『次にくるマンガ大賞2020』コミックス部門にて第3位を受賞。累計発行部数は150万部を突破している。

基本的には1話完結型。高校生活や将棋部を舞台に日常を描いたラブコメ作品になっている。
うるしと歩の2人だけの関係だけではなく、のちに入学してくる後輩である凛の関係性や、歩の幼馴染であるタケルと桜子のストーリーも見どころ。

コミックスには、話に登場した棋譜が載っており、将棋ファンも登場人物になりきって将棋を指している気分を味わえる。
アニメ版には収まりきらなかった、コミックス版にしかない日常的エピソードも多々あり。

今まで剣道一筋で将棋は全くの素人である高校一年生の田中歩。高校では剣道部ではなく、一目惚れしたセンパイ八乙女うるしに惹かれ将棋部に入部。
将棋でセンパイに勝ったら告白するという思いを秘め、顔に出さないように無表情を装うが、うるしに対してストレートな言葉でうるしを照れさせている。
うるしの方も次第に歩を意識し始めるようになるが、進級すると歩のかつての後輩香川凛が入学してきて恋愛模様は三角関係に発展していく。

恋の駆け引きを将棋の勝負になぞらえて描いており、将棋ファンでなくてもラブコメとして楽しめる作品である。

『それでも歩は寄せてくる』のあらすじ・ストーリー

歩とうるしの出会い

これまで剣道一筋で、将棋はというと全くド素人の田中歩。
高校に進学しても剣道部に入ると思いきや、まさかの将棋部に入部。
その理由は一目惚れした先輩八乙女うるしだった。

いつか先輩に将棋で勝って告白することを決めているのだが、将棋はというと全くの初心者なのでとてもうるしには敵わないでいる。
うるしに対して恋心を持っていることを決して顔に出さぬよう、どんなことがあっても常に無表情だが、彼女に対する言葉はストレート。思ったことを率直に口にする。
そのせいでうるしはいつも歩に照れさせられてばかりいる。

初めての共同作業体育祭

季節は秋になり体育祭が開催され、歩とうるしは同じ白組に。運動神経のいい歩は大活躍し、運動部からの勧誘を受けるほどに注目を浴びる。
一方、うるしは歩とは対照的に運動神経が悪く、みんなの足を引っ張ってしまい落ち込んでしまう。そこで歩はセンパイのために頑張ると励ます。
それを見たうるしの親友であるマキの計らいで、歩とうるしで二人三脚を走ることに。いよいよ歩とうるしたちの出番になる。同じ出走者の中にはタケルと桜子ペアがいた。タケルは自信満々で勝つ気でいる。幼なじみ同士の対決が始まるのであった。
肩を組む際うるしは、恥ずかしさから少し緊張気味で固くなっている歩をからかってやろうと「初めての共同作業ってやつだな」とからかう。しかし歩は「え?何ですか?よく聞こえなくて」としれっとかわしてのける。先に出す方の足がずれてしまい、走り始めから大きく出遅れてしまううるしと歩。タケルと桜子ペアにはとても歯が立たなかったが、つまずきながらも力を合わせて走るのであった。
走り終えた後にうるしは、結果は散々だったが、歩と力を合わせることはなかなか楽しかったと、結果よりも気持ちの方が充実していた。
歩は「オレも楽しかったです。初めての共同作業でしたね」と、本当はうるしのからかう言葉が聞こえていたのであった。

最後の種目はクラス対抗リレー。アンカーは歩。アンカーには借り物競走をクリアしなければならない課題が課されている。マキはうるしに、歩のお題が「好きな人だったりしてね」とふざけ半分で話しかける。そんなわけないと否定するうるしだが、歩はまっすぐうるしの方へ走ってくる。「センパイ!!来てください」と歩。うるしはひどく動揺するが、協力するべく一緒に行こうとする。歩はすかさずうるしを抱え上げ、お姫様抱っこをしながらゴールへ向かって走り出す。ますます動揺し、恥ずかしくてたまらないうるし。歩は1位でゴールテープを切るが、優勝は借り物がセーフかどうかにかかっている。借り物のお題は「可愛らしい物」だった。
物と認定してもらうために抱えて運んで来たのだと主張する歩。判定は無事セーフとなり、優勝することができたうるしと歩たち白組だったが、物判定されたことに素直に喜べないうるしであった。

タケルの入部

今のところ将棋部はうるしと歩の2人だけ。将棋部と名乗ってはいるものの、正式にはあと2人部員がいなければ部としては認めてもらえない。うるしは部員を集めて、いつか正式な将棋部にすることを願っていた。
歩はそんなうるしの願いを手伝いたいと思い、幼なじみのタケルを将棋部に勧誘する。同じく幼なじみの桜子からも「入部してあげなよ」と勧められるタケル。本心は桜子と一緒に帰れなくなるからという理由で部活に入りたくなかったのだが、歩には「オレ頭使うの苦手なんだよ」と誘いを断る。しかし桜子に催眠術をかけられ、本人の意思とは関係なく入部届にサインしてしまう。
無理矢理タケルを入部させた桜子だが、歩とうるしのジャマになるからという理由でタケルには将棋部に行かないように促す。しかしタケルは「入部した以上はしっかり活動する!それが男ってもんだ!!」と義理を通す心意気。「じゃあもう放課後一緒に帰れないの…?」タケルは自分と同じことを思っていた桜子の一言に大人しく引き下がる。こうしてタケルは幽霊部員として将棋部に入部したのであった。

初デート文化祭

歩はうるしを文化祭を一緒に回らないかと誘う。ここでもやはり「センパイとデートがしたいんです!」とストレートに気持ちを伝える。部員探しという名目でデートすることに。
うるしのクラスは焼きそば屋を出店していて、うるしは売り子として校内を売り歩いていた。全部売り切ればヒマになるということを聞いた歩は、うるしと一緒に焼きそば売りの手伝いをする。剣道で鍛えた声の大きさで客を呼び寄せ、どんどん売り捌くうるしと歩。歩は自分でも焼きそばを買い、少しでも早く売り切る貢献をした。
無事焼きそばを完売したうるしと歩は、屋台やタケルと桜子のクラスのお化け屋敷など様々な場所を回った。
ベンチで一休みしながら一局指しているときに、歩はうるしに何が一番良かったかと問う。
全部一番かというくらい楽しかったが、「こうして田中(歩)と将棋指してるのは一番落ち着くかな」とうるし。
普段は歩に照れさせられてばかりのうるしだが、今回は少しだけ歩のことを照れさせることができた。

呼び方の変化「田中」から「歩」へ

タケルも入部し部員が増えた将棋部。しかし幽霊部員のためタケルが来ることは滅多に無い。「今日もタケルは休みかー」ふとつぶやくうるしの言葉に歩は一瞬ピクリとする。タケルのことを下の名前で呼ぶ理由が気になりうるしに尋ねる歩だが、歩の呼び方に合わせたからというだけの単純な理由だった。「オレも下の名前で呼んでほしくて」少し照れながら本音を伝える歩に思わず吹いてしまううるし。仕方なく歩のことを下の名前で呼ぼうとするうるしだが、いざ呼ぼうとすると歩からの期待の圧を感じ、ためらってしまう。先輩としての意地を見せるべく、期待の圧に耐えつつ恥ずかしがりながらも「これからは歩って呼ぶからな。あ…歩…」と言った。うるしのその一言に嬉しすぎて喜びに打ち震える歩であった。

バレンタイン

バレンタインデー。桜子は昔から毎年幼なじみである歩とタケルにチョコを渡している。
桜子から「センパイからもらったの?」と聞かれた歩はどこか落ち着かない様子。
歩はうるしからチョコをもらえるかもしれないと思って緊張していた。
毎年チョコをばら撒くように配っているマキを冷めた目で見ているうるし。うるしは歩へのチョコを用意してきているのだが、いつ渡そうかと渡すタイミングに迷っていた。
マキはうるしに、焦らして大切に渡せば何かが一歩進むと強く主張する。
うるしはマキの言うことなど気にもせず、ささっと渡さないと恥ずかしくなることだけを心配していた。
放課後の部室。うるしは歩が来るのを待っていた。軽いノリでさっと渡してしまおうと思っていたのだが、部室のドアを開けるなりガチガチに緊張している歩に動揺してしまう。歩に影響されうるしまで緊張してしまい、将棋を始める前に渡そうと思っていたタイミングを逃してしまう。
そろそろ帰る時になり、歩が後ろを向いている間にかばんに入れればいいと思いついたうるし。いざ入れようとかばんに向かって動き出したその時、畳で滑って転んでしまい歩に気づかれてしまう。
チョコの存在にも気づかれ、隠しようがなくなったうるし。「バレンタインだから…こ…これ」とささっと渡すつもりが照れながら渡すことになったのであった。

歩の幼馴染「角竜タケル」と「御影桜子」とのエピソード

「角竜タケル」と「御影桜子」の2人は体育祭のシーンで初登場。同じペアで二人三脚に出走し、息ぴったりなコンビであることを見せつける。
同じ図書委員同士であり、カウンターにいつも2人並んで座っている。
桜子はタケルに対して思わせぶりな発言や行動をとることが多く、タケルの方が照れさせられている。

新入生「香川凛」の登場

春になり歩たちが進級すると、新一年生として凛が入学してくる。歩とタケルは剣道部にいると思っていた凛だが、高校で剣道はやっておらず今は将棋部だということに衝撃を受ける。
うるしに対し「私の大事な先輩方を返していただきます!」と宣戦布告。歩に剣道での決闘を申し込み、もし歩が負ければ将棋部を辞めなくてはならない。

タケルとともに新入生の勧誘活動にいそしむうるし。将棋部とうたっているが、うるし、歩、タケルの3人では正式には部として認められていない。
部員が正式な部として新入生が入部することにより部員が4人になれば正式に部として認められることになるため、なんとかして部員を確保したいところ。
たとえ部員が増えて部として正式に認められるようになったとしても、そのときに歩がいなければ嬉しくない。気が気でもいられず武道場に駆けつけるが、扉を開けたそのとき、歩と凛の決着はついた後だった。
無事勝利を収めた歩。ホッとするうるし。そして勝負に負けたからと将棋部に入部することになった凛。こうして新たな顔ぶれを迎え人数がそろい、正式な部としての活動が始まる。

将棋部でゴールデンウィークに思い出づくり

歩は「ゴールデンウィークの最終日に遊びに行きませんか?」とうるしを誘う。うるしはデートの誘いかと思い照れながらOKをする。しかしそれは二人きりではなく、将棋部みんなで遊びに行く誘いだった。
うるし、歩、凛、タケルの4人が遊びに来たのはゲームセンター。タケルと凛のペアとうるしと歩のペアでエアホッケー対決をすることに。負けた方はジュースを買いに行く罰ゲームというルール。歩、タケル、凛の元運動部の3人に比べて、空振り続きのうるし。運動神経の差が露骨に出てしまい引け目を感じていたが、歩が作戦があると提案してくる。それはうるしのすぐ後ろで歩が両手でブロックし、うるしが攻撃に専念するという作戦だった。タケルと凛の激しい攻めにも負けず、全て1人で受け止める歩。そんな中、ぐらついて体勢を崩しうるしと歩はお互い向き合う状態になってしまう。それはまるでうるしが歩に押し倒されたようだった。タケルが思わずミスショットをし、チャンスが回ってくるがうるしは空振りしてしまい、結果うるしと歩ペアは惨敗。罰ゲームとしてジュースを買ってくることとなる。

自動販売機までジュースを買いに行き、戻ってくる最中プリクラを発見。歩は「センパイと二人で撮りたいんです」とうるしにプリクラを一緒に撮ることを頼み込む。プリクラを撮るのは初めてで緊張する歩。うるしは撮ったことはあるのだが、男子と撮るのは初めてなので内心緊張していた。1枚目の撮影が始まったが、緊張のため親指、人差し指、中指でひらがなの「と」の形をつくるポーズ「と金のポーズ」が逆になっていた。このおかげで緊張がほぐれ、2枚目、3枚目と次第に楽しんで撮れるようになってきた。こんな時でも表情の変わらない歩は、ラスト1枚の写真はできる限り笑ってみるように頑張る。しかし2人して目を閉じてしまっている上に、またも「と金のポーズ」が逆になっていた。2人で大笑いしていると実は最後にもう1枚だけ残っていて、本当のラスト1枚の写真が一番笑った顔が撮れた写真になった。普段見せない歩の意外な一面、笑った表情を思わず見ることができたのであった。

修学旅行で気付いた歩に対するうるしの気持ち

いよいよ明日から修学旅行となった前夜に、うるしは歩に呼び出され旅の無事を願うお守りを渡される。
4日間会えないのは寂しいが、特訓して強くなっておくので楽しみにしておいてほしいと送り出す歩。
行き先は京都、奈良。うるしはたびたび登場するマキと、マキと同じくクラスメイトのひなの、ミクの4人で班行動をすることに。
うるし、マキ、ひなの、ミクの4人で一緒に大仏や様々な恋愛スポットを巡り楽しむが、うるしはどことなくうわの空。歩からなかなかメールが来ないことを気にしているように思えたマキは、うるしと二人きりで話をする口実として夜にうるしと将棋でもしようと誘う。

マキはうるしに「歩のことが好きなんじゃないか?」と問いかける。うるしは否定するが、「ホントは自覚してないだけで、ある時急に好きだってわかることもあるかもよ?」と言われ、うるしは自分から歩にメールを送ってみるのだった。
翌日、その日の夜に歩から電話がかかってくることに。電話で将棋をすることになるが、電話を待つうるしは落ち着かない。
電話越しに将棋をし、強くなっている歩に感心しつつも歩と将棋をしたかった自分に気づく。

修学旅行も最終日。お土産選びも楽しんだが、歩にもらったお守りをどこかに無くしてきてしまったうるし。来た道を辿りながらようやく見つけるが、ネコがお守りをくわえて逃げてしまう。
必死で追いかけ、ようやく取り返した場所には季節外れの桜が満開に咲いていた。見とれながらうるしは「キレイだなぁ。なあ歩」隣にいないのに思わず歩の名を口にしていた。
マキに言われた言葉を思い出し、歩のことが好きだという自分の気持ちに気づいた修学旅行だった。

四枚落ちのうるしに挑む歩

ayuhunn
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