僕は問題ありません(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『僕は問題ありません』とは宮崎夏次系による漫画作品。本作は「第1回あゆみCOMIC大賞」を受賞、「俺マン2013年」や「このマンガがすごい!2014」にランクインしている。文化庁メディア芸術祭マンガ部門「審査委員会推薦作品」を受賞した前作『変身のニュース』から2作目となる短編集である。表紙を飾る「肉飯屋であなたと握手」他、ロクデナシ男をはねてしまった「はねる」など8編の短編を収録。文化庁メディア芸術祭マンガ部門「審査委員会推薦作品」を受賞した前作『変身のニュース』から2作目となる短編集である。

『僕は問題ありません』の概要

『僕は問題ありません』とは宮崎夏次系による漫画作品。本作は「第1回あゆみCOMIC大賞」を受賞、「俺マン2013年」や「このマンガがすごい!2014」にランクインしている。文化庁メディア芸術祭マンガ部門「審査委員会推薦作品」を受賞した前作『変身のニュース』からは2作目となる。モーニング増刊『モーニング・ツー』’12年12月号から’13年7月号に掲載された作品を収録した全1巻の短編集である。ロクデナシ男を轢き殺してしまったことで、その男に囚われ、やがて自身もロクデナシ男になってしまう「はねる」、痴呆気味の元家庭教師である老人を敬愛する女子・億沢さんを追いかけるうちにやがて恋に落ちていく主人公を描く「肉飯屋であなたと握手」他、8編の短編を収録。サブタイトルはすべて著者が考案している。

『僕は問題ありません』のあらすじ・ストーリー

線路と家

大学(だいがく)が祖父に言われた通りに学校を辞めた日、轟(とどろき)は大学に彼女の私物を隠していたのは自分だったと告白する。轟はいじめられっ子で、クラスメイトの言いなりで仕方なかったと謝罪するも、大学は意に介さない。彼女の態度に納得いかない轟は家までついていくが、大学の祖父に弓矢で襲撃される。大学の祖父に弓矢で襲撃される。大学の祖父は外の世界は間違っているという思想の持ち主で、大学が学校に通うことも良しとしなかったが、修行のため仕方ないと考えていた。それも完了した今、大学に一生を家の中で過ごすよう言い聞かせるのだった。一方、学校にも家にも居場所がない轟は再び大学の家を訪れるが、所持していた鞄を大学の祖父に略奪されてしまう。所持品にめぼしいものはないとされたが、大学はその中から1冊の本を発見。なんとなしに読んでいるところを、鞄を取り戻しにきた轟が目撃する。「続きがあるから!絶対持ってくるから!」と一方的に大学に言うと、轟は嬉しそうに帰っていくのだった。そこから轟は毎日のように続きの本を持参し、大学に会いに来るようになる。ある日、大学の祖父が死亡してしまう。祖父の遺言通り、引き出しの中のボタンを押すと大学の家は突如、塔のような要塞へと変形する。大学は祖父が常々自分に言い聞かせていた通り、本当に一生1人で家の中で過ごさせる気なのだと確信した。絶望する大学のもとに、塔に一番近く行けるであろうモノレールの線路を走って轟がやってくる。「本がないと退屈だろう?」と続刊を差し出す轟に、大学は塔を飛び出し彼の胸に飛び込むのだった。

はねる

森(もり)はバイトの帰り道、車で人を轢いてしまう。轢いてしまった茶畑 のぼる(ちゃばたけ のぼる)は打ちどころが悪く死亡するも、森は後日罰金徴収される旨だけ伝えられ釈放される。茶畑のぼるは、とんだロクデナシとして有名で、事故当日も酒に酔って自ら車道に飛び出したのだった。森は遺族である茶畑の妹の家を尋ね謝罪するも、「気にしないでください」と言われてしまう。茶畑は妹とも何年も前に縁を切っており、妹も街で兄と出会っても無視していた。「兄が死んで…悲しむ人は居ないです」と言われ、森は呆然とする。
その後、森はどこにいても茶畑について考えるようになる。妹から聞いた茶畑行きつけのパチンコ屋に通うようになり、街中で茶畑が着用していた服を見つけ購入する。アルバイトを無断欠勤した挙げ句に退職し、半年後の森は、茶畑そっくりの見た目になっていた。森は街中で茶畑と勘違いした輩に金を返せと暴行され、前歯さえも失ってしまう。街行く人々みんなが自分を嫌っているように見え、森は茶畑がどうしようもないロクデナシで居なくても誰も困らないと自分を納得させかけていた。そんな時、1人の男が茶畑と見間違えて森に話しかけてくる。男の後に付いていくと、森はチューリップの球根を売りつけられてしまう。男曰く、茶畑は毎年妹に内緒で彼女が好きな花を家の周りに植えていたとのことだった。森は妹宅を尋ねた際に庭いっぱいに咲いていた花々を思い出していた。
改めて、茶畑に興味を持った森はチューリップの球根を携えて、妹宅を訪れる。一方、妹は友人からの電話で茶畑を街中で見かけたと聞く。冗談だと言いつつも、灯油の給油を言い訳に妹は茶畑が目撃された場所へ車を走らせる。道中、妹は妹宅へ向かっていた森と遭遇、誤って彼を車ではねてしまう。茶畑にそっくりな森を妹は自分の兄だと勘違いし、激しく動揺する。「おにいちゃん」と何度も叫ぶ妹に森は無事だと伝えながら、「悲しむ人」が茶畑にも居たことに安心するのだった。

俺のサメハダを出せ

のぼるは父親の臨終にも関わらず、フルフェイスのヘルメットを被って同窓会に参加する。同窓会会場でのぼるは背中に背負った高圧洗浄機で威嚇しながら、卑劣ないじめを受けたことを告白するも、冗談だと笑われて相手にされない。のぼるは仕方なく、一番の目的である山下(やました)に詰め寄る。卒業式の日にのぼるのロッカーを荒らして、小説家だった父の処女作である『サメハダ』の本を盗ったのは山下だと確信していたのだった。のぼるの父が世に出せた本は『サメハダ』一冊だった上に、出来上がって一番最初に父のサイン入りでもらったものだから返してほしいと懇願する。そんなのぼるに対し、山下は本は古本屋に10円で売ったと言い捨てる。父が血反吐を吐くような思いで執筆していたことを見ていたのぼるは激昂。高圧洗浄機で攻撃された勢いで山下は、そのまま窓の外に落下してしまう。追うように窓から落ちたのぼるに「お前のことなんか覚えてやってるの俺だけだぞ 尾形先生」と声をかける。パトカーに詰め込まれる前にのぼるの耳に、山下の「主人公が泣きながら枝豆喰うとことか おもしろかったけど」という、大きな独り言が聞こえたのだった。

メゾンド生沼

601号室の白丸(しろまる)は206号室の辛沢(からさわ)に引っ越しの挨拶としてタオルを持参してやって来る。6階と2階で接点がないため挨拶する意図がわからない辛沢に、このマンションに唯一住んでいるのが自分と辛沢だけだったからだと白丸は言う。2人住むマンションは来年春に取り壊され、老人ホームになるのだった。引越屋から渋滞で遅れる旨の電話を切った直後、白丸は辛沢からの電話を受ける。先程のタオルの礼を言う辛沢の電話に、白丸はどこから電話番号を入手したのか訝しむ。話し続けようとする辛沢の電話を一方的に切ると白丸は家の中を探し、コンセントの裏から盗聴器を発見する。盗聴器を手に再び辛沢の部屋を訪ねる白丸は、しどろもどろに言い訳する彼を面倒だと感じ「どうでもいいや」と切り捨てる。そのままマンションの外で待つ白丸に、辛沢は屋上に見せたいものがあると言う。ちょうど引越屋が来たことで白丸はそれを拒否するが、辛沢は彼女の財布を奪って逃走。隕石到達に備えて作った船を白丸に披露するが、財布を取り戻した彼女は引っ越しの荷物の搬入を完了するのだった。出発という場面で、ガーンと大きな音が響き渡る。そこには斧で高架タンクを破壊して、彼女の引っ越しを見送る辛沢の姿があった。

地図から

ショッピングモールのファーストフード店で働く週子(しゅうこ)は、客の曜ニ(ようじ)にある日突然プロポーズされる。家と職場を往復するだけの平凡な毎日を淡々と過ごしていた週子は、こんなことは2度と起こらないかもしれないとそのプロポーズを受け入れた。近所の式場で結婚、近所の新居に引っ越した週子は、曜ニがどこかへ連れて行ってくれると期待していたが、それが実現しなかったことを少し残念に思っていた。休みの日もどこにも行かない曜二に、週子は何故自分と結婚したのかと疑問を投げかける。前日、曜ニの会社から届いた郵便物に2人の生活がつぶさに記録されていたからだった。曜ニは都市開発の部署に会社のサンプルとして雇われていると告白。サンプルらしく標準的な夫婦として生活していれば、優遇される。嫌がられるかと思い週子に言い出せなかったと話す曜二に、表面的には納得したように見えた週子だったが、プロポーズも仕事の一貫なのではと疑心暗鬼になるのだった。ある日、週子は福引で世界一周旅行を当てる。胸高まる週子に対し、曜ニは標準的な夫婦は世界一周旅行しないと拒絶する。気まずい空気になる2人に、自分は標準が良いのだと週子は自分を無理やり納得させるのだった。数日後、仕事への見送りをする週子に曜二は思い切って、やっぱり世界一周旅行に行こうかと提案する。遠出してまで見たいものはないと思っていた曜二だったが、2人なら良いのではないかと考え直したのだった。同じく遠出したことがなく、海も見たことがないと週子も打ち明ける。週子の嬉しそうな様子に曜二は浮かれ、そのまま階段から落ち、深刻な脳挫傷に陥る。半年後に曜ニは亡くなり、週子は再び家と職場を往復する元の生活へと戻る。通勤に使っていたママチャリが壊れた日、自転車屋で商品を吟味する週子は、このままぼんやり生活が続くのかと考える。彼女は思い切ってロードバイクを買って、その日海を目指すことにしたのだった。

肉飯屋であなたと握手

朝原(あさはら)は優等生の億沢(おくざわ)がタバコを万引きしているのを目撃してしまう。後をつけると、億沢はかつて彼女の家庭教師であった頃北(ころきた)と面会していた。頃北は8年前に教え子たちに不法抗精神病薬を渡して逮捕されていた。頃北は刑期を終えた後も、病院に収容され自由に外出も叶わない。愛煙家の恩師のため億沢はタバコを万引きをしていたのだった。駅でこんなことを続けるべきでない、と詰め寄る朝原の目の前で、億沢は荷物が電車に挟まれ引きずられてしまう。咄嗟に手を掴み億沢は助かるが、幼い頃に蒸し風呂状態の部屋で母親に手を握られながら泣かれたトラウマのせいで朝原は駅のホームで吐いてしまった。

後日、朝原は億沢から頃北の古希のお祝いである蟹を委員会を理由に託される。それまで拒絶されていたが、駅のホームで吐いて以来、何故か億沢は朝原に心を開きつつあった。病院に向かった朝原は、屋上で踊る頃北を目撃する。いつかポックリいきかねないと感じた朝原は億沢が不憫だからと、彼女に遺言なりを残すようにと頃北にと自由帳を手渡すのだった。

頃北はその後、雷に打たれてあっさり亡くなってしまう。遺品整理をしていた朝原と億沢は、以前朝原が手渡した自由帳を発見する。そこにはかつて億沢が頃北が家庭教師を受けていた空間が切り紙で再現されていた。1ヶ月後、朝原は再び駅で億沢と再会する。億沢は生きているときよりも、より頃北のことが好きになっていると朝原に打ち明ける。亡くなった人に執着することを朝原は軽蔑するも、学校を辞めアラスカに行くと話す彼女に「元気でね」と声をかけるのだった。

『僕は問題ありません』の登場人物・キャラクター

線路と家

大学(だいがく)

祖父に言われた通り1週間で学校を辞め、祖父と2人きりで暮らすことにした少女。祖父の言う事が正しいと信じており、学校は淋しいところだと感じていた。祖父が轟から強奪した荷物の中に本を発見し、興味を持つ。その本を読んでいるところを轟に目撃され、続刊を持参する轟と本を通じて交流を持つようになる。ある日、祖父は突然他界し、遺言通りのボタンを押したところ家が変形し、外界と完全遮断された生活を送ることとなる。

轟(とどろき)

長髪をツインテールにしたメガネ男子。いじめられっ子で、いじめっ子の言うがまま大学の私物を隠していた。大学が学校を辞める当日、今までの罪を告白するも当人は意に介さず、そのまま大学の家まで付いていった所、彼女の祖父に襲撃される。学校にも家にも居場所はなく、心の拠り所は愛読書の『怪人ペヌロ』。

大学(だいがく)の祖父

家の外の生活は汚く、低俗ですべて間違っていると考えている大学の祖父。弓矢で攻撃することができる。独特の思想の持ち主で、食事とトイレの際はすべて服を脱ぐよう大学に言いかせてきた。心臓に持病があり、大学に遺言書を残して、ある日ぽっくり亡くなってしまう。遺言通りのボタンを押すと家が変形するよう改造しており、大学が外に一生出なくて良いよう準備していた。

はねる

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