僕は問題ありません

僕は問題ありません

『僕は問題ありません』とは宮崎夏次系による漫画作品。本作は「第1回あゆみCOMIC大賞」を受賞、「俺マン2013年」や「このマンガがすごい!2014」にランクインしている。文化庁メディア芸術祭マンガ部門「審査委員会推薦作品」を受賞した前作『変身のニュース』から2作目となる短編集である。表紙を飾る「肉飯屋であなたと握手」他、ロクデナシ男をはねてしまった「はねる」など8編の短編を収録。文化庁メディア芸術祭マンガ部門「審査委員会推薦作品」を受賞した前作『変身のニュース』から2作目となる短編集である。

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僕は問題ありませんのレビュー・評価・感想

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僕は問題ありません
8

すべての「問題ない」ひとたちへ

宮崎夏次系の短編集「僕は問題ありません」。八編を収録しており、そのうち二話目「朝のバス停」に出てくる台詞が書名となっている。
どの話にも、問題を抱えるキャラクターが登場する。虐められている男の子、祖父の指示に従い学校を辞める女の子、人形に話しかけることで精神の安寧を得ている男、自分が轢き殺した人にどんどん似ていく男、父の本を取り返しに同窓会に乗り込む男等々、ちょっとどころではない問題を抱えた彼等はそれ故にか華麗にとんでもない犯罪行為にも手を出す。けれど彼等は、自分と同じくらい問題がある、歪んでいる人と出会い、触れ合い、問題を抱えたまま目の輝きを取り戻す。心を囲んでいた檻の一部を破壊する。歪んだ者同士の出会いは斬り合いにこそならないにしろ、ヤマアラシのジレンマにしかならず癒やしよりは痛みが勝る。その痛みによって、彼等は自分がなにを求めていたのかを知る。自身のことを知るのだ。
宮崎夏次系が描くキャラクターたちは、互いを思ったり優しくしたりできるのに、何処までも独りで立っている。傷つけて、傷ついて、自身や他者の抱える問題をそのままに生きていける強さを得ていく。
あなたには問題がある。
わたしにも問題がある。
けれどそれを抱えたまま生きていくには「問題ありません」と言える強さが必要だ。自分はこうなのだ、と認めなければならない。だれかに背負って貰ったり助けて貰ったりするなんてできない。もしかしたら問題は、自分がこの世で生きる為の支えでさえあるかもしれない。
生きづらさを感じているひとの胸にお薦めしたい。生きづらさを抱えながら進む助けとなるかもしれない。

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