SYNDUALITY Noir(シンデュアリティ ノワール)のネタバレ解説・考察まとめ

『SYNDUALITY Noir』(シンデュアリティ ノワール)とは、文明崩壊後の世界で生きる冒険者たちのスリリングな日常と、世界の謎へと迫る戦いを描いたロボットアニメ作品。3社共同のSFプロジェクト『Project SYN』の中核シリーズ『SYNDUALITY』の、メディアミックス作品の1つである。
荒れ果てた地上を探検するドリフターになることを夢見る少年カナタは、ある時記憶を失った少女型アンドロイドを発見。ノワールと名付けた彼女の協力で己の機体を得たカナタは、ドリフターとして歩み始める。

『SYNDUALITY Noir』の概要

『SYNDUALITY Noir』(シンデュアリティ ノワール)とは、文明崩壊後の世界で生きる冒険者たちのスリリングな日常と熾烈な戦い、彼らが世界の謎へと迫っていく様を描いたロボットアニメ作品。
リアル系のロボットアニメ作品として放送前から注目を集め、ハードながら詳細に作り込まれた世界観で視聴者を引き込む。3社共同のSFプロジェクト『Project SYN』の中核シリーズ『SYNDUALITY』のメディアミックス作品の1つであり、アクションシューティングゲーム『SYNDUALITY Echo of Ada』(シンデュアリティ エコー オブ エイダ)とは同じ世界の違う時間を描いた関係となっている。

2099年、正体不明の強毒性の雨「ブルーシスト」により、文明は崩壊。生き残ったわずかな人類はエンダーズという怪物に追いやられるようにして地下へと逃げ込み、そこを新たな居住空間として生活していった。やがてブルーシストに対抗する術を学んだ人類は、ドリフターと呼ばれる地上探検家と、彼らが駆るクレイドルコフィンという対エンダーズ用二脚兵器の活躍によって少しずつ地上への帰還を果たしていく。クレイドルコフィンは地下都市アメイジアで製造されたメイガスと呼ばれる高性能アンドロイドの補助無しでは満足に動かせない仕様になっており、翻ってドリフターに取ってメイガスは必要不可欠な存在となっていた。
ドリフターとなって幻の古代都市イストワールへの到達を夢見る少年カナタは、ある時兄貴分のトキオと共に赴いた地上の施設の中で、未起動状態の少女型アンドロイドを発見。彼女は記憶を失っており、放っておくこともできなかったカナタはこれを自分の暮らす街へと連れ帰る。そこにエンダーズの大群が現れて街を襲い、居合わせたドリフターたちがこれを迎撃する中、居ても立ってもいられなかったカナタも参戦。メイガス無しでクレイドルコフィンを操縦して苦戦するも、ここで記憶の無いアンドロイドが自身とカナタの機体を接続。その能力を十分以上に引き出して、エンダーズを撃破する。

ブルーシストの正体とはなんなのか、エンダーズはどこから現れたのか、地上で見付けた文明崩壊前のアンドロイドがなぜメイガスと同じ機能を持っていたのか。様々な謎を抱えつつ、カナタはノワールと名付けた不可思議なアンドロイドと共に、ドリフターとしての人生を歩み始める。

『SYNDUALITY Noir』のあらすじ・ストーリー

カナタとノワールの出会い

2099年、正体不明の強毒性の雨「ブルーシスト」により、文明は崩壊。生き残ったわずかな人類はエンダーズという怪物に追いやられるようにして地下へと逃げ込み、そこを新たな居住空間として生活していった。やがてブルーシストに対抗する術を学んだ人類は、ドリフターと呼ばれる地上探検家と、彼らが駆るクレイドルコフィンという対エンダーズ用二脚兵器の活躍によって少しずつ地上への帰還を果たしていく。クレイドルコフィンは地下都市アメイジアで製造されたメイガスと呼ばれる高性能アンドロイドの補助無しでは満足に動かせない仕様になっており、翻ってドリフターに取ってメイガスは必要不可欠な存在となっていた。
ドリフターとなって幻の古代都市イストワールへの到達を夢見る少年カナタは、ある時兄貴分のトキオと共に赴いた地上の施設の中で、未起動状態の少女型アンドロイドを発見。放っておくこともできなかったカナタは、彼女を自分の暮らすロックタウンへと連れ帰る。そこでカナタが修理しようと試みた矢先に再起動するも、少女型アンドロイドは自分に関するあらゆる記憶を失っていた。

記憶を失っているせいもあってかアンドロイドにしては性能も低い彼女だったが、クレイドルコフィンと接続すると並外れた力を発揮。その際コンソールに現れた言葉から「ノワール」と名付けられた少女型アンドロイドと共に、カナタはドリフターとしての第一歩を歩み始める。
トキオがこれを歓迎する一方、ロックタウン最大のドリフターチーム「アヴァンチュール」に所属するエリーは「密かに思いを寄せるカナタの側に、恋愛的な意味でドリフターのパートナーになることも普通にありうる女性型メイガスが現れた」と頭を抱える。肝心のカナタは、「自分のような半人前が、本来の持ち主がいるかもしれないノワールを自分の物のように扱ってもいいのか」と悩んでいた。そんな彼を試すように、悪徳ドリフターが「自分の方が活用できる」とノワールを連れ去る事件が発生。カナタがこれを追撃すると、それを見たノワールは自らの意志で彼の下へと帰還。改めて「自分のマスターになってほしい」とカナタに告げ、2人は正式な契約を結ぶのだった。

ドリフターの生き様

ノワールと正式に契約したカナタは、トキオに「記念だ」と歓楽街へと連れ出される。戸惑う一方で期待してそわそわする中、カナタは待合室で黒い仮面をつけた人物と出会う。彼は「女神」と呼ばれる存在を探しているらしく、部下からこの街に女神がいるという話を聞いて足を運んだのだという。それが部下だという人物の軽いジョークだったことを察したカナタがそう教えようとした時、歓楽街をエンダーズの群れが襲撃。カナタを連れ戻すためにやってきたエリーとアンジェ、彼女たちに連れられてやってきたノワールと共に、カナタはクレイドルコフィンに乗り込んでエンダーズと戦う。

まだ戦いに不慣れなカナタが苦戦していたところに、クレイドルコフィンに乗った黒仮面の男が駆け付ける。彼はエリーが途中で拾って一緒に連れてきた自身のメイガスであるシュネーと共に、トキオやマイケルすら上回るのではないかという力を見せつけてエンダーズを撃破。遥かな高みにあるその強さを前に、カナタはただ感嘆する。
その後カナタは自分なりに仕事を見付けて、ドリフターとしての活動を本格的にしていく。しかし実力不足からエンダーズに追い詰められたり、一緒に仕事をした先輩ドリフターのクラウディアに騙されたりと失敗も少なくなく、様子を見ていたトキオに呆れられる。一方、そんな中で自身のクレイドルコフィンに「デイジーオーガ」という名前を贈られ、少しずつドリフターとしての経験も積んでいく。

ゼロ型メイガスの謎

黒仮面やクラウディアが連れているメイガスは「ゼロ型」と呼ばれる希少なタイプで、通常のメイガスとは異なる特殊な能力を有していた。ノワールもゼロ型であり、機能が回復すればクレイドルコフィンの力をより引き出すことができるという。改めて早く一人前のドリフターになるという夢への想いを強くするカナタだったが、ゼロ型のメイガスのみを狙う謎の集団が現れ、ノワールを標的にするようになる。
やがてカナタとノワールは、シエルという「自分の理想の主」を探し続けるメイガスと関わった事件で、ゼロ型メイガスのみが使えるメイガススキルと呼ばれる力を発動させることに成功。徐々にドリフターとしても注目されるようになる。

シエルは「助けてくれたお礼」としてカナタの下に押し掛けるが、その正体はとある組織のスパイだった。イストワールを目指す者を監視するその組織は、ドリフターとして名を上げ始めたカナタも注意が必要な存在だと判断し、シエルを派遣したのだった。
イストワールへの到達にはゼロ型メイガスが必須であるらしく、シエルは「組織はカナタのこともノワールのことも放置しない。このままでは彼は何もかも失うことになる」と考えていた。しかしメイガスを人と同等の存在として大切にするカナタの優しさに絆され、「この人はもしかしたら長年探し続けた“理想の主”になるかもしれない」と期待し、任務とカナタへの想いの間で板挟みになっていく。その一方で彼に触発され、「自分の歌をより多くの人に届ける」という夢を抱くようにもなるのだった。

伝説のドリフター

ある時、カナタはブルーシストの中を平然と歩く不可思議な男と出会う。行きつけのジャンク屋で彼がアルバという名であること、アメイジア崩壊のきっかけにもなった人物だとされていることなど様々な噂を教えられたカナタは、「それほどの人ならノワールについても何か分かるのではないか」と協力を要請する。当初は断ったアルバだが、自身のメイガスであるエイダに「そんな風につっけんどんだから友達ができないのだ」と咎められ、渋々ノワールの検査を引き受ける。
この結果、ノワールはプログラム上で常に大きな負荷を抱えた状態にあり、これが負担となって本来の機能を十全に実行できないことが判明。彼女の失われた過去の記録は取り出せなかったものの、その機能改善に筋道がつくこととなる。この検査の最中、寄生型の危険なエンダーズが街を襲撃するも、アルバとエイダと共にほとんど1機だけでこれを殲滅。“伝説のドリフター”とも称されるアルバのすさまじい力に、カナタはただ感嘆することしかできなかった。

シルバーストームの再来

寄生型のエンダーズの大群による都市の襲撃が続き、人々はこれを「20年前にいくつもの都市を破滅させたシルバーストームの再来」だと戦慄する。ドリフターたちが力を合わせてこれに対抗することとなり、カナタはトキオと共に外部の偵察に赴く。しかしドリフターとしての独り立ちを始めていたカナタは、「自分はもうトキオ無しでもやっていける」、「一人前になったところをトキオに見てほしい」との思いから迂闊な行動を取って窮地に陥り、これを庇ったトキオが深手を負って倒れてしまう。
一方、シエルや黒仮面が属す組織イデアールは、ノワールを「楽園を目指すカギ」だとして自らが確保することを決定。その邪魔になるカナタを排除せよとの指令をシエルに与える。シエルは「ついにこの時が来てしまった」と悩みながらもカナタを手にかけようとするも、直前で黒仮面が独断で命令を「殺害」から「監視続行」に変更。彼は「ノワールにはまだ未知の機能がある」と考えており、「カナタの才能がどのように発露するのか見届けたい」との思いもあって上司のヴァイスハイトの決定を覆したのだった。

深手を負ったトキオが動けない中、シルバーストームがカナタたちの住む都市に接近。マイケルが中心となってこれを迎撃し、カナタも改修したクレイドルコフィンを駆って奮戦する。クラウディアの援護もあって、カナタとマイケルはシルバーストームの中心となっている2つの統合コアに肉薄するも、エンダーズの大群に行く手を遮られる。ここにトキオが傷を押して応援に駆け付け、カナタたちはついに2つの統合コアの破壊に成功。「これで終わりだ」と総力を注ぎ込んだ矢先に3つ目の統合コアが出現し、連戦で消耗したカナタたちは愕然とする。
傷の癒えていないトキオは無理が祟って満足に動けず、ずっと前線を支えてきたマイケルは疲労と消耗で昏倒。カナタは1人奮戦するもコアの破壊には至らず、防衛システムの反撃で追い詰められていく。「マスターであるカナタが命を懸けて戦っているのに、自分はなんの役にも立てない」とノワールが絶望し切ったその時、彼女の内に宿っていたミステルという第2の人格が覚醒。彼女の放つ強大なメイガススキルによってコアは破壊され、シルバーストームの危機は回避される。

ミステルはカナタのドリフターとしての未熟さを痛罵した後、「もう会うことは無いだろう、後はセーフモードに任せる」と言って休眠。しかし目覚めてもなおミステルの人格のままで、いったいどうすればノワールに戻るのかとカナタたちは頭を抱える。人格が戻らない理由はミステルにも分からず、やむなく彼女はカナタのメイガスとしてドリフター業に励んでいく。
一方、黒仮面に呼び出されたシエルは、彼から「引き続きカナタとノワールを監視せよ」との命令を与えられる。黒仮面たちは自らの目的のためにゼロ型メイガスの中でも特殊な調整を施された個体を探し求めており、ノワール(ミステル)こそが欲していた存在だと確信。彼女をカナタから奪うため、あるいはカナタごと取り込むために、さらに情報を集めようとしていた。イストワールを巡る巨大な陰謀が迫っていることに、カナタとその周囲の人々はまだ気付いてはいなかった。

ミステルの謎

シルバーストームの脅威を退けた後、トキオは何者かを追って街を飛び出し、帰ってこなくなってしまう。ノワールの内に潜んでいた別人格であるミステルの面倒を見ることとなったカナタだったが、ノワールとは違って弁が立つ上に自分を「ポンコツ」呼ばわりしてくるミステルに辟易とする。
そのミステルが、以前のマスターであるパスカルの消息を知りたがっていることに気付いたカナタは、彼女を“自分がノワールを見付けた場所”へと連れて行く。何者かによって手掛かりとなりそうなものは処分された後だったが、ミステルは「今さらパスカルが生きているとは思っていないが、“せめて彼女の消息を知りたい”という自分の想いがノワールの人格を抑え続けていたのだろう」と結論し、もはや未練は無いとばかりにノワールの人格を復活させる。これにより、ミステルの人格はノワールの中に封じられることとなった。

トキオはノワールの復活を喜ぶ一方、「ミステルは厳しかったが、決して悪いヤツではなかった」とも語り、仲間たちを呆れさせる。カナタが自身の説の傍証として「ミステルは自分がイストワールを目指していることを知っても笑わなかった」と主張すると、ノワールの中に消えたはずのミステルが再び復活。「あの地になら自分の知りたい情報があるはずだ」と、カナタに今すぐにでもイストワールに向かうことを提案する。
ミステルによれば、イストワールは高度10000メートルに浮遊しているらしく、彼女はかつて1度だけパスカルと共にその存在を確かめたことがあるという。イストワールの実在と、「カルタゴまで行けば手掛かりがある」との情報をミステルから教わったカナタは奮起し、ここを目指す旅の準備に取り掛かる。「この体の本来の人格であるミステルが機能を完全に取り戻したら、自分は消えてしまうのではないか」と不安がるノワールや、そのノワールを案じたエリーもこの旅に同行する一方、シエルはカナタたちの動向を黒仮面ことマハトに報告。カナタとイストワールを巡って大掛かりな陰謀が動いていることを突き止めたトキオもまた、彼との合流を目指してカルタゴに向かう。

マハトとの決闘

カルタゴに到着した一行は、長年放置された宇宙基地を発見し、早速この施設のレーダーを起動させ、イストワールの観測を試みる。しかし突如何者かの攻撃によってレーダーが破壊され、観測も通信もできない状態となってしまう。「どうやら誰かが自分たちを狙っているらしい」と気付いて周囲を調べたカナタは、幾度か交流し助けてもらってきた黒仮面ことマハトと出会い、自分たちを攻撃したのが彼であることを知る。
マハトは「不本意ではあるが、イデアールの決定は絶対だ」として、ノワール(ミステル)を奪おうとしていた。カナタがこれを拒否すると、マハトは決闘によって決着を付けようと言い出し、両者はクレイドルコフィンを用いて対峙。途中でイデアール側の横槍が入るものの、カナタはなんとかマハト以外の敵を退け、彼からも「強くなった」と認められる。

しかし、それでもなおマハトと彼のクレイドルコフィンの力はカナタたちを上回っていた。絶体絶命となったその時、カルタゴに駆け付けたトキオが間一髪でマハトの前に割って入る。トキオはマハトと知り合いらしく、悔しそうに顔を歪めつつ「それがお前のやりたいことなのか」と彼を叱責。マハトもまたトキオを見て驚き、彼を「リヒト」と呼んで撤退する。
状況が分からず戸惑うカナタたちに別れを告げると、トキオもまた慌ただしくその場を去っていった。

ノワールとミステルの危機

トキオはそのまま行方不明となり、ロックタウンに帰還したカナタは戸惑いながらも改めてイストワールに向かうための準備を進めていく。そんな中、ミステルのデータ修復がほぼ完了し、ノワールは自分の人格データが間もなく消滅することを知る。「結局1度もカナタの役に立てなかった」と悔やんだノワールは、自分が消える前にせめて何かカナタのためになることをしようと、料理の特訓を始める。その中で、ノワールは自分がロックタウンの人々に隣人としてすっかり受け入れられていることに気付き、「自分が消えれば、彼らは悲しむだろうか」との感慨を抱く。
ミステルのデータ修復が完了する前日にノワールが作った料理は、努力が実ってカナタから絶賛される。最後にようやく彼の役に立てたと安堵するノワールだったが、喜ぶカナタを見ている内に「消えたくない、カナタやロックタウンの人々と一緒にいたい」との想いが溢れ出す。その感情はノワールとミステルのデータに多大な負荷を与え、彼女はカナタの前で倒れてしまう。

ノワールとミステルを救うために奔走する中、カナタは偶然アルバと再会し、彼から「ノワールとミステルの症状は、“1つの体に2人分の人格データが存在することによる負荷”が原因」だと教えられる。「0型メイガスのボディをもう1体分探し出し、1人分の人格データをそちらに移せば2人を助けられる」と知ったカナタは、シエルと共に0型メイガスの素体を求めてアメイジアという廃墟を訪れる。0型メイガスの製造工場があったのもここだとされていた。
しかし、実はアメイジアこそはイデアールの本拠地であり、カナタは出撃したマハトに追い詰められる。さらにどういうわけかトキオまでもがイデアール側の立場でカナタを攻撃し、クレイドルコフィンを失ったカナタはやむなく期待を捨てて脱出する。ここでさらにシエルが“イデアールのスパイ”という本性を露わにし、カナタは不意打ちを食らって捕まってしまう。

シエルとの約束

シエルはもともと、イデアールの首領であるヴァイスハイトのメイガスだった。マスターに命じられた通りにカナタを捉えたシエルだったが、「ヴァイスハイトはメイガスを嫌悪している」、「自分は今までに何度もヴァイスハイトに記憶を初期化されては再契約されてきた」という事実を知って戦慄。さらに「お前が執着しているカナタをその手で殺せ」という新たな任務を命じられ、任務と自分の感情との間でさらに葛藤を強くしていく。
それでもメイガスとして命令には逆らえない、自分たちはそういう風にしか作られていないとの諦観と共に、シエルは生け捕りにしたカナタの下に向かう。しかし自身の内面の葛藤を即座に感じ取ったカナタに「一緒に逃げよう」と提案され、シエルはついに自らの意志でイデアールを離反することを決意する。しかし、それはヴァイスハイトに「メイガスは人間の良き隣人にはなりえない」という考えが正しいことをさらに確信させる選択でもあった。

トキオが密かに修復したデイジーオーガに乗ったカナタは、「ノワールの新しいボディのことなら考えがある」とするシエルを信じてイデアールの拠点から脱出。途中マハトを含むイデアールの追撃部隊に襲撃されるも、シエルのメイガススキルによって事無きを得る。ヴァイスハイトはこうなることまでを読み切っており、この時点でシエルを初期化しようとするが、ここで彼女は「自ら機能停止する」という方法で彼の策から逃れる。事実上の自殺にも等しいシエルのこの行動により、カナタはイデアールの追撃を振り切り、同時にあまりにも悲劇的な形で“ゼロ型メイガスのボディ”を手に入れることとなった。
シエルは「カナタのメイガス」としての己を全うするため、再びヴァイスハイトの支配を受けないよう再起動も拒絶する状態にあり、事実上“メイガスとしての死”を迎えた状態にあった。アルバから「シエルのボディを使えばノワールを助けられる」と告げられたカナタは、“シエルを犠牲にしてノワールを救う”ことが正しいのか思い悩む。しかし苦悩と葛藤の末に「シエルと共に過ごした時間は本当に楽しかった。それはきっとシエルも同じはずだ」、「そのシエルが自らの死を覚悟してまで自分を助けてくれたのは、“ノワールやミステルと共にさらに進め”という彼女の意志なのではないか」と考えたカナタは、シエルのボディにノワールの人格プログラムを移送することを決断。大きな犠牲を払った上で、ノワールとミステルの両方を救うことに成功するのだった。

それぞれの因縁

ノワールとミステルの人格データが分離したことで、ノワールの中に隠されていた彼女の前マスターであるパスカルのメッセージが蘇る。彼女は崩壊したとされるアメイジア出身のドリフターで、「まだ見ぬ世界」を求めてミステルと共に旅を続けていた。そんなある日、彼女は偶然からイストワールとの通信を成功させるが、何か調べるより先に向こうから「メイガス1人分の人格データ」を送り込まれる。これを押し付けられたミステルが機能不全に陥ったところでイデアールに襲われたパスカルは、「この状況では逃げられそうにない」と判断。ノワールごとミステルを一時機能停止させた上で「自分の代わりにイストワールを目指し、そこに何があるのか確かめてほしい」とのメッセージをパスカルの中に残し、追っ手を攪乱して振り切ったところでついに力尽きたのだった。
ミステルの新たなマスターとしてパスカルの遺言を受け取ったカナタは、思いも新たにイストワールを目指す。

その頃、トキオはトキオで「そろそろ潮時」とイデアールを離脱していた。かつてトキオは、マハトやヴァイスハイトと共にイデアールの先兵として育てられていた時期があり、当時は「リヒト・アルター」と名乗っていた。トキオたちが今のカナタ程度の歳になった頃、「自分ならよりよく組織と世界を導ける」と判断したヴァイスハイトがイデアールの上層部を抹殺。自身が新たなイデアールの支配者となる。ヴァイスハイトは「イストワールに眠る旧文明の技術を回収して解析し、これを公開することで全ての人々を救う」ことを目標として掲げており、マハトはこれに賛同して彼の下に就く。
しかしトキオは「ヴァイスハイトのやり方では目標を達成するまでの犠牲が多過ぎるし、彼を信じ切ることはできない」としてこれに異を唱え、マハトの必死の説得をも受け入れずに処刑されそうになる。トキオを死なせるわけにはいかないと考えたムートンやシュネーの手引きによってトキオは処刑前になんとかイデアールを離脱するが、彼は彼で第一の親友であるマハトに「こんなところにいたらお前はダメになる、一緒に来い」と懸命に説得を重ねていた。結局2人は手を取り合うことなく擦れ違うが、なお互いへの未練を残し、未だに「アイツを助けてやりたい、もう1度ともに歩みたい」との想いを抱えていた。久しぶりに顔を合わせ、大雑把に事情を知ったカナタから「らしくない」と指摘されたトキオは、その言葉に「まったくその通りだ」と感心して再びマヒトと対峙する道を選ぶ。

イデアールの襲撃

YAMAKUZIRA
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