イジメの時間(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『イジメの時間』とはくにろうによる漫画作品。いじめを題材にしたヒューマンドラマで、2019年より『マンガボックス』で連載が開始された。主人公、天童歩はごく普通の中学生だが、些細なことがきっかけで同級生の鈴木山真次郎と若保囲孝史から壮絶なイジメを受けることになる。学校の屋上から身を投げ出そうとするほど追い詰められた歩は、ある時復讐を決意する。イジメと闘う主人公の苦悩が描かれた作品。重大な社会問題にもなっている学校でのイジメ問題をリアルに描いており、学校関係者を中心に話題の漫画である。

『イジメの時間』の概要

『イジメの時間』とはくにろうによる漫画作品。いじめを題材にしたヒューマンドラマで、2019年より『マンガボックス』で連載が開始された。
主人公、天童歩(てんどうあゆむ)はごく普通の中学生だが、些細なことがきっかけで同級生の鈴木山真次郎(すずきやままじろう)と若保囲孝史(わかほいたかし)から壮絶なイジメを受けることになる。クラスメイト全員が敵となり暴力や辱めを受ける歩は、心身共に追い詰められていく。ある日、自宅にてイジメを受けた歩。その際に、自宅にいた愛猫が真次郎たちに殺害されてしまう。愛猫の死がきっかけで、歩は真次郎たちへの復讐を決意するのであった。
重大な社会問題にもなっている学校でのイジメ問題をリアルに描いた漫画として、「学校関係者を中心に読んで欲しい」と読者からレビューが殺到した話題の作品。2014年5月、『マンガボックス』のマンガ投稿サービスである『マンガボックスインディーズ』に初投稿された後、総合コメント数ランキング11位を獲得し話題になり、その後紙単行本2巻、電子単行本全15巻が発売される。
現代社会において無視できないイジメ問題がリアルに描かれている作品。些細なことがきっかけで始まったイジメが衝撃的な結末に繋がる、最初から最後まで目が離せない復讐劇である。

『イジメの時間』のあらすじ・ストーリー

イジメの始まり篇

主人公、天童歩(てんどうあゆむ)はごく普通の真面目な中学生である。ある時、クラスの席替えを行うことになり、歩は片想いをしている平原姫音子(ひらはらねねこ)の近くの席になることを祈っていた。しかし席替えの結果は姫音子とは遠い席で、さらにクラス1の不良、鈴木山真次郎(すずきやままじろう)の前の席になってしまう。
真次郎と席が近いことに怯える歩だったが、特に何事もなく時間は進んでいく。しかしある時、クラスメイトで真次郎の連れである若保囲孝史(わかほいたかし)が悪戯で、歩の机の中に真次郎の筆箱を入れる。その悪戯がきっかけで、真次郎の怒りを買い歩はイジメのターゲットにされてしまうのであった。
歩のことを油断させるために、最初のうちは友好的な態度で接してくる真次郎と孝史。すでに彼らのイジメのターゲットであった須田 淳七(すだじゅんしち)がボコボコにされているのを見た歩は、真次郎たちのことを恐れてビクビクしながらも、彼らとの関係を続けていた。
ある日、歩は教師から呼び出しを受ける。内容は真次郎たちからイジメを受けていないかという確認であったが、報復を恐れた歩は「いじめられていない」と嘘をつく。しかし、歩が教師に呼び出されたことを知った真次郎たちは、チクった可能性があると因縁を付けて、彼にペナルティを課す。ペナルティごとに嫌がらせや暴力を受け、ペナルティが積み重なるとさらに激しい暴力を受けるシステムであった。
その後、真次郎の彼女である鶴巻真魚(つるまきまお)から歩が告白されたことをきっかけに、さらに歩へのペナルティは増えていく。なお、真魚が歩に告白したのは真次郎の指示であり、歩がどんな態度を取っていたとしてもペナルティに繋がっていたのだ。
日に日にペナルティは増え、真次郎たちからの暴力も激しくなっていく。学校を休もうにも家にまで真魚が押しかけてきたりと、歩の逃げ場はどんどんなくなっていくのであった。

広がるイジメ篇

歩が真次郎たちからイジメられていることに気付いたクラスメイトの少女、又賀(またが)は担任にイジメについて密告する。しかしこれは歩のためではない。以前から真次郎に気に入られて大きい顔をしている真魚が気に食わず、密告は彼女への嫌がらせであった。
又賀の密告は、他のクラスメイトに盗み聞きされたことをきっかけに、真魚にバレてしまう。又賀の裏切り行為はもちろん真次郎の耳にも耳に入り、歩同様に彼女もイジメのターゲットにされてしまうのであった。
女同士ということもあり、又賀へのイジメは真魚が主体となって行っていく。2度と又賀が教師に密告することがないよう、弱味を握ろうと考える真魚。又賀の下着を剥ぎ取り、股を開いた状態の写真を撮影し、何か悪さをすればネットに晒すと脅すのであった。
又賀の写真の存在を知った歩は、自身が彼女のことを巻き込んでしまったと罪悪感を覚える。「せめて写真だけでも取り戻せないか」と歩は考えるが、その計画が真次郎と真魚にバレて、状況はさらに悪くなるのであった。
歩に写真のことを話した又賀に対し、チクった罰だと服を脱がそうとする真魚たち。ついに見ていられなくなった歩は、又賀のことを庇う。すると真次郎は、又賀の代わりにクラスメイトみんなの前で裸踊りをするよう、歩に命令するのであった。

追い込まれる歩篇

翌日、クラスの自習時間に裸踊りをするように真次郎に命じられた歩。頑張ればイジメを辞めると真次郎と孝史が約束したため、歩は嫌々ながらもクラスメイト全員の前で裸踊りをする。しかし、事前に真次郎からもらったドリンクに下剤が入っていたため、途中で便意を感じた歩は、真次郎と真魚に蹴りを入れられたことが刺激となり、教室で便を漏らしてしまうのであった。
もう二度と学校には行けないと思う歩。しかし、真次郎たちからのいじめはこれでは終わらない。自宅で泣き喚く歩の元へ、真次郎たちが押しかけてきたのだ。歩の粗相により汚れた真魚の制服の弁償代5万円を歩に払わせるだけでなく、公開オナニーをしろと命じる孝史。さらには、愛猫のワーを人質に取られ、歩はどうしようもできなくなる。
結局、公開オナニーは避けられたものの、歩は熱湯に入れられ、真次郎に殴られて意識を失う。一方のワーも、孝史に暴力を振るわれたこともあり、命を落としてしまう。
ワーが命を落としたことにショックを受けた歩は、遺書を用意し翌日に自殺することを決意する。大切に育ててくれた母親のことは心残りだったものの、すでに歩の心は限界を迎えていたのだ。翌日、自宅の机に遺書を置き、屋上に向かい飛び降りようとする歩だったが、飛び降りる直前に遺書を見つけた母親から泣きながら電話がかかってくる。母親の思いを聞いた歩は、そこで初めて「このままだと悔しいままじゃないか」と自殺を思いとどまるのであった。

復讐の始まり篇

自殺を思いとどまった歩は、しばらくの間は学校を休んでいた。母親は警察に通報しようとしたが、復讐を決意した歩はそっとしておいてほしいと母親にお願いする。学校を休んでいる間、歩は真次郎たちへの復讐の方法を考えていたのだ。
歩が不登校になってから4ヶ月が経とうとしたある日、ついに歩は復讐を決行する。スタンガンを持参し、真次郎と孝史に襲い掛かったのだ。スタンガンを喰らった真次郎はその場で倒れ、歩に捕らえられる。一方で孝史とその場にいた淳七は、真次郎を見捨ててその場から逃げ出すのであった。
実は、淳七は事前に歩から復讐の話を持ちかけられていた。同じいじめられっ子だった淳七だが、真次郎に歯向かう勇気はなく、1度は歩の交渉を断っていた。しかし、喧嘩が強くない孝史だけであれば勝てると思った淳七は、一緒に逃げた孝史と揉み合いになる。歩道橋で揉み合いになった2人は、そのまま歩道橋下に落下し、トラックに轢かれてしまう。2人は意識不明の重体で病院に運ばれるのであった。
一方で真次郎は、歩に連れられて倉庫の中に手足を縛られた状態で監禁されていた。覚悟を決めた歩の様子に、真次郎は恐怖する。これまで自身がされたことをやり返すと決めていた歩は、真次郎にオムツをさせトイレに行くことも許さない。さらに、暴力を振るうことも厭わなくなっていた。
まだまだ、歩の復讐は終わらない。又賀に嫌がらせをしていた真魚のことも、歩は許せなかったのだ。真次郎の携帯を使って真魚を倉庫に呼び出すと、真魚に服を脱ぐよう命じ、裸で股を開いた写真を撮影する。さらに、隣の部屋にいた真次郎のオムツ替えをさせるなど、歩の行為は悪化していく。真次郎に依存する真魚を利用し、真次郎を助けるために、意識不明の状態の孝史を殺害するよう真魚に命じるのであった。
追い詰められた真魚は、孝史の病院に向かう。もちろん彼女が警察に通報したりしないよう、歩の監視付きで行動する真魚。真次郎を助けたいが孝史を殺す勇気のない真魚は、制服のポケットに「助けて」という手紙を忍ばせていたが、結局歩にバレてしまうのであった。

イジメの結末篇

真魚の裏切りをきっかけに、真次郎を殺害しようと決意する歩。しかしそんな歩の元に、意識を取り戻した孝史が襲い掛かってくる。銃を取り出し歩を脅す孝史だったが、交通事故にあったばかりの身体では歩に勝てず、彼も真次郎と一緒に監禁されてしまう。捕まった後も、反省する様子もなく祖父の名前を口に出しては、なんとか逃れようとする孝史。警察の偉いさんである祖父を後ろ盾にすることで、歩が行った監禁の罪を軽くできると交渉したかったのだ。真次郎だけを悪者に仕立て、自身は反省する様子もない孝史の様子に、歩は怒りを覚える。アイスピックで孝史の足を突き刺し、暴力と恐怖でワーにしたことを少しずつ仕返ししていくのであった。
歩が倉庫を出た後、孝史は真次郎に脱出を提案する。しかしこれまでの監禁生活で自身の行いを深く悔いていた真次郎は、「もうやめねぇか。悪いのはどう考えても俺らだろう」と提案には応じない。そしてついに、孝史が監禁されてから数日後、暴力を連日にわたって受けていた孝史の身体が限界を迎える。突然泡を吹いて倒れた孝史は、結局歩が直接手を下さずとも死んでしまったのである。
さらに事態は悪化する。又賀との電話で、例の写真はもうなくなったこと、また孝史が死んだことを歩は伝えたのだ。これは、写真に怯えず安心してほしいという歩なりの又賀への優しさであった。電話を受けてホッとする又賀だったが、電話をしているときに目の前にいた、イジメの主犯の1人である真魚のことはやはり許せない。真魚を追い詰めるため、孝史ではなく真次郎が死んだと嘘の事実を伝えるのであった。結局、真次郎の死を信じた真魚は、その日のうちに自殺を図ってしまう。
その後、姫音子と又賀は、真次郎の監禁場所を突き止める。歩の復讐の惨劇を見た姫音子は、倉庫にいた歩のことを不意打ちで刺す。実は、姫音子と歩は幼稚園の時の知り合いであり、彼女は歩にいじめられていたのだ。自身をいじめていた歩を今でも許せず、真次郎たちへの復讐を止めるためにも歩のことを刺してしまったのである。
すぐに救急車が到着し、歩は一命を取り留めるも、1週間にもわたる監禁生活で真次郎は命を落としてしまう。こうしてささいなことがきっかけで始まったイジメは、主犯格の3人が死ぬという最悪の事態で幕を閉じる。

『イジメの時間』の登場人物・キャラクター

主人公

天童 歩(てんどう あゆむ)

本作の主人公で、母親と猫のワーと一緒に暮らしている真面目な中学生。クラスメイトの姫音子に片想いしている。クラスの席替えで運悪くクラスの不良である真次郎の前の席になってしまったことをきっかけに、イジメの標的にされる。
真次郎と孝史を中心に、彼らに逆らえないクラスメイトからも暴力や辱めを受け、自殺を考えるほど追い込まれる。しかし、自身の大事なワーを彼らに殺害されたことをきっかけに、次第にイジメへの恐怖心より憎しみが上回り、いじめっ子達への復讐を決意する。

いじめっ子

鈴木山 真次郎(すずきやま まじろう)

歩と同じクラスで、クラスメイトが恐れる不良少年。イジメのターゲットを見つけては、暴力やパシリ行為などで他人を傷付けることをゲームのように楽しんでいる。
幼少期は父親から虐待を受けており、その経験が彼を凶悪かつ残虐な性格にさせた。歩からの復讐をきっかけに、自身のこれまでの行いを反省する。しかし、歩を中心に沢山の同級生を傷つけてきた事実は消えず、最後は歩の復讐により死んでしまう。

若保囲 孝史(わかほい たかし)

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