あなたがしてくれなくても(あなして)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『あなたがしてくれなくても』とは2017年より『漫画アクション』で連載開始した、ハルノ晴による不倫が題材のヒューマンドラマ。主人公、吉野みちは、夫の吉野陽一とのセックスレスに悩む。ある日会社の先輩、新名誠と飲みに行くことになったみちは、お酒の勢いでセックスレスについて打ち明ける。すると誠は驚きながら、「うちもレスなんだよね」と話すのであった。夫婦間のセックスレスに悩む苦悩が描かれた作品。セックスレスという話題が身近な20代〜30代の女性にとって、共感できる内容が詰まった恋愛漫画である。

『あなたがしてくれなくても』の概要

『あなたがしてくれなくても』とは2017年より『漫画アクション』で連載開始した、ハルノ晴による不倫が題材のヒューマンドラマ。「あなして」という略称で親しまれている。
32歳の主人公の吉野みち(よしのみち)は、夫の吉野陽一(よしのよういち)と結婚して5年。夫婦関係は良好であるものの、2年間のセックスレスに悩んでいた。そんなある日、会社の先輩である新名誠(にいなまこと)と飲みに行くことになったみちは、お酒の勢いで夫とのセックスレスについて打ち明ける。すると誠は驚きながら、「うちもレスなんだよね」と寂しそうに話すのであった。思わぬ共通点が見つかった2人。互いの傷を舐め合うように、みちと誠の関係性は徐々に変化していく。
連載開始直後から、読者から「自分と重なりまくり、泣きました」とのレビューが殺到した話題の作品。
2023年4月より、フジテレビ系「木曜劇場」枠で、奈緒主演でドラマ版の放送が開始。2014年7月期に同枠で放送された『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』のスタッフが9年ぶりに再集結し制作された。
セックスレスという話題が身近な20代〜30代の女性にとって、共感できる内容が詰まった恋愛漫画である。

『あなたがしてくれなくても』のあらすじ・ストーリー

動き出す歯車篇

32歳の主人公吉野みち(よしのみち)は、夫の吉野陽一(よしのよういち)と結婚して5年になる。夫婦関係は良好であるものの、2年間のセックスレスに悩んでいた。そろそろ子供が欲しいと思うみち。一方で陽一は、みちの隣は心地が良いもののすでにセックスの対象としては見れなくなっていた。みちからの夜の誘いに対して、「みち色気ないんだよ」と思わず言ってしまったりと、セックスレスが原因で喧嘩が増えていく。
陽一から言われたことを気にしたみちは、新しい下着を用意したりと、状況を変えようと努力する。陽一の方もみちと向き合おうと努力はするものの、結局仕事を理由にみちからの夜の誘いを断ったりと、すれ違いの日々が続くのであった。
一方で、みちの会社の先輩である新名誠(にいなまこと)も、妻の新名楓(にいなかえで)とのセックスレスに悩んでいた。結婚して7年目の2人だが、キャリアウーマンの楓は仕事が忙しく、毎日深夜帰り。料理や洗濯など家のことはすべて誠が担当し、楓を献身的にサポートしているが、決して家事が苦痛な訳ではなく、仕事を頑張っている楓のことを尊敬していた。
しかしひとつだけ不満だったのが、忙しさを理由に誠の夜の誘いに楓が一切応じなくなったことであった。楓から拒否されたことを引き摺っている誠は、男としての自信がなくなっていく。
心は繋がっているはずなのに、どこか孤独を感じているそれぞれの夫婦。セックスレスがきっかけで、これからの夫婦関係が変化していく。
そんなある日、会社の飲み会に行ったみち。酔っ払った後輩の北原華(きたはらはな)を、誠とみちがタクシーで送ることになる。先に華を降ろした後、誠の誘いで2人で飲みに行くことにする。陽一とのことで落ち込んでいたみちは、誠の誘いをありがたく感じていた。
2人でゆっくりと飲んでいると、次第に話は夫婦関係のことになる。どこか落ち込んでいる様子のみちに気付いていた誠は「ケンカしたの?」と問いかける。するとみちは、落ち着いた誠の雰囲気とお酒の酔いもあり、思わず「うち...セックスレスなんですよね」と打ち明けてしまう。しかし口に出した瞬間に後悔したみち。誠は引いているだろうと思い慌てるが、誠の返事は「うちもセックスレスなんだよね」と意外なものであった。
まさかのカミングアウトだったが、みちはどこか戦友ができたような気持ちになる。その後もお互いの夫婦関係のことを話しては、「つらいよねお互い」と共感してくれる誠に、心が温かくなるみち。いつも欲しい言葉をくれる誠の優しさに触れたみちは、誠のことが次第に気になり始めるのであった。

すれ違うみちと陽一篇

誠の優しさに救われたみちは、陽一ともう一度向き合うことを決意する。喧嘩せずにしっかりと話し合おうとするみちだが、どこか面倒臭げな様子の陽一。冷静に話し合おうとするみちだったが、「そんなにしたい?みち性欲強くない?」という陽一の発言についにキレてしまう。そのまま陽一は家を出てしまうのであった。
翌日、陽一は会社の同僚と飲みに行く。同僚の1人に風俗に誘われるが、すぐに断る陽一。すると、そこに参加していた同僚の1人、三島結衣花(みしまゆいか)が「いいなぁ男の人はそうやって逃げ道あるから」とつぶやく。逃げ道のない女性は「だから不倫が多いのかな」と話す結衣花に、陽一は一瞬ヒヤッとする。「みちに限ってそれはない」と思いつつも、やはりしっかりと話し合うべきだと思う陽一。
その後カフェにみちを呼び出し、話し合う2人。陽一は「身体の関係がなくとも夫婦として成り立っている」と主張するが、みちは「愛されている実感が欲しい」と話す。いよいよ面倒臭くなった陽一は「ED…かも」と嘘をつくのであった。もちろん嘘だとすぐに気づいたみち。その瞬間、陽一に対する気持ちがスッと冷めたと感じるのであった。
後日、会社の飲み会に参加したみち。隣に座る誠より、陽一とのその後について尋ねられる。陽一と喧嘩して「逆にさっぱりして楽になった」とどこか空元気な様子のみちに、誠はすぐに気づく。居酒屋の外で涙するみちを放っておけず、思わず誠はみちのことを抱きしめてしまうのであった。
一方で、家の中でもよそよそしいみちに、居心地の悪さを感じる陽一。みちに求められても応えられない自分に、陽一もずっとプレッシャーを感じていたのであった。悩みながら会社の喫煙室に行った陽一は、そこで泣いている結衣花に遭遇する。何も言わずに缶ビールを渡す陽一。2人はお酒を飲みながら、ゲームの話で盛り上がるのであった。
酔いも回ったところで、トラブルで陽一を押し倒してしまった結衣花。結衣花の胸元を間近で見てしまった陽一は、そのまま結衣花と関係を持ってしまう。事が終わり、青ざめる陽一はそのまま結衣花を残して帰るが、翌日「昨日の事無かった事にしてもらえないですか」と話す。そんな陽一の発言に虚しくなる結衣花なのであった。

みちと誠の恋愛篇

一方で、みちの頑張りに勇気づけられた誠は、結婚記念日にもう一度楓と向き合うことを決意する。ホテルのレストランを予約し、そのまま景色の良い部屋で1泊するプランを立てていた。しかし当日になって、仕事のトラブルで楓はドタキャンしてしまうのであった。
深夜になり、ホテルにやってきた楓。向き合うと決意した誠は、楓に夜の誘いをする。しかし仕事で疲れていた楓はそんな誠の様子に怒り、結局は何もないまま夜が明けてしまうのであった。
楓から再び拒絶されて、男としての自信がすっかりなくなってしまった誠。そんな時に頭に思い浮かんだのは、みちのことなのであった。
後日、みちを呼び出し、結婚記念日にうまくいかなかったことを打ち明ける誠。辛そうな表情の誠を見たみちは、自身の心情と重なり思わず誠を抱き締める。辛い時にいつも寄り添ってくれるみちに心が揺れた誠は、思わずそのままキスしてしまう。「あなたに惹かれてる」とみちに打ち明ける誠。陽一の顔が頭に浮かびダメだと思いつつも「私もです」とみちは返事をするのであった。
その後、誠とみちは仕事帰りなどで密会を重ねていく。水族館デートをしたりと、どんどんと歯止めの効かなくなる自分の気持ちにみちは気付く。しかし、同時に最近優しくなった陽一に対して、罪悪感が募っていくのであった。
そんな中、みちたちの社員旅行が始まる。1人部屋だったみちは、偶然会った誠を自身の部屋に招き入れることになる。そのまま2人はキスをし、誠はみちを押し倒す。誠の優しい触れ方を感じながらも、ふと陽一のことを思い出してしまったみち。涙を流すみちをみた誠は、あわてて行為を止めるのであった。

みちと誠の別れ篇

陽一はみちの様子が変なことに気付く。しかしみちの浮気を疑っているわけではなく、どちらかというと自身の不貞行為がみちにバレてしまったのだはないかと考えていた。みちを失うことを恐れた陽一は、みちと向き合うことを決意する。友人達夫婦と訪れたバーベキューの際に、みちと2人で話す陽一。「努力するからさ」と、初めてセックスレスに関しても前向きな気持ちを伝える陽一に、みちは心があったまるのを感じる。
一方で、誠が最近冷たいことに気付き、仕事ばかりで彼のことを蔑ろにしていたと反省する楓。できる限り家事をしたりと、誠のためにと努力するようになる。しかしすでにみちに気持ちがある誠は、今更な楓の行為に苛立ちを感じるのであった。
陽一が自身に向き合ってくれていると感じたみちは、誠との関係を継続することに罪悪感が募っていく。誠か陽一かで揺れている自分が許せなかったみちは、誠を呼び出し別れを告げることを決意する。みちの決意を見た誠は、「戻りましょう ただの同僚に」と受け入れるのであった。決して互いの想いがなくなったわけではない別れ。2人はそれぞれ別の道に進みながら、涙を流すのであった。
誠と別れたみちは、陽一と向き合おうと決意する。みちを失いたくない陽一も、みちとの夜の関係について前向きに考える。ようやく向き合えた2人。これまでのように穏やかな時間を徐々に取り戻すが、1つだけ解決できない問題があった。
何度か自然な流れでベッドインしたみちと陽一。それまで良い雰囲気だったにも関わらず、いざとなると陽一は勃たないことに気付いてしまう。それが何度か続き、みちは気にすることはないと宥めるが、できない自分にプレッシャーを感じてしまう陽一。「したくても出来ない したくなくてもしなきゃいけないオレの気持ち一度でも考えたことある?」と陽一がみちに告げる。陽一の本音を聞いたみちは、ここまで陽一のことを追い詰めていたのかとハッとするのであった。
一方で誠も、少しずつ楓と向き合うことを決意する。楓も仕事をセーブしたりと、誠との時間を作ろうとするが、誠はどうしても楓との夜の行為ができないでいた。誠にとって、別れてもみちは忘れられない存在になっていたのだ。
そんな誠の様子を見た楓は、誠が浮気していることに気づく。楓が浮気について尋ねると、「一方的に俺が彼女に精神的な支えを求めてしまったんだ」と正直に打ち明ける誠。身体の関係はなく、心で想い合っていた事実に楓はショックを隠せないのであった。

離婚篇

陽一の苦しみに気付いたみちは、まずは自分自身が変わろうと決意する。その1つとして、会社の昇格試験を受けることにした。試験については陽一も応援してくれていて、みちのためにと家事を率先してするようになる。
試験勉強に励む間は、みちはセックスレスについて考えることもなくなっていた。みちの頑張りもあり、無事に昇格試験は合格。陽一からお祝いを提案されるも、みちは1人焼肉を楽しむのであった。
そんなみちの様子に、みちが自分から少しずつ離れていると感じる陽一。セックスレスでも、みちと離れることは考えられない陽一は、なんとしてでもみちを繋ぎ止めたいと考える。そこで陽一が考えたのが、マンションを購入することであった。しかし無意識のうちに2LDKのマンションを選んでいた陽一。みちは陽一の提案を聞くと、子供のことは考えていないのかと思う。そんなみちの疑問に対して、「子供は…欲しくない」と正直に打ち明ける陽一。みちは、これまで自分が悩んでいたことが何だったのかと、陽一に裏切られたような気持ちになるのであった。
子どもの話がきっかけで、完全に陽一への愛がなくなったことに気付いたみちは、ついに離婚することを決意する。離婚届を陽一に渡すも、受け入れられない様子の陽一。しかし納得するまでいつまでも待つ決意をしたみちは、そのまま家を出てしまうのであった。
みちが出て行った後、これまでどれほど自分がみちに助けられていたか実感する陽一。同時にしっかりとみちと向き合えていなかった自分に後悔する。みちと離婚したくないものの、このまま縛り付けておくべきではないと思い直し、陽一は離婚届にサインするのであった。
一方で、誠の浮気を受け入れられない楓だったが、誠のことを愛している楓は、誠と離れることを決意できない。ある時、誠の会社に忘れ物を渡しに行った際にみちと偶然出会った楓は、みちの様子から誠の浮気相手であることを察する。
浮気についてみちに問い詰める楓。みちは謝罪するも、セックスレスの辛さを楓に伝えるのであった。みちの話を聞いた楓は、これまで誠の気持ちに寄り添えてなかった自分に気付く。誠に対して、これまでのことを謝罪する楓。そんな楓の様子を見た誠は、楓との生活を大切にしようと決意する。
しかし、その後も夜の営みができない誠。楓に対して向き合うと決意しても、愛情はどうしても戻らなかったのだ。誠の気持ちが離れてしまっていることに気付く楓。
そんなタイミングで、楓が編集長に昇進することになる。ますます仕事が忙しくなり、夫婦の時間がなくなる誠たち。仕事が大切な楓と、夫婦の時間を大切にしたかった誠のすれ違いが改めて浮き彫りになった瞬間であった。「どちらかが大切なものを諦めてまで夫婦でいるのは違うよね」と話す誠に、「離婚しよう」と楓が伝える。こうして誠と楓も別々の道を歩むことになる。

『あなたがしてくれなくても』の登場人物・キャラクター

主要人物

吉野 みち(よしの みち/演:奈緒)

本作の主人公で、東京在住の32歳のOL。陽一とは、結婚して5年目になる。夫婦仲は悪くないが、2年間セックスレスの状態。みちは子供が欲しいことから陽一との夜の関係を望んでいるが、乗り気でない陽一の様子に悩んでいる。
ある日、誠も自身同様に楓とのセックスレスに悩んでいることを知り、次第に親近感を抱くようになる。2人は一度は恋人関係になるも、結局は不倫行為に罪悪感を感じたみちから別れを切り出す。
陽一が子供を望んでいないことを知ったみちは、最終的には陽一とも離婚し、1人で生きていくことを決意する。

新名 誠(にいな まこと/演:岩田剛典)

みちの会社の先輩で、年齢は36歳。楓とは、結婚して7年目になる。キャリアウーマンである楓は毎日深夜帰りのため、家のことは誠が全てこなすなど、楓を普段から献身的にサポートしている。楓から仕事の多忙さを理由に性交を拒絶されていることに不満を抱く。
会社の後輩であるみちが、同じく夫とのセックスレスに悩んでいると知ったことをきっかけに、徐々に彼女のことが気になり始める。

吉野 陽一(よしの よういち/演:永山瑛太)

みちとは別の会社に勤める、35歳のサラリーマン。基本的に物事に無頓着な性格。みちのことは家族として大切に思っているが、女性としては見れず、彼女との性行為に対しては消極的。みちから求められるプレッシャーもあり、求めに応じられないことに悩んでいる。
陽一は子供はいらないと思っているが、みちにはなかなか打ち明けられないでいる。

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