マルモイ ことばあつめ(韓国映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『マルモイ ことばあつめ』とは、2020年に日本で公開された韓国映画である。監督・脚本はオム・ユナで、第二次世界大戦中の朝鮮で実際に起きた「朝鮮語学会事件」をもとに制作された。日本統治下の朝鮮半島にある京城で貧しい暮らしをしていたキム・パンスは、ひょんなことから朝鮮語の辞書を編纂する朝鮮語学会の代表、リュ・ジョンファンと出会う。反目し合う2人だったが、さまざまな朝鮮語を集めるにつれ同志として固い絆で結ばれていく。この作品は、民族の誇りを胸に賢明に生きる人々を描いた物語となっている。

観客の涙を誘う脚本のリアリティさ

朝鮮総督府に連行されるガプイン

『マルモイ ことばあつめ』は、日本統治下の朝鮮で日本が朝鮮人を弾圧した「朝鮮語学会事件」をもとに作られている。前述してきたように、朝鮮人にとって「ウリマル」は民族の精神をあらわすものである。しかし第二次世界大戦中の日本は朝鮮人の反抗を抑えるため、朝鮮語学会を弾圧、約1年の間に学会員33人を逮捕している。その中には拷問を受けたり、獄中の寒さや飢えがたたって亡くなった者もいた。その結果、一時的に辞典の原稿も行方知れずになってしまい、辞典が完成するのは第二次世界大戦が終わってからだった。本作でも辞典の編纂に奔走していたチョ・ガプインが拷問によって殺されたり、パンスが命がけで守った原稿が一時行方知れずになったりと、史実とリンクする点がある。オム・ユナの巧みな描写もさることながら、こうした実在の事件を元にしたリアリティさが観客の涙を誘う要因となっているのだ。

『マルモイ ことばあつめ』の主題歌・挿入歌

挿入歌:ユン・クギョン作詞作曲「반달(半月)」

『マルモイ ことばあつめ』の挿入歌となっている「半月」は、ユン・クギョンが1924年に作詞作曲した朝鮮最初の童謡だと言われている。本作では2度この曲が登場し、1度目はパンスが朝鮮語学会に協力することを改めて決意するシーン。2度目は公聴会の後「二度と刑務所には行かない。約束する」と言ったまま帰らないパンスを思ってドクジンが歌うシーンである。「半月」が書かれたのは朝鮮が日本の統治下に入って14年後のことで、歌詞には朝鮮の暗喩である「白い丸木船」が「帆もなければ 竿もないのに 進んでいくよ」という部分がある。また、『マルモイ ことばあつめ』で「半月」が登場するのは、どちらも歌う人物が朝鮮や自分たちの進むべき道が見えない不安を抱いているシーンでもある。日本の統治下という先行きが読めない状況の中で、パンスたちは自分たちがどこに向かうのか、どこに向かうべきなのかを模索していた。そんな様子を「半月」が表現してくれているのだ。

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