マルモイ ことばあつめ(韓国映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『マルモイ ことばあつめ』とは、2020年に日本で公開された韓国映画である。監督・脚本はオム・ユナで、第二次世界大戦中の朝鮮で実際に起きた「朝鮮語学会事件」をもとに制作された。日本統治下の朝鮮半島にある京城で貧しい暮らしをしていたキム・パンスは、ひょんなことから朝鮮語の辞書を編纂する朝鮮語学会の代表、リュ・ジョンファンと出会う。反目し合う2人だったが、さまざまな朝鮮語を集めるにつれ同志として固い絆で結ばれていく。この作品は、民族の誇りを胸に賢明に生きる人々を描いた物語となっている。

朝鮮の独立運動家。作品冒頭で、朝鮮総督府に追われながらもジョンファンに朝鮮語の資料を届ける。

『マルモイ ことばあつめ』の用語

日本統治時代

日本統治時代に朝鮮半島で発行されていた新聞

日本統治時代とは、明治以降からポツダム宣言受諾まで日本が外交や戦争によって獲得してきた国や土地、地域を統治してきた時代のことをいう。当時、日本の47都道府県を「内地」というのに対しそれ以外の諸地域は「外地」と呼んでいた。朝鮮半島においては、1910年(明治43年)から1945年(昭和20年)までが日本統治時代となる。本作では、日本統治時代の韓国や日本語教育の様子が描かれている。

朝鮮語学会

辞書の編纂作業を進める朝鮮語学会のメンバー

朝鮮語学会とは、1921年に朝鮮語を研究することと民族運動を推進することを目的として設立された機関である。1949年には「ハングル学会」と名称を変更している。日本語教育が推進されていた日本統治下の朝鮮で、1942年に「朝鮮語学会事件」という弾圧事件が起こった。この事件は日本が朝鮮人の反抗を懸念し学会員を検挙・投獄したもので、本作のストーリーのモデルとなった事件である。本作同様史実でも朝鮮語辞典の原稿の行方が一時わからなくなっていた。しかし1945年にソウル駅朝鮮通運倉庫で発見され、その原稿をもとにした辞典が1947年に発刊されている。

ウリマル/ウリナラ

「ウリスンヒ」を抱き寄せるパンス(中央)

「ウリマル」とは、朝鮮人が朝鮮語そのもののことを指す言葉である。日本語に直訳すると「ウリ」は「私たちの」、「マル」は「言葉」となる。同様に「ウリナラ」は、「ナラ=国」なので日本語に直訳すると「私たちの国」となるが、韓国人は韓国そのものを指すときに使う。朝鮮人、とりわけ韓国人は共同体意識が強い民族なので、自分にとって身近な存在であるものを指す場合に使用する「ウリ」を多用する。本作の中でも、パンスがスンヒのことをただの「スンヒ」ではなく「ウリスンヒ」とほとんどの場合で呼んでいることから、朝鮮人が自分の大切な存在に「ウリ」をつける傾向にあることがわかる。

京城(府)

日本統治下の京城の様子

京城(府)とは、のちのソウル特別市にあたる行政区域のことである。日本統治前は漢城(府)と呼ばれていた。1910年に韓国が日本統治下におかれてから1946年まで、朝鮮総督府官制に基づいて京城と改称された。本作ではパンスやジョンファンが暮らす場所であり、彼らと敵対することになる朝鮮総督府が置かれている場所でもある。

朝鮮総督府

朝鮮総督府の内部の様子

朝鮮総督府とは、1910年から日本統治時代の朝鮮をまとめるために設置された機関のことである。同年に朝鮮総督府官制が制定され、日本語教育や皇民化教育がすすめられた。また、朝鮮総督府は朝鮮の軍事権・立法権・司法権・行政権など多岐にわたる物事に権限を有していた。さらに旧大韓帝国の政府職員をそのまま採用していたので、日本人だけでなく多くの朝鮮人職員で構成された機関でもある。本作では、ジョンファンらを取り締まろうとする、朝鮮総督府に所属する上田とのやり取りが描かれる。

創氏改名

創氏改名の手続きに使用する用紙

創氏改名とは、日本統治時代の朝鮮半島において朝鮮総督府が朝鮮人に対し、新たに日本風の「氏」を創り「名」を改めることを許可したものである。史実上は法的に強制されたものではなかったが、当時の朝鮮半島内では「事実上」の強制があったとみられている。本作では、創氏改名とともに朝鮮総督府に従うようジョンファンが強要される場面がある。

国民総力朝鮮連盟

国民総力朝鮮連盟とは、日本統治時代の朝鮮半島で新体制運動を進める組織として1940年に結成された団体である。本部は朝鮮総督府に置かれ、総裁は朝鮮総督府のトップが兼任していた。本作の中では、国民総力朝鮮連盟の理事である上田やワンテクらが集まる会合が開かれている。

京城第一中学校

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