恋のようなものじゃなく(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『恋のようなものじゃなく』とは、少女漫画雑誌『別冊マーガレット』で南塔子により連載された恋愛漫画である。「恋」が分からなくなっていた小山内 未仁(おさない みに)は、幼馴染の楠瀬 千耀(くすのせ ちあき)と再会する。千耀への想いが「恋のようなもの」じゃなく「恋」ならいいと願いながら、未仁は初めての感情に戸惑いながら「恋」と向き合っていく。しかし、千耀には遠距離恋愛をしている彼女がいた。お互いの事を想いながらもすれ違い、「恋」をする幸せを知っていく恋愛物語である。
『恋のようなものじゃなく』の概要
『恋のようなものじゃなく』とは、少女漫画雑誌『別冊マーガレット』で南塔子により2020年12月号から2023年7月号まで連載された恋愛漫画である。コミックス全8巻。
付き合っていた彼氏と別れて傷心中の小山内 未仁(おさない みに)は、学校見学を兼ねて行った高校の文化祭で、絡まれていた所を見知らぬ男の子に助けてもらう。春になり、高校に入学した未仁は助けてくれた男の子・楠瀬 千耀(くすのせ ちあき)と再会する。お互いに初めましてだと思っていた2人だが、実は小さい頃既に出会っていた。「恋」が分からなくなっていた未仁は、初めて自覚した「恋」に悩み、傷付きながらも自分なりに向き合っていく。
『恋のようなものじゃなく』のあらすじ・ストーリー
幼馴染との再会
中学3年生の秋、小山内 未仁(おさない みに)は幼稚園の頃に通っていた音楽教室で仲の良かった「ちぃちゃん」の夢を見て目が覚める。妹のように思っていたちぃちゃんに、手を叩かれ「ミニーちゃんなんて大っきらい!!」と言われた後、ちぃちゃんが引っ越してしまい喧嘩別れになってしまった。何故昔の夢を見たのか考えた未仁は、昨日の事を思い出す。付き合っていた彼氏にキスされそうになり、思わず突き飛ばしてしまったが、手を叩かれ「小山内なんて嫌いだ」とフラれてしまったのだ。「恋」だと思っていた気持ちは実は違い、相手を傷付けてしまった事を未仁は悔いていた。
未仁は友達である双子の兄妹・堀 七音(ほり ななと)と七緒(ななお)と一緒に、学校見学を兼ねて高校の文化祭に来ていた。七音と七緒がトイレに行っている間、未仁は揉めている男女を見かけて仲裁に入る。話を聞くと、彼女が浮気をしていた現場を押さえた所だったようで、既に逃げてしまった彼女にイライラしている男は未仁を連れ出そうとする。どこへ行くのかと慌てる未仁だったが、見知らぬ男の子が助けてくれて難を逃れた。未仁が手を怪我している事に気付いた男の子は、「Iris(アイリス)」と書かれているハンドタオルで手当てをして友達の元へ戻っていった。
春になり、未仁は高校生になった。廊下を歩いていると、偶然助けてくれた男の子と再会し、借りていたハンドタオルを返す事が出来てひと安心する。放課後、学校帰りに通りかかった「Iris」という美容室に入る。美容師に「これからデート?」と聞かれた未仁は否定し、「私には全然恋をする資格なんてないですから」と俯きながら言う。シャンプー台に移動すると、助けてくれた男の子がいて驚く未仁。その美容室は男の子の家で、予約が重なりがちの時はたまにバイトで駆り出されているという話だった。男の子にシャンプーをしてもらい、綺麗になった髪に満足して店を出る。見送りをしてくれた男の子に、「恋する資格がないって言ってたみたいだけど……なんで?」と聞かれ、未仁は中学3年生の時に付き合っていた彼氏との出来事を話す。相手を傷付けてしまった事を後悔している未仁は、それからずっと自分は恋をする資格がないと思っている。俯く未仁に「そんなことない」「自分を許してあげて」と男の子は優しい言葉に続けて、「さしあたってきみは、恋する資格は全然有り。俺が許す」と微笑んだ。未仁は自分の名前を名乗り、男の子の名前が楠瀬 千耀(くすのせ ちあき)だと知る。その日から千耀の事が気になり始めた未仁は、これは「恋のようなもの」なのか「恋」なのか探りながら千耀と接するようになった。
千耀は小さい頃、姉の瑠奈(るな)のお下がりの服で着せ替えされていた。音楽教室に行っている時も瑠奈の服を着せられ、小柄だった事もあり男の子によく意地悪をされていた。同じ音楽教室に通っていた「ミニーちゃん」が大好きで、かっこ悪いままは嫌だと男の子に立ち向かっていくが返り討ちにされてしまう。助けてくれたミニーちゃんは、男の子はちぃちゃんの事が好きだから意地悪をするのだと無邪気に笑う。女の子だと思われていた事を知りショックを受けた千耀は、ミニーちゃんの手を叩いて「ミニーちゃんなんて大っきらい!!」と怒ってしまった。千耀は未仁が「ミニーちゃん」なのではないかと思っているが、決定打がない為確認出来なかった。
髪を切ってから1ヶ月が経ち、未仁は美容室へ行く事にする。店では千耀の小さい頃の写真を店内に飾っている事を知り、千耀と母親の結衣(ゆい)が揉めて写真の取り合いをしていた。落ちた写真は来店した未仁に拾われ、写っている子供を見て「ちぃちゃん…」と呟く。それをみた千耀も「やっぱり……ミニーちゃん……」と思わず言ってしまった。写真をきっかけにお互いが「ちぃちゃん」「ミニーちゃん」だと分かり、ちぃちゃんは女の子だと思っていた未仁は驚いたが、「大好きだったちぃちゃんとまた逢えて嬉しい」と喜ぶ。千耀も「幼馴染のミニーちゃんと再会できて嬉しい」と言い、2人は顔を合わせて笑い合った。
自覚する恋心
未仁は1泊2日の校外教室に来ていて、夜の自由時間に七音と七緒と一緒に展望台を訪れた。戻ろうとしたところで、千耀の姿を見つけて声をかける未仁。展望台を目指していたはずが逆方向に行っていたようで、未仁は千耀を連れて展望台へ向かう。千耀は何でも器用にこなせる人だと思っていたが、小さかったちぃちゃんが頑張った結果なのだろうと考えると、千耀を前より身近に感じられた。2人で楽しく過ごしていると、雷が鳴ったかと思えば突然大雨が降ってきて、走ってホテルの入り口まで行った。濡れた姿の千耀を見た途端、未仁の胸から何かが溢れそうになり、言葉に出してしまいそうになった。そこで千耀の電話が鳴り、「彼女からだ」と呟く千耀に未仁は茫然とした。千耀は中学2年生の終わりに転校してきて、彼女は前の中学の同級生だという。千耀に彼女がいる事を知った未仁は、「恋」をしていたわけではなく、「恋」をしたいから相手に千耀を当てはめていただけだと考え、気持ちを手放す事にした。そう決意した矢先、未仁は結衣に誘われて美容室でアルバイトをする事になってしまった。
未仁と同じクラスの伊鶴(いづる)は、消しゴムを拾ってもらって以来、未仁に想いを寄せていた。未仁と千耀が仲良くしている所を見かける度に、伊鶴は嫉妬の感情を抱いていた。未仁と千耀が少しずつ距離を縮めていく中、学校の出入口で千耀と伊鶴が遭遇する。未仁が千耀を意識している事に気付いている伊鶴は、「彼女いるくせに思わせぶりなことしてんじゃねーよ」と言い捨てていく。苛立ちを隠せない千耀だったが、通りかかった女子達が未仁と千耀の話をしていて、「特別扱いされたら好きになっちゃう」「小山内さんも案外しんどいかも」という台詞を聞く。唯一の大事な幼馴染に幸せになって欲しいという気持ちから、千耀は未仁と距離を置くようになった。
終業式の日、学校帰りにクラスの友達と夏祭りに行った未仁。その中には伊鶴もいて、2人きりになった時に告白される。「まだ返事はしないで!まず俺の気持ちを知ってほしくて言っただけだから!」と言われてしまい、そのまま夏休みに突入。悩んでいる中、アルバイト中に「千耀が前に住んでいた所へ旅行に行っている」と聞く。別のアルバイトを始めたのは旅費を稼ぎ、彼女に会いに行く為だった事を知りショックを受けた。その帰りに駅で伊鶴と偶然会い、泣きそうになっている未仁を心配して質問攻めされる。そこへ旅行から帰ってきた千耀が現れて、未仁は千耀に「恋」をしている事を自覚した。
後日、未仁は伊鶴を待ち伏せて「伊鶴くんの気持ちには答えられない」と告白の返事をした。「千耀くんに彼女がいる事は承知の上でただ好きでいたい」と伝えると、「俺も小山内の事が好きなだけだよ」と切なそうな表情で言われて何も言えなくなってしまう。「恋」が思い通りにならないのは伊鶴も同じなんだと苦しくなるが、それでも「気付いたばかりの自分の気持ちを大切にしたい」と思う未仁だった。
気持ちを忘れる決意
夏休みに一緒にプールや買い物へ行き、距離がぐっと縮まった未仁と千耀。2人の間に流れる空気が変わる中、新学期が始まり文化祭の季節がやってきた。
文化祭初日、未仁は校内で迷っていた遠藤 飛鳥(えんどう あすか)に声を掛け、案内する事になる。途中で千耀と遭遇し、飛鳥が千耀の彼女だと知る。未仁の様子から千耀への好意を感じ取った飛鳥は、先程までの態度と一変して遠回しに未仁を牽制する。未仁は自分は良くない事をしているのではないかと現実を突きつけられ、「友達の当番が終わるから」と言ってその場から逃げ出した。何も考えないように当番をしていた未仁だったが、キスをしている千耀と飛鳥を見つけてしまう。ショックを受けてすぐに走り去り、「千耀に彼女がいる事を分かっているつもりで全然分かっていなかった」と大粒の涙を流した。一方千耀は、自分の気持ちが分からなくなっていたが、はっきり分かった今「飛鳥の事を彼女として特別に見られない」と伝える。千耀の気持ちに気付いていた飛鳥は、「未仁ちゃんに見せてた恋してるみたいな顔、私にはしてくれた事なかった」と涙を溢し、2人の関係は終わりを告げた。
千耀への恋心を封印する事を選んだ未仁は、もう千耀と関わらないと決めて美容室のアルバイトも辞めた。千耀は未仁の態度から飛鳥と何かあったのかもしれないと勘付いたが、だとしたら自分のせいで未仁を苦しめていると思うと今までのように接する事は出来なかった。2人の距離が開いたまま2年生に進級し、未仁は七音と七緒、そして千耀と同じクラスになる。
2年生から同じクラスになったチャラ男子・鹿乃 流絃(かの るいと)が、文化祭の時に泣いている未仁とぶつかり、「何故あんなに泣いていたのかずっと気になっていた」と未仁に接触してくる。千耀への想いを忘れたいと願う未仁に対し、「独りでいるから忘れられないんだ」と言い、千耀の事を忘れるまでの期間限定で流絃の彼女になる事を強引に決められてしまう。最初は嫌がっていた未仁だったが、いつも明るくて時々抜けている流絃と一緒にいるうちに、徐々に以前のような元気を取り戻していく。
放課後、未仁が帰ろうとしたら雨が降っていた。困っている所へ千耀が傘を貸してくれて、一緒に帰る事になってしまった。無心でいようとする未仁だが、千耀が走ってきた車から未仁を庇うように端に寄り、近くなる距離に意識してしまう。顔を真っ赤にしている未仁を千耀は抱き締め、「好きなんだ、未仁ちゃんのことが」と告白する。未仁は彼氏がいるからと断るが、「未仁ちゃんが誰と付き合ってても、付き合ってなくても、俺の気持ちは変わらないから」と素直な気持ちを伝える千耀。未仁は何も答えず、逃げるように走り去っていった。
繋がる想い
暫く千耀を避けていた未仁だったが、友達として普通に話せるように努力してみようと思い直す。日曜日、未仁・千耀・七緒・流絃の4人で買い物に行く事になった。七緒の買い物と、知り合いと偶然会った流絃の話が終わるまで、未仁と千耀は2人で買い物を楽しむ。話を終えた流絃は、楽しそうな2人を見て未仁を連れ出し、「告白をちゃんと断ったの?」と聞く。未仁は「断った」と答えるが、「大っ嫌い!今後一切近寄るな!くらい言うべきじゃない?」と流絃に言われて焦る。きっぱり断るのが千耀に対する優しさだと言われ、流絃に背中を押されて千耀の前に来たものの言う事は出来なかった。どうして言えなかったのかと考えた時、嘘でも大嫌いだと言ってしまえば千耀は離れてしまう。未仁は「千耀への気持ちを忘れたくない」という、自分の正直な気持ちに気が付いた。
未仁と千耀の仲が戻り喜ぶ七緒は、未仁の後押しをしようとナイトプールのチケットを譲り、千耀と2人で行く事を勧める。始めは躊躇していた未仁だったが、長い間忘れたくても忘れられなかった千耀への想いを伝えようと決心する。放課後、千耀に告白する決意を流絃に話すと応援してくれた。「自分の気持ちと向き合えたのは流絃のおかげ」だと感謝して、立ち止まっていた一歩を踏み出そうと前向きになった未仁だった。
未仁は勇気を出して千耀をナイトプールに誘い、2人でナイトプールを満喫する。閉園時間が迫る中、未仁は流絃と付き合っているフリをしていた事、千耀が飛鳥と別れたのは自分のせいだと自己嫌悪になって離れたかった事を話す。「それでも千耀と離れたくない、忘れたくないという自分の気持ちに気付いた」と言い、「私は千耀くんが好き」と告白する。千耀は未仁を抱き締め、「俺だって、ずっと未仁ちゃんの事が好きだよ」と気持ちを伝え、晴れて2人は両想いになった。付き合い始めた未仁と千耀は、焦れったい時間が長かった分一気に距離を縮めていく。
冬休みが過ぎて3学期を迎え、未仁の家でおうちデートをする事になった未仁と千耀は身も心も結ばれる。形になったこの恋は、いつか愛に形を変えていくのだろうかと思いながら、この先もずっと隣を歩いていきたいと願う未仁。翌朝、千耀が思い出したように「そう言えば、俺の初恋ってミニーちゃんだったんだよね」と言って笑った。
『恋のようなものじゃなく』の登場人物・キャラクター
メインキャラクター
小山内 未仁(おさない みに)
本作の主人公。
困っている人を見かけると放っておけない性格。一度決めると変えない頑固な所もある。許容範囲が広く、あまり怒らない。身長145cmで小柄だが、意外にタフ。服が好きで、よく七緒と買い物に行く。
小さい頃は千耀に「ミニーちゃん」と呼ばれていた。
中学3年生の時に付き合っていた彼氏にフラれてから「恋」が分からなくなり、恋愛を自粛していた。千耀と再会した事で「恋」を知り、様々な感情を抱きながら一途に千耀を想い続ける。
楠瀬 千耀(くすのせ ちあき)
誰に対しても優しい性格。イケメンなため女子から人気がある。母親は美容室を営んでいて、千耀もシャンプーが得意。趣味はシルバーの小物作り。中学の時はサッカー部に所属していた。
未仁とは幼稚園の時に同じ音楽教室に通っていて、「ちぃちゃん」と呼ばれていた。姉のお下がりを着せられていた千耀を、未仁は女の子だと勘違いしていた。親の転勤で引っ越してしまうが、中学2年生の終わり頃に戻ってきて、中学3年生の時に行った高校の文化祭で未仁と再会する。
メインキャラクターの友達
堀 七緒(ほり ななお)
未仁の中学からの親友。未仁は「ななちゃん」と呼んでいる。
熱くなりやすい性格。特に未仁の事になるとすぐ熱くなるが、未仁の頑固さに負ける事もある。未仁と千耀の仲を全面的に応援している。お化け屋敷が苦手。
男子にモテるため、中学の時から彼氏がすぐ変わる事はよくあった。1年付き合っていた彼氏に浮気されて別れた後、年上や他校の男子に告白されては付き合っていたが、みんな1~2ヶ月で別れている。牛尾に告白されるが、「牛尾とは友達でいたい」とフってしまう。
堀 七音(ほり ななと)
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目次 - Contents
- 『恋のようなものじゃなく』の概要
- 『恋のようなものじゃなく』のあらすじ・ストーリー
- 幼馴染との再会
- 自覚する恋心
- 気持ちを忘れる決意
- 繋がる想い
- 『恋のようなものじゃなく』の登場人物・キャラクター
- メインキャラクター
- 小山内 未仁(おさない みに)
- 楠瀬 千耀(くすのせ ちあき)
- メインキャラクターの友達
- 堀 七緒(ほり ななお)
- 堀 七音(ほり ななと)
- 熊谷(くまがい)
- 卯月(うづき)
- 牛尾(うしお)
- 相馬(そうま)
- メインキャラクターの同級生
- 伊鶴(いづる)
- 遠藤 飛鳥(えんどう あすか)
- 鹿乃 流絃(かの るいと)
- メインキャラクターの家族
- 楠瀬 結衣(くすのせ ゆい)
- 楠瀬 瑠奈(くすのせ るな)
- 『恋のようなものじゃなく』の用語
- 音楽教室
- Iris(アイリス)
- 堀兄妹
- 兎のキーホルダー
- 『恋のようなものじゃなく』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 千耀が未仁に優しい言葉をかけるシーン
- 「ちぃちゃん」の正体が千耀だと知る未仁
- 未仁が千耀への恋心を自覚するシーン
- 未仁と千耀がお互いに意識し始める
- 楠瀬 千耀「好きなんだ、未仁ちゃんのことが」
- 千耀への気持ちを忘れたくないことに気付いた未仁
- 小山内 未仁・楠瀬 千耀「恋だよ」
- 楠瀬 千耀「俺の彼女になってください」
- 『恋のようなものじゃなく』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作者が拘った黒髪男子
- 作者が意識して前作と差別化するヒロイン