幼稚園WARS(ウォーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『幼稚園WARS』(ようちえんウォーズ)とは、集英社のWeb漫画配信サービス『少年ジャンプ+』の漫画作品。作者は日本の漫画家・千葉侑生。『ジャンプルーキー!』で公開され、「2022年4月 ジャンプ+連載争奪ランキング」で1位を獲得。2022年秋から『少年ジャンプ+』でインディーズ連載を開始し、その後、通常連載に移行している。
世界の金持ちの子供が通うブラック幼稚園。そこで働く特殊教諭達はほとんどが元犯罪者。彼らは1年間子供達を守り切るという極秘任務を全うすれば、晴れて自由の身になれるのだった。

新世界秩序(ニューワールドオーダー)

レオやアシュリーが所属する謎の組織。「グレートリセット」という謎のプロジェクトを進めている。

八咫烏(やたがらす)

多くの殺し屋が所属する組織。国を裏で支えて、汚れ仕事をこなしてきた組織である。東京にいる殺し屋のほとんどが所属しており、浅草の金魚屋・猪本ナツキも所属していた。東京の各地にこの組織の殺し屋が配置されている。

『幼稚園WARS』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

イケメンに対するリタの執着と容赦なさ

リタは無類のイケメン好きで、ブラック幼稚園での極秘任務が終わったらイケメンの恋人を作ることを夢見ている。ブラック幼稚園にやってきた殺し屋でもイケメンであれば、心を許しそうになるほどだ。しかし、たとえイケメンであろうとも、自身の理想にそぐわなければ容赦ない。一瞬の躊躇なく、イケメン達を撃ち殺す様は、リタのイカレ具合をよく表している。

唐突に始まる恋

ブラック幼稚園のたんぽぽ組の特殊教諭リタ、ダグ、ハナの3人は、同じ組を担当する同僚である。その3人の間で繰り広げられる恋模様は『幼稚園WARS』最大の魅力だ。ダグは最初リタのことを好きでもなんでもなかったのに、ピンチを救われて唐突に恋に落ちる。今まで金持ちの女性を相手に詐欺を働いてきたダグは女の扱いに長けているはずなのに、リタのことを好きになった途端ポンコツになってしまった。ハナも初対面ではダグのことをなんとも思っていなかったのに、ダグに助けられて恋に落ちる。ハナは、過酷な環境で育ってきたため、恋というものを知らず、自分がダグのことを好きなんだと自覚をしていない。この3人の恋模様だけでも十分楽しめるが、ここに少女漫画オタクのきく組の特殊教諭ルーク・スミスが絡むとさらに面白くなる。

ルークは、『ごはんよりだんご』という少女漫画を愛読している。そして「片思いの時期が恋で最も楽しいときである」という持論を持つ。目の前で繰り広げられる少女漫画的な展開に、ルークは常に脳内で「イイネ」をしており、その気持ちが完全に読者とシンクロしている。

リタとナターシャの悲痛な思い

ライラを狙ってブラック幼稚園にやってきたナターシャは、幼い頃から殺しを生業としてきた。自分が強すぎるためにターゲットはすぐに死んでしまう。それをナターシャは「すぐに壊れるおもちゃ」だと言っていた。殺しが成功すれば大人が褒めてくれる。しかしどこかでずっと孤独や虚しさを感じていたナターシャ。そんなナターシャが冷徹に殺しを遂行するリタの姿を見て、「壊れないおもちゃ」を見つけたと喜んだ。ナターシャはリタに会って、リタを殺すことだけを生きてきた。しかしリタと戦う中で、リタに恐怖を感じ始め、自分が求めていたものはもっと違うものだったのではないかと気づき始める。ナターシャが欲しかったのが「壊れないおもちゃ」ではなく、「友達」だったのだ。ナターシャはリタにずっと心の中で押し殺していた言葉を吐き出す。「殺して 殺して 殺して!!!殺し続けて…その先に何があるの?」ナターシャの悲痛な叫びに、リタは「愛されたいだけ」とただそう答えた。幼い頃から殺しを生業にしてきたという共通点を持つ二人の悲痛な思いのぶつかりに、読者は涙した。

シルビア「覚えておきなさい チームワークで大切なのは…そう…冷静さよ」

年中・きく組担当の元運び屋シルビアは、ブラック幼稚園に配属されたその日に同僚のルークに一目惚れした。以来、ルークのことを邪な目でいつも見ており、お遊戯や戦闘中のルークの顔、首筋、お尻など、身体のあらゆる部分を見て堪能している。その観察眼はたしかなもので、戦闘中ルークと息の合ったコンビネーションを見せる。ルークは戦闘においてコンビネーションを重視しており、その点ではシルビアとの戦闘に満足している様子。しかし自分が邪な目で見られていることには一切気がついていない。

浅草へ向かう最中、シルビアとルークは、差し向けられた殺し屋を相手にいつも通り最高のコンビネーションを見せた。戦闘中のシルビアは相変わらずルークの全身を舐め回すように見てルークを堪能している。しかし、戦闘が終わった後、シルビアは後輩である年少・たんぽぽ組担当のリタ、ダグ、ハナに対して、「覚えておきなさい チームワークで大切なのは…そう…冷静さよ」と清々しいどや顔をキメるのだった。

ナツキの再登場シーン

保護者を招いたお遊戯会で、ブラック幼稚園はお掃除ロボット型の武器を使う5人姉妹のメイド殺し屋の襲撃を受ける。リタ達は保護者に悟られないように5人姉妹を園の地下に連れ込み本格的な戦いを始めた。ハナは5人姉妹の次女ステイシー、三女キャシーと共に戦う。2対1でもハナのほうが優勢だった。しかしほんの少しの油断から形成は逆転。ハナは一気にピンチに陥る。そこに現れたのが、浅草の金魚屋・猪本ナツキだった。

ナツキは浅草でリタ達と戦った後、殺し屋から足を洗い、普通に生きようとした。しかし雇い主の新世界秩序(ニューワールドオーダー)のレオに撃たれて、弟のハルオともども殺された。ハズだった。それを助けたのはブラック幼稚園の園長エリナ=ウィンクラーだった。エリナは一命を取り留めたものの眠り続けているハルオを人質に、ナツキに自分の犬として園で働くように強要した。ナツキはハルオと共に生き続けるために、再び殺しの世界に戻る覚悟を決める。用務員兼戦闘サポートとしてブラック幼稚園に入ったナツキは、再登場早々に華麗な殺しの技術を使い、一瞬で2人の殺し屋を始末するのだった。

明かされたルークの過去と思い

子供の純粋な優しさに触れて無意識に涙を流すルーク。

ルーク・スミスは警官時代の上司だったオリバーや他数名を殺した罪で犯罪者となった。しかし実際ははめられたのはルークのほうであり、オリバーはルークの恋人であるティナを人質にルークを仲間に引き入れようとした。ルークはその時ティナを失った。愛した人間を失ってただでさえ世界に絶望している中、自分の無罪を信じてくれた後輩警官のピーターが突然自殺する。真相は不明だが、ルークは自分のせいでピーターが死んだとなじられる。さらに獄中では囚人の過度な暴力が当たり前であり、看守達はそれを見てみぬフリをする。ルークの心は壊れ、大暴れ。手が付けられないほど暴れるので刑務所を転々としていた。そんな時にブラック幼稚園から声がかかる。訓練の最中、ルークはずっと死にたいと思っていた。しかしブラック幼稚園で子供達の優しさに触れて子供達を心から守りたいと思うようになる。そして殺し屋・丹羽アオバとの戦いの中で重症を負っていく内に、あんなにも死にたいと思っていたはずなのに、自分が今こんなにも生きたいと思っていることを痛感した。ルークの悲しい過去や切ない生への執着が描かれた名場面である。

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