まじめな会社員(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『まじめな会社員』とは、冬野梅子による漫画で、現代の東京に生きる30歳の女性が自身の生き方や仕事、恋愛について葛藤する物語。誰かの特別になりたいけどなれない、一生懸命やっていることがどうしても空回る、そういった「何者にもなれない私」をリアルかつ赤裸々に描く。コロナ禍で変わっていく生活や、現代に生きる女性の自意識など、現実を生きる人々に刺さる描写が人気を呼んだ。
2022年に文藝春秋の「第一回 CREA夜ふかしマンガ大賞」1位、「このマンガがすごい!2023 女編」3位を受賞。

『まじめな会社員』の概要

『まじめな会社員』とは、冬野梅子による漫画で、現代の東京に生きる30歳の女性が自身の生き方や仕事、恋愛について葛藤する物語。誰かの特別になりたいけどなれない、一生懸命やっていることがどうしても空回る、そういった「何者にもなれない私」をリアルかつ赤裸々に描く。コロナ禍で変わっていく生活や、現代に生きる女性の自意識など、現実を生きる人々に刺さる描写が人気を呼んだ。
2022年に文藝春秋の「第一回 CREA夜ふかしマンガ大賞」1位、「このマンガがすごい!2023 女編」3位を受賞。

『まじめな会社員』のあらすじ・ストーリー

菊池あみ子、30歳契約社員、彼氏いない歴5年

主人公の菊池あみ子は30歳の契約社員。収入は少ないが、アプリの問い合わせ対応をする部署で無難に仕事をこなしている。趣味は読書で、面白い本を紹介するWebコラムの連載を楽しみに日々を過ごしている。前の彼氏と別れてから5年恋人がいないことを気にしている。「大人は恋人がいるべき、結婚するべき」という風潮を下らないと思いつつ意識せずにはいられず、マッチングアプリで知り合った男性と合っては中身のない会話をする毎日だ。
あみ子と同じく恋人や結婚に縁がない山田想太郎(やまだ そうたろう)、嶋田ゆみ(しまだ ゆみ)、津村みさき(つむら みさき)と会って喋る時間が癒しだったが、あみ子は数年前に片思いをしていた想太郎に告白して振られたことがあり、それ以来明確に溝ができてしまっていた。
あるとき、あみ子は同じ職場で働く小山綾(こやま あや)と本やWebコラムの話題をきっかけに親しくなる。綾は個性的なファッションや美しい顔立ちで、地味なオフィスでも目を引く存在だった。綾の穏やかで知的な人柄に触れて彼女を好きになったあみ子は、新しい友人との出会いを喜ぶ。
あみ子は綾に勧められて、Webコラムの筆者が参加する読書会に出かけた。筆者は今村直之(いまむら なおゆき)という青年で、彼の本の読み解き方に共感したあみ子は今村に強い憧れを抱き、読書会の後に今村と連絡先を交換する。それから今村を食事に誘って楽しい時間を過ごし、あみ子は今村との恋の予感を感じていた。
ある晩、あみ子は綾に誘われて小規模な音楽イベントに参加する。精一杯オシャレをしてイベントに参加したあみ子は、会場で偶然今村を見掛ける。運命を感じて舞い上がるあみ子だったが、今村は会場にいた綾ととても近い距離で、親しげに話し始めた。今村は、あみ子がついぞ向けられたことのない、愛情のこもったまなざしをしていた。

コロナ禍とライター

あみ子は舞い上がっていた自分を恥じ、今村のことをすっぱり忘れることにする。しかし今村は、後日偶然出会ったあみ子と手を繋ごうとしてきて、あみ子は困惑する。綾との友情は続いていたが、あるとき会社を辞めることになった。アメリカでバンドをしている友人のところへ行くと言う。そしてあみ子は、綾が今村と別れたことを知る。自分にもチャンスがあるのではないかと思ったあみ子は今村に会いに行こうと決意するが、コロナ禍がはじまった。
綾はアメリカ行きを中止して、同じ会社で働いていた不破(ふわ)と付き合い始めた。あみ子は仕事の都合でリモートワークできず、感染を恐れながら電車通勤を続けていた。あみ子は人と会うことを避けていたが、綾は不破と同棲をはじめたし、想太郎たちは3人で出かけている。あみ子が誰かの「いつメン」ではないことを空しく思うのだった。さらに仕事でも無責任な上司や新人に振り回され、あみ子は疲弊する。東京に残った綾は双子の弟と組んでコスメブランドを立ち上げていた。報われない仕事、上手くいかない交友関係に疲れていたあみ子に、今村から連絡がきた。今村の知り合いのライターとその身内で小規模な座談会をするから参加しないか、という誘いだった。
喜んで参加したあみ子だったが、座談会は身内の飲み会という感じで、あみ子は浮き気味だった。あみ子は「よいゲストにならなければ」、とライターの仕事について色々と質問したり、買い出しを買って出る。するとあみ子が話しかけたライターは、あみ子のことを「ライターという響きに憧れておこぼれをもらおうとする迷惑なミーハー」と捉えた。さらに、今村があみ子と出会った時期に綾と別れていたことを邪推し、あみ子はあっという間にサークルクラッシャーになってしまう。そんなやり取りをあみ子は知らなかったが、買い出しに出た先でライターの男性に「変なことしないでほしいんだ」と釘を刺された。
飲み会は最悪の結果に終わったが、あみ子はメイという女性と知り合った。メイは今村の新しい彼女だったが、メイは今村に浮気癖があると怒っている。あみ子はメイとその友達のグループに参加し、その会話の中でクラウドソーシングというものを知った。あみ子は野良のライターとして仕事をはじめる。単価は安いが様々な仕事を受けることであみ子は収入を増やし、少しずつ生活に余裕が出てきた。

あみ子の人生

ライターの仕事を増やしたいと考えたあみ子は思い切って綾に連絡し、綾のコスメを紹介する記事を書くことができた。上手くいかないことも多いが少しずつ人生に余裕が出来てきたあみ子は、綾に誘われてデザイン事務所の忘年会に参加する。小規模なパーティで、想太郎やメイ、今村も参加していた。誰かに「話してみたい」と思われる柄ではないあみ子は相変わらず壁の花だったが、それなりに楽しんでいた。すると、たまたまあみ子が座っていた会場の外れでメイと今村の別れ話に遭遇してしまう。成り行きでふたりの別れを見届けてしまったあみ子が今村と話していると、とつぜん今村がキスをしようとする。困惑したあみ子がやんわり断るとその場は終わったが、あみ子は「キスしておけばよかった」と後悔した。今後そんなことは自分の身に起こらないとわかるからだ。
綾との仕事は順調で、あみ子は「ルッキズム」などをテーマに今を生きる女性に向けた記事を書くことになっていた。道で偶然、前職で同僚だった女性に出会って話をしたあみ子は、ライターをはじめてから自分に精神的な余裕ができていることに気が付く。上手くいかないことは多いが、金銭的な余裕が生まれ、仕事の自信もつき、自然に人に親切にしたり堂々としていられるようになったのだ。
今村との恋は実らなくても自分を好きでいられる自分でいたい、と思っていたあみ子に、田舎の父から連絡が入る。「(あみ子の)母にガンが見つかった、今後どうなるかわからないから帰ってこい」という電話だった。
3年後、あみ子は実家の近くの郵便局でパートとして働いていた。母の病気は大事に至らなかったが確実に体が弱り、両親から家庭内の労働力として当てにされたあみ子は自然と東京に帰れなくなっていった。両親の生活サイクルに合わせていると自分だけの時間はそうそう作れず、ライターも辞めてしまった。結婚にも恋にも刺激的な仕事にも無縁の、ただ平和なだけの毎日だった。35歳になったあみ子はこのままここで生きていくのだろうと思っていた。
35歳の誕生日、地元の友人のヒロミから電話がかかってくる。なんと、結婚して東京へ引っ越すのだという。あみ子は旧友の思いがけない変化に戸惑いを感じ、改めて自分の人生を見つめなおす。メイは舞台女優になった。今村は小説家としてデビューした。綾のコスメブランドは順調だが、メディアに綾が姿を見せることはなく、どうしているかわからない。
あみ子はひとつの結論に至った。「私は幸せじゃない」という結論だ。どんなに頑張ったところであみ子は人から無条件に愛される人間ではないし、綾やメイのように華やかな人生は絶対に送れない。それでも生きていくしかないのだ。あみ子は東京に戻ることを決意し、物語は幕を閉じる。

『まじめな会社員』の登場人物・キャラクター

主人公

菊池あみ子(きくち あみこ)

『まじめな会社員』の主人公。30歳。アプリの問い合わせ対応をしている契約社員。収入は心もとないが、大きな責任のない仕事を無難にこなして平和に暮らしている。
前の彼氏と別れてから5年、彼氏がいない。大人の女性に恋人や結婚を求める世間の風潮をくだらないと思いつつも、マッチングアプリで出会った男性と当たり障りのない会話をする日々を送っている。
綾や今村との出会いをきっかけに、自身の恋愛や仕事、生き方に真剣に向き合っていくが、何かと空回りがち。

主人公の友人たち

山田想太郎(やまだ そうたろう)

あみ子の友人でフリーター。友人からは「想ちゃん」と呼ばれている。女性からよくモテるが、女性との深い関係に興味がなく、彼女いない歴は不明。
あみ子が長年片思いをしており、あるとき告白したが振られる。それからも交流は続いているが、あみ子とは明確に溝が出来てしまった。

嶋田ゆみ(しまだ ゆみ)

あみ子の友人でWeb制作会社の社員。彼女いない歴9年。

津村みさき(つむら みさき)

あみ子の友人で営業部の社員。彼女いない歴30年。

shuichi
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@shuichi

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