ダーリンは生モノにつき(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ダーリンは生モノにつき』とは、女性漫画雑誌『プチコミック』にて連載されていた漫画家・吉原由起のラブコメディー漫画である。主人公で不感症の村崎世津子は、父親が経営するオカマバーで医師の田辺恭介と出会い、初めて女性としての喜びと幸せを手に入れる。夫婦の営みシーンが満載だが、ギャグや二頭身表現が多いなどラブコメディー調になっているため、多くの女性から支持される作品である。吉原由起の作品としては『はあはあ』や『お・ぼ・れ・た・い』なども多くの女性から人気となっている。

『ダーリンは生モノにつき』の概要

『ダーリンは生モノにつき』とは、漫画雑誌『プチコミック』にて1997年6月号から連載が開始された漫画家・吉原由起によるギャグ感が強いラブコメディー作品である。単行本は全8冊、文庫本は全5冊にて出版されている。

主人公の夫婦生活を中心に恋愛や性について赤裸々に描かれているのだが、主人公が二頭身に描かれていたり下半身にモザイクをかけられていたりと、ギャグ要素が多く盛り込まれているのが特徴となっている。
また、作者である吉原由起は、2019年にデビュー30周年を迎えた東京都出身のベテラン漫画家である。

主人公の村崎世津子はごく普通のOLなのだが、実は不感症が原因で交際する男性にフラれ続けているという悩みを抱えていた。世津子の実の父が女装をしてオカマバーを経営していることもあり、周囲がオカマばかりという家庭環境で育っている世津子は女性としての意識が低いと自負していた。
ある日、会社帰りに父のお店で手伝いをしていた世津子はお湯割りに使う熱湯を胸に浴びてしまう。たまたま来店していた内科医の田辺恭介の的確な応急処置のおかげでやけどの跡は残らずに済んだ。
お礼を伝えるためにもう一度恭介に会いたいと思っていた世津子は、自分の勤め先で恭介が嘱託医をしていることを知る。恭介を訪ねた世津子は、恭介に体に触れられるだけで感じたことがない快感を経験する。
恭介に触れられる快感を覚えた世津子は、恭介に振り向いてもらいたいと猛アピールを始める。世津子のアピールに負け、世津子との結婚を決めた恭介は世津子にプロポーズをする。大好きな恭介と出会って1ヶ月交際0日で夫婦となったことに喜ぶ世津子だったが、同居を始めてからも恭介から夜の営みの誘いがないことに不安を感じ始める。

『ダーリンは生モノにつき』のあらすじ・ストーリー

もうあなたにしか感じないんです

村崎世津子(むらさきせつこ)は、ゲイバーを経営している女装好きの父に育てられた24歳のごく普通のOLである。仕事帰りや休みの日、スタッフとして父のお店を手伝うことがあった世津子は、ある日お店で熱湯を胸にかけてしまった。たまたま病院の上司に連れられて来店していた内科医の田辺恭介(たなべきょうすけ)は、世津子のやけどの応急処置をする。
氷水でキンキンに冷やされた世津子の胸のやけどの状態を確認しようと恭介が世津子の胸にそっと触れた。その瞬間、世津子は稲妻に打たれたような衝撃を受けると気を失ってしまった。世津子は長年不感症に悩んでいて、その日も不感症が原因で男性にフラれたばかりだったのだ。
感じたことがない快感をもう一度体験したい、恭介に触れられたいと思うようになった世津子は、会社の医務室に嘱託医として恭介が来ていることを知る。それからの世津子は、恭介が会社に来る日には自らケガをするなど何かと理由をつけて恭介を訪ねるようになる。
日に日にケガの度合いがひどくなっていく世津子に呆れ始めた恭介に、世津子は突然告白をする。しかし何人もの女子社員から告白をされてきた恭介は、世津子の気持ちに冷たい態度を取り始めた。次の瞬間恭介を押し倒した世津子は、自分の恭介への気持ちが本気だと語り始める。その時、診察の順番を待っていた他の女子社員が医務室に入ってきてしまう。
驚いた女子社員は、恭介に馬乗りになった世津子の髪を引っ張り怒鳴り始める。言い合いになる女子社員と世津子の後ろから、恭介は自分が世津子にプロポーズをしていたと話し始めた。騒ぎを聞きつけた大勢の社員たちの前で恭介は世津子に「僕と結婚してください」とプロポーズをする。突然の展開に驚きながらも世津子は「はい」と答えるのであった。
それからすぐに結婚式を挙げた世津子と恭介は、恋人としての交際期間がないままめでたく夫婦となった。

この時を心待ちにしてました

恭介は、外では病院と世津子の会社で医師として働き、家では世津子の分の家事までこなしていた。そんなパーフェクトな恭介と夫婦となったことに喜びを感じていた世津子だったが、一つだけ不満があった。それは、結婚して数日経っても初夜を迎えることができないことだった。
毎晩のように世津子を誘うようなしぐさをする恭介だったが、世津子がその気になった瞬間に寝てしまっていた。何とか初夜を迎えようと、恭介が入浴中に背中を流すなど努力をしてみるも、まったく世津子の裸に興味を示さなかった。
泣き出した世津子は、マンションの隣に住む父のところに裸のまま駆け込んでしまう。世津子を追いかけた恭介は、世津子が触れられるたびにビクビクと反応していたのを「嫌がっていたと思っていた」と世津子に説明した。恭介に触れられた時の世津子の反応は快感を意味していたと知った恭介は積極的にスキンシップを取るようになる。
せっかく初夜を迎えられる日が来たというのに、なんと世津子は恭介に触れられると3分で気を失ってしまった。恭介に仮面をつけさすなど世津子が感じないように様々な方法を試すが、どの方法もダメだった。落ち込む世津子に恭介は「急がなくていいから」と話す。しかし、このままでは一生恭介と初夜を迎えられないのではと感じた世津子はお酒を大量に飲んでしまう。
自分が思っていた以上に思い詰めていた世津子を見た恭介は「気を失ってもいい、愛し合おう」と世津子と体を一つに重ねることを決意する。タイムリミットを気にしながらも体を重ねた二人だったが、気づくとすでに2時間が過ぎていたのだった。

ラスボス現る

貴族の出身である恭介の母とウィーンで大学教授をしている恭介の父はウィーンに住んでいることから、急遽挙げた結婚式には参列できていなかった。
世津子と恭介が熱い新婚生活をしていたとある日、突如帰国していた恭介の両親が訪ねてくることになってしまった。緊張のあまり固まってしまった世津子に、恭介が「当日仕事でいない」と追い打ちをかける。

そして恭介の両親が訪ねてくる日、女装をしていない世津子の父と友人のマリリンが世津子に付き添うことになった。自宅にやってきた恭介の両親の優しそうな印象にホッとした世津子だったが、その印象が間違いだったと気づくことになる。
恭介の母は、お茶の淹れ方や料理の味付けにケチをつけ始めたのだ。笑顔ながらもチクチク心に刺さるような恭介の母の言葉は、世津子と恭介の夜の営みにも介入しようとしてきた。驚く世津子に恭介の母は「イジメるわよ」と、嫁として認めていないと宣言する。自分の思い描く嫁にしようと指図する恭介の母に、世津子が反発し始めた時恭介が帰宅する。
次の瞬間、恭介の母が世津子にいじめられたと恭介に泣きつく。焦る世津子を見た恭介は「相変わらずウソ泣きが上手ですね」と、子供の頃からウソ泣きをしているのを見てきたと母に話す。「世津子を困らせたら許さない」と恭介に言われてしまった恭介の母は、世津子に謝ると静かに帰っていった。

解決したかと思われた嫁姑問題だったが、その後も世津子に対する恭介の母の嫌がらせは続くのだった。

恭介の元カノはスーパードクター

ある日突然、世津子の自宅にバラの花束が届いた。恭介からのサプライズだと喜んだ世津子だったが、自分は贈っていないと話す恭介が「梓」とつぶやいた。
後日、忘れていった書類を届けるために恭介が勤務する病院に向かった世津子は、女性と話す恭介の姿を目撃する。相手の女性は来宮梓(きのみやあずさ)だった。恭介と梓の話を立ち聞きしていた世津子は、二人が3年前に交際していたことを知る。

自分を極上の女だと言い切る梓は、恭介を自分の元に取り戻すと言い出す。恭介が勤務する病院では、同じ内科医として恭介と梓が共に働いていたのだが、梓は世津子が勤務する会社でも嘱託医として恭介と一緒に働くことになってしまう。梓に宣戦布告された世津子が恭介と梓を監視し始めるが、恭介と梓が一緒にいる姿を見た世津子はやるせない気持ちになる。
そんなある日、病院勤務後に上司を交えた食事会に出席した恭介と梓がお酒に酔った勢いで男女の仲になっていないかと、世津子は一人寂しく自宅で考え込んでいた。その時、突然自宅の電話が鳴った。恭介からだと思い勢いよく電話に出た世津子に、電話の向こうから梓が「あたしは恭介を取り戻したわ」と伝える。梓の後ろの方から「シャワー借りたよ」と言う恭介の声が聞こえてくる。
数時間後、梓を連れた恭介が帰宅する。今すぐ世津子と別れるよう梓が恭介に伝えた瞬間、突然「梓さんといる恭介さんはとてもステキ。あたしといるよりも…幸せ…なのかもって」と、世津子が泣きながら話始める。勝ち誇った顔をする梓に世津子は「でもあたしが幸せならいーの」と続けた。自分の方が恭介といると幸せだと断言する世津子に、梓が根拠は何なのかと問いかける。
泣き続ける世津子をそっと抱き寄せた恭介は「僕が誰よりも世津子さんを愛しているからでしょ」とささやく。世津子だけをまっすぐに見つめる恭介を見た梓は、昔よりもいい男になっていると感じ身を引くことにする。
梓は、恭介に指一本触れさせてもらえなかったと世津子に伝え帰っていった。

この一件からなぜか意気投合した世津子と梓は、一緒に旅行に行くなど行動を共にするようになっていくのだった。

狙われた恭介

バレンタインデーが近づいたある日、世津子と同じ庶務課に所属している野呂(のろ)は、経理課の女性社員にフラれてしまった。社内中の女子社員から嘱託医として勤務する恭介と比べられてはバカにされていた野呂は、一方的に恭介を恨み始めていた。
世津子が野呂から受け取った1通の封筒を恭介に届ける。「V.D.が過ぎるまで会社に来るな 来れば殺す」と書かれた手紙を見た恭介はただのイタズラだと片付けてしまう。しかし、何か嫌な予感がして仕方がなかった世津子は、嘱託医として勤務する日は恭介のそばを離れないようにしていた。
脅迫文を読んだにもかかわらず出社し続ける恭介を脅そうと、野呂は階段から恭介を突き落とそうとしたりトイレで待ち伏せをするなど様々な作戦を練る。その度に恭介のそばにくっついていた世津子にことごとく邪魔をされてしまい、作戦はすべて失敗に終わってしまった。
そしてバレンタインデー当日がやってきた。野呂は会議室に急病人がいると嘘をつき恭介を呼び出す。会議室にやってきた恭介と世津子に、野呂が刃物を向け襲い掛かってきた。とっさに野呂の手首をつかみ静止を促す恭介に、野呂は「自分がフラれたのは恭介のせいだ」と訴えた。もみ合った拍子に恭介の頬が刃物で切り付けられた。それを見た世津子は近くにあった椅子を振り上げ、「それ以上恭介さんを傷つけたら あたしがあんたを殺す」と大声を上げた。静かに「最愛の妻を殺人犯にはしないで欲しい」とお願いする恭介を見た野呂は、その場に座り込み「ごめんなさい」と何度も謝るのだった。
この一件で一人の女性を愛する気持ちが大切なのだと気づいた野呂は、いつもお茶汲みをしてくれる女性社員に対して感謝の言葉を伝える。するとその女性社員は、「バレンタインデーに渡しそびれてしまった」とチョコレートの箱をそっと野呂に渡すのだった。

子供なんかいらない

結婚生活も落ち着いたある日、世津子と恭介は自宅を訪ねてきた友人から「子供は考えていないのか」と聞かれる。子供が欲しくないわけではないが前向きには考えられなかった世津子が、恭介に同意を求めようと恭介の顔を除く。恭介は目を輝かせて「すてきだ」と呟くと、世津子に子作りしようと言い出した。「子供は今はいらない」と断る世津子だったが、子供がいる生活を思い描き幸せを感じてやまない恭介には、世津子の気持ちが届かなかった。
「夫婦になった以上子供を作って育てるのは義務ですよ」と断言する恭介は、その日から避妊具に穴をあけてしまうなど子作りをすることで頭がいっぱいになってしまう。毎日毎日子作りをせがんでくる恭介から逃れることに世津子は疲れて果ててしまっていた。恭介から逃げるように父の店に逃げ込んだ世津子だったが、さらに父や友人たち、義母からも子供を産むように促され、世津子の心は限界だった。
そこにタイミング悪く恭介が、「世津子が排卵日だから子作りしなければ」と店に飛び込んできた。「今は子供が欲しくない」と話す世津子に、恭介は「子作りが義務だ」と言い放つ。恭介の言葉を聞いた世津子は「あたしって恭介さんの子供を作るだけのモノ?」と恭介に問いかけると、お店を飛び出してしまった。世津子の思いつめた表情を見た友人たちは、世津子が辛かったんだと気づく。
世津子を追いかけ自宅に帰った恭介は、「世津子との子供が欲しかっただけだ」と世津子に話す。世津子も「本当は子供が欲しいと思っている」と答える。夫婦の義務や機械的な子作りではなく、すごく愛し合って作りたいと考えていたことを恭介に話した世津子は、「子供たちに二人の愛の結晶なんだと伝えたい」と将来の夢を語る。
世津子の気持ちを知った恭介も、「子供たちがうんざりするくらい世津子のことを愛していると話して聞かせる」と夢を語り始める。恭介の気持ちを知った世津子は、急に子供をたくさん産む気持ちに変わっていく。そして、お店に残っていた友人たちも、恭介と世津子からおめでたい話が届くのを心待ちにするのだった。

『ダーリンは生モノにつき』の登場人物・キャラクター

主人公

村崎 世津子(むらさき せつこ) → 田辺 世津子(たなべ せつこ)

丸菱商事の庶務課でOLをする、23歳の主人公。オカマバーを経営している父と二人暮らし。掃除をしようとして家具を壊してしまうほど家事が苦手。極度の不感症が原因で、交際する男性からフラれ続けていた。

たまにオカマのふりをして手伝っていた父のオカマバーで熱湯を被ってしまった際に、たまたま客として来店していた内科医の田辺恭介に応急処置を受ける。すると、恭介に触れられた瞬間に受けた快感で失神してしまう。恭介に運命を感じた世津子は、恭介が自分が働く会社で嘱託医をしていると知ると、命がけで猛アプローチをし始める。
恭介と出会って1ヶ月ほどで、交際期間0日での結婚に喜ぶ世津子だったが、初夜どころか恭介に触れてもらえず不安に感じる。無事に夫婦の営みができた日を境に、毎晩数回の営みを要求するという驚異の体力に恭介も困るほどだった。

田辺 恭介(たなべ きょうすけ)

28歳の男性。九段大学病院で内科医をしながら世津子の会社で嘱託医を掛け持ちしている。口数は少ないが、世津子のことを溺愛している。家事全般が得意。もともとは淡白な性格だったが、結婚を機に感情が豊かになる。

普段は病院で内科医として働いているが、週に数日は世津子が勤める会社で嘱託医をしていた。上司に連れていかれたオカマバーで熱湯をかぶってしまった世津子の応急処置をしたことがきっかけで、世津子から猛烈なアプローチをされてしまう。初めは世津子のアプローチに戸惑ったが、周囲からの見合い話に困っていたこともあり世津子と結婚することを決意する。
毎晩数回も夜の営みができる世津子の体力に困惑しつつも、家事が全くできない世津子のために家事と仕事を両立させている。時には、オカマバーを経営する世津子の父を助けるために女装をしてお店に出ることもある。

友人達

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