ブランクスペース(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ブランクスペース』とは、熊倉献が2020年から『ふらっとヒーローズ』で連載をスタートした漫画。不思議な力を題材に、2人の少女の友情と成長の物語が描かれている。ある雨の日、女子高生の狛江ショーコは同級生の片桐スイが不思議な力を持っていることを知る。2人の出逢いをきっかけに、やがてひとつの街を巻き込んだ空白をめぐる物語が動き出す。宝島社の「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第6位にランクインしている。続きが気になると話題になったSFガール・ミーツ・ガール作品。

『ブランクスペース』の概要

『ブランクスペース』とは、熊倉献が2020年8月から『ふらっとヒーローズ』で連載をスタートした漫画。不思議な力を題材に、2人の少女の友情と成長の物語が描かれている。作者・熊倉献の話題となったデビュー作『春と盆暗』から4年ぶりとなった作品で、コミックスはヒーローズより、全3巻が発刊されている。宝島社の「このマンガがすごい!2022」オンナ編で第6位にランクインした。続きが気になると話題になったSFガール・ミーツ・ガール作品である。

ある雨の日、女子高生の狛江ショーコ(こまえしょーこ)は同級生の片桐スイ(かたぎりすい)が目に見えないものを作り出す、不思議な力を持っていることを知る。2人の出逢いをきっかけに、やがてひとつの街を巻き込んだ空白をめぐる物語が動き出す。

作者の描く世界観、ショーコとスイ2人の少女のキャラクターが魅力的だと、ファンから好評価を得ている。

『ブランクスペース』のあらすじ・ストーリー

ショーコとスイの友情

都立空代高校に通う女子高生の狛江ショーコ(こまえ しょーこ)はひょんなことから同級生で親友の片桐スイ(かたぎり すい)が、目に見えないが実体のあるものを作り出せる不思議な力の持ち主だと知る。内気な性格のせいでクラス内でも孤立していたスイは、自分だけの秘密だった能力をショーコに教えたことを後悔し、と距離を置いていた。しかしスイに強い興味を抱いたショーコは積極的にアプローチを続けてスイの心を開き、友達になることに成功する。

夏休み中に目に見えないトースターを作るなど、共同作業を通じて距離を縮めたことから2人は親友になる。しかし新学期からショーコと別のクラスになったスイは再びクラス内で孤立して、同級生から陰湿ないじめを受けるようになってしまう。ショーコにも相談できず、辛い日々に心がすさんだスイは、全校生徒が集まっている体育館のガラスに見えない弾丸を打ち込むなど、徐々におかしな行動をとるようになっていく。
スイの様子がおかしいことを心配したショーコは図書館で熱心に調べ物をしていたスイに話しかけ、彼女が見えない巨大な斧を校舎に落とす計画を立てていつことを知ってしまう。犠牲者が出かねない最悪な計画を止めようとしたショーコは、見えない彼氏を作り出すことをスイに提案。その提案を受け入れたスイは、彼氏を作り出すために人体について勉強し始める。体育の授業中に生物について最後のピースが閃いたスイは、無意識の中で見えない彼氏、テツヤを作り出すことに成功したのだ。

テツヤと一緒にいることで、前よりも明るくなったスイの姿に安心したショーコは、自分も彼氏を作ろうと奮闘する日々を送る。しかし時を同じくして、彼女たちが暮らし街では、道端のゴミが切り裂かれたり、学校で飼っている鶏が惨殺されるといった、不可解な事件が頻発するようになる。

『わが空白』が引き寄せた縁

スイは週末に公園にあるボートに乗るためショーコを誘う。誘われたショーコは快諾するのだが、テツヤも来ることに何処か落ち着かない様子だった。スイにはテツヤの声を聞けるし、そのおかげでスイの気持ちが明るくなっているのは良い事だと思うが、「見えない恋人」に対して実感が湧かず、「幽霊と同じだ」と感じて「正直少し怖い」と思い始めていたのだ。

場面は変わり、時田(ときた)は古本屋で妙に気になって買った『わが空白』という本を喫茶店で読みおわって、映像編集の仕事を再開しようとする。しかし、『わが空白』の作者の別の作品が気になり、仕事そっち抜けで検索し始めるが、作者の名前や出版社、そもそもの本自体が検索に引っかからず疑問を持ち始めていた。そこに、喫茶店でバイトをしている中道(なかみち)が水を注ぎにテーブルにやってくるが、彼は時田が読んでいた『わが空白』を見つめていた。そのことを時田が問いただすと、『わが空白』の作者の中道ゴロウ(なかみちごろう)と遠い親戚だという返答があったのだ。驚いた時田は中道に『わが空白』を貸し、「感想を聞かせてほしい」と告げた。
中道は心臓が飛び出るほど驚いた様子で、親戚中でその小説を読み、2日後に再びバイト先の喫茶店を訪れていた時田に、バイト終わりに『わが空白』を読んだ感想を言うのだった。その際に時田は中道が小説家を志望していることをなんとなく感じていた。そして時田はコーヒーを『わが空白』に登場する「イチコ」の分まで頼み、互いに感想を言い合うのだった。
帰り際に支払いの際にレジ前で中道がイチコの分の500円を払おうとすると、誰もいない隣から「ありがとう」と声がする。最初は気のせいかと思っていたが、2人で夜道を歩いている際に、誰かの足音がついてくるのだ。驚いて走って逃げる2人だが、途中で見えない女性は転び、心配した中道は手を差し伸べた。その手を掴み公園の方へと引っ張られると、そこにはイチョウの切り株があった。その切り株は、『わが空白』の作中で出てくる切り株だった。見えないイチコは満足したかのように、遠くへ遠ざかっていくのだった。

一方でスイとテツヤと一緒にボートに乗りにきたショーコは、人には見えないテツヤが漕ぐボートが他人にどう見えているのか疑問を持っていた。しかし、3人の乗ったボートが端の柵にぶつかり、飲み物を飲んでいたスイはその衝撃で吹き出してしまう。それを見ていたショーコは、モヤモヤがすっきりとするのを感じるのだった。

アキラの見た不思議な夢

祖父の古書店を手伝っている鈴白アキラ(すずしろあきら)は、店番中に読んでいたマンガ雑誌に興味を惹かれるマンガが連載されており、その作者が同い年であること、「わが空白」という言葉を使っていたことに、さらに興味を抱く。作者について考え事をしていると、いつの間にか寝てしまう。
その夢の中で先ほど読んでいたマンガの作者・今給黎モモ(いまきれもも)が現れ、「踊る?」と誘われるのだが、そこで目が覚めてしまい、その日は家に帰宅する。
学校生活がパッとしないアキラは夢に出てきた今給黎に会いたくなっていた。手伝っている祖父の古書店に行くと、前回読んでいた今給黎のマンガが売れていた。そのことに少々ショックを受けて帰宅すると、家族がプラスドライバーがなくなっている事に気付き、探していた。その日の夢の中で今給黎が再び登場し、そこでなくなっていたプラスドライバーを拾っていた。
翌朝目が覚めたアキラは朝食を食べながらふとテレビを観ると、バスが横転・炎上し、乗客15人が死亡したというニュースを目にする。そして、その乗客の中に今給黎の名前を確認してしまう。次の日の夢では、その中の今給黎も燃えていた。目が覚めると親がマンガ雑誌を捨てていたことに気づき、家を飛び出しゴミ回収するところギリギリのところでマンガを回収することができた。
その日、学校からの帰宅途中にふと見覚えのあるY字路を歩いていくと、小さい頃に行ったことのある公園へとたどり着いた。その公園の中にあるキリンの滑り台の顔が地面に埋まっていることが可哀想になり、よく泣いていたことを思い出す。その日の夢にはそのキリンの滑り台も出てきた。夢の中でアキラは今給黎に対して面白いマンガを読ませてもらったお礼を言うことができ、気持ちが1つになった2人は踊るのだった。

2人に迫る異変

顔が良いクラスの男子に告白し、あっけなく振られたショーコ。スイに話を聞いてもらいたくて連絡するが、スイはテツヤと川を見に行っている最中だった。彼氏ばかりに時間を割いているスイに、ショーコは少しばかり怒ってしまう。スイとテツヤは河川敷に座り、川を眺めながら話し込んでいた。そんな中、テツヤは「すぐに戻る、帰りは遅くなるからスイひとりで帰って」と言い、その場を離れてしまう。
するとショーコが河川敷にやって来た。途中、花壇を見ると花がグチャグチャになっているのに気づいて、フラれた人がストレス発散で荒らしたのではないかと想像し、ひとり河川敷でボーッとしていた。カラスが川に集まっておもちゃのアクセサリーを引っ張っているのを目撃したショーコはアクセサリーが可哀想に見え始め、カラスを追い払うべく川へ入ろうとした。その時にスイが走ってやってきて、危険だと言う。スイは見えない風船を作り出し、自身のヘアピンを使用して見えない風船を割り、カラスを追い払った。
帰り道、ショーコはスイに男子高校生に告白しフラれた話をする。テツヤがいないことに気づいたショーコはスイに尋ねるが、曖昧な答えにまたも不安になっていく。

一方で学校のトリ小屋で鶏が惨殺される事件が起き始めていた。そして街中で暴れていた見えない犬が、スイとショーコの目の前にやってくる。

見えない犬との戦い

スイは見えない犬にいきなり襲われて、転倒してしまう。ショーコは傘を持って見えない犬を追い払おうとするが、その時に突如テツヤが現れて見えない犬に攻撃した。そしてショーコに「スイを連れて逃げてくれ」と言う。ショーコは徹夜の言う通りにスイを連れてその場を離れることを選択。スイはショーコと走って逃げている最中に、頭がボーッとしフラフラして倒れそうになっていた。
ショーコはスイを自宅に連れて行き、安静にさせると親に迎えに来てもらうことになった。1人自分の部屋にいるショーコは、テツヤの安否が気になり武器になりそうな傘を握りしめ、テツヤを探しに外へ出る。無事にテツヤに会うことができたショーコは、スマホを介して彼との会話に成功する。テツヤはショーコを家に送ってから、具合の悪いスイの家に行き、スイと2人で休むことになる。
翌日、ショーコはスイのお見舞いの帰りに、「明日は法事があるから」と言い、家に帰っていった。翌日、スイとテツヤは見えない犬を退治しようと外へ出たところ、2人は野球帽を被り、バットを持って信号待ちをしているショーコを見かける。法事がある聞いていたスイは疑問を持つ。「何か危険なことをするのではないか」と思ったスイは、ショーコのことが心配になり、テツヤについて行くようにお願いした。
1人になったスイは、空き地の草むらに姿の見えない何かが動いていることに気づく。姿の見えない犬だと思ったスイは、見えない銃を草むらの方に向かって構える。しかしその正体は、はぐれた猫を探していた少年だった。危うく少年を見えない銃で撃つところだったスイはショックを受け、意識朦朧となりながらもテツヤを探しに行く。その途中でも見えない犬について考えており、見えない犬を生み出した自分自身に責任を感じていた。
見えない犬は空白を食べて10メートルほどの大きさになり二足歩行で街を歩いていた。林の中で倒れているスイを発見したショーコは彼女を連れて、公園の滑り台の下に隠れることにした。巨大化した見えない犬はスイを狙って滑り台ごと潰そうとする。ショーコを巻き添えにしたくないスイとテツヤは、無理矢理ショーコを滑り台から離して、「逃げて」と言うのだった。

空白たちとの共闘

遠くから犬の遠吠えを喫茶店で聞いていた時田と中道。不思議そうに会話をしている最中に、隣にいたイチコが走って店内を出ていった。
夢の中でアキラと今給黎モモはベンチに座っていた。「夢の外側から誰がか呼んでいる」と今給黎が言うと、キリンの滑り台が変形。メカキリンになり、それに乗って今給黎は現実の世界に向かっていく。
公園から走って離れている最中のショーコは、道の角でイチコとぶつかり、協力を求め再び公園の方へと走っていくことになる。滑り台の下に隠れていたスイは巨大な斧を降らせて見えない犬に攻撃すべく、テツヤの反対を押し切って外へと出る。しかし想像以上に大きな見えない犬を目の前にして、頭がうまく働かなくなってしまう。そんなスイに対し見えない犬は攻撃を仕掛けようとするが、横からメカキリンに乗った今給黎モモが助けにやってきた。遅れてショーコとテツヤがやってくる。さらに魔法少女や宇宙飛行士、ロボットの形をした空白たちも助けにやってくる。しかし見えない犬の攻撃が強すぎて、スイとショーコ、今給黎モモとメカキリン、近くにいた空白たちは夢の中に押し戻されてしまう。
その夢の中で、スイとショーコの意識は混線していた。夢の中の教室で意識が戻ったショーコはスイを探すため、夢の中の学校中を駆け巡る。一方で無数の死体の上で気がついたスイは、ショーコにいつも助けられていたことを改めて感じ、スイもショーコを探し始める。無数に風船がある空間から脱出するため風船を引っ張るが、空間が破裂し空から落ちてしまう。それをショーコが操縦する巨大なロボがけ止めた。その巨大ロボの近くに今給黎モモやメカキリン、宇宙飛行士たちが集まっていた。そして巨大ロボ内のコクピットにある合体ボタンをショーコが押してしまったことで、スイとショーコは現実に無事に戻ってくることに成功する。
現実では巨大ロボの空白は今給黎やメカキリン、その他の空白たちと合体して存在していた。激闘の末、姿の見えない犬を気絶させることに成功した巨大ロボは、見えない犬を夢の砂漠に連れて行くことになる。夢と現実を繋いでいる道路を断ち切ることによって、現実に戻ってこれないようになるというのだ。
それは他の空白たちにも共通することであり、テツヤとの別れを示していた。

別れと空白の街

古書店で働いているアキラは昼寝中に今給黎の夢を見ることがなくなっていた。いつもの喫茶店で会話している時田と中道は、隣にいたイチコの存在を感じることがなくなり、少し淋しくなっていた。時田は中道に『わが空白』を差し出す。それを見ていた2人の従業員は「付き合っているのではないか?」と仕事そっちのけて話し込んでいた。
スイとショーコは川沿いで話していた。超能力を使えなくなったスイは、ショーコに対して「つまらない人間になってごめんね」と言うが、ショーコは「超能力がなくなったって一緒にいて楽しい」と言う。
スイは見えない犬のことやテツヤのことをずっと考えていて、そのことを物語にするのは少し違うと感じるものの、スイが書きたいのは「空白たち」がこれから過ごす日常のことだと思い始めていた。そのためにはもっといろんなことを勉強をする必要があることにも気づいていた。
そして喉が渇いた2人は、どこかで飲み物を買うために川沿いを離れる。その時に、ふと空白から「やっていくよなんとか、心配しないで」と言う声が聞こえてくるが、スイは気づいてないようだった。

『ブランクスペース』の登場人物・キャラクター

主要人物

狛江ショーコ(こまえ しょーこ)

都立空代高校に通う高校生の女子で、黒上のショートヘアがトレードマーク。明るい性格ながら天然気味で、能天気なところがある。惚れっぽい性格で、好みのイケメンがいるとすぐに好意を抱いてしまう。最初は心から彼氏を欲しがっており、片思いの男子に積極的に告白するものの、毎回断られて落ち込んでいた。
学校の帰宅中に見えない傘をさしている同級生の片桐スイを目撃し、スイの能力と彼女自身に興味を持つことになる。その後、共同作業で見えないトースターを作ったことで、スイと親友になる。ショーコ自身の天然なキャラクターが、精神的にこもりがちなスイの心の支えとなっていた。しかし夏休み明けにスイとクラスが別々になり、一緒にいる機会が減ってしまう。その後、スイの様子が明らかにおかしいことに気づき、スイが学校の校舎に見えない巨大な斧を落とす計画を立てていることを知る。スイの暴走を止めるため、彼女に見えない彼氏を作ることを提案し、学校崩壊の計画を放棄させることに成功した。スイが作った初めての人間で彼氏であるテツヤの存在に当初は恐怖を覚えていたが、3人で遊ぶ事でその偏見は解消していく。しかし、根本的にテツヤの存在をいまだに不安視している。

片桐スイ(かたぎり すい)

7oamachi771
7oamachi771
@7oamachi771

目次 - Contents