佐原先生と土岐くん(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『佐原先生と土岐くん』とは、鳥谷コウによるボーイズラブ漫画作品。pixivコミックの『ジーンピクシブ』に掲載されている。2022年6月26日にコミックス第5巻とあわせてボイスコミックが公開された。
爽やかイケメン体育教師と喧嘩っ早いピュアヤンキーによるもどかしい恋模様が胸キュンと話題のラブコメディー。喧嘩ばかりで怖がられるヤンキー・土岐奏と、他の教師と違って土岐を対等に扱ってくれた体育教師・佐原一狼。不器用な二人の距離が少しずつ縮まっていく姿が微笑ましい、教師×生徒の青春ラブストーリーである。

『佐原先生と土岐くん』の概要

『佐原先生と土岐くん』とは、鳥谷コウによる日本の漫画作品。男性同士の恋愛をテーマにしたボーイズラブ漫画である。元々はSNSで1話4ページほどの短編漫画として描いていた作品。pixivコミックにおける『ジーンピクシブ』に掲載されていて、2019年12月26日にコミックス第1巻が発売された。
喧嘩ばかりのヤンキー高校生・土岐奏(とき かなで)が学校に通う理由。それは、体育教師・佐原一狼(さはら いちろう)に会うためだった。周囲から恐れられ、教師から問題児扱いされていた土岐が、佐原に恋をして変わっていく。不器用でピュアなヤンキー土岐と、爽やかイケメンだが暗い過去を持つ体育教師佐原。両想いの2人の、もどかしい恋愛模様を描いたラブコメディーである。

『佐原先生と土岐くん』のあらすじ・ストーリー

佐原と土岐の出会い

喧嘩ばかりで教師から問題児扱いされているヤンキー高校生・土岐奏(とき かなで)は、いつものように一方的に教師から責められていた。文句を言う気力もなくなり、黙って説教を聞いているところに、一人の若い教師が割って入ってくる。初めて見る彼の第一印象は、「変なヤツ」だったが、この教師との出会いで土岐の世界は変わり始める。
土岐を庇ったのは、体育教師の佐原一狼(さはら いちろう)という男だった。誰とでも気さくに話す佐原に、土岐は戸惑いながらも興味を抱く。気が付くと佐原に会うために学校に来てしまうほど、佐原に惹かれるようになったのだ。佐原に褒められようとイイコになろうとする土岐だが、売られた喧嘩を思わず買ってしまった。ボコボコに返り討ちにしたのはいいものの、倒れた不良たちをどうするかと悩んだ土岐は、隠そうと決意する。実行しようとしたところを、佐原に見つかってしまう。思わず逃げ出す土岐と、全力で追いかけてくる佐原。ヤバイと感じつつもちょっと楽しくなってしまう土岐。何とか振り切ったと安心する土岐だが、なんと塀の上から佐原が飛び降りてきて捕まってしまう。佐原に上乗りされる状態で捕まった土岐に「もう絶対喧嘩するなよ」と注意する佐原。しかし緊張でそれどころではない土岐は、心臓をドキドキさせながら絞り出すように「わかったから」と同意するのであった。土岐の気も知らず、爽やかな笑顔で指切りをしてくる佐原に観念し、もう喧嘩はしないと誓った。こうして土岐と佐原の物語はスタートする。

佐原と2人で勉強会

佐原に会うため、真面目に学校へ通うようになった土岐。ある日佐原から中間テストがあることを知らされる。テストのことをすっかり忘れていた土岐は慌てて範囲を確認するが、範囲の多くは4月に勉強した授業範囲だった。土岐が授業に出るようになったのは5月からで、教えてくれる友達もいないので職員室へ質問へ向かう。なかなか勇気が出ずドアの前で立ちすくむ土岐に、佐原が声をかけてきた。佐原以外の教師にまだ苦手意識のある土岐は諦めようとしていたが、佐原が「俺が教えてやろうか」と提案する。驚きで固まる土岐だったが、「2人きりで勉強する」ということにテンションが上がってしまう。気合を入れて教室に向かうと、そこには佐原ともう1人男子生徒がいた。その生徒は3年生の藤堂慎治(とうどう しんじ)といい、バスケ部に所属しているという。佐原と仲が良く、勉強を教えてほしいと泣きついてきたというのだ。佐原と親しげに話す藤堂の様子を見て、土岐は苛立ちを隠せずにいた。佐原を「いっちゃん」と呼ぶ藤堂をみて、土岐は佐原の名前が「一狼(いちろう)」であることを知ったのだった。自分の知らない佐原のことを、藤堂が知っていることに悔しさを感じる土岐は、佐原が席を外したタイミングで話しかける。その様子を見て藤堂は、親しみの意味を込めて「土岐くん、いっちゃん好きなんだなって」と微笑みかけた。しかし土岐の反応は藤堂の想像とは違っていた。土岐は「本人には自分から伝える」といい、彼の好意が尊敬ではなく恋愛だと気づく。驚く藤堂に対し、「好きなもんは好き」とまっすぐに話す土岐を見て、藤堂は好印象を抱いた。応援したい気持ちになった藤堂は、土岐の知らない佐原を教えることにしたのだ。楽しく話す2人の元に、佐原が帰ってきた。土岐と佐原のやり取りを見て、藤堂はあることに気が付く。急に用事を思い出したと席を立つ藤堂。2人きりになった佐原と土岐だが、佐原にからかわれて土岐はトイレに逃げ出してしまう。1人になった佐原は、藤堂に自分の気持ちがバレたことを悟る。人にバレるほど顔が緩んでしまったことを反省しつつ、土岐が可愛すぎて思わず食べてしまいそうだと呟く佐原は、その名の通り「オオカミ」の様な顔をして微笑んでいた。

土岐の初めての友達

ある日の放課後、突然降り出した雨に傘を忘れた土岐は途方に暮れていた。濡れて帰るかと覚悟を決めたその時、「よければ使う?」と横から折り畳み傘を差し出される。初めて声をかけられたことに驚きつつ、土岐は傘を受け取った。傘を貸してくれた男子生徒は、お礼を言う間もなく去ってしまったので仕方なく帰ろうとする土岐。そのとき、後ろから佐原に声をかけられる。土岐は思わず借りた傘を隠してしまった。傘がない土岐を心配した佐原は、駅まで送るという。思いがけず佐原と相合傘をすることになった土岐は、緊張でどうにかなりそうだった。2人で歩いている途中、土岐は傘を貸してくれた男子生徒のことを思い出す。佐原に「利瀬(りせ)」と呼ばれていた彼のことについて尋ねると、呆れた顔で話し始めた。土岐に傘を貸してくれたのは、利瀬竜尚(りせ たつまさ)という土岐と同じクラスの男子で、しかも土岐の前の席に座っているというのだ。声をかけてきたのだから、友達になれるんじゃないかという佐原。まだ友達のいない土岐は、頑張って声をかけようと気合を入れた。駅まで送ってきてくれた佐原は、別れ際に「ちゃんと傘返すんだぞ」と土岐に伝える。「わかってる」と返す土岐だったが、そこで佐原が傘を持っていたと知っていることに気が付いた。利瀬とのやり取りを見ていたことを知り、わかっていたならなんで送ったんだと問い詰める土岐。佐原は「なんでだろうな」とはぐらかして帰ってしまった。佐原の思わせぶりな態度に振り回されながら、翌日利瀬に話しかける覚悟を決めるのだった。
翌日、言い忘れたお礼と共に利瀬に傘を返した土岐。「平気だった?」と普通に接してくれる利瀬に対し、土岐は勇気を振り絞って「友達になってくださいませんかっ」と伝える。あまりの勢いにポカンとする利瀬だったが、「よろしく土岐くん」と笑顔を向けてくれた。こうして土岐は、初めてクラスメイトと友達になるのだった。

佐原の過去

佐原と親しくなってきた土岐。偶然佐原の学生時代の新聞記事を見つけた土岐は、これ佐原だよなと問いかける。不自然に話をそらして去ろうとする佐原に、土岐は思わず手を伸ばした。不意に伸ばしたその手を、佐原は強く払ってしまう。「お前には関係ない」と言う佐原には、人には言いたくない過去があるようだった。その後、佐原と気まずくなってしまった土岐。モヤモヤする土岐の前に現れたのは、藤堂の弟・拓也(たくや)だった。前日土岐に怪我をさせてしまい、それを謝りに来たのだ。拓也のせいじゃないからと言う土岐だったが、気に病む拓也を見て思わず話題を変える。拓也のカメラを見て、写真を撮るところを見せてくれと頼んだ。拓也は「日課」の写真だから面白くないよ、と言いつつ土岐を連れて行ってくれた。そこで撮っていたのは、拓也の兄である藤堂慎治の写真だった。藤堂の様子を見て拓也は、腰を痛めているから試合に出るのを止めてほしいと土岐に頼んできた。拓也の必死さを見て土岐は藤堂に試合に出ないでほしいと伝えるが、聞いてもらえなかった。
試合当日、藤堂がトイレで腰を庇う様子を佐原は見てしまった。教師として見過ごせないという佐原と、周囲の期待に応えたいという藤堂。佐原は藤堂に昔の自分を重ねて見ていた。期待に応えたいと無理をして、佐原は体を壊して水泳の選手生命を絶たれてしまっていたのだ。佐原の説得を聞き、藤堂は試合を欠場したいと顧問に伝える決心をする。トイレから出ようとしたその時、入り口に立っていた土岐に頭突きされて気を失ってしまった。あまりに突然の出来事に周囲の人はどよめき、藤堂は医務室へ連れていかれた。藤堂が目を覚ますと、そばには拓也が座っていた。今まで避けてばかりいた拓也が、藤堂と話をするために会いに来たのだ。話せなかった自分の気持ちを伝えた藤堂と拓也は、お互いの気持ちを知り抱き合うのだった。その様子をこっそり見ていた土岐と佐原。土岐に頭突きの理由を聞いてみると、自身の怪我より人から受けた怪我で欠場の方が気が楽だろと言う。不器用な土岐の優しさを見て、佐原は自分の過去について土岐に話すことを決めたのだった。
佐原に連れ出された土岐は、車で海に連れていかれた。急な出来事でなかなか頭が追い付かない土岐だったが、佐原は以前話した体育祭で告白できなかった話を始めた。実は卒業式の日に、その相手に告白したというのだ。しかし結果は振られたようで、選手として尊敬してもらえるようにより一層水泳に打ち込んだという。だが佐原の腰は限界を超え、手術が必要なくらい壊れてしまった。佐原が見せてくれた腰には、痛々しい手術のあとが残っていた。佐原が人前で泳がないのは、この傷を見せたくないからだった。周囲からの視線が期待から落胆に変わり、腫れもの扱いされる中で、偶然好きだった相手からの失望した声を聞いてしまう。心が折れてしまった佐原は、傷と一緒に過去も封印したのだ。誰も信用できずに生きてきた佐原を見て、土岐は「俺は幻滅なんかしねぇよ」と言う。土岐からの温かい言葉に救われた佐原は、何か吹っ切れた様子だった。

佐原の看病をする土岐

12月下旬、佐原は同僚で学生時代の後輩だった猫戸湊(ねこと みなと)と仕事の片づけをしていた。くしゃみをする佐原を見て、冬休みに入るタイミングで風邪を引くのは学生時代から変わっていないなと猫戸は言う。校内の巡回が残っていたが、廊下で藤堂に会い進路指導室にまだ土岐が残っていると聞く。猫戸は巡回はやっておくから土岐を迎えに行って早く帰れと言ってくれた。進路指導室にいた土岐は、自分の進路に悩んでいるようだった。佐原と話しながら少しだけ将来の方向性が掴めてきた土岐に安心する佐原。将来のことを考え、自分が離れてしまう心配や不安はないのかという土岐の質問に対し、佐原は「思うことはあるが、離す気はない」と伝える。急な告白に面食らう土岐だったが、佐原がそのまま倒れてしまった。そこに佐原の体調不良を心配した猫戸がやってきた。案の定ぐったりする佐原を見て、猫戸は慣れた手つきで介抱していた。対応の良さに悔しさと尊敬という複雑な感情を抱く土岐。その様子を見た猫戸は土岐に「自分の方が佐原の扱い方を知っている」と少し意地悪を言い、佐原を車で送って行ってしまった。
己の無力さに腹を立てる土岐。通りかかった利瀬に事情を説明すると、佐原のお見舞いに行くことを提案される。利瀬は佐原の弟・健(けん)に住所を聞いてくれたので、土岐は翌日佐原のお見舞いに行くことにした。母親に佐原のお見舞いに行くことを伝えると、ケーキを手土産に渡された。そこで土岐は今日がクリスマスであることを思い出す。クリスマスに寝込むなんて可哀想だと思いながら、佐原の家の前についた。思い切って呼び鈴を押すと、中から昨日より体調の悪化した佐原が出てきた。お見舞いの品を渡して帰ろうと思っていたが、あまりの様子に部屋まで運ぼうとするが断られてしまう。佐原は立場や理性を考えて部屋に入れまいとするも、倒れてしまい結局土岐に運ばれることになってしまった。面目ないとベッドに横たわる佐原は、毎年クリスマスは風邪で寝込んでいてケーキも何年も食べれていないという。その言葉で土岐はケーキを持ってきたことを思い出し、佐原に伝えた。せっかくだから一口食べさせろと言う佐原は、口を開けて待っている。食べさせることに恥ずかしがる土岐だったが、意を決して佐原の口にケーキを入れる。「んまいな」といつもより無防備に笑う佐原にドキッとする土岐。佐原に何かしてあげようと提案するも、ことごとく断られてしまう。そのうち話すのも難しくなった佐原は、クリスマスプレゼントだと土岐に自分の連絡先を伝え、チャットで会話することになった。佐原の連絡先をゲットできたことに喜んでいると、佐原からこうやって部屋にあがったり看病したりするのは大人になってからにしてほしいという。2人の未来についてちゃんと考えていることを知った土岐は、恥ずかしさで佐原の顔が見れなくなってしまう。顔を隠された佐原は、思わずこっちを見ろと土岐を引き寄せる。グッと二人の距離が近づいたその時、健がしばらく家に置いてくれと部屋に入ってきてしまう。急すぎる展開についていけなくなった土岐は、その場から逃げ出してしまった。突然の訪問に何しに来たという佐原の問いに、健はプライバシーだから答えたくないという。自分勝手な弟だと思いつつ、内心少しほっとした佐原。一方、寒空の中走る土岐の頭は、全然冷えないままだった。

『佐原先生と土岐くん』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

土岐 奏(とき かなで)

CV:広瀬裕也

高校2年生の主人公。喧嘩ばかりでいつも傷だらけの問題児だったが、佐原と出会ったことで学校に通うようになる。佐原に褒められるために喧嘩や煙草をやめたり、勉強を頑張ったりしている。見かけによらず純粋で、佐原からのスキンシップに赤面することが多い。同性を好きになることに抵抗や偏見はなく、佐原や藤堂に驚かれていた。素直でまっすぐな性格をしている。

佐原 一狼(さはら いちろう)

CV:大塚剛央

土岐の担任で体育教師。イケメンで爽やかな見た目から男女問わず人気の教師。問題児扱いされていた土岐に対しても他の生徒と同等に扱うなど、性格もいい。水泳部の顧問で学生時代は水泳に打ち込んでいたが、怪我で引退する。生徒からは「さはらん」、藤堂からは「いっちゃん」と呼ばれて親しまれている。

利瀬 竜尚(りせ たつまさ)

土岐と同じクラス。関西に住んでいたが、母親の病気の治療のために東京へ引っ越してきた。誰とでもフレンドリーに接することができ、他の生徒から怖がられていた時に対しても臆することなく話しかけてきた。学校でも家でも笑顔を絶やさないが、実は苦労人。土岐からは「アニキ」と呼ばれている。

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