キングダム(アシンの物語)のネタバレ解説・考察まとめ

『キングダム』とは、Netflixで配信されている韓国ゾンビドラマで、『神の国』というウェブ漫画を原作としている。『キングダム アシンの物語』はその前日譚である。李氏王朝が覇権を握る朝鮮で王が死んだという噂が街に広がる中、不気味な病が街で蔓延する。本編シリーズは、王都に渦巻く悪しき陰謀から民を救おうと奔走する世子の姿を、一話のみの『アシンの物語』では謎の女戦士アシンの出自を回顧録の形で描く。原作が韓国内外で高評価を得ていたことから、本編シーズン1配信開始前からシーズン2の製作が決定していた。

『キングダム(アシンの物語)』の概要

『キングダム』とは、Netflixで独占配信されている韓国ゾンビドラマ。『神の国』という韓国ウェブ漫画を原作としており、『キングダム アシンの物語』はその前日譚である。李氏王朝が覇権を握る朝鮮で王が死んだという噂が街に広がる中、不気味な病が街で蔓延する。本編シリーズは、王都に渦巻く悪しき陰謀から民を救おうと奔走する世子の姿を、一話のみの『アシンの物語』では謎の女戦士アシンの出自を回顧録の形で描く。ニューヨークタイムズが選ぶ「最高のインターナショナルテレビ番組 TOP10」に選ばれるなど、Netflixでの本編シーズン1配信配信前から韓国内外で高評価を得ていた。そのため、本編シーズン1配信開始時には、既にシーズン2の製作が正式に始められていた。

『キングダム』本編は、2019年1月25日にシーズン1、2020年3月13日にシーズン2が配信開始された。本編の監督は『トンネル 闇に鎖された男』(2016年)で一躍脚光を浴びたキム・ソンフンが手掛け、脚本をキム・ウニが手掛けた。俳優陣には、主役の世子役に『神と共に』シリーズで活躍したチュ・ジフン、キーパーソンとなるソビ役に『ハナ 奇跡の46日間』、『空気人形』、韓国版『RING(リング)』の貞子役等各所で独特の名演を見せたぺ・ドゥナ、ヨンシン役に『悪人伝』のキム・ソンギュを起用。さらに、サプライズで大物俳優がエキストラやゲストとして出演するなど豪華な顔ぶれが揃えられており、韓国ホラードラマ部門の中ではこれまでにない破格のクオリティとなっている。

一方、スピンオフ作品の番外編となる『キングダム アシンの物語』は、本編終盤で登場した謎の女戦士アシンの出自と本編に至るまでの経緯をメインに描いており、本編では判明していしなかった謎が解き明かされる。Netflixでは2021年7月23日に配信開始され、監督、脚本を本編と同じ二人が続投。主人公アシンにはドラマ『Happy Together~ハッピー トゥギャザー~』でイ・ビョンホンらスター俳優たちと共演した人気女優チョン・ジヒョンが起用された。本作は、本編で謎の病の流行によるゾンビ化を主人公の世子たちが食い止めようとしていたのとは反対に、家族や仲間を殺されたアシンがゾンビ化の原因となる植物「生死草」を利用して次々に関係者に復讐していくというダークなストーリーとなっている。また、シリーズ作の本編とは異なり、90分の1話のみで完結する内容となっていることから、序盤から終盤まで通じて怒涛の展開が見られるのも特徴である。
本編、番外編を通じて、ゾンビホラーと時代劇という異色の組み合わせの下にストーリーが展開しており、韓国ゾンビホラージャンルでは人気作となった『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『生きている』とはまた違ったテイストの斬新な作品となっている。

『キングダム(アシンの物語)』のあらすじ・ストーリー

王の死

父である王の病変についての診療記録に偽造の疑いを抱いた世子(左)は、ムヨン(右)を連れて医師を探す旅に出る。

李氏王朝の時代、王都では王が病に倒れたとの噂が出回り、「王は死んだ。新しい風が吹くだろう」という怪文書が都中に貼られるまでになっていた。王は天然痘だというお触書を見ていた人々の間では、実際の王の容態について議論が交わされるようになってしまう。王が不在の中、政治中枢で実権を握りつつあったチョ・ハクチュは、領議政(ヨンイジョン)という最高官職としての影響力を行使し、不敬な怪文書の撤収に係る。そして、怪文書をばら撒いたと思しき者であれば民であれ宦官であれ容赦なく切り捨てるようになり、この一件を利用して反対勢力である儒生を不敬罪で大量に投獄してしまった。彼らに不実の罪を着せるための自白を引き出すべく拷問を始めたハクチュに儒生らは「チョ氏こそ逆賊だ」と訴える。そんな彼らに対し、ハクチュは「新たな王に誰を望む?世子(せじゃ)か?」と凄むのであった。

王には息子(世子)がおり、名をイ・チャンといった。チャン世子は王が側室との間に作った子であり、正当な王位後継者ではなかった。これに目をつけたハクチュは自分の娘を王妃にし、彼女との間に出来た子を王位継承者にしようと企んでいた。チョ王妃は継妃としてチャン世子に接して慇懃無礼な態度をとり、彼を王家から排除しようとして対立していたのである。チャン世子は容態が明らかでない王である父との謁見を試みるが、継母であるチョ王妃とその従者が皆これを拒絶したため、叶わなかった。彼は護衛(チャイギ)である腹心のムヨンを頼りに、王の診療記録の残された薬房日誌を手に入れようと王宮に侵入する。彼が王宮の廊下を歩いていると、獣のような唸り声をあげ、血生臭い悪臭を放つ怪物を目にしたが、目撃情報を知らせても誰も取り合わなかった。そんな中何とか日誌を手にして記録を辿るが、医師により毎日記録されているはずの日誌に不自然な空白が続いていることを確認する。医師の治療記録に不信感を抱いた彼は、記録を残したイ・スンヒ医師を探すべく人里離れた東菜(トンネ)に向けてムヨンと旅に出た。

その頃、東菜にある診療所「持律軒」では、女医のソビを中心に医女たちがひっきりなしに患者の手当に当たっていた。東菜では飢えに苦しむ貧困層の住民が多く、ろくに食べ物すらもない状態。何も食べなければ治療の効果も出てこないことから、医女たちは困り果ててしまう。そんな中、指導医で施設責任者のスンヒ医師が王都から帰ってきたとの吉報が入り、医女たちは少しは肩の荷が下りると顔をほころばせる。しかし、彼が引いている荷台の上には、無残な遺体となった助手ダニが横たわっていた。ダニは、スンヒと治療薬の注射のために王に謁見した際、不気味な唸り声をあげる怪物に寝殿に引きずりこまれて噛み殺されていたのだ。しかし、スンヒは彼の死因については何も語らなかった。

ソビは薬草を採りに出かけ、帰ってくるとなぜか皆が肉汁をすすっていた。食料がないはずであることを疑問に思いながら厨房に赴くと、そこでは数日前から持律軒に居座っている謎の男性ヨンシンが料理をしていた。彼は皆に鹿汁を振る舞ったのだとシラを切ったが、ソビが汁の中を覗いてみると、そこには人の指が入っていた。彼女に問い詰められたヨンシンは、ダニの亡骸を解体して肉汁にしたことを悪びれもせずに白状し、そうでもしないと患者たちは飢え死にしていたと開き直った。しかし、料理が振る舞われてから数時間が経った頃、患者たちは突然苦しみだし、肉汁を食べた者は全滅した。ソビとヨンシンが原因が分からずに戸惑っていると、彼女らはあり得ない光景を目にしてしまう。なんと、死んだはずの患者たちが動き出し、生きた人間を貪り始めていたのである。

一方、王都では怪文書をばら撒いた主犯格をチャン世子であるとして謀反の罪を着せようと画策していた。ハクチュは彼を逆賊として捕えるよう軍に命じたが、既にチャン世子が都から出た後だった。これにより逆賊の名を着せられ、軍から追われる身となってしまう。しかし、彼は実際に怪文書をばら撒いていた。彼は側室の子である自分の身分は不安定なもので、自分の子を王の跡継ぎにしたいチョ王妃にとっては邪魔な存在であることを察知していた。そして、いつ殺されるかわからない自分の身を憂いて謀反を起こしたのだとヨンヒに語った。軍に追われながら東菜を目指して数日が経過したころ、彼らはようやく持律軒にたどり着く。しかし、診療所の門には杭が打ち付けられ、屋根の上には侵入防止用の先端の尖った竹が並べられており、異様な雰囲気を漂わせていた。二人が慎重に持律軒の中に入ると、床下には48体もの死体が転がっていた。役人たちを呼んで遺体は役所へ運ぶことになったが、その中にはスンヒらしき遺体が見当たらなかったことから、チャン世子はスンヒの捜索を続行することに決める。そして、彼が町で聞き込みをしていると、医女ソビが山中の氷の谷にいるという情報を入手した。

彼が情報を基にソビに会いに行くと、彼女は谷に植生している「生死草」とその秘密について語り始めた。そして世子は彼女から、彼女の師匠であるスンヒが「ある人間」に生死草を用いて蘇らせたこと、スンヒは死ぬ間際に生死草があれば死体が怪物として蘇る謎の病(ゾンビ化)を治せると言っていたことを聞き出した。彼は、「ある人間」が自分の父のことだと直感する。一方、ソビは彼らが48体の遺体を役所へ運び出したことを知ると動揺し、「あの者たちは死んでいません」と慌てふためいた様子で言い放った。遺体が役所に運び込まれる様子を目撃したヨンシンは、ソビ同様激しく動揺し、運び込まれた遺体に次々に放火していくが、役人に取り押さえられて投獄されてしまう。そこに駆け付けたソビは夜になると死体が動き出すと懸命に訴えるが奏功せず、ついに夜が訪れてしまった。役所は大混乱となり、動き始めたゾンビにより多くの住民が噛みつかれてゾンビ化してしまった。ヨンシンは東菜の役人チョ・ボムパルと共に、牢の中で何とか耐え忍んだ。

夜明けになるとゾンビは活動を休止し、一斉に日陰で眠り始めた。生存者たちは役所に集まり、チャン世子からの指示を受けて行動することになる。彼は役人たちに、ゾンビは首を切断するか活動を始める前に遺体を燃やすように、また民を船で東菜まで避難させるように指示した。しかし、ボムパルとその側近の役人たちは彼の指示を無視し、遺体を燃やす責務を放棄して自分達だけ一隻しかない船に乗って東菜を離脱したのである。船着き場で立ち往生する住民たち。ソビは診療所でもう一晩凌ぐことを提案した。住民とソビ、ヨンシン、チャン世子は夕方頃目覚めたゾンビから逃れ、持律軒で一晩を明かす。ところが、その翌日、ハクチュの命令でチャン世子を捕えようとやってきた軍が建物めがけて矢を放ってきた。軍に襲われ、多くの民が死亡する。ヨンシンが狙撃手として応戦し、チャン世子は霧に紛れて軍官を打ち倒した。世子たちは辛うじて生き延び、世子が王宮にいたころの元師匠アンヒョン大監に助けを求めることになった。

チョ一族の陰謀

妊娠している風を装うために腹に入れた詰物を外すチョ王妃。

道すがら、チャン世子一行は逃げ出したはずのボムパルを見つける。彼の話によると、船に積まれていた遺体がゾンビになって夜に暴れ始めたため、船に乗っていた役人や貴族は皆ゾンビ化し、自分だけ川を泳いで逃げ延びてきたのだと言う。そして、船が今尚州を漂っているはずだと聞いた世子は、尚州に向かうことにする。一行はある村に立ち寄るが、そこはなぜか飢え知らずの様子。世子は、村民が船から物資を調達したのだと察し、遺体の場所を聞き出した。その後、船にあった遺体を沿岸の土中に埋めたという情報をもとに指定場所に赴くが、日が暮れたため埋めてあった遺体が一斉にゾンビとして動き出した。取り囲まれてしまう世子たちは絶体絶命の危機に陥るが、そこにアンヒョンが兵隊を率いて救いに現れ、ゾンビたちを一掃した。やっとアンヒョンのもとに避難する世子たちであったが、そこでソビがおかしな点に気づく。「アンヒョン大監はゾンビの処理に慣れているようだ」と。

一方、ハクチュはチョ王妃の息子が生まれるのを心待ちにしていた。妊娠している王妃は予定であればあと1か月ほどで出産し、その子を王位継承者にすればチョ一族の権力体制も盤石なものとなるからであった。世子を捕えようと躍起になるハクチュ。そんな彼の言いなりになり、抑圧されているチョ王妃は、実は妊娠などしていなかった。不妊症の彼女はお腹に詰め物をして、妊娠しているかのように誤魔化していたのである。そして、1か月後に子供が生まれてくるはずだとハクチュについた嘘との帳尻を合わせようと画策する。漢陽の都では身寄りのない妊婦を世話する施設があったが、チョ王妃は世話をする裏で妊婦が出産した子供を奪取し、その子が男の子でなかった場合は母子ともに暗殺していた。彼女は、奪い取った男の子を自分の産んだ皇太子として育てるつもりだったのだ。その施設には、出産を控えたヨンヒの妻も監禁されていた。

同じ頃、ソビはボムパルと共に氷の谷へ生死草を摘みに出かけていた。彼女に想いを寄せるボムパルは、生死草を見つけて彼女に良いところを見せようと尽力するが、却って足を引っ張ってしまう。あきれたソビが氷の谷で生死草を摘んだその時、泉を挟んだ向こう側に昼間は動けないはずのゾンビが現れる。しかし、ゾンビは水を渡ってくる様子はなく、対岸で唸り声をあげて立ち尽くしていた。そこで彼女はゾンビの弱点が太陽ではなく、気温であることに気づいた。ソビは崖をよじ登って谷から脱出し、後を追うボムパルはゾンビについて尋ねる。彼女は、生死草はゾンビ化を治療するための薬草ではなく、人をゾンビに変える原因であると答えた。さらに、ゾンビが寒冷地に植生する生死草の特性を引き継いでいるのであれば、高温を苦手とすることと辻褄が合い、季節が冬になり昼間の気温も低下したことから、ゾンビが昼間でも活動できるようになったと推測できると語った。ボムパルは、ひとまず安全地帯に避難しようと彼女に提案し、叔父であるハクチュがいるムンギョン峠に向かう事を決めた。

ハクチュは過去に一人息子を失くしており、一族のうち跡取りとなる男児は甥のボムパルだけであった。そのため、彼の頼りなさには目をつむり、ムンギョン峠に訪れた彼を保護して部屋を与えることにした。一方、ハクチュは王の治療にスンヒを立ち会わせ、生死草を煎じたものを薬として王に飲ませていた。そのため、生死草の特性について彼は独自に研究しており、頼りになりそうな医女のソビにも部屋を与えて利用しようとするのであった。

その頃、尚州ではチャン世子、アンヒョン、ヨンシンらがゾンビの大群を迎え撃つため、夜に備えて大規模な陣地を作成していた。彼らは予行演習を終え、一旦陣形を解いた。しかし、彼らの思惑とは異なり、その直後に昼間にもかかわらずゾンビの大群が押し寄せてきたのだ。予想外の事態に陣は総崩れとなり、チャン世子らはアンヒョン邸に退避することになった。逃げ延びた世子らは作戦会議を始める。意を決したチャン世子は「ムンギョン峠に行き、ハクチュを殺す」と宣言した。その後、チャン世子、ムヨン、ヨンシン、アンヒョンらはムンギョン峠の中央陣地に到達する。しかし、意外にも陣内は閑散としており、何か罠があるのではないかと考えるヨンシン。彼の予想通り、チャン世子が陣内中央の建物に乗り込むと外から施錠され、そこにはハクチュの姿はなくゾンビ化した王が歩き回っていた。父である王の姿を前にして、情が湧いてきてうまく対処できないチャン世子。一方、建物の外では、アンヒョンとハクチュが対峙していた。アンヒョンはチャン世子を助け出そうと建物の扉を開けようとするが、ハクチュの部下に撃たれてしまう。彼が何とか扉を開けると、そこにはゾンビとなった王の首を刎ねて茫然とする世子の姿があった。アンヒョンは彼の耳元である作戦を伝えると、そのまま息を引き取ってしまう。そして、世子は王を殺した大罪人として、ハクチュに捕らえられてしまった。翌日、都では王の崩御が伝えられた。

その後、郊外では河川附近で母子の遺体が大量に見つかった。大量殺人を看過できない御営庁の役人たちは、調査を進めるうち、チョ王妃に疑いを抱くようになる。そして、証拠を見つけるため王妃の私邸を調査することになった。一方王都では、チャン世子を含めた罪人たちの処刑が行われようとしていた。世子は、様子を見に来たソビに、守衛にばれないよう伝言をする。処刑の時間となり、ハクチュの前に引っ立てられる世子たち。しかし、世子は縄を切ることに成功し、反撃を試みる。ハクチュの悪政に反対する役人らと結託して、ハクチュ率いる軍団と乱戦を繰り広げる世子たち。そこに、一体のゾンビが現れて処刑場は大混乱となる。なんとそのゾンビは亡くなったアンヒョンだった。彼は亡くなる直前に自分が死んだら生死草で生き返らせてゾンビにするよう世子に遺言を残しており、世子はソビに頼んで彼を蘇らせていたのである。生前のハクチュへの執念から、一直線にハクチュへと突進するアンヒョンを誰も止めることはできなかった。そしてアンヒョンは彼の頬をかじり取り、直後に世子に首を刎ねられた。

王都陥落

王都に溢れかえるゾンビに立ち向かう世子(画像中央)とその仲間たち。

崩れ落ちたハクチュを前にして、チャン世子は、兵士たちに真実を語り始めた。ハクチュが王をゾンビ化させたことや、証拠となる病床日誌もあることを報告された兵士たちは、アンヒョンがゾンビ化するのを目の当たりにした以上、彼を信じざるを得なかった。これによりハクチュの悪行が決定的となり、軍のキム・テフン隊長は世子の側につくことを決定した。一方ソビは、ゾンビ化したアンヒョンに噛まれたハクチュが直ちにゾンビ化しなかった理由を考察しながら、重体の彼の治療にあたっていた。ボムパルが叔父がゾンビ化しない理由について尋ねると、彼女は噛まれたからと言って必ずゾンビ化するわけではない事や、王宮で王に噛まれたダニもゾンビ化しなかった事、噛まれることでゾンビ化するという現象が生じたのは摂律軒の事件以降である事を語った。

他方、チャン世子は、世子一同が奇襲するのをまるで事前に把握していたかのような軍部の対応からして、仲間内に内通者がいるのではないかと疑い始める。彼の予想は的中し、捕えていたハクチュを連れてムヨンが都を出ていったとの情報が入ってきた。ムヨンはハクチュだけでなく、ソビやボムパルをも連行。彼は、未だに妻を監禁されていたことから、ハクチュの身柄と引換えに妻の身柄を解放するための取引に応じざるを得なかったのである。逃避行の最中、ハクチュが危篤状態に陥ったため、ムヨンは小屋で休憩して歩みを止めた。そこにボムパルが要請していた救援兵が現れ、弓でムヨンを狙撃。彼は重傷を負い、ハクチュは奪還された。ムヨンを追いかけてきた世子は大けがを負って命からがら森へ落ち延びたムヨンを介抱する。しかし、彼は最後まで世子を防衛する責務を果たせなかったことを悔やみながら、妻子を彼に託して息絶えてしまった。

都に帰還したボムパルは、ソビに危篤状態の叔父を何とか救ってくれるよう懇願する。彼女は医者としての責務を果たすことを誓い、ゾンビたちが水を嫌う習性があることを思い出して水療法を試すことにした。そして、ボムパルと協力してハクチュの身体を水を張った浴槽につけていく。すると、彼の頬の傷口から線虫のような寄生虫が這いだしてきた。これと同時に、ハクチュは意識を取り戻したのである。以後、生死草の研究を重ねるうちに葉に付いた虫の卵を発見した彼女は、これが人の体内で孵化して成虫となり、脳内に到達して支配することによりゾンビ化が起こるのだと結論付けた。

快復したハクチュは、チョ王妃の住む宮廷に捜査の手が入ったことを聞きつけると、彼女の妊娠の偽造を疑うようになる。一方ソビは、世子にチョ王妃の担当医になって彼女を探るよう依頼されていた。そこで、彼女はハクチュに王妃の担当医にしてもらえるよう懇願する。これを受けたハクチュは、彼女から命を救ってもらった恩を返すべく、あっさりと彼女の申出を承諾した。そして、「王妃に用事があるからついでについてくるように」と言って、ソビと連れ立って宮廷に向かうことになった。二人が王妃の下にたどり着くと、王妃が男児を抱えて座っていた。ハクチュは王妃を怪しんでいたことから、男児を見ても喜ぶことはなく、王妃が嘘をついているかどうか確かめるようソビに促す。彼女は彼の指示通りに王妃の脈を測り、王妃の妊娠が偽造であると結論付け、これを聞いたハクチュは激怒してしまう。彼はチョ一族の血を継がない者が王位後継者になることを決して許すことはなく、不正な手段をとった王妃を幽閉すると言い放った。しかし、直後に彼は吐血して倒れてしまう。なんと王妃は、実父であるハクチュが反対するであろうことを予想して、彼に毒をもっていたのである。一部始終を目撃していたソビは殺されてしまうかに思えたが、彼女がスンヒの弟子であることを聞かされて王妃は、彼女に生死草とゾンビの研究をするよう申しつけた。

ハクチュが倒れたことにより、実権は王の後継者となる男児の出産を偽造したチョ王妃に移ることになる。彼女は反対勢力である世子側の人間とその家族を見境なく次々に捕えていき、着々と処刑の準備を進めるのであった。世子についていたテフン隊長は、世子の居場所を教えることと引換えに彼の一族の命だけは救ってもらえるよう取引を持ち掛ける。これに応じた王妃側は、隊長の情報を基に世子の下へ大軍を送り込んだ。しかし、軍兵がたどり着くとそこはもぬけの殻で、実は世子側が仕掛けた罠であったことが判明する。世子たちは守りが手薄になっている王都の関所を通り抜けると、処刑場に連行された人々を救い、味方につけて宮殿に乗り込んでいった。こうして王妃側の情勢が不利になったことから、チョ一族に反感を抱いていた者たちが続々と寝返っていった。王宮内で一人孤立した王妃は、手下に命じて妊婦を監禁していた施設の地下牢に幽閉していたゾンビを放つよう命令した。

世子たちが正殿にたどり着くと、そこには王妃が玉座に座って堂々と待ち構えていた。玉座は誰にも渡さないと言い放つ王妃。その時、王都内に悲鳴が響き渡った。牢から放たれたゾンビが人々を襲い始め、ゾンビの数が雪だるま方式に増え始めていたのである。世子は宮殿の門を全て封鎖するよう命じ、ゾンビの掃討に当たっていく。しかし、宮廷内でゾンビが増えすぎたせいで、世子一行の手におえる状態ではなくなってしまった。部下たちは「世子様だけでも、裏の庭園からお逃げください」と口々に提案し、犠牲になっていく。絶望的な状況の中、世子は庭園に池があったことを思い出した。彼は奇策を思いつくと、冬の寒さで氷ついた庭園の池の氷を割るよう命じ、ここでゾンビを待ち構えることにした。正殿にはゾンビが押し寄せ、王妃らと待機していたソビはゾンビの弱点である火のついた松明で何とかゾンビを遠ざける。しかし、玉座で沈黙していた王妃はゾンビの餌食となってしまう。ソビは、残された赤ん坊を抱き、火の付いた耐火性の衣をまとってゾンビの群れをかいくぐり、何とか落ち延びる。彼女がゾンビをまくと、抱いている赤子の腕に噛まれた跡があった。彼女は赤子の腕を水に浸して虫を取り除くのであった。

一方、世子の狙い通りにゾンビたちは庭園の池へと集まり始めた。その中にはゾンビ化した王妃の姿もあった。彼はゾンビたちを池に落として活動不能にさせようと考えていたが、中々池の氷は割れない。追いついてきたゾンビたちと戦いを繰り広げる中で、ヨンシン、ボムパル、テフンを含めた仲間は次々に噛まれていき、やがて世子も噛まれてしまう。もはや全滅してしまうかに思えたその時、世子がゾンビに決死のバックドロップを喰らわせた衝撃でついに池の氷が割れた。次々に水中へと落下していくゾンビたち。世子たちも水中へと落下し、噛まれながらも未だ死に至っていなかった世子、ヨンシン、ボムパルのみが生き残った。落下した直後に傷口から寄生虫が這い出ていたためである。そして、水中に落下したゾンビは世子の狙い通り活動停止し、蘇ることはなかった。

ゾンビとの戦いを終えた世子は、生き残った官僚たちから次期の王になることを望まれる。しかし、亡き王妃が偽造していたとはいえ残していた男児の存在が気がかりだった。彼が成長し、チョ王妃が世子の影響で死んだことを知れば、復讐心を起こして国に混乱が生じかねないと考えたからだ。官僚たちは、「赤子を生かせばいつか謀反が起こります。災いの種は、今ここで殺すべきです」と彼に提言する。しかし、世子は悩んだ末に自分は王としてふさわしくないと言い、自分は死んだことにして男児を次期王位継承者に立てるよう申し向けた。彼は、王である父の首を刎ねた大逆人である自分には王位は相応しくないというもっともらしい理由をつけると、王都を去ってしまった。

7年後、男児は成長して王となっていた。官僚たちはチャン元世子に言われた通り王に真実を告げることはなく、幼き王を立てていた。しかしある日、王の手首の傷痕に異変が起きる。虫の形をした傷痕が手首から腕、腕から肩、肩から額、そして頭へと移動していったのである。一方、チャン元世子はソビと生死草を巡る探求の旅に出ていた。ソビは、7年前の事件以降、生死草と怪物化の関係についての研究結果を記した書物を刊行し、後の世の感染症医学に大きな発展をもたらしていた。しかし、王都の外では未だにゾンビ化現象が目撃されており、チャンらは7年前の悲劇を二度と繰り返さないよう奮闘していたのである。ある日、生死草を売る闇商人の噂を聞きつけたチャン一行は、情報を頼りに北へと向かう。彼らが目的地にたどり着くと、そこには足に鈴をつけたゾンビと、ゾンビを飼いならす謎の女戦士アシンの姿があった。

アシンの物語

家族を皆殺しにされた少女アシンは、助けを求めに朝鮮陣営のミン・チロクの下へ赴く。

アシンは幼い頃に悲しい過去を背負う身であった。漢陽の都で王が謎の病に倒れる数十年前、朝鮮半島南部には倭国(日本)の軍隊が攻め込んできていた。これを受けて、北部では川を挟んだ朝鮮国境近くで暮らしていた女真族が一派閥である婆猪衛(パジョウィ)の部族長アイダガンの下に集結していた。日本からの侵略を食い止めようと国が戦力を朝鮮南部に差し向ける中、女真族にまで内乱を起こされては国家存亡の危機となりかねない。そこで朝鮮政府は、女真族の内部情報を得るために朝鮮に帰化した女真族の一派である城底(ソンジョ)野人をスパイとして利用することになった。

城底(ソンジョ)野人の血を引く一族は藩胡(ポノ)村で貧しい生活を送っていた。朝鮮人とも女真族とも認められないアシンの一族は両方から蔑まれていたのだ。アシンの一家は彼女とその弟、病床に伏した母と村長の父タハブの4人家族。アシン一家の暮らし向きもやはり苦しかったが、それでも彼女は家族との幸せな日々を過ごしていた。彼女は、村の近くにある廃四(ペサ)郡は王家以外の者は立入禁止であり、また危険だから決して入らないようにと父に言われていた。しかし、彼女はしばしば父の言いつけを破り、母の療養になるようにと朝鮮人参を探しに廃四郡へと立ち入っては怒られていた。ある日、彼女は森の中で不思議な祭壇を見つける。その祭壇の周辺には見たこともない不思議な草が生えており、祭壇には「死者を生き返らせる草」について記されていた。そして、「使えば代償を伴う」とも記されていた。彼女が帰宅して父に祭壇の事を告げると、いつにも増してひどく叱られるのだった。

数日後、廃四郡で婆猪衛の女真族15人の惨殺死体が発見される。現場に赴いた高官のミン・チロクは、それが朝鮮人の仕業であることに気づく。仲間を殺された婆猪衛の一族が朝鮮に対し復讐に出ることを恐れた彼は、藩胡村のタハブの下を訪れ、彼に密偵として婆猪衛は虎に殺されたという嘘の噂を広めるよう命令した。この話を聞いたアシンは、武芸に優れた婆猪衛が虎一匹に15人も殺されるのはおかしいと言い、信用できない朝鮮からは離れて他の女真族と一緒に暮らすことを提言する。しかし父タハブは、祖先を助けた朝鮮を裏切ることは出来ないし、仕事を成功させれば、高官になる途も用意されているからと言って彼女を諫めて出ていった。

チロクは噂を婆猪衛に信じ込ませるために、虎刈りのふりをすることを画策する。彼は軍隊と女真族の男性を動員し、そこに婆猪衛も真相を探るために尾行してきた。しかし、山の中から現れたのは虎の姿をした化け物であった。動員された男性数名と婆猪衛数名の犠牲を出しながら、部隊は何とか化け物の息の根を止めることに成功する。だが、化け物の腹の中は腐っていて、15人も食べているはずなのに遺体の一部すら出てこなかった。これにより仲間を朝鮮人に殺されたと確信した婆猪衛の生き残りは、朝鮮への復讐を宣言するのであった。

翌日、容態が悪化した母のためにアシンは山に生死草を摘みに行った。その帰り道、彼女は屋で射殺された婆猪衛の死体を発見する。やはり婆猪衛を殺したのは虎ではなかったのだと実感するアシン。そんな彼女が急いで帰った先で見たものは、川を超えてやって来たアイダガンの部隊により焼き払われた村と、惨殺されて晒し者にされた仲間の死体、女真族の陣営に嘘の噂を垂れ流しに行った父の首飾りであった。父はスパイであることがばれて処刑されていたのだ。そして目の前で弟をも殺されたアシンは、無我夢中で朝鮮軍営である楸坡鎮へと向かう。そこでチロクと面会した幼い彼女は、「何でもするから村と家族を滅ぼしたアイダガン一味に復讐してください」と涙ながらに何度も懇願するのであった。彼女の姿を見ていたたまれなくなったチロクは、彼女を朝鮮陣営で育てていくことを受け入れた。

それから約20年後、アシンは朝鮮陣営で働きながら成人を迎えていた。彼女に寝床として与えられたのは家畜小屋であったが、劣悪な環境の中で暇を見つけては森で弓の練習をし、彼女は父親と同じように立派な密偵となっていた。そんな中、朝鮮陣営に陣を南下させるよう王名が下る。そして、アシンは川を下り、婆猪衛の陣営を探ってくるように命令を受けた。これに従い、夜闇に紛れて婆猪衛の陣営に忍び込むアシン。途中で警備に見つかりそうになってテントに身を隠すが、そこで目にしたのは牢の中で四肢を切断されて畜生としての扱いを受ける父の姿であった。久々に再開した父が見るも無残な姿になってしまっていることで泣き崩れる彼女。しかし、父は生きる希望を失くし、久々の娘との再会に喜ぶ素振りすら見せず、ただ「殺してくれ」と繰り返すばかりであった。そんな父を早く楽にするほかないと考えた彼女は、断腸の想いで父を殺してしまう。そして、偵察だけにとどまらず婆猪衛の陣営を滅ぼすことを決意したのであった。

朝鮮陣営へと戻ったアシンは、チロクと彼が率いる部隊数名とすれ違う。その中にいた位の高そうな男が矢筒に入れている矢の羽を見て、彼女は村が焼き討ちされた日に見かけた婆猪衛の死体に刺さっていた矢と同じものであることに気づく。そして、その矢を入れた矢筒を抱えていた男こそが、あの日婆猪衛を射殺したチョ一族のボミルだったのだ。朝鮮陣営に疑いを抱き始めた彼女は、夜中に陣営の執務室に忍び込んで、四郡の女真族が殺された記録を探した。そして、やっと見つけた該当記録には、チロクの筆跡で、廃四郡に入った婆猪衛を皆殺しにし、弔い合戦を避けるために城底野人の藩胡村を犠牲にして難を逃れたとの記載があった。チロクは、虎狩りをした日に、婆猪衛の残党に仲間を殺したのは城底野人であると嘘を告げ、復讐の目を藩胡村に向けさせていたのである。こうして彼女は、婆猪衛だけでなく朝鮮も復讐の対象とすることを決めた。

彼女は、女一人で陣営相手にどう復讐を果たすかを考えた末、生死草を利用することに決める。手始めに、何年にもわたって彼女を辱めてきた男が夜に現れるのを待ち、男を背後から刺し殺した。そして、眉間から生死草のエキスを注射し、生きても死んでもいないゾンビの状態にすると、これを陣営内部に放ったのである。ゾンビ化した男性は軍営で人を食い殺し始め、殺された人間は次々にゾンビとなって人間を襲っていった。アシンは安全な屋上へ避難し、逃げようとする者や隠れようとする者を一人も逃さずに弓で狙撃していった。軍営を全滅させた彼女は火を放つと、兵士一人を生け捕りにしたまま藩胡村へ連れ帰る。その後村の廃墟にたどり着くと、そこにはゾンビとなった村人が何人も鎖につながれていた。

今までは小鳥や鹿の死骸を持ってきても興味を示さなかった元村人たちは、生け捕りにされて袋詰めにされた男を見ると一斉に唸り始めた。そして、彼らにやさしく「これまでは与える食べ物が間違っていたね」と語り掛けながら、アシンは男を生きたまま彼らに食わせたのである。食われていく男を見ながら、村での幸せな生活を思い出すアシン。彼女は婆猪衛と朝鮮人を根絶やしにしたら、自分も彼らの後を追うと言うと、廃墟を後にする。そして、町に繰り出したアシンは、取引のためにある人物と接触する。それは、ソビの師匠であるスンヒ医師だった。そして、彼女は生死草をスンヒに渡すと、「人を生き返らせる」方法について彼に説明し始めるのであった。

『キングダム(アシンの物語)』の登場人物・キャラクター

『キングダム』の主要人物

世子/イ・チャン(演:チュ・ジフン)

『キングダム』本編の主人公

李氏王朝の王の息子(世子/せじゃ)。父の罹患した病の謎を探るために旅に出る。チョ一族に王権を剥奪されるも、徐々に一族の不正を暴いていく。

チョ・ハクチュ(演:リュ・スンリョン)

王妃の父で、最高の中央官職である領議政(ヨンイジョン)を務めている。王妃の力を利用して、権力をほしいままにしようと画策する。

ソビ(演:ペ・ドゥナ)

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