終わりのち、アサナギ暮らし(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『終わりのち、アサナギ暮らし』とは、『Alterna pixiv』で掲載され、『マックガーデン』から発売されている森野きこりによる漫画。全3巻が発売されている。放浪癖のある父を山奥の小屋で1人待つ少女ナギが、ひょんなことから蜘蛛のような不思議な生き物アサと出会う。1人と1匹の不思議な同居生活を食事を通じて描いた優しい雰囲気の日常系グルメ漫画でありながら、どこか終末の世界観を漂わせているのも魅力。料理の過程が丁寧に描かれているのも見どころである。

『終わりのち、アサナギ暮らし』の概要

『終わりのち、アサナギ暮らし』とは、『Alterna pixiv』で掲載され、『マックガーデン』から発売されている森野きこりによる漫画。2017年3月に第1巻が発売され、全部で3巻が発売されている。優しい雰囲気の日常系グルメ漫画でありながら、どこか終末後の世界観を漂わせているところも魅力的である。料理の過程が丁寧に描かれているのも見どころだ。
旅に出たまま帰らない父親を山奥で待ちながら一人暮らしをしている主人公の少女ナギは、ある朝、蜘蛛のような不思議な生き物アサと出会う。家についてきてしまったアサが、ナギの作った料理を全部食べたことから共同生活が始まる。一人暮らしで寂しい思いをしていたナギは料理を全部食べてくれる存在に嬉しくなって、1人と1匹は料理を通して心を通わせていく。姿かたちが違っても、毎日を一緒に過ごし、日々ご飯を食べて生きていく1人と1匹の物語である。

『終わりのち、アサナギ暮らし』のあらすじ・ストーリー

出会い編

山小屋で一人暮らす少女ナギは畑へ収穫に来ていた。大きなかぼちゃを抱えて何を作ろうか考えながら帰路についていると草むらがカサカサと動いているのに気づく。草むらに近づいたナギは蜘蛛のような大きな生き物に出会う。

蜘蛛に見えたがあまりに大きい為ナギは驚いて座り込んでしまった。蜘蛛はナギを心配したのか手を伸ばしてくるが、ナギは咄嗟に「来ないで!」と叫び逃げ出した。かなりの距離を走り逃げられたと安心したナギだったが、蜘蛛はナギに付いてきていた。ナギが必死に「来ないで!」と言うと蜘蛛は言葉がわかったのか近くの木に隠れ、逃げる時に置いてきてしまったかぼちゃをそっと置いた。少し警戒を解いたナギはかぼちゃを拾い蜘蛛にお礼を言って家に帰ろうと歩き出したが蜘蛛はナギの後をついてきてしまう。ナギは蜘蛛の事を悪い蜘蛛ではないと感じていたが、どうしてついてくるのかがわからなかった。しばらく歩くと、蜘蛛のお腹が大きく鳴り、お腹が空いているからナギについてきたとわかったのだった。
家に着いたナギは蜘蛛にあげる為に家からハムの塊を持ってきた。蜘蛛にハムの塊を差し出してみるが気に入らないのかハムを投げてしまった。生肉が良いのかと思ったナギは鶏肉を差し出したが、これも投げられてしまう。ナギは思いつく限りの食材を渡してみたが全て気に入らないようで食べなかった。蜘蛛が何を食べるのかわからず、ナギもお腹が空いたのでいったん蜘蛛のことは諦めて食事をとることにすると、一緒に家に入ってきてしまった蜘蛛は何かを訴えるようにナギを見つめてきたのだった。蜘蛛に部屋にいる事を許したナギはかぼちゃの料理に取り掛かることにした。

かぼちゃを料理するナギを蜘蛛は興味深そうにじっと見つめていた。完成したのは「かぼちゃのおやき」。できたてもちもちのおやきを頬張ると、蜘蛛もナギの真似をして頬張る仕草をした。食べたいみたいだと感じたナギが蜘蛛におやきを差し出すと、蜘蛛は大きな口を開け一口で食べてしまう。おやきを食べた蜘蛛はナギに飛びつくと、ねだるように頬ずりしてもっと食べたいと訴えた。蜘蛛はおやきを全部食べ、ナギは久しぶりに料理のお皿が空になったことに嬉しくなって蜘蛛をそっと撫でた。すると蜘蛛はナギの仕草をまねてナギの頭を撫で、ナギを恥ずかしがらせたのだった。ナギは栗拾いに山へ蜘蛛を連れて歩きながら旅に出たまま戻らない父親のことを話した。ナギは帰ってこない父親を山小屋で一人待っているのだ。視界が開けた場所に出て麓を見下ろすと、そこには水に半ば沈む壊滅した都市があった。

栗拾いを始めたナギは栗を拾って食べてしまった蜘蛛を見て父親と栗拾いをしたことを思い出していた。寂しさを感じていたナギは蜘蛛にアサという名前を付けて一緒に暮らさないかと言ったのだった。言葉の通じないアサに何を言ってるんだろうと恥ずかしくなったナギは寂しさを感じながらもアサに別れを告げて帰ろうとする。するとアサはナギの荷物を引っ張って引き留め、一緒に歩き出したのだった。

お出かけ編

ナギとアサが一緒に暮らし出した初めての朝。朝ご飯を食べながらナギはアサについて考えていた。アサには家の中で過ごしてもらっていたがもともと外で暮らしていたアサに無理を言って嫌われたくなかった。そこでナギはアサが外で過ごせるようにお弁当を持って出かけることにした。お弁当に持っていく「みそ入りラタトゥイユ」を作り、アサと一緒におにぎりを作った。お弁当が完成したのでナギとアサは早速ピクニックに出かけた。

アサがお弁当を頭にのせて運び、ナギのおすすめピクニックスポットに向かった。ナギのピクニックスポットは森の開けた場所にあり、花が咲き乱れるきれいな場所だった。楽しくお弁当を食べていると、突然アサが何かに反応して森の方を見た。ナギが森を見ると野犬が威嚇しながら今にも襲い掛かってこようとしていた。ナギは咄嗟に逃げることもできずにいると、アサが野犬を殴り飛ばす。獣のように叫び野犬を襲おうとするアサをナギは咄嗟に止める。野犬は逃げていきアサは何事もなかったように戻ってきたが、アサとは何となく通じ合えると思っていたナギは恐怖を感じていた。ナギはアサのことをもっと知って理解しなければと思いを新たにしのだが少し落ち込んでしまった。落ち込んでいるナギとは反対にアサはお弁当を食べるのを再開していた。おかずを食べたアサはあまりの美味しさにナギの周りをぐるぐる回って美味しさを表現して、楽しそうに回るアサを見たナギは思わず笑ってしまう。先ほどの怖かったアサも楽しそうにはしゃぐアサも同じアサだ。これからいろんなアサを知りたいと思ったナギはとりあえずごはん以外のコミュニケーション方法を見つけなければと思うのだった。

人との出会い編

ある雨の日、アサはナギの父親の物を漁って遊んでいた。アサはいろいろなものに興味津々で漁ったものをナギに見せてはこれが何なのか聞くようなしぐさをしていた。ナギはそんなアサの様子に、村の市場に連れて言ったら喜びそうだと思ったのだが村の人たちが怖がるだろうと考えを打ち消した。買い出しの事を考えていると、ドアをノックする音が聞こえる。ドアの外には大きな荷物を抱えた全身びしょ濡れの男の人が立っていた。ナギは、びしょ濡れの男性に傘とタオルを貸すことにしたのだが、ナギの後ろから姿を見せたアサの姿を見た男性は驚いて気を失ってしまったのだった。倒れた男性をアサに運んでもらい部屋で寝かせると濡れた服を脱がせて干した。しばらくして男性が目を覚ましたのでナギはアサを紹介することにした。男性は蜘蛛のような生き物と一緒に暮らすと言うナギに驚いたようだった。男性も自己紹介しようとしたが、冷えたためか、くしゃみが出てしまう。ナギは男性の体を温める為「かぶのみぞれ汁」を作ることにした。アサに手伝ってもらって作った「かぶのみぞれ汁」は落ち着く味でとてもおいしくできた。食事で体が温まり一息ついたところで男性は改めて自己紹介をすることにした。男性は行商人で村の人から山の中に女の子が一人で住んでいると聞いて心配になり見に来たのだと言った。男性はナギとアサの言葉が通じていなくても信頼し合っている様子に自分もアサと仲良くなりたいと言ってアサに手を差し出した。アサは差し出された手の意味がわからず、とりあえず男性の手を舐めたのだった。和やかな空気の中、天井から雨漏りの音が聞こえてナギは慌てて上の階に走った。

ナギが見たのは割れた窓から吹き込む雨にぐっしょりと濡れたソファーと荒れた部屋だった。あまりの被害に呆然としてしまったナギは、床に落ちていたつるの葉を見つけてアサが犯人だと気づく。男性は窓を修理しようとするが手持ちの道具では応急処置しかできない。男性は本職の人を呼んで修理してもらうのは村の人にアサを紹介するいい機会じゃないかと言った。とりあえず応急処置のために材料を探しに外へ出て板を探していると、ガスマスクを着けた怪しげな人物が猟銃をこちらに向けて近づいてきたのだった。男性が銃を下すように説得するが、アサを化け物と言って聞く耳を持たなかった。アサに銃を向けられているのが我慢できなかったナギは、アサの前に立ちふさがり銃を下すように言った。それでも銃を下ろそうとしないガスマスクの人物に男性は怒りを露わにして銃を取り上げた。男性はナギに謝りガスマスクの人物は娘のベルだと言ったのだった。しぶしぶ銃を下したベルを連れてナギの家に行き、アサと男性は雨漏りの修理をし、その間ナギはベルとお茶を飲むことになった。ベルは不機嫌そうにアサについてナギに尋ねたのだが、ナギにもアサが何の生き物なのかわかっていないので答えられなかった。ナギが正体のわからないものと暮らしていると知ったベルは、ナギの事をバカだと罵った。ベルにはアサのことが凶暴な人食い蜘蛛に見えていたのだ。修理を終えた男性がそこへ来てベルをそっと止めると、アサに関して男性が考えたことを語った。アサはまだ幼い子供のようなもので野生の生活を知らないから今のうちに人と接することに慣れれば今後猛獣と呼ばれずに済むかもしれない。ナギはもしもアサが野性を知ってたら仲良くなれなかったかもしれないと思って寂しくなった。男性は落ち込むナギに「たとえ違う種の生き物同士でも心の通じた相手のことはちゃんと分るものだ」と言って元気づけたのだった。まだナギとアサの事を認められないベルだったが、みんなでご飯を食べることになった時、ナギの作った高野豆腐の唐揚げを食べてナギを見直した。ベルはナギの為に窓を直してくれる人探しを手伝うことにしたのだった。

町の市場編

朝早く。人探しのついでに朝市に行くために早起きしたナギ達は山の麓にある村に来ていた。
ナギはアサが人に拒絶されたらと思うと尻込みして村に入れなかった。ベルはそんなナギを見かねて「出ていけば何とかなる」と言って背中を押した。ナギが思い切って朝市を見ていると、顔見知りに声をかけられてアサを見られてしまう。すぐに化け物だと騒ぎになり、住人とアサは一触即発となってしまう。そこへオババと呼ばれる年をとった女性が現れて事情を聞いた。ナギは必死にアサは怖くないことやまだ子供なことを話したが、住人は、良いところだけ見るのはとても危険なことだと言って取り合わなかった。両者の意見を聞いたオババは、いったん場所を移すことを提案してついて来るように言って歩き出した。料理に使う道具を並べるオババについてきた住人たちやナギたちは何が始まるのかと首を傾げた。オババは「お腹が空いているから機嫌が悪くなって話し合いがうまくいかないんだ」と言って、くるみ汁粉を作った。配膳を手伝うアサを見た住人は意見を改め、ナギの意見を聞き入れようと努力すると言ったのだった。
話し合いが終わり、オババはナギに今回はいつもと違って大人数で来た理由を尋ねた。ナギは大工を探す手伝いをしてもらっていると話した。オババは大工の住人がいたかどうか思い出してみたが現役でやっている者はいなさそうだった。オババは最近越してきた住人の中にいるかもしれないと言って探してみるようにナギに言ったのだった。

消えたアサ編

オババと話している間にアサがいなくなってしまった。すると住人が養鶏小屋が壊されて鶏がいなくなってしまったと騒ぎだす。養鶏小屋を見に行くと獣の爪痕が付けられていた。住人たちはいなくなったアサの仕業じゃないかと言ってナギを責め、ナギはアサの事を信じていたが、ちゃんと見ていなかったことを後悔した。ベルは泣いて落ち込むナギを叱咤し、男性はナギが何を守りたいのかと問いかけた。2人の言葉でナギはアサを探すことを決めてアサを誘き寄せる為に料理をすることにしたのだった。ナギはベルに手伝ってもらいながらホワイトシチューを完成させた。
ホワイトシチューの匂いにつられて現れたのは野犬の群れだった。ナギとベルを守るため野犬と戦う男性だったが数が多く苦戦していた。そこへ住民たちが野犬へ網を投げ、野犬を捕獲することができ一安心した。ほっとしたところに鶏を連れたアサが現れアサが鶏を襲ったという誤解が解けたのだった。住人の一人オレグはアサの事を化け物と呼んでまだ認めてはくれなかったが、そのほかの住人はアサの事を名前で呼んで疑ったことを謝ったのだった。

風変わりな男編

次の日、村の中を自由に歩けるようになったのでナギとアサとベルは村に大工探しの続きをしに来ていた。オババから聞いた最近村に引越してきた人を探して村の人たちに聞いて回ったがなかなか見つからない。オババの勘違いじゃないかと思った時アサが蝶を追いかけて森へ入ってしまった。慌てて追いかけたナギとベルがたどり着いた先には海に浮かぶ廃船があった。
アサにどこか似たものを感じたナギは廃船をきれいだと思った。廃船に興味を持ったらしいアサは廃船の壁をよじ登るが、「泥棒!!」と叫ぶ男の声に驚いて海に落ちてしまう。慌てて泳いだ先は男性の乗る船だった。また化け物と怖がられると思い焦るナギだったが、男性はアサを見て「可愛い」と言って2人を驚かせた。廃船は男性の家だったようで男性は3人を中へ案内したのだった。船の上には家が建っていてカフェと書かれた看板が掛けられていた。男性はカフェを営もうかと思って1人で建てたようだったが、立地のせいかお客が全く来ないらしい。男性がオババの言っていた大工かもしれない人だと思ったナギは家を直すのを手伝って欲しいとお願いした。だが男性は今の自分はカフェのマスターで大工じゃないとすげなく断った。お腹が空いたらしいマスターは何事もなかったように魚を捌いて鯛の刺身を作り、村の人に宣伝してくれと言いながら3人に振舞った。美味しそうに食べる3人を見たマスターは条件を飲んでくれるなら家を修理するのを考えてもいいと言ったのだった。その条件とは店で働く事だった。

ベルは「いきなり何言ってるんだ」と食って掛かったが、いきなりはお互い様だと言われて引き下がった。マスターは一度来店してもらえれば気に入ってもらえる自信があったが、立地のせいで客は誰も来ていなかった。そこで3人に客寄せをしてもらうことを考えたのだった。突然の申し出だったが家の修理をしてもらえるなら働こうと返事をしようとしたところ、ベルは慌ててナギの腕を引き外へ連れ出した。ベルは安易に引き受けようとしたナギに「子供を利用してろくでもないことを考えていたらどうするんだ」と怒った。怒るベルにナギはもう少しマスターと話してみたいと言ってベルを呆れさせた。ベルは「ナギがいいならもう何も言わないけど自分は手伝わない」と言って店に戻ったのだった。店に戻ったナギは突然出て行ったことを謝って畑仕事をした後に店で働くと言ってあいさつした。マスターに美味しいご飯を食べさせてもらい、アサについて興味津々のマスターと話していたら部屋が少し冷えてきた。マスターの代わりに店の外へ薪を取りに行ったナギはアサの事を最後まで化け物と呼んでいた村の住人オレグに声を掛けられる。アサのことを化け物と呼ぶオレグに警戒心を露にするナギにオレグは「化け物がいないなら丁度いい」と言ってナギを無理やり森へと連れて行ったのだった。
店の中で待っていたベルは大きな音がしたのでナギが転んだのかと思い外に出た。だがそこにはナギは居らず薪が散らばっていた。いなくなったナギを探してアサは走り出し、ベルとマスターも後を追ったのだった。
森へと連れていかれたナギはオレグから化け物を追い出すように責められていた。オレグはナギの考えをあざ笑うように「心で通じ合ったなんて幻想だ」と言って昔の話を語り始めた。村に来る前、オレグにはナギと同じくらいの年の子供がいた。そこでは拾った子熊を可愛がっていたが、ある日、子熊がじゃれつき引っ掻いた傷から菌が入って亡くなってしまったのだ。オレグはそんな体験から意思疎通のできない生き物を信用できなくなったのだ。オレグはアサを信用しようとする住人達に危機感を感じていて、誰もやらないなら自分がアサを殺そうとアサをおびき出すためにナギを森へ連れて来たのだった。罠だと気付いたナギはアサに向かってこないように叫ぶ。オレグは「獣に言葉は通じない」といってアサのいる方向に向かって銃を撃ったのだった。

アサがいると思った草むらにアサはいなかった。弾を外したオレグは慌てて周りを見渡し警戒したがアサは木の上からオレグに襲い掛かろうとしていた。ここでアサがオレグを傷つければまたアサは化け物と呼ばれてしまう。ナギはアサがオレグを傷つけないよう、アサが撃たれて傷つけられないようににとっさにオレグを突き飛ばした。銃を持っていたオレグはナギに突き飛ばされて「危ないからどけ」と怒鳴ったがナギは「絶対にどかない」とオレグから離れなかった。ナギはオレグが一方的にアサを怖がっているだけで他にも方法があるんじゃないかと訴える。そこへアサが来てナギの頭を撫でて慰めるような仕草をした。そしてアサはオレグの銃を奪いへし折って投げ捨てオレグに向かって怒っている様子を見せた。武器をとられたオレグはアサが何かしない限りは傷つけないと約束したのだった。
解決したころに合流したベルとマスター。森はすっかり暗くなってきたのでマスターはカフェにオレグを誘った。ベルはアサをさらってアサを撃とうとした相手をなんで誘うんだとマスターに食って掛かったがマスターは未来の客候補だと言ってなだめた。カフェに着いたマスターはナギに手伝ってもらってピタパンサンドを作ってオレグに出した。美味しいピタパンサンドで一息ついたベルはオレグにナギを無理やり森に連れて行って危ない目に合わせたことを謝るべきだと言った。それに対しオレグは何も間違った事をしていないと謝らない。オレグにはいつ襲ってくるかわからない猛獣のアサとのんきにご飯を食べるナギたちの神経がわからなかった。それを聞いたマスターは「先入観のままアサを理解しようとしないよりも一度くらいアサに触れてみてはどうか」と言った。オレグはアサを怖がっているわけではないとそっとアサに触れると、アサの温かさに亡くなった子供の笑顔を思い出した。するとアサがもっと撫でろというように頭をオレグの手に押し付けてオレグを戸惑わせたのだった。

窓の修理編

ついにアサが壊した2階の窓がマスターによって修繕される日が来た。この日が来るまでナギや手伝わないと言っていたベルはカフェの宣伝を村で頑張っていた。その甲斐あってカフェは村の人がたくさん来て繁盛していた。アサも料理を運ぶのを手伝い売り上げに貢献していた。そしてついにカフェの休業日にナギの家を直してもらえることになったのだった。応急処置をした窓を見たマスターは今日中に終わりそうだと言ってナギをほっとさせた。ナギはマスターがどうしてカフェを一人で建てたのか気になり聞いた。マスターは修繕が終わった後に答えると言って陽が落ちる前にと急いで修作業に取り掛かった。マスターはアサに合わせて窓を作り直すことにして作業に取り掛かった。何もすることがないナギは落ち着きなくウロウロしていてそれを見たベルにご飯でも作ればいいとアドバイスされた。きのこと根菜のちらし寿司ができたころにマスターが修繕が終わったと2階から降りてきた。とりあえずご飯を食べてから2階を見に行くことにしてナギたちは食事をすることにしたのだった。
2階の窓はアサでも簡単に出入りできるように工夫されていてアサは嬉しそうに窓を出入りしていた。マスターは先ほどの答えと言ってカフェを一人で建てた理由を話し出す。マスターの父と兄は職人タイプの大工だったがウマが合わなかったマスターは家を出て分かり合える相手を探しこの村に来てカフェを建てたようだった。マスターの探していた分かり合える相手はカフェを建てて兆しが見えてきたようだ。そしてマスターはナギにカフェの新メニューを考えるのを手伝ってほしいと言った。料理のセンスがあると言われたナギはその話を引き受けることにしたのだった。
ベルとマスターが帰った後、ナギはアサに屋根の上でお月見をしようと誘った。
ナギとアサは屋根の上でホットチョコレートを飲んでお月見をした。アサが出入りできる窓ができたことでやっとアサとの暮らしが始まった気がするナギなのであった。

冬の始まり編

冬が近づいてきたある日、ナギは風邪気味でカフェに来ていたベルの為に鳥雑炊を作っていた。お腹がいっぱいになったベルはクリスマスに使う飾り付けの道具を見に行こうと言い出した。ナギはアサも誘ったが、アサはいつもと違って嫌がった。なんだかいつもとは違う様子のアサにナギは戸惑ったが、マスターがアサのことは見ているから2人で行くように言ったので出かけることにした。何かアサに悪いことをしてしまったかと悩むナギをベルは元気づけたがナギの心は晴れなかった。ナギ達が買い物をしているとオババがやってきて、話の中でアサが最初に美味しそうに食べたのはかぼちゃだったことを思い出した。かぼちゃの話を聞いた近くの店の人が沢山かぼちゃをくれたので帰りながら何を作ろうか考えていると、焦った様子のマスターが走ってきてアサの様子がおかしいと言ったのだった。走って家に戻ったナギは苦しそうに息をするアサに近寄り、アサを元気づけようとかぼちゃを見せて料理の話をした。だがアサは苦しそうに息をするばかりだった。医者を呼んで診てもらったが原因はわからなかった。村の住人から話を聞いてオレグもカフェに顔を出しナギを元気づけた。ナギは父親のようにまた側から誰かがいなくなってしまうのが怖かったが、オレグの「後悔しないように大事に怖がってやれ」という言葉でアサがいつお腹が空いてもいいようにご飯を作ることにしたのだった。
アサが食べられそうなカボチャプリンを作って持っていくと、アサが干からびていた。ナギの叫び声に集まった面々は驚き固まってしまう。呆然とするナギの肩を何かがたたき、そっちを見るとつやつやしたアサがナギの肩をたたいていた。アサは成長するために脱皮をしたようだ。アサが無事だったことを喜んだナギはできたてのカボチャプリンをあげたのだった。

クリスマス編

クリスマスが近づきナギとアサとベルがカフェの飾りつけをしていると雪が降ってきた。マスターはクリスマスらしいケーキ、ブッシュ・ド・ノエルを作ったが食いしん坊のアサに食べられてしまう。売り物のケーキをアサが食べてしまい慌てたナギがケーキの買取を申し出ると、マスターはアサのしたことだからと言ってもう一度ケーキを焼くことにしたのだった。
クリスマスの日、カフェには村の住人たちが集まってサプライズでアサの歓迎会を開いてくれた。賑やかなクリスマスを初めて過ごしたナギは初めてクリスマスを楽しいと感じたのだった。次の日の朝、早く起きたナギとアサは散歩に出かけることにした。ナギはアサと出会った日の事を思い出していた。ナギはアサが来て今までずっと寂しかったことに初めて気づいたが、今はアサや皆といると楽しいと言い、アサも同意するようにナギに抱き着いた。カフェに戻るとベルとマスターが出迎えてくれてナギとアサに「おかえり」と言ったのだった。

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