返校(台湾ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『返校』とは、Netflixで2020年12月5日から配信されている台湾ホラードラマ。英語タイトルは『Detention』である。原作は2017年に配信された同名のPC版ホラーゲームで、この30年後を描いたストーリーが展開されている。新しい生活を始めるために片田舎の高校に転校してきた女子高生リウ・ユンシアン。30年前の戒厳令下の風習を未だに引き継いでいるこの場所で予想だにしない裏切りと数々の怪奇現象に見舞われる。そして彼女は、禁忌とされる呪われた秘密を解き明かしていくのであった。

タイトル名の由来

タイトル名である「返校」とは、学校に戻るということを意味する。これは、台湾の学校の文化である「返校日」を由来としている。

返校日とは、夏季休暇や冬期休暇といった大型の休暇が明ける前に、生徒が1日だけ学校に赴いて校舎や校内の掃除をしたり、簡単な連絡事項を確認したりする日をいう。これは、台湾の小中高のグレードの全ての学校で決まって設けられている制度である。

また、英語のタイトルであるDetentionは、放課後の居残りや拘束、監禁を意味する。本作の題材となっている白色テロを彷彿とさせる。

原作とドラマ版の違い

原作のゲーム版は当初ディストピアものの作品となる予定であったが、製作途中で戒厳令時代の台湾情勢と重なる部分が多々あることに制作者が気づいたことで、白色テロを題材とした作品へと方針転換がなされた。ドラマ版もそうした原作の流れを引き継いでいる。

原作は60年代の戒厳令時代の台湾の学校が舞台となっており、読書、詩作などあらゆる言論活動について検閲や不当逮捕が予定されていた時代であったため、読書会事件で禁書を読んでいたことが発覚したメンバーらは皆逮捕され、厳罰に処されていった。ドラマ版ではルイシンの記憶世界でしか登場しないチャン先生やイン・ツイハン先生はいずれも戒厳令の犠牲者である。

30年後を描いたドラマ版では戒厳令が解除された後の台湾の学校生活が描かれており、言論統制や不当逮捕といった悪制は撤廃されている。しかし、翠華高校の校則は戒厳令時代の名残を残しており、授業に関係のない一切の図書の持ち込みや読書は禁じられている。本作冒頭でも、ユンシアンが小説「1Q84」をカバンの中に忍ばせて高校に持ち込んだものの、手荷物検査の際にバイ教官に見つかり、没収されるというシーンがあった。

道教の鎮魂儀式とポエ占い

本作では、2枚の赤い貝殻のようなものを投げて占いをする場面が見受けられる。いずれも中華圏の民間信仰である道教にまつわるものである。ポエ占いは、台湾では擲筊といい、「筊を投げる」ということを意味する。筊とは、画像に掲載されている赤い貝殻のような石のことで、台湾語では「ポエ」と呼ばれ、漢字では「杯」と表記される。

二枚のポエを三回まで投げて占うことができ、その表裏の組み合わせで結果が変わる。まず、画像左側の片方が丸い面、片方が平たい面が上を向いている状態を聖筊(杯)といい、肯定の結果を意味する。この場合、願い事が叶ったり、はいいいえの二択の質問に対しては「はい」と神が答えたものと解釈される。

次に、画像真ん中の両方とも丸い面が上を向いた状態を陰筊(杯)と呼び、否定の結果を意味する。この場合、願い事はかなわず、はいいいえの二択の質問に対しては「いいえ」と神が答えたものと解釈される。

最後に画像右側の両方とも平たい面が上を向いている状態を笑筊(杯)と呼び、神が笑って答えが出てこない状態を意味する。この場合は、もう一度筊を投げて占い直すしかない。あるいは、自分の中で既に答えが見つかっていることを意味するものと解釈される場合もある。

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