返校(台湾ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『返校』とは、Netflixで2020年12月5日から配信されている台湾ホラードラマ。英語タイトルは『Detention』である。原作は2017年に配信された同名のPC版ホラーゲームで、この30年後を描いたストーリーが展開されている。新しい生活を始めるために片田舎の高校に転校してきた女子高生リウ・ユンシアン。30年前の戒厳令下の風習を未だに引き継いでいるこの場所で予想だにしない裏切りと数々の怪奇現象に見舞われる。そして彼女は、禁忌とされる呪われた秘密を解き明かしていくのであった。

『返校』の概要

「返校」とは、Netflixで2020年12月5日から配信されている台湾ホラードラマ。英語タイトルは『Detention』である。原作は2017年に配信された同名のPC版ホラーゲームで、60年代の戒厳令下の中国国民党時代の白色テロを題材としたものとして発売当初台湾で話題となった。ドラマ版はその30年後を描いており、白色テロを題材とする流れをくんでいる。

主人公のリウ・ユンシアン役を務めるのは、2021年の映画「人として生まれる」で薬師真珠賞を受賞したリー・リンウェイ。また、ドラマ版特別キャストとして、新任教師でジン校長の息子であるシェン・ホワの許嫁役にはリン・チーチエンを起用。彼女は2019年にはEXILEのAKIRAと結婚したことでも知られる、日本でも名の通った台湾女優である。

本作では、新しい生活を始めるために台北から台湾の片田舎の翠華(スイファ)高校へと転校してきた一人の女子高生リウ・ユンシアンに焦点を当て、彼女が予想もしない裏切りや数々の怪奇現象に見舞われながらも、その学校に隠された呪われた秘密を紐解いていく様子を描いている。彼女が転校してくる30年前、台湾の学校では戒厳令の下、厳しい言論統制がなされていた。ところが、読書会の名の下、禁書を読んでいたことが明るみに出た数名の教師と生徒らが当局に逮捕され、うち1名の教師は死刑、読書会について密告した女子生徒ルイシンは罪悪感から自殺。悲しい事件が起こった旧校舎では心霊の目撃談が後を絶たなくなり、閉鎖されて立入禁止になる。こうした忌々しい過去を背負いながらも、保守的・封建的な校風を30年後も維持している翠華高校を舞台に、物語は展開していく。

ホラーのジャンルとしては、本作は心霊ホラーに位置づけられる。特に、過去に自殺事件が起こった片田舎の学校という閉鎖された空間が舞台となっている点が特徴的で、ストーリー全体を通して終始不気味な雰囲気が漂っている。また、旧校舎である涵翠楼で廊下を隊列行進する青白い影の数々や、誰もいないはずの教室で夜中に独りでに動くバケツや箒、霊の恨みを買った登場人物が得体の知れない呪力に襲われて身体があり得ない方向に捻じれていく描写などは、日本の心霊ホラーと似通ったテイストを感じさせる部分も多い。じっとりとした恐怖をホラー描写とする一方で、本作では白色テロといった歴史的要素やポエ占いなどの台湾の民間信仰という文化的・宗教的要素も取り込まれている点が台湾国内外の視聴者の興味を引き付けてやまない。戒厳令下で時代に翻弄されて生きてきた人々の苦悩を教訓として後世に伝える作品として、台湾国内ではその文化的価値が高く評価され、2021年に本作を映画化した「返校 言葉が消えた日」が公開されると、国を挙げて奨励される作品にまでなった。

『返校』のあらすじ・ストーリー

幽霊

1999年夏、女子高生のリウ・ユンシアンは、台湾の金鸞郷(きんらんきょう)にある翠華(すいか)高校へと転校してきた。翠華高校は保守的な学校で、校則を破った生徒や成績の悪い生徒は「幽霊」と呼ばれていた。

ユンシアンは同じ忠組の学級委員であるスー・ジエユーから、涵翠楼(かんすいろう)は立入禁止であることを伝えられる。そこは心霊の目撃が後を絶たず、怪奇現象に巻き込まれる可能性があるからだった。
しかし好奇心を抑えられないユンシアンは、人目を忍んで涵翠楼へと立ち入ってしまう。

屋上までたどり着いて、持病の幻覚の症状が出始めた彼女は、持参していた錠剤で心を落ち着かせた。たばこで一服していると、同じクラスの男子生徒チョン・ウェンリアンがやってきた。
成績不振を理由に「幽霊」にされた彼は、金を貯めた後金鸞郷を出ていくつもりなのだと言う。
3年生の「幽霊」の女子生徒リー・ズー・チーがやってきた。彼女は悲しげな面持ちで、そのまま屋上から飛び降り自殺してしまった。
二人は大急ぎで屋上から逃げ出したが、ユンシアンは発作止めの薬を落としてしまう。

翌日、学校は飛び降り事件の話題で持ちきりとなっており、「幽霊」の札のせいという噂が広がっていた。学校は各学級の級長をバイ教官の下に集めて、噂をした生徒の名前を記録するよう言いつける。
ジエユーも言いつけ通りに噂をした生徒の名前をメモしていた。
ユンシアンはジエユーをトイレに呼び出すと、昨日涵翠楼の屋上に立ち入ったこと、そこで薬箱を落としてしまったことを打ち明ける。しかし、もう一人の「幽霊」の女子生徒が聞き耳を立てていた。

校則違反がばれたことで、「幽霊」の木札はユンシアンへと移されてしまった。彼女は校則違反を問題視した担任により、嫌がらせを受けるようになる。
放課後ユンシアンが涵翠楼に薬箱を取りに行っていると、何者かにトイレに閉じ込められてしまう。何者かは、「力を貸すわ」と話しかけてきた。
そこでユンシアンが「先生が大嫌い」と毒づくと、独りでにドアは開いていった。帰宅したユンシアンは、家庭訪問の予定のチャオ先生の来訪を母親と待っていたが、いつまでたっても彼女が訪れることはなかった。

眠りについたユンシアンが夢を見ていると、そこは涵翠楼の一階だった。巡回するチャオ先生が教室の中を確認していると、青白い手が先生を中に閉じ込めてしまった。教室に入ってみると、悲鳴とともに両ひざがあり得ない方向に捻じれていく担任の姿があった。
ユンシアンが「こんなの嫌」とつぶやくと、両足が折れた担任のそばに涵翠楼の亡霊ファン・ルイシンが立ってこちらを見ていた。
そしてユンシアンに向けて「今度は私の力になってね」と言い放つのであった。

あなたは私、私はあなた

忠組の担任には、シェン・ジン校長の息子であるシェン・ホワが新任教師として就くことになった。シェン・ホワは自由な考え方を持った人物で、翠華高校の校風を変えようと意気込んでいた。

被害拡大を恐れたシェン・ジン校長は、ウェンリアンの実家である城隍廟(じょうこうびょう)に涵翠楼の慰霊を依頼する。ウェンリアンは、翌日の夜に涵翠楼に忍び込む予定であることをユンシアンに伝え、一緒に行く約束をする。

翌日夜集まった生徒たちは、涵翠楼の一室で、亡くなったファン・ルイシンの霊を呼び出す。鉛筆は、やがて独りでに「私の力になって」という文章を示した。メンバーが逃げ出そうとすると、ユンシアンは痙攣して失神してしまった。
気絶した彼女は夢の中でルイシンと話していた。望みをルイシンに尋ねられ、「普通の家族になること」と「持病を治すこと」だというと、ルイシンは「私を見つければ楽になる」と言った。
そこで意識を取り戻したユンシアンは、涵翠楼を後にした。

翌日、ユンシアンが自室の鏡に目をやると、そこにはルイシンの姿があった。ルイシンと過ごすうちに、自分が引っ越してきた家が元々ルイシンの住んでいた家であることを知る。そして、促されるままに赤いノートとペンを見つけると、そこには彼女が作った素晴らしい詩が載っていた。
一方ウェンリアンは、ユンシアンが見慣れない翡翠の首飾りをしていることに気づいた。

明くる日、ウェンリアンの叔父であるウェイ・ジョンティンは、ファン・ルイシンの墓参りをしていた。学校で慰霊祭が始まると、ユンシアンは一人涵翠楼へと向かっていった。
ユンシアンは翡翠のペンダントを見つけ、霊に追い詰められていたルイシンを救い出す。除霊の儀式の途中であったウェンリアンは、何か違和感を感じるのであった。

一方、シェン・ホワのもとで、ユンシアンは賞に出品するための詩の製作に取り掛かる。詩作にのめりこんでいくユンシアンにホワは期待する。
ユンシアンはある日、ルイシンが書いた詩をそのままホワの下へと持って行った。詩を読んだ彼は、以前にもまして彼女の詩の才能を伸ばそうと興奮する。
しかし、今褒めてもらえているのはルイシンの実力であって、自分は及ばないと嘆いた。思い悩む彼女に向けて、ルイシンは「心から人を愛して、その喜びと悲しみ、そして痛みを味わうのよ」と助言した。

ユンシアンの出品した作品は青年文学賞を受賞した。彼女はホワと記念パーティーに出席し、ご褒美としてピアスをプレゼントされる。ルイシンは、過去に自分が賞を受賞した時に、教師に翡翠のペンダントをプレゼントされた思い出を重ねていた。
そして、ユンシアンとホワはキスをしてしまう。

一方ウェンリアンは、ある日のユンシアンのテストの答案の氏名欄にファン・ルイシンと記名があったことから、彼は驚く。というのも、叔父がいつも墓参りに行っている墓石に刻まれた名前がファン・ルイシンであり、この名前をユンシアンが知るはずもないからである。

高校の資料室にあった写真を見比べると、先日涵翠楼から飛び降り自殺した先輩が、ユンシアンがしているのと同じペンダントを身につけていたことに気が付いた。
ユンシアンにルイシンが憑依していると確信したウェンリアンは、ユンシアンからペンダントを力ずくで奪おうとする。しかし、ユンシアンは彼を突き飛ばし、彼は異空間へと飛ばされてしまう。
残されたユンシアンは、傍らにたたずむルイシンに向けて「あなたがリー先輩を殺したの?次は私も殺すの?」と尋ねるのであった。

ルイシンは30年前の読書会事件の関係者に復讐を果たすつもりでいた。
ユンシアンは、裏切られた悲しみと怒りで、ルイシンを除霊すべくウェンリアンの力を借りることを決意する。城隍廟に紙袋に包んだ翡翠のペンダントを持っていくユンシアン。
しかしルイシンが離れると、ユンシアンには幻覚の症状が再発してしまい、ウェンリアンに黙ってこっそりとペンダントを持ち帰ってしまった。

翌日の学校では、ユンシアンとホワの関係により、ホワが忠組の担任を外されていた。代わりにバイ教官が担任を務めることになり、「幽霊」制度も復活して再びウェンリアンとユンシアンが「幽霊」の木札を下げることになる。

ルイシンの力を借りることができないユンシアンは、自力で詩作に打ち込まなければならなくなった。しかし、ルイシンなくしては詩を作れず、「先輩、どこにいるの。どうしたらいい」と助言を求めてしまう。そんな時、ルイシンの導きで図書館に積み重ねられた段ボールの中からホワの作品が次々と出てきた。内容を改めると、それが盗作であることが判明した。
嘘を見抜かれ、プライドを傷つけられたホワは、ユンシアンを凌辱しようとする。その時図書室の電気が急に点滅し、ホワが怯んだすきに彼女は逃げ出した。

心の傷を負い、二日間自宅で寝込んでしまうユンシアン。ルイシンは逃げるのをやめるよう言い、怒りを露わにした。
彼女は、読書会について密告するようバイ教官に詰め寄られた過去を思い出していた。

そんな時、取材陣からホワと二人での記念撮影の依頼を受け、これにやむなく応じるユンシアン。その後、自分が涵翠楼の屋上から飛び降りる幻覚を見た彼女は、心労で倒れてしまう。
彼女が自宅で目を覚ますと、首からかけていた翡翠のペンダントがなくなっていた。

焦る彼女の前に父親が現れ、久々に一家団欒の時を過ごす。
しかし、学校のことについて父親に尋ねられると、ユンシアンはと口を閉ざしてしまう。娘の様子に裏を感じ取った父親は、彼女の日記から事態の真相を把握する。
翌日、父親は校長室に怒鳴り込みに行き、ホワが娘を傷物にしたとジン校長に訴える。第三者を交えての調査がなされることになった。

調査会では、校長と父親の激論が交わされる。下された判決は、証言の不確実性から性的暴行はなかったというものだった。
恥をかかされた父親は家を出ていき、泣き崩れてしまう母親。そのやり取りを部屋越しに聞きながら、ユンシアンはウェンリアンから送られてきた手紙を読んでいた。

彼女が彼を探して城隍廟に向かうと、祭壇で翡翠のペンダントを見つける。ウェンリアンはお祓いをしようとして、ペンダントを保管していたのだった。
彼女が家に帰って湯舟につかると、ルイシンが現れ復讐を持ち掛ける。しかしユンシアンは、カッターで左手首を切って気絶してしまうのであった。

長い居残り

一方、高校では調査会の結果が発表され、ホワの無実が知れ渡った。ウェンリアンが城隍廟へと戻ると、祭壇の上に置いておいたペンダントがなくなっていた。

同じ頃、風呂場で自殺を図ったことがきっかけとなってユンシアンはルイシンに憑依されていた。ユンシアンが気が付くと、そこは30年前のルイシンの精神世界だった。
ユンシアンはルイシンの記憶を通して、彼女が辿った世界を再現することになる。

30年前の翠華高校の倉庫でたむろしていると、後輩の男子高生が声をかけてきた。すると、そこにバイ教官が現れ「ファン・ルイシン」と声をかける。ユンシアンが「私はルイシンじゃない」というと、突然幻覚と頭痛に襲われ、バイ教官と後輩がやってくる前まで時間が巻き戻った。
彼女は自分がルイシンではないと考えるたびに、記憶旅行がリセットされ、最初の場所に強制的に戻されていることに気づく。

教室で着席したユンシアンは、テストの記名欄にファン・ルイシンと記名し、テストを終えると、後輩の男子高生と話をした。現実世界では、30年分歳を重ねた後輩の男子高生であるウェイ・ジョンティンが、ラジオを聞いていた。彼は、そこから高校生時代のファンとのやり取りが聞こえてきて驚いていた。

帰宅したユンシアンは、ルイシンの両親が家庭崩壊寸前の状態であることを知る。涙ながらに引き留めようとする母親を、父親は乱暴に振りほどいて他の女と夜を共にしていたのであった。
字が読めなかったはずのルイシンの母親が、町の掲示板を見て「スパイを摘発せよ。不法行為はただちに告発を」と言い、交番に行くと言ったのだ。そして、驚いて幻覚を見始めたユンシアンに「抗うだけ無駄。変えられるとでも思った」とたしなめてきた。

同じ頃、現実世界のユンシアンの母親は、娘に憑依したルイシンに追い詰められていた。自分の娘が娘でなくなってしまったと悟ったユンシアンの母親は、その場で泣き崩れてしまう。ウェンリアンが入ってくると、そこでは母親が涙を流しながら「娘を返して」と訴えていた。
ウェンリアンは、そこで血の付いたカッターナイフを目撃する。

精神世界でユンシアンが幻覚から覚めると、再び掲示板の前に立っていた。今度は抗うことなくルイシンの母親と交番へと向かった。ルイシンが自分と同じように、日頃の鬱憤を詩作のモチベーションに変えていたのだとユンシアンは気づいた。
詩作の赤いノートをバイ教官に没収されると、国語教師のチャン・ミンフィが好きなだけカウンセリング室に来て過ごしてよいと優しく声をかけてくれた。ユンシアンは、自分がホワに惹かれていったのと同じように、ルイシンがチャン先生に惚れていったのだと知る。

30年前、バイ教官と当時主任であったシェン・ジンは生徒を厳しく取り締まり、当時のイン校長に注意されていた。二人は、読書会のメンバーについて知るルイシンに読書会について告発させ、これをきっかけにして学校を改革しようと企む。

ユンシアンがルイシンとしてではなく、彼女自身として振る舞おうとすると、幻覚に襲われる。幻覚が収まると、彼女はチャン先生との淡いデートを楽しんでいた。
帰り際、先生は翡翠のペンダントを彼女にプレゼントした。ユンシアンがホワとそうしたように、チャン先生と唇を重ねていた。
その翌日、ユンシアンは文学賞を受賞した。チャン先生だけでなく、歴史科の女教師イン・ツイハンも祝ってくれて、記念撮影をした。

その週の土曜日にユンシアンがカウンセリング室を訪れ、指導記録を眺めていると、書類にメモが挟まれてあることに気が付く。そこには、「チャン先生、約束を忘れずに ツイハン」と書かれていた。彼女は、イン先生とチャン先生との間に男女の関係があるのではないかと疑うようになる。
そこにバイ教官が現れ、補講の名目で禁書を読ませる教師がいることをほのめかした。

ある日、ユンシアンは備品室でイン先生に呼び出され、チャン先生への恋心を断ち切るように諭された。ユンシアンはカウンセリング室に赴くが、学校の決定で既に彼女にはカウンセリングは不要と決められていた。悲しみに暮れるユンシアンは、ペンダントを外して机の上に置き、部屋を出ていった。
それを手に取ったチャン先生は、人知れず涙を流すのであった。

その後、ジョンティンに頼んで読書会のメンバーリストを入手したユンシアンは、読書会の事について尋問されるようになる。バイ教官から、リストを提出すれば、チャン先生だけは助けてやると鎌をかけられた。彼女はチャン先生を助けたい一心で、リストを差し出してしまった。
その結果、読書会メンバーは大勢処刑された。

チャン先生は死刑、イン先生は国外に亡命するという形で事件は幕を閉じることになった。守れるはずだった人を失い、自分を慕ってくれていた後輩をも牢獄送りにしてしまった彼女は、罪の意識から飛び降り自殺を図ってしまった。

浄化

一方、現実世界では、ホワがリー議員の令嬢との会食の席に赴いていた。
今度の高校の創立記念日に合わせてバイ教官は退官させ、今後はリー議員のバックアップも得ながら新しい学校づくりに取り掛かるのだと言った。バイ教官を呼びつけたジン校長は、彼がクビになったことを告げ、彼を校長室から追い出したのだった。

他方、ウェンリアンは、ユンシアン宅から彼女の母親を城隍廟に連れ帰っていた。彼の父は、原因がルイシンだと聞かされると苦い顔をした。ルイシンは、読書会を密告して多数の関係者を死に追いやったことで噂となっていた。
そして、自殺したのは恋人である男性教師が死刑になったことが原因であることも知られていたのである。

ウェンリアンは制止を振り切り、叔父のジャンティンの下へと走り出していった。叔父は「先輩は復讐したいのかもな」とつぶやいた。手がかりをつかんだウェンテインは一人で高校へ赴く。
学校でルイシンに憑依されたユンシアンに声をかけた彼は、既に彼女が憑依されてしまったことを知る。そして、不意を突かれて異次元へと閉じ込められてしまった。

精神世界で気を失っていたユンシアンは、目覚めると暗い部屋の中にいた。そこには、ジョンティンと死刑になったチャン先生の姿があった。傍らには、麻袋を頭からかぶった女子高生が佇んでいる。
ユンシアンがその袋を外そうとしたところ再び記憶の出発点に戻り、彼女は2度目の記憶旅行の中で、ラジオが30年後の1999年の音を拾っていることに気づく。ユンシアンが「音がした」といった声は30年後のウェンリアンやジョンティンに届いており、交信が成立した。

自我を取り戻した彼女は、ルイシンの精神世界で何度も同じ記憶を繰り返していることをウェンティンに伝える。彼は、「先輩が何を恐れているのかを知り、この世への執着が消えれば、成仏できる」と言う。
この助言を聴いたユンシアンは、記憶の終着点で、チャン先生の遺体の近くから離れないルイシンの顔から麻袋を取り外した。罪悪感に捉われづけていた彼女を無理やり連れだすことに成功する。

彼女たちが部屋を出ると、そこにはルイシンの姿があった。彼女は、辛い現実から目を背けるため、記憶を改ざんしていた。記憶を嘘で塗り固めたルイシンの姿を見て、ユンシアンもまた罪の意識に苛まれていた。
母親を騙して現実から目を背けていた自分の行動を後悔していた彼女は、真実と向き合おうと決意した。

他方、現実世界で30年越しにラジオの音声で先輩であるルイシンの声を聴いていたジョンティンは、彼女が復讐するつもりであることを知り、高校へと向かっていた。高校ではユンシアンに取り憑いたルイシンが、バイ教官の元へ赴き、彼を幻覚へと引きずり込んだ。徐々に首に掛けられた縄がバイ教官の身体を上へと持ち上げていく。

同じ頃、講堂では創立記念日の式典が行われ、バイ教官の勇退式に差し掛かろうとしていたが、ホワが教官室に様子を見に行った。ルイシンは彼がユンシアンを苦しめたことを知っており、バイ教官を呼びに来た彼の視力と言葉を奪う。
それからルイシンが講堂へと赴くと、壇上にはジン校長がおり、バイ教官の勇退式の最中だった。彼が教官の入場を伝えると、壇上の天井の方から首を吊ったバイ教官の遺体が落ちてくる。
ジン校長から「チャン先生を死なせたのはお前だ」と言われると、ルイシンはこれを否定し、校長の息の根を止めた。

ユンシアンは、「イン先生を陥れるために、他の大勢の生徒を陥れたのね」と彼女に尋ねる。彼女は悲痛な面持ちで、「チャン先生を助けるには仕方なかった」と答えた。
復讐を終えたルイシンの下に、ジョンティンとウェンティンが現れる。彼は、チャン先生が捕まった後もルイシンへの気持ちは変わっておらず、服役を終えたら彼女に渡すようにと手紙を受け取っていたことを明かした。
ルイシンは、ずっとチャン先生に愛されていたのに、現実から目を背けていた自分のふがいなさと向き合う。ようやく生前の後悔と決着をつけられたルイシンは、静かに成仏していった。

自分のあり方を見つめ直し、立ち直ることができたユンシアンの母親は、娘と穏やかな日々を過ごすようになった。ユンシアンはウェンリアンと共に学校へ向かう。ユンシアンの左手首に残ったリスカ跡は、ルイシンとの思い出を残すきっかけとなっていた。
ユンシアンは傷痕をなぞりながら、相変わらずウェンティンと涵翠楼の屋上でたばこを吹かすのであった。

『返校』の登場人物・キャラクター

リウ・ユンシアン(演:リー・リンウェイ)

本作の主人公。

療養のため、母親と台北から台湾の片田舎の金鸞郷へと引っ越してきた女子高生。自分に自信がないためか依存性向が強く、転校先の翠華高校でルイシンの亡霊と取引をしたことで憑依されてしまう。

ファン・ルイシン(演:ハン・ニン)

涵翠楼をさまよう亡霊。30年前は同校の優等生であったが、読書会事件がきっかけとなり自殺した。3年生の女子生徒リー・ズー・チーに憑依して死に追いやり、自殺しかけたユンシアンにも憑依して身体を乗っ取った。

チョン・ウェンリアン(演:ホアン・コアンチー)

リウ・ユンシアンの同級生。程家の長男で、金鸞城隍廟の五代目。都会から引っ越してきたユンシアンに好意を抱いている。

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