返校（台湾ドラマ）とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『返校』の用語

翠華高校

翠華高校とは、ユンシアンの転校先である高等学校。ジン校長とバイ教官の主導により、戒厳令下にあった60年代の中国国民党の強権政治時代の保守的・封建的な校風が徹底されている。正式名称は翠華高級中学。

幽霊

幽霊とは、翠華高校で設けられている評価制度のこと。具体的には、各クラスで男女別に最も成績の悪い生徒や校則違反などの素行不良が見られる生徒を一人ずつ選抜した上で、「幽霊」と書かれた木札を首からかけさせていないのと同然の扱いをし、トイレ掃除等の雑務を押し付けるというもの。ユンシアンは立入禁止の涵翠楼に立ち入ったことを理由に、ウェンティンは成績不良を理由に「幽霊」として理不尽な扱いを受けていた。

涵翠楼

涵翠楼とは、立入禁止となっている翠華高校の旧校舎。ルイシンのと飛び降り自殺があった後、心霊の目撃情報が後を絶たず、現在ではチェン一族が管理して定期的に霊魂を鎮めている。

城隍廟

城隍廟とは、道教系の神様である城隍を祀る廟所。本作ではチェン一家が城隍廟を管理しており、ウェンリアンが五代目の後継者である。城隍は土地の守護神と冥界の司法官の役割を担い、その土地の住民を守り、勧善懲悪や審判などを行う。

白色テロ

白色テロとは、政府が反政府勢力に対して行う検閲や不当逮捕等の弾圧のことを指す。「白色」という名は、フランス王権の象徴であった白百合に由来する。そして、台湾において白色テロ時代と呼ばれるのは、1947年の二・二八事件から1987年の戒厳令解除までの期間であるとされており、この間に中国国民党政府は共産主義になびきかねない台湾の知識人やエリート層を数多く投獄した。投獄された人数はおよそ14万人にもおよび、そのうち3000~4000名が処刑されている。

翡翠のペンダント

翡翠のペンダントとは、ルイシンが生前、思い人だったチャン先生からデート帰りにプレゼントされたペンダントの事。ルイシンが肌身離さず身につけていた思い出の品で、彼女が自殺した後は、亡霊となった彼女を呼び出すための拠り代として機能するようになった。涵翠楼から飛び降り自殺した3年の女子生徒やユンシアンはルイシンに憑依されていた時にこのペンダントを身につけていた。

『返校』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

筆仙

肝試しという名目で夜中に涵翠楼に集まったユンシアン、ウェンリアンを含めた生徒六人が、筆仙と呼ばれるコックリさん類似の降霊術を行うため、霊に向けて呼びかけるシーン。本作のホラー描写の中でも一、二を争うほどの恐怖シーンである。涵翠楼での飛降自殺を目撃して以来、ユンシアンが毎夜悪夢を見るようになり、ウェンリアンにその原因について相談をもちかけていた。ウェンリアンは、ちょうど3年生の先輩から霊に文才を授けてもらえるように降霊術に協力してほしいと頼まれていたこともあり、涵翠楼で悪夢の原因について調査することを試みる。

涵翠楼で生徒たちが「先輩」の霊を呼び出すための儀式を始めると、鉛筆は独りでに動き始める。鉛筆の動きは次第に大きく強くなっていき、ついには誰も鉛筆を握っていないのに、「私の力になって」の順番になるように文字盤の上を動くようになった。

一同が怖くなって引き返そうとしたその時、ユンシアンは白目をむいて痙攣し始め、しまいには倒れてしまった。

幸せだったころの記憶

ユンシアンの担任の両足を折り、バイ教官とジン校長の息の根を止めるなど本作中では恐ろしい霊力を行使したルイシン。しかし、その彼女にも、生前には幸せな時があったのだ。

30年前、ルイシンは国語教師でもあり、自分のカウンセラーを担当してくれたチャン先生に恋をしていた。ルイシンの家庭は最初こそ円満だったものの、両親は次第に喧嘩を繰り返すようになり、彼女はふさぎ込んでしまう。そんな彼女の相談にチャン先生が乗るうちに二人の距離は縮まり、デートじみたことを繰り返すようになっていた。

ある日のデートの帰り道、彼女はチャン先生から翡翠のペンダントを受け取る。ユンシアンは、シェン・ホワからデートの帰り際ネックレスを受け取った自分の体験と彼女の過去を重ね、読書会事件と言う悲惨な事件に至る前のこの時がルイシンにとって一番幸せだったのだろうと物思いにふける。

解放されるルイシンの魂

ルイシンに憑依されたユンシアンは、ルイシンの精神世界で記憶旅行を繰り返していた。ウェンリアンから「自殺した奴は本当は死にたくなかった。後悔しまいと何度も同じことを繰り返す。先輩が何を恐れているのか知り、執着を消すことができれば脱出できる」と精神世界のラジオを通して聴いたユンシアンは、「私はユンシアンだ」と何とか自我を保つことに成功する。ルイシンは、バイ教官らの巧みな嘘に騙されて読書会のリストを渡してしまったことで、チャン先生を死なせてしまった罪の意識に苛まれ、成仏できずに自分が自殺するまでの記憶を何度も繰り返していたのであった。精神世界で、頭から麻袋をかぶって真っ黒な部屋に閉じこもっていたルイシン。ユンシアンは、麻袋を取り外し彼女を部屋の外へと連れ出した。

同じ頃、現実世界では、学校の行動でバイ教官の勇退式が執り行われている最中であった。ところが、講堂のステージ上にあったのは、カーテンで首吊りをしたバイ教官の遺体だった。そこへ突然現れたユンシアンの中身がルイシンだと気付き、彼女が復讐しに来たのだと察したジン校長は、「チャン先生を死なせたのはお前だ。イン先生に嫉妬して読書会のリストを渡した」と言い放った。ルイシンはこれを否定し、ジン校長の息の根を止める。

過去の記憶を共有したユンシアンに「イン先生を陥れるために皆を不幸にさせたのね」と尋ねられたルイシンは、悲痛な面持ちで「チャン先生を救うには仕方がなかった」と語った。そこへ、ウェンリアンとウェイ・ジョンティンが現れる。ジョンティンは30年前の読書会のメンバーで、先輩であるルイシンに好意を寄せていた。彼女に認められたい一心で、彼女に読書会のリストを手渡したのだった。彼は、30年前の読書会事件の真相を告げた。彼によると、投獄されたチャン先生は密告者がルイシンであることや彼女にジョンティンが読書会のリストを渡したことを知っていた。また、チャン先生は読書会の生徒たちには取調べでは何も知らなかったことにして全て自分のせいにするよう言いつけ、ジョンティンにはルイシン宛の手紙を託していた。しかし、彼自身も15年間投獄され、その間にルイシンが自殺したために手紙を渡すことが叶わなかったのだと言う。ジョンティンから手紙を渡されたルイシンは、チャン先生から愛されていたことを30年越しに知る。そして、自分はチャン先生に守られていたのにその事実すら忘れ、捨てられたと思い込んで愛する先生を死なせてしまった事実と向き合おうとしてこなかった自分の過ちに気づくのであった。

こうしてようやく真実と向き合えるようになった彼女は未練を断ち切ることができ、ユンシアンらに感謝の気持ちを述べて成仏していくのであった。

『返校』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話