Luck Stealer(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『Luck Stearler』とは、『ジャンプSQ.』にて2007年12月から2012年2月まで連載されていたかずはじめの作品。
勧善懲悪を軸に、運を生成できない愛娘・来栖花梨のために、父の来栖悠聖が奮闘する物語。
クライアントからの依頼に大小問わず運を略奪することで悪を滅する前半と世界を掌握せんとする組織との戦う後半に、に大きく別れた作品である。
悪を滅する作風はかずはじめが以前連載していた、記憶や精神を破壊して悪を滅する設定だった『MIND ASSASSIN』を彷彿させる。
『Luck Stealer』の概要
『Luck Stealer(ラック スティーラー)』は2007年かずはじめ、『ジャンプSQ.』の創刊と同時に連載を始めた作品。
連載前に2度プロトタイプとして『ジャンプ増刊号』に読み切りが掲載された上での連載となった。
創刊当初の『ジャンプSQ.』は『月刊少年ジャンプ』から移籍してきた『テガミバチ』や『ギャグ漫画日和』、『クレイモア』、『ロザリオとバンパイア』を除くと全て新作となっており、『Luck Stealer』は『ジャンプSQ.』初期を支えた作品でもある。
連載期間は2007年2月から2012年2月。
主人公である来栖悠聖は素手で掴んだ人間の運を盗むことができる。それに対して愛娘である来栖花梨は運を生成できない体質だった。
悠聖は花梨に運を与えることができるため、悪人の運を奪って花梨に与える日々を送っていた。
初期は1話完結を中心に物語が徐々に進行していく構成を取っていたものの、後半は花梨を守るべく世界を裏から操る組織の陰謀に立ち向かう壮大な物語へと変化していく。
そのため前半と後半では大きく作風が異なる。
『Luck Stealer』のあらすじ・ストーリー
序章 来栖悠聖の日々
来栖悠聖(くるすゆうせい)、コードネーム「ラックステイラー」は中藤(なかとう)の運営するカジノバー「FLAMINGO」に所属する始末屋。
運を生成できない愛娘来栖花梨(くるすかりん)のために、依頼人に頼まれた悪者から運を吸い取り、花梨に運を分け与えている。
依頼人から頼まれたターゲットを裁くこともあれば、花梨のクラスメイトを救うために教師に制裁を下したり、時には友人を狙うヤミ金業者を。
悠聖の手には不思議な能力が備わっており、時に加減を行うことがあるものの基本的には、「『運』を全て失った人間は 必ず『偶然』何かが起こって死ぬ」。
悠聖の送る毎日は失敗は許されず、平穏な日常とはほど遠い。
しかし、全ては愛する花梨のため。
常にリスクを背負いながら悠聖は危険な毎日を送っていた。
転機
物語が大きく動き出すのはロアの登場。
悠聖の元へ依頼をしにFLAMINGOへ訪れた際、ロアは「標的を殺すところを見たい」と同行を志願する。
悠聖は最初拒否するものの、ターゲットが姿を現すパーティ現場に向かうにはパートナーが必要と言うことでやむを得ずロアの同行を悠聖は許可。
ロアをパートナーにパーティ会場に向かった悠聖は予定通り、ターゲットの殺害に成功する。
しかし悠聖の殺害方法を目撃したロアは悠聖のことを思わず「神聖なる血脈(グラチェア)」と叫んでしまう。
なんとかパーティ会場を脱出すると悠聖はロアから「神聖なる血脈」の説明を受けるが、「神聖なる血脈」とは「この世にただ一人しかいない運命を操る事が出来る存在」とのこと。
ロアは悠聖こそその人物で、「教会は神聖なる血脈を守ろうとしている」、「弟は神聖なる血脈の力でしか治せない」と話すものの悠聖は半信半疑。
とはいえ花梨を救う手がかりはここにあると考えた悠聖はロアに協力することにした。
自身は「与える力」は持ってなく「奪う力」しかないと偽った上で。
だが同じ頃、花梨の運は弱くなり始めていた。
花梨が悠聖に手袋をプレゼントすべく、花梨の祖父母の店で働いているアルバイトの広瀬愛莉(ひろせあいり)と共にショッピングモールへ足を運んだところ、花梨の運が尽き始め次々と不幸が生じる。
花梨の元へ電話が繋がらなくなったり、愛莉が塗れた床を滑ってしまったり、換気扇が落下したりと次々と不幸に遭遇するようになってしまったのだ。
遂には橋が落下するアクシデントを引き起こすまでになってしまったもののそこへ悠聖が駆け込み間一髪。
命には別状がなかったものの、悠聖は花梨に運を与える瞬間を尾行していたロアに目撃されてしまう。
場所は変わって病院。
今回の事態を踏まえて、悠聖は運を与えるペースを早めることを検討するが、花梨は悠聖や愛莉を傷つけてしまったショックから「花梨はどうして人を傷つけちゃうの?」と嘆く。
それは悠聖が子供の頃に抱いていた感情でもあった。
過去編
花梨を傷つけてしまった悠聖は中藤に悟られるほど、疲弊した表情を見せていた。
中藤から仕事を制止され、帰宅した悠聖は1人過去のことを思い出す。
幼少期から悠聖は「触れた物の運を奪ってしまう」今と変わらない体質を宿らせており、自身の両親や周囲の人間、孤児院の人々と悠聖に触れた人間は次々に不幸へ。
中学の頃には不良と関わるようになり、高校の頃には不良グループの一員になってしまった。
「触れた物の運を奪ってしまう」体質もこの頃に自覚している。
後に職場の上司となる中藤とはこの時期に対面。
中藤は手袋を装着していたこともあり、悠聖に運を奪われることなく圧倒したが、同時に悠聖に興味も示していた。
そんな悠生にとって転機となったのは悠生にとって悪友であった大村が亡くなった現場で木下理花(きのしたりか)と出会いだった。
初めて理花と出会って以来、理花のことが気になっていた悠生は彼女が「不良が大嫌い」という話を聞く。
そのため、周囲の協力も頼りに少しずつ変化していき告白も成功したかに見えた。
しかし告白の帰りにかつて対峙した不良グループに遭遇してしまい、悠聖は自分の本性を見られてしまい距離が離れ行くように見えた。
だが悠聖の友人である福原が理花に悠聖の生い立ちを知り、悠聖が自分に惚れていることを知りもう1度話そうとしたところ不良グループに誘拐。
絶体絶命の理花であったが、悠聖がその場に駆けつけなんとか助かるとその数日後に理花は悠聖に手袋をプレゼント。
悠聖の性質上、手袋を装着しなければならないものの普通に悠聖と理花は接することが出来るようになった。
こうして悠聖は理花と付き合いを始め、徐々に更生していった。
けれども理花の父親は悠生と理花が付き合うことを認めず、悠聖は何度家を訪れても態度に変化なし。
その結果理花は家を飛び出し悠聖との子供を授かった後も認めらずにいたが偶然訪れたショッピングモールで見かけた悠聖の行動でようやく2人の関係を受け入れることに。
そして悠生の愛娘である花梨が誕生することになる。
花梨の誕生によって悠聖は花梨を溺愛する親ばかになっていくが、花梨にはどういうわけか立て続けに不幸と直面。
悠聖と理花は相次ぐ不幸の連続に苦悩するようになる。
そんなかで悠聖は高校時代の同級生である真中(まなか)と再会。
レストランで会話しつつ真中には自身の能力を悠生は明かすが、その時に真中は「花梨が生まれつき運がないのでは?」と考える。
その日の夜、悠聖はたまたま花梨に自身の腕を触れさせてしまう。
ただこの時、花梨に不幸は生じず運を吸い取るような描写が見られた。
これにより花梨は悠聖の運を吸い取れることが明らかになり、悠聖は花梨に運を分け与えるようになる。
けれどもこの行為は、悠聖自身の運を分け与える事でもある。
そのため、運が少なくなった悠聖自身が不幸に遭うようになってしまった。
花梨は運を生成できないため、供給源である悠聖の死は花梨が死ぬことに等しい。
運をどのように調達するかで悩む悠聖だったが…。
そうして悠聖がたどり着いたのは始末屋だった。
悠聖が出向いたのはかつて制裁を下されたFRAMINGO。
FRAMINGOに出向いた悠聖は中藤(なかどう)に「殺し屋として雇って欲しい」と懇願する。
自身の能力を見せつつ、中藤は「リスクが多すぎる。やめとけ。」と忠告されるも悠聖の意思は変わらず、天崎真也(あまざきしんや)ことミッドナイトの指導の下で殺し屋に。
最初は真也の仕事風景に衝撃を隠しきれずにいたものの徐々に慣れていき、1人で仕事をこなせるようになっていく。
しかしながら慣れてきた矢先、人質の子供に動揺し悠聖は刃物で刺されてしまう。
なんとか仕事は完遂したものの、重傷を負い病院に搬送。
その際、理花は悠聖に自らの運を託してその後に事故死した。
目を覚ました悠聖はそのことを理花の父親を聞くと悠聖は暴れてしまう事態になってしまった。
退院後、悠聖は理花が残したメールを見つける。
そこには、理花が悠聖がどんな仕事を行っているか把握していたことが明らかとなり、涙を流せずにはいられなかった。
この理花の死をきっかけに悠生は中藤に「ターゲットを悪者」だけに絞り込むように頼む。
この過去を思い出したことで悠生は立ち直り、花梨を守ることを決意していくのだった。
新たな出会いと再会
悠生はリフレッシュした後、始末屋の仕事を再開する。
しかし次なる依頼にはハウンドこと河合小太郎(かわいこたろう)が参加。
次の依頼は2人でこなさなければならないと言う理由で2人で依頼を行うことになる。
けれども初の共同任務では小太郎が裏切る事態。
そのため窮地に追い込まれる事態を招くことに。
だが、悠聖は小太郎の窮地を救出。
これがきっかけとなり小太郎は彼を信頼、もとい懐くように。
だが2人で依頼を処理した後、後を付けていた尾行者が悠聖と同じペンダントを着用していたり、その尾行者が「神は2人もいらない!!」と絶叫。
更に中藤が所属する会社の総会で悠聖を狙う人物、宮木(みやき)が現れるなど不穏な気配が漂い始める。
そんななかで悠聖は自身を掛けた依頼に巻き込まれてしまう。
なんとか悠聖は勝利するものの直後から悠聖は宮木の部下に狙われたり、宗教団体プロペラクラルクスが悠聖に目を付けるようになる。
このように悠聖を取り巻く環境が急変する最中、ロラが再登場。
悠聖はロラを警戒するものの悠聖の味方であること、弟がクラルクスに誘拐されていることを伝え、花梨に危険が迫っていることを報告に来た。
それを知った悠聖はすぐさまFRAMINGOに避難する。
けれども悠聖とロラが去った後、上層部から「悠聖をクラスクスに引き渡せ」という通達が到着した。
悠聖と中藤は対立。
悠聖は様々な殺し屋に追われる身となったが、悠聖の秘密を知っているはずの殺し屋が何故か肌を出す。
これにすかさず悠聖は触れたことで運を手にし、なんとか窮地を乗り越えたが、これは「守り切れない」と判断した中藤の演技だった。
板挟みにされた中藤は、「悠聖と敵対する役割」を演じて悠聖を脱出させた。
悠聖は上層部の追っ手を振り切ると途中で小太郎と合流。
小太郎も帯同し、ロアと共に隠れ家へ向かうことに。
そこで悠聖は「神聖なる血脈(グラチェア)」扱いを受け、状況を飲み込めずに苦労するが同時にロアの弟が「偽の神聖なる血脈(グラチェア)」として祭り上げられていること、クラルクスが悠聖を確保すれば弟が殺されてしまう事を知る。
これを知った悠聖はロア達に加担することを決意する。
数日後、悠聖達はクラルクスが毎月行っている典礼に侵入。
アイスランドにある総本部に侵入するべく作戦を実行し、大司教が持つ十字のIDをコピーすることに成功。
けれども隠れ家にはクラルクスへの内通者が存在し、その内通者はクリスだった。
クリスによって花梨が隠れ家にいることがクラルクスに流失。
悠聖達がアイスランドに向けて出発したタイミングを狙って襲撃されてしまう。
花梨を守るために小太郎は果敢に戦うも死亡。
花梨も脱出成功したかに見えた。
しかし脱出した先にはクラルクスが待ち構えており、そのまま誘拐。
また悠聖達も内通者に情報を知られてしまい、悠聖は確保。
ロア達は処分されてしまう。
確保された悠聖は理花は誘拐され、仲間も失い意気消沈していた。
そんな悠聖が希望を取り戻したのはロアの弟であるエリクの言葉だった。
希望を取り戻した悠聖は、隙を見て脱走。
アークマスターに花梨を救う方法を問おうとする。
けれども明確にされることはなく、再び確保されてしまう。
再び意気消沈する悠聖。
けれどもクリスが自身の運を悠聖に託すことで再び脱出に成功。
仲間達のお陰で生き延びていたロアとも合流した。
ロアと合流した悠聖は儀式に忍び込むことによって、エリクが殺害されることを阻止。
アークマスターの運を奪った。
これにより勝利したと思われたが、花梨は睡眠薬を飲まされており悠生を認識できない状態に。
そのうえ、悠聖は脱出する際に銃撃を喰らい出血多量で死亡し、アークマスターは生き延びていた。
そして花梨を奪おうとする。
しかしながら花梨は「神聖なる血脈」として覚醒した。
アークマスターは花梨に運を吸い取られ、クラルクスは終焉。
その後花梨は死んだ悠聖を見てショックを受けたかに思われた。
けれども覚醒した花梨は奇跡を起こし悠聖を蘇生させた。
こうしてクラルクスとの戦いを終え、一般人となった悠聖は花梨と共に日本へ帰還。
新しい日々を送り始めた。
『Luck Stealer』の登場人物・キャラクター
主人公
来栖悠聖(くるすゆうせい)
主人公であり、花梨の父親。
触れた他人の運を奪う能力を持っており、始末屋として暗躍する日々を送っていた。
この能力が原因で幼少期は周囲を次々と不幸にさせてしまうことから不良化してしまうが、理花との運命的な出会いによって更生していった。
花梨には非常に甘く親バカ。
悠聖の家族
来栖花梨(くるすかりん)
悠聖の愛娘である美少女。
生まれつき自分で運を生成できないため、運が尽きかけると大きな事故を誘発してしまう。
そのため父の悠聖から運をもらって生きている。
作中後半からはクラルクスから身柄を狙われる存在に。
木ノ下理花(きのしたりか)
悠聖の妻にして理花の母親。
悠聖の人生を大きく変えた人物である。
悠聖とは悠聖の悪友である大村が亡くなった現場で対面。
不良嫌いであり、悠聖は当初不良であることを隠して関係を深めていった。
そのため、告白された後に悠聖が不良であることを知ると別れるが友人から悠聖の辛い過去を知ると和解した。
その後両親と反発し、家を出て行ったものの娘の花梨を出産すると和解。
次々に不幸が訪れる花梨のために悠聖が危険な仕事を行っていることは把握しており、悠聖が重傷を負った際は悠聖を助けるために運を託してこの世を去った。
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目次 - Contents
- 『Luck Stealer』の概要
- 『Luck Stealer』のあらすじ・ストーリー
- 序章 来栖悠聖の日々
- 転機
- 過去編
- 新たな出会いと再会
- 『Luck Stealer』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- 来栖悠聖(くるすゆうせい)
- 悠聖の家族
- 来栖花梨(くるすかりん)
- 木ノ下理花(きのしたりか)
- FRAMINGO
- 中藤(なかどう)
- 河合小太郎(かわいこたろう)
- 始末屋関係者
- 天崎真也(あまざきしんや)
- プロスペラ・クラルクス
- ロア
- エリク
- マスター・マルクーア(現アークマスター)
- リチャード・ホーン(大司教)
- その他の登場人物
- 広瀬愛莉(ひろせあいり)
- 真仲祥司(まなかしょうじ)
- 『Luck Stealer』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 来栖悠聖「『運』を全て失った人間は 必ず『偶然』何かが起こって死ぬ」
- 来栖花梨「花梨はどうして人を傷つけちゃうの?」
- 来栖悠聖「理花 ごめん…」
- 来栖悠聖「オレが殺すのはそいつが人を殺しているか、そいつによって人が死んでいる悪党だけにする。」
- レイン「だって…だって彼では… ボクらを救えないんだよ…」
- レイン「ありがとう来栖さん。どうかよろしくお願いします。」
- 『Luck Stealer』の裏話・トリビア・小ネタ/エピゾード・逸話
- 数少ない表紙獲得作品
- かずはじめにとって過去最長連載。
- 中藤の設定変更
- 現時点で最後の連載作品