呪詛(台湾映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『呪詛』とは、動画配信サービスNetfliXで2022年7月8日から公開されている台湾発のホラー映画。ケヴィン・コー監督による本作は、2019年に国際映画祭に出品され、2022年3月に台湾で公開されると、史上最高の興行収入を叩き出した。また、台湾映画祭では長編映画賞・監督賞ほか7部門にもノミネートされている。過去に宗教施設で禁忌を破り、呪いを受けたリー・ルォナン。命を賭して一人娘の命を守ろうと視聴者に語り掛けるリーの姿が、モキュメントの形で描かれる。

リーの恋人であり、ドゥオドゥオの血縁上の父。陳氏の館へと足を運ぶ道中、リーが身ごもっていることを知る。アーユエンと共に禁断の地下道へと足を踏み入れ、仏母の顔を直接覗き込んだことで、呪い殺されてしまう。

アーユエン(演:阿Q)

アードンの従兄弟。禁断の地下道へと足を踏み入れたことで、呪いの影響を強く受けてしまう。地下道からは抜け出したものの、呪いに取り殺される形で自殺してしまう。

『呪詛』の用語

火佛修一心薩嘸哞

火佛修一心薩嘸哞(ホーホーシッセイシンセーウーマ)とは、陳一族が唱えていた謎の呪文である。文字通りに解釈するのであれば、仏を一心に信仰することでこそ幸せは訪れる、という意味の祈りの言葉として受け取れる。しかし、実際には台湾語の発音として「禍福相倚 死生有名」(災いと幸福は隣り合わせ)という呪文がなまったものである。つまり、この呪文を口にすることで、仏母の呪いを等しく他人に分け与える、という意味合いの呪詛となりうるのである。

超常現象調査隊

「超常現象調査隊」とは、リー・アードン・アーユエンの3人が6年前に動画配信のために結成したグループ名。3人はこのグループ名で「喃喃怪(ナンナンクワイ)チャンネル」というオカルト動画配信チャンネルを運営していた。

大黒仏母

大黒仏母とは、陳氏が崇拝する邪神である。禁断の地下道の最奥部には、大黒仏母を祀った絵画が描かれており、仏母は作中で登場人物がしていた祈りの所作と同じポーズをしている。

『呪詛』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

リー「祈りの持つ力を信じますか?」

本作冒頭でルォナンが視聴者に向けて「祈り」の意味について解説する際に発したセリフが、「祈りの持つ力を信じますか?」である。ルォナンが語り終えるまでの約5分の間に、ナイフを持って謎の呪文を口にする少女や舌からびっしりと歯が生えた少女、自殺する警察官等の描写がなされており、本作の邪悪なテイストを伝える内容となっている。

大黒仏母に名前を捧げる調査隊

陳一族の老婆に促されるがままに仏母に名前を捧げる調査隊

陳一族の館に招き入れられたリーら3人は、祭壇に祀られた仏母に自分の名前を捧げて、「火佛修一心薩嘸哞」と唱え祈るよう促される。この時点では、リーはこの8文字の呪文を唱えることにより自分と娘が呪われることになることについて何ら把握していない。3人が促されるままに祈りを終えると、老婆は10年に一度は仏母にお参りに来ること、捧げた名前は村では使えなくなることを3人に告げ、頭に思い浮かべることも禁じるのであった。

リー「ごめんなさい、嘘をついた。」

本作終盤で、リーが視聴者を欺き、呪いを拡散させるつもりで視聴者に向けて懇願していたことを詫びるシーンで発したセリフが「ごめんなさい、嘘をついた」である。リーは、仏母の前で「符号を覚えて呪文を一緒に唱えてほしい」と視聴者に懇願していた。しかし、リーが祈りの言葉だといっていた8文字の呪文は、実は呪いを視聴者に拡散させるための文言であった。

『呪詛』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

リーによる呪いの希釈化の実験

本作の予告編及び冒頭では、警察官が首吊り自殺をする光景や、リーの両親が交通事故に巻き込まれて死亡する様子が不気味でグロテスクに描かれている。
事故に巻き込まれる直前、両親が神様なんて信じられるわけがないという旨の会話を交わしていた。これはドゥオドゥオに呪いが発現した後に、リー宅を訪れた両親が例のビデオカメラの映像をリーに見せられたことを発端とするもので、両親も呪いの影響で死亡した。また、警察官はたまたま遺失物という形で例のビデオカメラを拾ってその内容を確認してしまったがために、全員が呪われて自殺してしまっている。

つまり、リーは、動画視聴者に呪いを伝播させる前に、呪いの影響が周囲の人間に伝播していくこと、それにより娘への呪いの影響が希釈化されることを彼らの犠牲と引換えに実験していた。意図的にビデオカメラの映像を両親に見せ、また落とし物であることを装って警察官にも見せていたのである。

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