曇天に笑う(曇笑)のネタバレ解説・考察まとめ

『曇天に笑う』とは、唐々煙によるアクション漫画。2011年から2013年まで『月刊コミックアヴァルス』にて連載された。単行本の累計発行部数は120万部を突破しており、人気の高さから様々なメディアミックス展開をしている。2014年にはアニメ化もされた。物語の舞台は、大変革期を迎えていた明治時代の日本。曇天三兄弟と呼ばれる曇家の3人が、300年に1度目覚めると言われている化け物“大蛇(オロチ)”の復活と、それに伴うそれぞれの運命に立ち向かう姿が描かれていく。

天火が処刑されてから、1度も泣き言を吐いていない空丸に蒼世が放った言葉。蒼世の下に訪れた空丸は、鷹峯が襲撃された事件の犯人であることを自白し、己がオロチの器だったことを明かした。殺してほしいと願う空丸に、蒼世は「兄が死んでから泣き言を吐いたか」と問いかける。「弱音を吐いた処で何も変わらない」「これ以上弱くなりたくない」と強がる空丸に、蒼世は「泣けば弱いなど誰が決めた 恥じる事ではない」と返して泣くことを促した。弟子として鍛え、天火がいなくなった後も気丈に振る舞う姿を見ていた蒼世は、空丸が決して弱くはないことをよく理解していた。そのため「人間は悲しみや痛みを受け入れる為に忘れていくように出来ている」と泣いても良い理由を与えつつ、空丸の強がりも尊重した。
犲として天火とも密な交流があり、天火を失った痛みが分かる蒼世だからこそ伝えられた言葉である。天火の元同僚であり親友である自分にも思い出があるように、弟である空丸にも「お前しか知らない瞬間がある」と伝え、その瞬間を大事にするように伝えた。本来オロチの器を「壊す」ことを目的としていた蒼世が、器を「護る」という天火の意思を引き継いだシーンでもある。

曇天火「怖かったんだよ お前等の重荷になる事が 俺だってお前等と国を護りたかったさ けどこの体じゃ国どころか自分一人で立つ事も出来ねえ 役に立たない自分が怖かった―きっと俺は必要とされたかったんだ」

オロチ細胞の人体実験について黙っていたことを問い詰めてきた蒼世に対して、天火が返した言葉。オロチ復活の現場に駆け付けた天火だったが、オロチ細胞に蝕まれた身体は立つことすらままならないほど限界を迎えていた。そこに現れた蒼世は天火の身体を支え、天火が生きていたこと、オロチ細胞の薬の実験に加担していたことに言及する。天火は何度かはぐらかそうと試みたが、しつこく言及してくる蒼世の頑固さに折れて、「怖かったんだよ お前等の重荷になる事が」と白状した。そして「俺だってお前等と国を護りたかったさ けどこの体じゃ国どころか自分一人で立つ事も出来ねえ 役に立たない自分が怖かった―きっと俺は必要とされたかったんだ」という、今まで言えなかった本音も話し、犲を脱退してから確執があった蒼世との和解に成功する。
弟の空丸や宙太郎にだけでなく、犲で共に過ごした仲間達にも弱みを見せず常に明るい姿を見せていた天火が、本音と弱音を吐く貴重なシーン。犲として、親友として、対等な関係を築いてきた蒼世が相手だったからこそ、吐き出した言葉である。「俺は間違ったのか」「どうすりゃ良かったんだ」と嘆く天火に、蒼世は正しくはないと一蹴するが、間違いだと決めつけることもせずありのままの天火を受け入れるのだった。

曇宙太郎「これもオイラの人生ってゆーやつっス キレイじゃなくていいっス どんだけ泥んこでもかっこ悪くても終わりじゃない 大好きな人達と一緒なら生きていけるっス」

1度復讐心に囚われ道を誤った宙太郎が、改心して決別した嘉神に放った言葉。一時は嘉神と行動を共にしていた宙太郎は、嘉神の指示に従ったことで、無意識とはいえ大規模な脱獄の手助けをしてしまっていた。決別した後の嘉神にそれを蒸し返され、宙太郎は自身の人生が汚れ、罪人になってしまった事実を突き付けられる。動揺を誘うような言葉だったが、宙太郎は「これもオイラの人生ってゆーやつっス キレイじゃなくていいっス」と自分の犯した罪も受け入れる。そして「どんだけ泥んこでもかっこ悪くても終わりじゃない 大好きな人達と一緒なら生きていけるっス」と続けて、罪を背負いながらこれからも生きていく覚悟を見せつけた。
両親の記憶は無くとも、天火や空丸からたくさんの愛情を受けて育った宙太郎の強さが垣間見えたシーンである。宙太郎は、嘉神が殺人を繰り返してきた死刑囚ということは理解しつつも、復讐心だけで生きてきた彼を憎みきれずにいた。嘉神を行動を共にするうちに、宙太郎は自分のことを大切だと思ってくれる相手と、自分が大切に思える相手がいることの重要さを理解していた。そして嘉神にもこの先の未来を明るく生きてほしいという願いから、敵対関係である彼に対してこの言葉を放った。

天火「笑え!」

天火の死刑をやめさせようと処刑場に集まる人々。空丸や宙太郎はじめそこに集まった人々が必死に刑を辞めるよう掛け合うが、全てを受け入れた天火は最後に「笑え!」と言い残し、処刑されてしまう。彼らしさが感じられる名言であり、涙なしでは読むことができない名シーンでもある。

曇空丸「誰だって悩んで苦しんで それでも生きてるのは また笑えるって期待してるから 失望するには早いだろ」

「誰だって悩んで苦しんで それでも生きてるのは また笑えるって期待してるから 失望するには早いだろ」は悩んで苦しんだことを乗り越えた空丸が発した言葉。兄・天火が教えてくれた「笑うこと」を、今度は自分が伝えていく。危機を好機に変えていくという想いが込められた名言である。

『曇天に笑う』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

物語の繋がりを楽しめる「笑うシリーズ」

『曇天に笑う』を始めとした「笑うシリーズ」は、それぞれの作品で先祖・子孫といった関係性のあるキャラクターが登場する。どれも単体でも楽しめる作品となっているが、合わせて読むことでキャラクターや物語への理解度が高まり、より楽しめるようになっている。特に本作では謎な部分も多い比良裏や牡丹は、『泡沫に笑う』ではメインキャラクターとして登場する。時系列としては、時代が古いものから『泡沫に笑う』、『煉獄に笑う』、『曇天に笑う』の順となっている。

曇家の3兄弟のモデルはお笑い芸人の東京03

実写映画の公開に伴うインタビューで、作者の唐々煙は、曇家の3兄弟はお笑い芸人の東京03をヒントにしたと語っている。天火は大ボケ役として角田晃広、空丸はツッコミ役として飯塚悟志、宙太郎はボケや煽りを入れるスタイルとして豊本明長を参考にしていた。お笑いが好きなことから、登場人物の関係性は、ボケやツッコミなどの立ち位置を考えて決めるとの発言も残している。
インタビューでは「他のキャラクターにもモデルがいたのか」という質問があったが、特に実在の人物を意識しているわけではなく、人物同士の関係性を重視していると語った。

作者の唐々煙は舞台となっている滋賀県の出身

作者の唐々煙は、物語の舞台である滋賀県大津市の出身である。ペンネームの「唐々」の部分は、大津の地名である「唐崎」からとっている。2019年には、びわ湖大津ふるさと観光大使に任命されている。
実写映画公開に伴うインタビューでは、地元である近江に天狗や大ムカデなどの化け物の伝説が残っており、神話に触れる機会が多かったことを明かしている。そのため、ヤマタノオロチ伝説を取り入れた本作を思いついたことも語っていた。

映画公開記念で「鷹の爪団」とコラボ

2018年に実写映画の公開を記念して、根強い人気を誇るFLASHアニメ『秘密結社 鷹の爪』とのコラボ動画が公開された。『1分でわかる映画「曇天に笑う」』という動画のタイトルの通り、映画の解説や見どころをテンポよく1分間でまとめた動画となっている。動画の終盤では『秘密結社 鷹の爪』の画風で描かれた『曇天に笑う』のキャラクターが登場する。

『曇天に笑う』の主題歌・挿入歌

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