金色のコルダ3 AnotherSky(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『金色のコルダ3 AnotherSky』とは、株式会社コーエーテクモゲームスから発売された女性向け恋愛シミュレーションゲーム『金色のコルダ3』のIFストーリーを描いたタイトル。
季節は夏。ヴァイオリニストの主人公は自分の音楽を見つけるため各学校に転校し、それぞれのメンバーと全国学生音楽コンクール アンサンブル部門での優勝を目指す。
『金色のコルダ3』でライバルとして登場したキャラクターたちと仲間になり、彼らと共に過ごしながら、音楽と恋愛が盛りだくさんの青春恋愛ストーリーを楽しむことができる。

明日から冥加、天宮、氷渡は函館天音へ本校の視察に行くと言う。
函館天音学園はあの不思議な2人の青年、ソラとトーノの所属する学校だ。
「函館天音に行けば天音学園のことが分かるのでは」と考えた主人公は七海とともに同行を頼み、アンサンブルメンバー全員で函館天音学園へ出発した。

主人公は寝る前、旅行の準備としてヴァイオリンケースを開く。
中には金色の弦が入っていた。
この弦は子供の頃の思い出だ。
コンクールの日、主人公はヴァイオリンの弦が切れて泣いていた。
そんな主人公に男の子が声をかけ、弦を張り替えてくれたのだ。
主人公はこれまでお守りとしてこの弦を大切に持っていたのだ。
懐かしい思い出だなと金色の弦をひとつ撫でて、就寝したのだった。

今日は函館に行く日だ。
昼前に函館天音に到着し、途中で理事長所有の洋館であるリラの家に寄って行く予定になっている。
着いた函館天音学園は荘厳な外観をしていた。
お城のような重厚な門を潜ると、広いエントランスには天球儀が置かれ、まるで人の世界から切り離されたような現実味のない空間が広がっていた。
まるで魔法使いが出てくる世界のようだと主人公はドキドキする。

御影と冥加は別用で離れるというので、他のメンバーで学内を視察することにした。
中等部まで函館天音にいたという天宮に学内を案内してもらっていると、主人公たちの周りを何か光り輝く小さいものが飛んでいるのが見える。
天宮がそれは妖精だという。
妖精に驚く主人公たち、この函館天音学園には音楽の妖精が住んでいるというのだ。
珍しいものが多すぎて予定時間がすぎてしまった一行は急いで冥加たちの元へ戻り、今夜泊まる理事長の建物だという洋館へ向かった。

ここは理事長を昔子供たちを集めた家、通称リラの家だ。
冥加、天宮、御影は、昔アレクセイと一緒にここで暮らしていたそうだ。
歴史あるこの家の壁には子供達の写真が額に入れられ飾られている。
主人公はその中でヴァイオリンを構えた少年の写真に目が止まる。
その少年は、昔泣いている主人公に声をかけ励まし、ヴァイオリンの弦を張り替え金色の弦を与え、そしてアレクセイにすがっていた少年だった。
その写真を見て、主人公は一気に昔の記憶を思い出した。
主人公は子供の頃のコンクールで、アレクセイと、そしてその少年である冥加に会っていたことを思い出したのだ。
あの弦を張り替えてくれた少年は冥加だったのだ。

子供の頃の主人公は、ただ楽しく演奏できればそれだけでいいと思っていた。
一方冥加はアレクセイの庇護下にあり、絶対に負けられない環境で演奏していた。
コンクールで優勝できるのはたったひとりだけ。
主人公は自分の勝利と引き換えに他の全員、そして冥加が敗北し絶望するのだと気づいたあの時、彼に自分が負けてもいいと言った。
そして主人公は、自分に声をかけて弦を張り替えてくれたお礼をしたいと思い、冥加に勝利を譲る申し出をしたのだ。
しかしそれは自分の演奏を軽く見られたと受け取った冥加の逆鱗に触れた。
子供の冥加は「俺はそこまで哀れに見えるか?全力で相手をする価値もないその程度の演奏にしか見えないか?俺が感謝すると思ったか?俺の音楽を、存在を侮辱したお前のことを許さない。一生涯かけて俺は貴様を憎み続ける」と激怒した。
主人公は彼の激情を向けられたことを思い出した。
冥加が7年間主人公を恨み続けたその理由を思い出したのだった。

ハッと現実に引き戻された主人公。
そこへ現れた冥加を、主人公は思わず血の気の失った顔で見つめてしまう。
彼は「綺麗さっぱり忘れ去っていた過去を取り戻した感想はどうだ?」と皮肉げに笑う。
そして主人公は冥加に壁に追い詰められてしまう。
そして彼から「俺はこの7年間貴様の忘れたことはなかった。まるで呪いのように苦痛が消えない。昔の輝きを取り戻した頂点を極めたお前に勝利することで、この呪縛から解放されるのだ」と吐き捨てられたのだった。

全国大会予選

東日本大会、全国大会予選の1日目だ。
今日は星奏学院が演奏する日だ。
会場には星奏メンバーが集まっており、わいわいとしている雰囲気に響也も馴染めているようで主人公は安心した。
コンクールで星奏学院は無事勝利し、次のステージへ駒を進めた。
一方負けた対戦相手はいつもの演奏ができていないようだった。
彼らの様子は、合同演奏会での響也の様子とどこか似ていた。
ぼーっと立ち尽くす明らかに様子がおかしい対戦相手のそばで、主人公は函館天音学園のソラとトーノを発見する。
彼らはコンクールに出場する参加者のマエストロフィールドの種を砕き、拾い集めていたのだ。
2人に詰め寄った主人公と響也に、彼らは自分たちの目的を話し出す。
「僕たちが欲しいのは優れた音楽家が紡ぐ音楽とその感動ー人だけが持つ感情の力、ブラボーポイントと呼ばれるもの。それは奇跡の源になる。だから僕たちは集めている」
2人はそれだけ言って去ってしまう。
響也は状況を理解できていた。
きっと自分も彼らのようにそのマエストロフィールドの種を奪われたのだ。
響也は主人公に「明日の演奏に集中しろ、あいつらがお前を狙ってきても守ってやる」と約束してくれた。

予選大会2日目。
午前の部で勝ち残った天音学園と至誠館高校の一騎打ちだ。
まずは至誠館高校の一曲目の演奏、完璧なハーモニーを見せつけてくる。
次の天音学園の演奏はあまりにも平凡な仕上がりだった。
昨日の衝撃で心が揺らいでいる主人公のヴァイオリンもそうだが、チェロの氷渡の演奏もガタガタだった。
彼は同じチェロ奏者の七海が上達してきていることに焦り、自分は正チェリストを下されそうになっていることに怯えていたのだ。
そんな氷渡に天音学園メンバーは誰も彼の心に寄り添うことをしない。
主人公はかすかに震える氷渡の手をそっと握る。
氷渡は心底怖がっており、「俺はもうダメなのか、精一杯頑張ったけどダメなのかな…?」と弱音を吐く。
少し頭を冷やしてくるとたった1人でいなくなる氷渡の後ろ姿を見送る主人公。
その視線の先には励まし合っている至誠館の姿があった。
仲間とはこう言うものではないのか、と主人公は悔しく思ったのだった。

至誠館の二曲目の演奏が始まる。
至誠館の演奏からは同じ音楽を奏でる仲間を思う気持ちが感じられた。
主人公は、それは今の天音学園にはない魅力だと感じた。

二曲目、横浜天音の名にかけて負けられないとステージに立ったメンバー。
冥加の素晴らしい圧倒的な演奏力を見せつけ、至誠館に勝つことができた。
地方大会は無事勝ち進んだが、終わったとたんに天宮も冥加もさっさといなくなってしまう。
氷渡も二曲目に演奏した七海に恨み節を吐き去ってしまう。
気まずい中残された主人公と七海。
東日本大会をみんな勝ち抜いたはずなのに、全国大会に行けることをみんなで喜ぶこともない。
主人公の胸に悲しさとむなしさがつのったのだった。

全国大会セミファイナル

翌日セミファイナルのために集合したアンサンブルメンバー。
そこで氷渡はコンクール参加者から正式に外れるよう言い渡されてしまう。
「チェロは優れた方一本あればいい。お前は俺の音楽には不要だ」と氷渡を切り捨てる冥加。
追い縋る氷渡の言葉にも耳を貸さず、冥加はさっさと姿を消してしまう。
正式にクビだと言われてしまった氷渡だが、納得できず諦められないと部屋を飛び出し冥加の後を追う。
心配になった主人公も彼らの後を追った。

氷渡は理事長室の前に居た。
「チャンスをくれ」と理事長室の扉を叩きながら懇願する氷渡。
しかし理事長室にいるはずの冥加からは何の反応もない。
俺は使い捨ての駒かと絶望する氷渡を主人公は見ていられなかった。
仲間だったら助け合ったり励ましあったりするのは当然だという至誠館の言葉を思い出す。
氷渡と共に主人公も理事長室の扉を叩き始めた。
氷渡はギョッとして主人公のその行動を止める。
彼は「手を痛めたらヴァイオリニストは演奏できなくなるぞ」と心配してくれたのだ。
主人公と氷渡、2人の懇願を聞きやっと冥加が出てきたが「無駄なあがきはやめろ」と言う。
冥加の「最上のパーツだけあれば二番手はいらない」に、主人公は妙な既視感を覚えた。
それは主人公の子供の頃のコンクールでのアレクセイの姿に重なったのだ。
「昨日の演奏だけ判断しないでくれ」とすがる氷渡、「お前にそれだけの価値があると示せば考え直してもいい」という冥加、その二人はあの日のアレクセイと冥加の姿に重なった。
主人公は冥加に「それではアレクセイと同じだ」と投げかける。
すると冥加は主人公の言葉に苦い顔をし、黙りこむ。
立て続けに主人公は「氷渡は必要なメンバーだ」と説得すると、冥加は納得しないような顔をしながらも「あの男の亡霊に成り下がるなど認めたくない。メンバーに残した意味があったと思えるだけの結果を残せ」と言って、氷渡のアンサンブルメンバー降格を解除してくれたのだった。

アンサンブルメンバーに残れた氷渡は震えながら主人公の手を握る。
アンサンブルメンバーに残れたのが信じられないようだ。
彼は「もう無理だと思った。俺1人だったら絶対許されなかった。あなたが俺を救ってくれたんだな」と主人公にひたすら感謝してくれた。
主人公と氷渡が2人で部屋に戻ると、天宮も七海が心配して待っていてくれた。
彼らに氷渡がアンサンブルメンバーに戻れたことを伝え、皆で氷渡が戻れたことのお祝いに七海の実家である中華料理屋へむかった。
天音学園メンバーが初めて仲間らしいことをした日だった。

今日はセミファイナルの説明会だ。
会場には女子の黄色い声がひっきりなしに響いている。
多くのファンがいる神南高校の東金 千秋(とうがね ちあき)と土岐 蓬生(とき ほうせい)がいるからだ。
東金は冥加を挑発するように、「横浜天音は1stヴァイオリンとピアノにおんぶに抱っこだ。警戒すべきはそれだけ、お前らは記憶に残らない演奏だ」と宣戦布告する。
そんな神南を見返すため、主人公はセミファイナルに向けて気合を入れて練習を始めたのだった。

神南はよく路上やライブ会場でゲリラライブをしている。
そのライブを見てソラとトーノが東金に目をつけたようだ。
主人公は嫌な予感がしてライブ会場へ向かうと、予想どおりソラとトーノの姿があった。
主人公は敵対モード、向こうも見つかったかと表情を歪める。
ソラは主人公に「まるで僕たちが悪者みたいに言うが、マエストロフィールドの種を手放したのはあいつら自身だ。強い感情の揺れが心を砕いたんだ。何も問題なければあんな風に砕けない。僕らは砕けたかけらのおこぼれに預かっているだけ」といけしゃあしゃあと言う。
まるで自分の演奏を手放したのは自分たちだと言わんばかりだ。
納得できない主人公、なお敵対モードの主人公にトーノが仕方なさそうに自分達が集めている訳を説明始める。
彼らが種を集めているのは、自校に存在する妖精のためだった。
人間の持つ願いや祈りのような感情は妖精の使う魔法のみなもとになる。
人の音楽から生まれた感動、ブラボーポイントという尺度で量られる力、それが魔法の源であり、妖精のために必要だという。
函館天音で見た妖精は小さな存在で彼らの魔法も小さなもの。
つまり種を集めることで妖精の魔法を増やしているというのだ。
そして函館天音学園の彼らが目をつけた次の標的は東金だった。
東金は熱狂的なファンを酔わせる演奏をし、集まるブラボーポイントはけた違いだというのだ。
訳を聞くも、感動の力を集め持ち去ってしまう彼らを主人公は許すわけにはいかない。
主人公は彼らと対立することを宣言する。

セミファイナル1日目当日。
会場は観客でいっぱいで多くが神南ファンだ。
午前の部で勝ち上がったの横浜天音、神南高校だった。
観客を喜ばせるための演奏をする神南、音楽を至高に求めて高めていく横浜天音。
正反対の2つの戦いが始まった。
はじめに神南高校の演奏、観客は神南ムードだ。
次に天音学園の演奏、冥加を引き立てるクオリティの高い演奏だったが、個人の力が発揮されきっていない不完全な演奏となった。
神南高校の二曲目。
冥加を引き立てる伴奏のようなアンサンブルの横浜天音の演奏に対し、神南は2つのヴァイオリンがどちらもエンジンとして始動する、華やかな演奏だった。
神南の二曲目の演奏が終わり、会場はさらに神南ムードとなり天音学園の不利な状況に陥る。
次は天音学園の二曲目。
主人公は冥加を引き立てるための天音学園の演奏では神南高校に勝てないと悟る。
個性なくただ一つのパーツのように弾く演奏では、個性や情熱に溢れる神南の演奏に勝てないと考えたからだ。
主人公は「俺に従っていればいい」という冥加に、「これでは敗北する。このまま負けたくない!」と訴える。
そこへ天宮が割って入り、「演奏方針や解釈を変えるのではなく、皆さらに高みの演奏を目指した演奏をしよう」と楽しげに提案する。
高みの演奏、その言葉に天音学園メンバーの士気が上がった。
そしてステージへ立ち、横浜天音の真価とも言える演奏を見せつけたのだった。

勝負は横浜天音学園の勝利だった。
主人公たちは無事ファイナル進出を決めたのだった。

セミファイナル2日目、今日は函館天音と星奏学院が演奏する日だ。
主人公は響也と律の応援に行く。
午前を勝ち残り、午後は星奏学院と函館天音学園の一騎打ちとなった。
まずは星奏学院の演奏、息のあった素晴らしいハーモニーの演奏だっだ。
一方次の函館天音の一曲目、彼らにコンクールへの熱はなく呆れながらだったが、澄み切ったその音色に客席に感動が広がった。
二曲目が始まる前、ステージに上がる前に律が弓を落としてしまう。
彼は昨年負傷した後遺症で手首を押さえ苦しそうに顔を歪めていた。
律は「残り一曲ならこの腕は持つ」と言い、響也へ「ファイナルへの道はお前が切り拓け」と夢を託す。
二曲目の1stは響也だ。
律は「お前にならアンサンブルを託せる。限界のその先へ辿り着け」と熱い想いを渡したのだった。
律の想いを受け取り響也はステージに立っていた。
正直今にも逃げ出したいが、客席にいる主人公も昨日震えながら戦いぬいていた。
そんな主人公の前で自分も逃げるわけにはいかないと腹をくくったのだ。
「やれること全部やってやる!」と響也は気迫のこもった演奏をし、客席から拍手喝采を受けたのだった。
勝敗は星奏学院の勝利で幕を閉じたのだった。

全国大会ファイナル

アンサンブルメンバーで集まっていると冥加の携帯に連絡が入る。
メールに目を通した瞬間、冥加は血相を変えて立ち去ってしまう。
心配になった主人公とアンサンブルメンバーは冥加の後を追う。

冥加が向かったのは理事長室だった。
中へ入ろうとするも理事長室の扉は冥加のカードでロック解除ができなくなっていた。
眉をひそめる冥加、すると中からアレクセイの声がして扉が開く。
理事長室に勢いよく乗り込んだ冥加は、アレクセイに「なぜ理事長室に入り込めた。理事会を招集したのもお前か」と激昂する。
そんな冥加にアレクセイは種明かしをする。
実は御影が冥加の隙を見てパスコードを変更していたというのだ。
御影はアレクセイの手先だったのだ。

アレクセイはセミファイナルの結果が不満だったようだ。
神南高校という普通科と接戦したことが許せず、今まで冥加に任せていた学校経営を自ら行うというのだ。
アレクセイはレベルの低い演奏家を除籍すると言い、まず主人公と氷渡を退学にすると宣言する。
「コンクールの成績が理由ならば部長の俺が対象者だ」と冥加が言うも、アレクセイは「君は私のお気に入りの優秀なヴァイオリニストだ。これくらいのことで解放などしない」と笑う。
さらにアレクセイは苦虫をかみつぶしたような顔の冥加に、「君がどうしてもというなら彼らが残れるように尽力する。誠意を見せろ。3年前に私にした仕打ちを心から詫びろ」と迫る。
今の横浜天音学園は冥加が取り仕切っていた。
3年前にアレクセイを追い出して自ら実権を握ったのだ。
アレクセイはアンサンブルのためにどこまでできるか知りたいと挑戦的に笑い、冥加に「日本にはこういうときにふさわしい謝罪の仕方があるだろう?」と土下座を要求する。
とても見てられないとアンサンブルメンバーが前に出ようとするも、冥加に下がれと一喝されてしまう。
そして冥加はアレクセイをにらみつけながらも、覚悟を決め土下座したのだった。
独裁者として君臨していた冥加がアンサンブルのために項を垂れた。
その光景にアンサンブルメンバーの胸が熱くなった。
しかし足元に跪く冥加を見てアレクセイは高笑いする。
ファイナルへの準備期間に入ったその日、横浜天音はアレクセイ・ジューコフの手に落ちたのだった。
アレクセイから天音学園を奪い返すため、そして理事会を味方につけるためにも、主人公たちはコンクール優勝を誓ったのだった。

今日は冥加が出場する全国音楽コンクールのヴァイオリンソロの部の決勝の日だ。
決勝は東金と冥加の勝負。
接戦だったが冥加は東金を下し、見事優勝を勝ち取った。
冥加の優勝を喜ぶ天音学園アンサンブルメンバー。
お祝いしようと提案し、夏らしく花火をすることにした。
コンビニで大量の花火を買い、主賓である冥加を呼びだし、クラッカーで皆で出迎える。
冥加は呆れているが皆で花火なんていい思い出だ。
「室内楽部のメンツで花火だなんて考えられなかった。どこぞの誰かが転入してきたからだな」と呆れたように笑う冥加、他のメンバーも楽しんでいる。
花火をし笑い合いながら、主人公は天音学園に転入してきてよかったと思えた。

ファイナル当日、会場に入るとこれまで競い合った至誠館、神南が応援に来て激励の言葉をくれる。
楽屋では響也にばったり会った。
彼はかつて天音学園に籍を置いていた身、しかし今は星奏学院アンサンブルメンバーとして主人公のライバルとして立っている。
響也は冥加に「トロフィーはうちがいただく」と宣戦布告する。
ファイナルの相手が本当に響也になるとは、と律の言葉が実現しなんだか感慨深い。
響也の強気な言葉に冥加は受けて立つと挑戦的な笑みを浮かべた。

演奏の前にアンサンブルメンバー皆で集まる。
天音学園アンサンブルは最初の頃からだいぶ雰囲気変わった。
今はお互いに信頼できる相手として認め合えていたのだ。
「勝利以外はない、勝つぞ」という冥加の言葉に気合をいれ、ステージに向かう。
ついにファイナルのステージが始まった。

まず星奏学院、続けて天音学園の一曲目の演奏が終わった。
どちらも胸を熱くする思いのこもった素晴らしい演奏でレベルの高い勝負となる。
天音学園の彼らはまだ自分達の演奏に満足しておらず、主人公もまた同じだった。
主人公はこれまでの自分を思い出す。
演奏が苦しかった過去、必死に足掻いた今まで、そしてこの天音学園に転校してまで演奏せずにいられない理由、音楽に向ける愛を自覚したのだった。
星奏学院の二曲目、響也の成長した演奏に観客が湧く。
ここまではほぼ互角だ。
次の天音学園の一曲で、すべての決着がつく。
主人公は覚悟をもってステージへ上がる。
天音学園の二曲目、最後の演奏で主人公のマエストロフィールドが広がり、観客に素晴らしい天上の音楽を見せつけたのだった。

全国学生音楽コンクールのファイナルは、天音学園の勝利となった。
律は銀のトロフィーには一歩届かず悔しそうにするが、主人公の音が輝きを取り戻したことが嬉しいと喜んでくれた。
ついに全国優勝だ。
これでアレクセイの支配から一歩抜け出せると皆で肩を叩き合ったのだった。

『金色のコルダ3 AnotherSky』の各キャラルート・エンディング

八木沢 雪広(やぎさわ ゆきひろ)

夜明けを眺めながら八木沢と手を繋ぐ

トランペットの音色に誘われて向かうと、そこには火原 和樹(ひはら かずき)が演奏をしていた。
彼は八木沢の知り合いで、八木沢からアンサンブル練習について相談したいと頼まれ待ち合わせしているという。
気さくな火原と話をしてると、そこへ八木沢がやって来る。
火原と八木沢の関係は教師と生徒、八木沢は火原の元教え子で、彼の中学時代の恩師が火原だった。
火原から「中学のころから八木沢は練習熱心で、長嶺と共に吹奏楽コンクールに向けて挑んでいた。こっそり部室に泊まり込んで練習するほど」と聞き、今の不仲を知っている主人公は驚く。
さらに「長嶺くんは元気?」という火原に、八木沢は言葉を濁す。
2人の不仲を感づいた火原だが「俺も高校のときいっぱい喧嘩した。君たちならきっと仲直りできるよ」と励ましてくれた。

全国大会予選で争うのが星奏学院になり、主人公は幼馴染たちと競っていいのか迷い悩んでしまう。
そこで八木沢に相談にすると「コンクールに参加する以上、優劣をつけられてしまう悩みや迷いは簡単に消えない。でもそれは真剣に取り組んでいる証拠で、悩んだっていい」と励ましてくれる。
主人公は八木沢のおかげで迷ったり悩んでもいいと思えるようになった。

主人公は八木沢から山登りに誘われ、さっそく2人で近場の山へ向かう。
さわやかな空気、鳥のさえずり、綺麗な花、2人でゆっくり景色を楽しみながら山頂へ歩く。
山登りとクライミングは八木沢の趣味で、彼はよく山道を歩きながら自分自身と向き合いリフレッシュしているという。
山頂に着いた達成感はなんとも言えず、日頃練習で疲れ切っていた主人公は心が軽くなったようだった。

屋上で八木沢が黄昏ている。
主人公がなにがあったのか尋ねると、八木沢はとある楽譜を見せてくれた。
その楽譜は昨年全国学生音楽コンクールに出場しようとしていた時のもので、譜面には当時の吹奏楽部の皆で話し合って書き込んだ文字が残っていた。
八木沢は、ブラスバンド部として彼らが部を離れる前の日常のことを思い出してしまうという。
昨年まで吹奏楽部は皆一丸となりコンクール優勝目指していた。
しかし火積の暴力事件があり、火積を退部させるように迫られた八木沢は反対し、そんな八木沢に納得できない仲間は去っていった。
八木沢は「自分の判断が間違っていたとは思っていないが、分裂した原因は僕にあるとも思っている」と主人公に話す。
憂いた表情の八木沢に主人公が後悔しているか聞くと、彼は強い意思で「同じ状況がきたら、僕はまた同じことをすると思う」と告げる。
しかし彼は「吹奏楽部がこうなった原因は僕に一理あり、そんな自分はすぎた日々を懐かしく思うことなどしてはいけない。コンクールのためにも今は感傷的な気持ちになる暇はない」と自分を律し追い詰めているようだった。
主人公は八木沢を心配し「あなたの力になりたい」と伝えるも「これは僕自身の気持ちの問題、自分で心を整理して納得するしか解決方法はない」と言い、彼は一言謝り去っていった。

八木沢は1人で山に登っていた。
いつものように心の整理をし、頭の中をクリアにしたかったがうまくいかない。
過去のことを断ち切り前に進まなければいけないと分かっているのに、仲違いした長嶺やかつての仲間のことを考えてしまうのだ。
八木沢が考え事をしながら歩いていると、注意力が散漫しうっかり足を滑らし、崖から滑り落ちてしまった。

そのころ主人公は八木沢と連絡がとれず心配していた。
彼と連絡が取れないなんてことは滅多になく、何かあったのではと焦る。
八木沢は考え事がある時はよく山へ行くと言っていたのを思い出し、主人公は急ぎ山へ向かう。
山頂から降りてきたハイカーは八木沢を見ていないと言うため、もう1つの候補地であるクライミングスポットへ探しに行く。
主人公が祈るような思いで走り、クライミングスポットに到着すると、崖の下で倒れている八木沢を発見する。
主人公が彼の名前を呼び駆け寄ると、八木沢の意識が戻る。
彼は奇跡的に怪我をしておらず大丈夫そうだ。
八木沢は心配をかけたことを謝るが、一緒に帰ろうとする主人公に背を向ける。
背を向けた八木沢の後ろ姿はどこか人を拒絶して見える。
そんな彼に主人公は「悩んだっていい」と訴える。
それはかつて八木沢が主人公にかけてくれた言葉だった。
主人公が「弱くてもいい」と言うと、八木沢は耐えきれなくなったように涙を流す。
彼はずっと心の中に吹奏楽部を出ていった仲間達のことがひっかかっていた。
「前に向かって進まなければいけないのに、今の吹奏楽部を担う責任があるのに、過去とは決別しなくてはいけないのに。どうしてもあの頃のみんなと重なった音色と笑いあった日々がよみがえってくる。あの日に戻ることはできないと分かっているのに」と八木沢は主人公の前で涙を流す。
いつも穏やかで背筋を伸ばしている彼が、自分の心の弱さを晒してくれた瞬間だった。
しばらく2人きりでいると八木沢はすっきりした顔で「聞いてもらえてくれたことで少し気持ちが晴れた。あなたがいてくれて本当によかった。ありがとう」と目を赤くしたまま笑ってくれた。

後日八木沢から、改めて先日の謝罪とお礼を言われる。
彼は主人公に「自分のかかえたものに潰されそうになっていたが、主人公が悩んでいる自分を否定しなくていいと教えてくれたおかげで、自分は救われた」と話してくれた。
八木沢は「ブラスバンド部部員たちと過ごした日々や、今年の夏頑張ったことは一生忘れない。すべて僕の一部だ」と胸を張り前を向いていた。
主人公は彼に「そうしてできた今の八木沢が好きだ」と伝える。
顔を真っ赤にする八木沢は嬉しそうに微笑んでくれた。

主人公は八木沢から写真展に誘われ一緒に見に行くことにした。
2人で写真を眺めながら歩いていると、八木沢が一枚の写真の前で足を止める。
それは山の美しい夜明けの写真だった。
主人公が「八木沢と夜明けを一緒に見たいな」とつぶやくと、彼は「よかったら明日夜明けを見に行かないか?」と誘ってくれる。
翌朝、朝早く八木沢と待ち合わせし、2人きりで寮を抜け出す。
夜明け前に八木沢と2人きりで過ごす非日常な時に主人公はドキドキしてしまう。
さっそくむかった公園は、横浜を一望できるいい景色だった。
夜明けになり、空が紫、白、桃色、空全体が刻一刻と色を変えていく。
この世界はこんなに綺麗だったのかと2人で感動する。
しばらく眺めていると、寮に帰るのが名残惜しくなってしまう。
そっと主人公の手を繋いできた八木沢は「あなたと出会ったことで日常は変わった。朝日が世界を塗り替えたように、鮮やかに僕の世界は生まれ変わった」と真剣な表情で告げる。
そして「寮に帰るまでこのまま手を繋いでいてもいいですか?もう少しだけ特別な時間を過ごしたいから」と微笑んでくれた。
2人は手を繋ぎ、時間を惜しむように寮に帰宅したのだった。

祝勝会のパーティの途中、主人公は八木沢と2人きりで会場を抜け出す。
八木沢に「一緒見た夜明けを覚えていますか?」と聞かれた主人公がうなずくと、彼は「あの日僕はあなたに心を奪われたんだ」と優しく目尻を下げる。
彼は主人公の手を優しく握り「コンクール終了まではと気持ちを抑えていたがもう隠すことはない。僕はあなたが好きです。これからもずっとあなたのそばにいたい。誰よりも素敵なあなたを愛しています」と告白してくれた。
そして「ふたりで幸せな思い出をたくさん重ねていきましょう。大切な恋人として」とつづけた彼と主人公は指を絡め、2人の距離が近づいたのだった。

火積 司郎(ほづみ しろう)

徹夜で練習する火積に夜食を届けた主人公は寝入ってしまう

学校の屋上、火積が1人で黙々とトランペットを吹いている。
彼は1人でランニングしたり空いた時間に自主練したりと、ひたすら努力をかかさない。
主人公は休憩中に彼に話しかけるが、あまり会話がはずまない。
彼は主人公の入部に納得しておらず「部長が決めたことだから異論はないが、俺たちはこの夏に賭けてる。コンクールでなにがなんでも優勝すると覚悟を決めてくれ」と主人公に厳しい目を向けたのだった。

火積が中華街に買い出し行くと聞き、主人公は彼についていくことにした。
買い出しを終え帰ろうとする2人に、店員が声をかけ笹をモチーフにした翡翠のブレスレットを勧めてくる。
笹や竹は伸びるのが早いので、それにあやかって大きな躍進を願う時に身につける縁起物らしい。
「そちらの彼女にどう?」と言う店員に火積がにらみをきかせると、驚いた店員はそそくさとその場を後にする。
その後、火積は主人公に「俺なんかと変な勘違いされちまってすまない」と謝るが、主人公が「彼女と言われるのは悪くない」と返すと、彼は「冗談はやめろ」と顔を赤らめる。
これをきっかけに主人公は火積とよく話すようになった。
主人公は今までろくに話せなかった分、火積と会話できることが嬉しかった。

星奏学院では夜間も練習できるように練習室を解放している日がある。
朝から夜まで熱心に練習する火積に夜間解放のことを教えると、彼はさっそく徹夜で練習しに行くという。
主人公も「一緒に練習に行きたい」と言うが、彼に「体を壊すからだめだ。無理して付き合わなくていい」と断られてしまう。
彼が一日中トランペットを練習するのには訳があった。
昨年火積は暴力事件を起こし、そのせいで吹奏楽部が活動停止処分を受けコンクールに出場できなかったのだ。
暴力事件は伊織を不良からかばったと言う理由があったが、実際に殴って乱闘騒ぎになった。
そのときの火積はトランペットを始めたばかりで練習もうまくいかず、仲間ともうまくいってなかった憂さ晴らしもあったという。
火積は「誰かを殴ったことで誰かの夢をつぶすなんて分かってなかった。実際退部を迫られ、辞めようとトランペット置こうとしたら手が震えた。これでトランペット吹けないんだなと思ったら嫌だった」と感じたという。
彼はそこで初めて自分がトランペットを吹くことが好きだと自覚したのだ。
そして火積は今までの行いへの贖罪をはらすように、自分をかばって部に残してくれた八木沢に恩を返すために必死に練習していたのだ。
彼は八木沢が間違っていなかったんだと周りに示すためにも、全国優勝するのだと強く決意していた。
練習室へ向かってしまった彼を見送りながら、主人公は1人で罪を背負いこむ彼が心配になり、夜食を作って持っていくことにした。
練習室につくと火積は練習に集中しているようで主人公に気づかない。
邪魔をするのも悪いのでしばらく廊下で待つことにしたが、日頃の練習の疲れもあり主人公は待っている間に寝てしまう。
休憩を取ろうとした火積は、座り込んで寝こけている主人公に気づき驚く。
体を揺らし声をかけるが起きない主人公のために、彼は普段使っている自分の上着をかける。
そして火積は夜食に気付き、自分のために尽くしてくれる主人公に感謝したのだった。

1人で練習する火積の周りに観客が自然と集まり拍手する。
火積の演奏は段違いに上手くなっていた。
主人公が「楽しそうな演奏だったね」と言うと、彼は申し訳なさそうに「コンクールで勝たなきゃいけないのに、楽しんでたなんて申し訳ない」と気まずそうにする。
しかしそんな彼に主人公は「音楽と本気は両立できる。いつも辛く苦しまなくていい、音楽を楽しみながら挑めばいい」と伝えると、彼はハッとする。
彼はトランペットを吹くのが楽しい、トランペットが好き、吹いてる理由なんてそれだけでいいと気づいたのだ。
火積は気づかせてくれた主人公に感謝し、「あんたと演奏するうちに自分の音が好きになってきた。俺に音楽は楽しいって教えてくれたんだな」と微笑んでくれた。

帰り道、火積の主人公が2人で一緒並んで帰っていると、昨年火積と暴力沙汰になった不良に絡まれてしまう。
彼らは昨年火積にやられたことを恨んでいたのだ。
火積は同じ過ちは繰り返さないとばかりに絡んでくる不良を相手にせず避けようとするが、さらに現れた不良達に囲まれてしまう。
不良が殴りかかってくるが、火積は反撃せず殴られるままだ。
不良たちは全国大会のために火積が反撃しないと知っていたのだ。
調子に乗って殴りつづけてくる不良に、火積はついに倒れてしまう。
主人公は周りに助けを求めようとするが人影はない。
思わず主人公は火積のトランペット吹いて大きな音を出す。
その音に気づいた男性がこっちに駆けてくると、不良はそそくさと逃げてしまった。
その後警官が来て事情を聞かれるが、火積が「喧嘩じゃない絡まれただけ」と主張しても、昨年の事件のことで彼のことを信じようとしない。
学校には連絡しないでくれと頼んでも警察はダメの一点ばり。
そこへ主人公は「自分が目撃者だ」と名乗り出て、火積は手を出していないと必死に訴え掛ける。
そこへ警官へ逃げた不良が捕まったようだと無線が入り、不良にはやり返された形跡がないことが分かり、火積の無実が証明された。
警官は自分たちが間違っていたと謝り、火積はかばってくれた主人公に恩を感じたのだった。

学校ではまた火積がやらかしたと噂がたっている。
火積が警官に尋問されているのを見たという生徒がいたのだ。
噂を聞いたブラスバンド部顧問が八木沢を呼び出し「やはり火積を辞めさせなかったお前は間違ってた」と糾弾する。
しかし八木沢は「火積が問題を起こすはずはない」と笑い飛ばす。
八木沢は誰よりも真剣な今の火積を知っていたし、彼にかぎってそんなことは絶対にないと信じていたのだ。
そこへ主人公がかけつけ「目撃者もいたし相手はケガもしてない、警察も火積が被害者だと認めてる」と話す。
さらに集まった至誠館メンバーは皆それぞれ火積の心配はしたが、誰も彼を疑ってなどいなかった。
そんなメンバーに火積は「俺なんて疑われるのが当然、なんで俺のことそこまで信じられるんだ」と言って泣く。
しかし主人公は「それは火積が信じさせてくれたからだ」と話す。
誰より一番練習してたのは彼だ、吹奏楽部を一番大事に思っていたのは彼だとみんな知っていたのだ。
火積ははそれを聞き「吹奏楽部に入ってよかった、トランペットを続けてて本当によかった」とさらに涙をこぼしたのだった。

ファイナル前夜、主人公は火積に呼び出される。
そして彼から、中華街に行ったときに見つけた笹模様の翡翠の腕飾りをプレゼントされた。
主人公が腕を差し出すと彼は大事そうに手を取り、そっと手首につけてくれる。
翡翠は守りの力もあり、火積は少しでも主人公のお守りになればと思い主人公のことを想って買ってきてくれたのだ。
そして主人公は彼から「いつもまっすぐで一生懸命でそんなあんたが好きだ。守りたい、ずっとそばにいたい」と告白されたのだった。

主人公は祝賀会を抜け出した火積を追いかけ、2人は静かな庭園にいた。
火積は先日の告白のことを照れながら話し、「俺があんたのこと一方的に好いてるだけなのに…」と言うが、主人公は「自分も好きだ」と返す。
彼は信じられない様子だが、次第に表情を緩め「勝負に勝ってあんたと好きあえて、こんなにうれしいことはない」と喜んでくれた。
そして「気の利いた言葉ひとつも出てこない甲斐性もないが、この先もあんたのことを守ると約束する。あんたが嬉しそうに笑う顔を一番そばで見られたらいい。あんたが幸せでいてくれりゃそれ以上の幸せなんてない」と主人公をそっと抱き寄せてくれたのだった。

水嶋 新(みずしま あらた)

河川敷でデートをする主人公と新

新は元気で、彼の周りはいつもにぎやかだ。
楽しいことが好きな新は、火積の楽譜に落書きして怒られたり、秘密基地と称して木にハンモックを吊るして寝そべったりと、毎日を自分らしく楽しんでいる。
彼の明るい性格は、小さい頃ブラジルに住んでいたときのトロンボーンの師匠の影響が大きいという。
新は師匠からトロンボーンと、音楽で繋ぐ人の絆を教えてもらい、それが彼の信念になっていた。
彼はとてもフレンドリーで人との絆を大切にしており、また音楽を人と人を繋ぐ愛の魔法だ、と日頃から語っていた。

そんな新は対立しているはずのブラスバンド部部員とも仲が良い。
新と彼らは友だちで、普段から軽口をたたきあいかなり親しい様子だ。
主人公は「仲の良い彼らとちがう部で困らない?」と聞くと、新にはわざわざ吹奏楽部に入った理由があるのだという。
それは胸を張って言える立派なものではないんだと、彼はしょげながら主人公に打ち明けてくれた。
新が吹奏楽部に入った理由、それは吹奏楽部が部員が少なかったからだ。
吹奏楽部の人気のなさを知っていて、新は自分がおそらく吹奏楽部たった1人の新入生だろうと考えた。
そしてでかい部で下積みするより弱小の部で大切にされたいと考え、吹奏楽部を選んだのだという。
実際の吹奏楽部は火積によるスパルタ教育によりとても厳しいが、彼は「入部したことは後悔はしてない。毎日が楽しいよ」と笑う。
そして「すっごく魅力的な転校生が流星みたいに現れたし!先輩と青春できてラッキーだ!」とポジティブに笑ってくれた。
新と過ごすことで、主人公も自然と毎日明るい表情で過ごすようになったのだった。

主人公は部室で一昨年の大会のDVDを探していたが、いくら探しても見つからない。
新に聞いてみると、DVDはブラスバンド部の部室にあったと漏らす。
ブラスバンド部の部室にあるとなぜ知っているのか、それは新が友人と共にブラスバンド部に出入りしていたからだ。
「情報が広まれば俺とブラスバンド部部員が仲良くしてるのがバレる、諦めてほしい」と彼に言われ落ち込む主人公。
そんな主人公を見て、新は「俺がDVDを取り戻す!」と約束してくれた。

主人公宛に新からメールが届いた。
予告状というタイトルのそれは「約束のものを取り戻しあなたのハートをときめかせてみせます!」というもの。
一体どう言う意味なのか、主人公は新に直接聞いてみることにした。
夜遅く現れた主人公に驚く新、彼はこれから新は学校に忍びこみにいくという。
主人公は新の反対を押し切りついていくことにした。
2人でこっそりと校舎へ忍び込む。
新が下校間際に開けておいたと言う窓から中へ入り、ブラスバンド部部室へ向かう。
途中見回りしている校務員に見つかりそうななるが、新が職員室に電話をかけて注意を逸らしなんとか見つからずにブラスバンド部部室は到着した。
抜かりなく鍵も準備していた新、ブラスバンド部部室に忍び込み無事DVDを取り返せたのだった。
見たかったDVDを手にできて喜ぶ主人公に、彼は「ご褒美に願いを叶えてほしい」と頼み、主人公は新に3つ願いを叶えると約束したのだった。

新の1つ目のお願いで、主人公と新は河川敷でデートすることになった。
新は荷物からスポーツカイトを取り出し2人で遊ぶ。
スポーツカイトとはいわゆる凧で、二本あるラインを右手と左手で握り、新が操作方法を教えてくれる。
主人公が強い風がきてよろめいてしまうが、新が後ろから手のひらを包むようににぎりサポートしてくれる。
操作が上手な新に教えてもらいながら、2人はデートを楽しんだ。

新に2つ目のお願いは、新が「POR FAVOR(お願いします)」と言ったら絶対うんと答えてほしいというものだった。
さっそく「主人公と2人きりで海に行きたいです!POR FAVOR!」という彼に主人公は約束どおりうなずく。
翌日2人は海へ、主人公の水着姿に新はテンションマックスだ。
2人で海に入って水を掛け合ったり、砂浜で追いかけっこしたり、1日を楽しんだ。
浜辺の屋台でミサンガが売られており、新が主人公におそろいのミサンガをプレゼントしてくれる。
もらったミサンガは楽器ケースにつけることにしたのだった。
翌日、至誠館メンバーが新と主人公のおそろいのミサンガに気づく。
新が自慢するも、どうせ新のわがままでつけてるんだろと一蹴され、彼は拗ねてしまった。

いつも明るい新が、どこか元気がないように見える。
彼は落ち込んでいた。
主人公が自分のお願いをきいてくれるのはただ約束しているからで、好意でもなんでもないと思っていたのだ。
心配する主人公に、新は「POR FAVOR!」と言いながら迫り、「先輩はどこまで許してくれる?キスさせてって言ったらどうしますか?約束なんだから俺のお願い聞いてくれる?本当は嫌だったとしても…」と悲しい顔をする。
しかし主人公は彼に自分のミサンガを見せ、「自分もおそろいでつけたかった」と言うと、新は喜んでくれる。
そして彼はお願いで無理やり恋させようなんて間違いだったと気づくのだった。

新の3つ目は、2つ目の願い事を無効にすることだった。
彼は「先輩とは本当の恋がしたい。こんな卑怯な手じゃなく正々堂々あなたを振り向かせたくなった。これからは掛け値なしで俺のことを好きだって言ってもらえるように全力を尽くします!」といつもの明るい彼にもどっていた。
その後、新はいつにもましてスキンシップを取ったりじゃれついたりと主人公へ猛アタックが始まる。
そして彼の想いをこめたトロンボーン演奏を聞かせてくれた。
それは最初に主人公と会った時に吹いてくれた曲だった。
あの日と同じ晴れやかな音色に、主人公はこの音を聴いて仙台に来ることを決意した気持ちが蘇るようだった。
主人公は新に、新に出会って転校を決意したことを打ち明けると、彼は驚きながらもすごく喜んでくれたのだった。

祝賀会の途中、主人公は庭でトロンボーンを吹いている新のもとへ向かう。
夏の始まりと終わりに演奏を聞くなんてなんだか不思議な気分だった。
主人公は新から「オレ、先輩のことが好きです。大好きです。最初は軽い気持ちで調子に乗って近づいたけど、だけどだからこそ大事な人だって気づいた。約束も理由もなくたってデートしてふざけ合って笑い合って、ずっともっと一緒にいたい」と告白される。
主人公が「自分も大好きだ」と告げると、彼のテンションは最高潮で「神様ありがとう!こんな嬉しいこと他には絶対ない!」と力いっぱい主人公を抱きしめる。
そして彼は改めて「先輩、俺の彼女になってください。大好きな先輩といっぱい幸せを積み重ねていきたい」と告白してくれたのだった。

長嶺 雅紀(ながみね まさのり)

主人公を壁に追い詰める長嶺

同じ家に住んでいる長嶺に、主人公は学校でも仲良くしたいと思い話しかけてみる。
長嶺のそばにいたブラスバンド部員は吹奏楽部所属の主人公を目の敵にするが、彼は柔らかい笑顔で後輩をなだめ、主人公をその場から強引に連れ出す。
そして2人っきりになった瞬間、彼は態度を豹変し、彼に「校内で気軽に声をかけてくるなんてどういうつもりだ」と怒られてしまう。
主人公が所属する吹奏楽部と長嶺の所属するブラスバンド部は犬猿の仲、長嶺は主人公との仲を知られたくないようだ。
主人公は長嶺から「私と君の間にある個人的なつながりは人の耳目を集める危険性がある。仲を勘ぐられる振る舞いはつつしんでくれ」と釘を刺されてしまう。

主人公が人気のない場所で1人で練習していると、長嶺が嫌味を言いにくる。
長嶺が話しかけてくれたことは嬉しいが嫌味は嬉しくない、と複雑な表情をする主人公を見て、彼は主人公の反応を面白がっているようだった。
それから長嶺は1人での練習を狙って話しかけて来るようになった。
彼は主人公との仲が噂されないように、必ず主人公が1人きりをのときを狙ってやって来る。
そして来るたびに主人公の努力をバカにする長嶺に、主人公は抵抗するかのように必死に練習するのだった。
そんな主人公を見て、彼から「俺の言うことを聞けば、吹奏楽部の危機を乗り越えるためのアドバイスをあげようか?」と提案される。
主人公は喜び「なんでもする!」と約束してしまう。

翌日、主人公は長嶺から呼び出され、彼から「うちの学校の新聞部に吹奏楽部の活躍を記事にしてもらうのばどうか」と提案される。
吹奏楽部の活躍を広めてもらえば、広まっているよくないイメージを払拭できるかもしれないと言うのだ。
冷たいようで長嶺は実は優しい。
主人公は喜び長嶺につれられ新聞部に行くが、記事の掲載を断られてしまう。
しかし長嶺は新聞部の弱みをちらつかせて脅し、無理やり記事を書かせることを約束させる。
面白くない新聞部は、長嶺の弱みがないかとこっそり探り始めたのだった。

さらに後日、長嶺からブラスバンド部との合奏を持ちかけられる。
合奏の曲を明日までに仕上げろという長嶺の無茶に応えるため、主人公は必死に練習する。
しかし実はこれは長嶺の策略だった。
主人公のコンクールの練習を邪魔してやろうという意地悪だったのだ。
翌日主人公がブラスバンド部の元へ向かうと、多くの視線が刺さってとても気まずい。
しかし臆せず大勢のブラスバンド部の前で演奏すると、主人公の演奏を褒めてもらえたのだった。
長嶺は「練習時間の無駄だっただろうに」と呆れられるが、主人公は「長嶺の期待に応えたくて」と返す。
すると彼はあっけにとられたように笑い、「君はいい子だね」と主人公の頭を撫でてくれた。
長嶺は少しずつ主人公にほだされていったのだった。

長嶺は、八木沢に出し損ねていた退部届を渡そうとしていた。
長嶺と八木沢はかつて共に協力し合っていた仲間だった。
しかし昨年火積の退部の件で揉め、その仲は決裂してしまったのだ。
火積を部から切ろうとした長嶺、火積を部に残そうとした八木沢。
「お前は新入部員である火積のことを仲間と呼びかばったが、お前のなかでは仲間とは横並びか?今まで長年一緒に頑張ってきた俺たち仲間のことを考えてはくれないのか?」と長嶺は八木沢に訴えたが、八木沢は考えを変えようとしなかった。
そんな八木沢に失望し、長嶺は「お前と同じ夢を追うことはできない」と吹奏楽部を辞めたのだった。
長嶺と八木沢は中学からの親友だった。
長嶺は八木沢が同じ夢を見ていた仲間を切り捨て、絆を壊したことが許せなかったのだ。
そして伝統ある至誠館吹奏楽部が衰退するのは我慢ならず、八木沢の行為が部を潰す裏切り行為にしか思えなかった。
これが長嶺が吹奏楽部を辞め、辞めた今でも憎んでいる理由だった。
長嶺が退部届を渡そうとするも、八木沢は頑なに受け取ろうとしない。
長嶺の苛立ちは日々募っていくばかりだった。

それから長嶺は吹奏楽部を潰す計画を具体的に実行し始めた。
生徒総会での決議を利用して、吹奏楽部を廃部にしようとしたのだ。
主人公は長嶺に「全国優勝できなければ俺の手で吹奏楽部を潰す」と言われてしまう。
彼の目は冷たく、心が通じ合ったと感じた瞬間もあったのにまるで最初の頃に逆戻りだ。
「なぜそんなに吹奏楽部にこだわるのか」と主人公が聞くと、彼は「みっともない姿で残り続ける吹奏楽部が目障りだからだ」と言う。
長嶺は誇り高いかつての吹奏楽部でいてほしい、地に落ちた吹奏楽部など至誠館吹奏楽部じゃないというのだ。
「吹奏楽部は不完全なんかじゃない」という主人公に長嶺はキレて、主人公を壁際に追い詰める。
そして「お前なんか至誠館に来なければよかった。そうすれば俺はこんなにも面倒な感情に振り回されずに済んだのに」と吐き捨て、その場からその場から去ってしまう。
呆然と佇む主人公。
不覚にもその現場を、長嶺に目をつけていた新聞部にパパラッチされ写真を撮られてしまっていたのだった。

主人公は悩んでいた。
あの日以来長嶺とのあいだに微妙な距離があるような気がするのだ。
そんな中、部室でホルスト作曲の「木星」の楽譜を見つける。
この曲は昨年コンクールに出場するため皆で練習していた曲だった。
吹奏楽部メンバーの中に長嶺のことを悪くいう人はいなかった。
あいつはああみえて結構いいやつだよと狩野、長嶺と演奏してみたかったという伊織、長嶺は長嶺なりに吹奏楽部を大切に思っているんじゃないかという新。
そんな言葉に背中を押され、主人公は長嶺に「木星」を演奏しようと誘う。
しかし彼は「わざわざ昨年のコンクール曲を引っ張り出してきてどういうつもりだ」と顔をしかめ、「不快だ」と言って去ってしまう。
しかし主人公は諦めない。
翌日も翌々日も長嶺を誘い、やっと2人で「木星」を練習すると、ある日素晴らしいハーモニーを奏でることができた。
驚く長嶺は、「君と音を重ねて楽しく感じるなんて…。演奏は栄光を勝ち取るための手段のはずだ」と苛立ち悔しそうにする。
しかし主人公は「楽しいならいいじゃないか」と彼に言う。
呆気にとられる長嶺に、主人公はつづけて「長嶺と演奏するのは、長嶺と演奏したいからだ。演奏したいから演奏しているのだ」と告げる。
栄光や勝利にこだわっていた長嶺は、主人公の言葉に毒気を抜かれたような表情をしたのだった。

朝登校すると妙に校内がざわついている。
聞こえてくるのは長嶺のこと、それはからかいの嘲笑や幻滅しただのといった言葉だ。
壁に掲示されていた学校新聞には「驚愕スクープ!あのブラスバンド部部長と吹奏楽部員が同棲!」の見出しが踊っている。
写真はこの間壁に追い詰められたときのもので、記事には煽り立てるような見出しと文章が並んでいた。
対立しているはずの吹奏楽部部員とブラスバンド部部長のスクープに、皆が噂していたのだ。
ブラスバンド部部員たちは長嶺にこの記事を否定してほしいと願っていた。
彼らはみんな吹奏楽部に反旗を翻し長嶺についてきたメンバーだったからだ。
この場で白黒はっきりつけろと長嶺に迫るブラスバンド部部員たちに、主人公は「長嶺と自分は同じ敷地に住んでいるが、親のいうとおりにしているだけ」と嘘をついて長嶺を守る。
疑わしげにさらに追及されるが、膝が震えそうになりながらさらに主人公は続けて「自分は他に好きな人がいる」と伝える。
長嶺は主人公の話に乗り、「自分は単に彼女の相談に乗っていただけ。後輩だから相談にのっていたが、こんな噂を立てられるのも迷惑でしかない」と答える。
彼は「金輪際わたしにはかかわらないでほしいね」と続けて言うが、その言葉が主人公の胸に突き刺さったのだった。
なんとか疑惑は解け、皆新聞部のデマだったと納得してくれた。
一方長嶺は、主人公が傷ついたような顔をしていたのが頭から離れなかった。

主人公は新聞騒ぎのことを思い出してあまり眠れず、ぼんやりしていた。
家でも学校でも長嶺は主人公を避けている。
長嶺とはもうこれで終わりなのかと主人公は落ち込んでいると、突然家の部屋中の明かりが消えてしまう。
主人公がブレーカーを探してうろついていると、暗がりの中から長嶺が現れ、主人公は天の助けとばかりに彼に飛びつく。
どうやら近隣一体が停電のようで、電気が復旧するのは無理そうだ。
ことさら明るい満月を頼りに、2人は庭に出る。
主人公はずっと避けられていた寂しさから思わず長嶺に抱きつくと、「俺のことなんて好きじゃないんじゃないのか?他に好きなやつがいるんだろう?」と意地悪く笑われてしまう。
主人公が「本当は長嶺が好きだ」と告白すると、彼は「俺も君のことが好きだよ。好きになりたくはなかったんだがね」と優しい目を向けてくれた。

コンクール決勝の前夜、仙台にいる伊織から緊急の電話がかかってくる。
どうやら家庭の事情で今日中に横浜に来れないとのことだった。
明日の朝イチの新幹線で横浜に来るというが、主人公はなぜか胸騒ぎがして気が昂って眠れない。
ふと外を見ると満月が輝いていており、主人公は長嶺を思い出し彼に電話してみることにした。
彼に電話が繋がり、話していると心が落ち着いてくる。
主人公のナーバスな気持ちを察したのか、長嶺は「最後のステージくらい、気が向いたら見に行ってあげてもいいよ」と約束してくれたのだった。
翌朝、至誠館メンバーがざわついている。
伊織の乗った新幹線が車両故障で止まってしまい、彼がまだ来れていないというのだ。
伊織が来ないと今まで練習してたアンサンブルがすべて演奏できない。
メンバーはとにかく伊織の到着を信じて、祈るような気持ちで先に会場へ行き演奏の準備待つことにした。
しかし開場時間になっても伊織から連絡はない。
主人公はふと長嶺の存在を思い出す。
「伊織と同じ楽器の彼がいてくれたら」と考えた主人公はいてもたってもいられず、祈るような気持ちで長嶺に電話をかける。
すると長嶺は会場近くの駅まで来ているようだ。
会場から抜け出し駆け寄る主人公に、長嶺は怪訝な視線をよこすが急いで彼に事情を話す。
そして彼に一緒に「木星」を演奏してほしいと頼み込んだ。

しかしこの時点で、無情にも開演時間となってしまう。
開演にメンバー全員が揃っていない至誠館は演奏放棄とみなされ、優勝は天音学園に決まりかける。
しかし天音学園の冥加が、スタッフの声に耳もかさずにステージへ上がり一曲目の演奏をする。
彼は至誠館の演奏放棄を認めず、正面から戦おうとしてくれたのだった。
天音学園の一曲目が終わる直前、会場にたどり着いた主人公と長嶺。
至誠館メンバーは長嶺の登場に驚くも、一緒にファイナルステージへ立ってほしいとお願いする。
八木沢は長嶺の退部届はまだ受理していない。
つまり彼はまだ吹奏楽部所属で、大会の規定にも反しない。
八木沢はその場で長嶺の退部届を破り捨て「君ともう一度木星を演奏したい」と長嶺に頼み込む。
長嶺はしょうがないといったように演奏を引き受けてくれた。
長嶺を加えた至誠館メンバーの一曲目は、突然加わったとは思えないほどすばらしいハーモニーを響かせた。
天音学園の二曲目の演奏中に伊織が無事到着し、長嶺は「俺に手助けできるのはここまでだ」と去ってしまった。

祝賀会を抜け出しその足で仙台へ帰ると、長嶺が庭で「木星」を吹いていた。
彼は吹奏楽部部員として昨年演奏できなかった「木星」をステージで吹けたことに、どこかひどく満足していた。
今まで抱えていた吹奏楽部への恨みや苦しみがいつの間にか晴れていたのだ。
長嶺は「ここまで俺を変えるとは思わなかった。君のおかげだ」と主人公をそっと抱きしめる。
そして「君ももっと俺に落ちるといい。俺が君を愛するのと同じくらい強く俺のことを愛してくれ」と囁いてくれたのだった。

水嶋 悠人(みずしま はると)

カモメの羽音に驚いた主人公をハルが肩を抱いて守ってくれる

主人公が1人練習をしていると、吹奏楽部を嫌うブラスバンド部員にからまれてしまう。
攻撃的な態度の彼らに難癖をつけられていると、 たまたま仙台来ていたハルが主人公をかばい助けてくれた。
逆上したブラスバンド部員を軽くいなし、謝罪を要求するハル。
こてんぱんにされたブラスバンド部員たちは悪態をつきながら去っていった。
主人公は「吹奏楽部メンバーに心配かけたくないのでさっきのことは秘密にしてくれ」とハルに頼むと、彼は「ではなにかあったら僕に相談してください」と助けを申し出てくれた。

主人公がハルに星奏学院の練習室へ案内してもらっていると、ハルの友人が声をかけてくる。
友人は生真面目なハルが女性と一緒にいることに驚いたようだ。
友人は主人公をじっと見つめ、それを誤魔化すように「校内案内じゃデートも楽しくないだろ」とハルをからかう。
しかしハルは「これはそんなんじゃない!ただ案内をしているだけだ」とムキになり言い返した。

横浜でハルと練習していると、ハルが至誠館ブラスバンド部員の姿に気づく。
彼は「仙台にいるはずの至誠館ブラスバンド部がなぜ横浜に?」と不審に思う。
ハルは先日主人公が彼らに絡まれていたことを思い出し、彼らが企んで主人公に何かする気ではと怪しみ、主人公の周りを警戒し始めたのだった。

別の日、主人公とハルが2人で夢中になって練習していると、そばに置いておいた主人公の荷物がなくなっていた。
周囲を見渡しても見当たらない。
慌てて2人で探すと、荷物は近くのベンチの下に押し込まれていた。
ハルは「もしかしてこの前のブラスバンド部員のいたずらか?」と思ったが、確証もなく、また主人公を怖がらせるべきじゃないと思い黙っていた。

翌日の帰り道、主人公はハルから「なにか最近妙なことはないか?」と聞かれる。
ハルは主人公が他にも被害にあっていないか心配し探りを入れたのだ。
2人で寮に着くと、主人公宛の郵便受けに萎びれた花が入っている。
花を不気味に思い不安がる主人公をハルが慰める。
「何者かなあなたに近づこうとしている。本当に仙台ではこんなことは起きていないですか?」とハルに聞かれるが、主人公にそんな記憶はない。
「こんな事が起きているのは横浜だけだ」と答える主人公に、ハルは「ここで僕があなたを守る」と宣言してくれる。
そして彼は「こんな卑怯なやり方をする卑劣な奴に、あなたを傷つけさせない。全力で守ります」と固く約束してくれた。

主人公はとあるコンサートのチケットをもらい、ハルを誘ってみた。
会場はハルが先日ブラスバンド部部員を見かけた近くだった。
主人公一人で行かせるにはあまりにも危険だと考えたハルは、主人公と一緒にコンサートに行くことに決める。
彼は会場に向かうまで主人公を守るように隣に寄り添ってくれた。
コンサートは無事終了、2人とも満足して帰宅する道中、ハルは主人公に自分の推測を伝える。
「荷物がベンチに入れられていた事件、枯れた花がポスもに入れられていた事件。僕はどちらもブラスバンド部の仕業だと思っている」と彼の考えを話してくれた。
そしてハルは主人公に向かって「僕はあなたを尊敬しているし、あなたを守りたいと思っている。これからも僕はあなたのそばにいます。安心していてください」と宣言してくれた。
心強いハルの言葉に、主人公は彼に強く惹かれ始めたのだった。

朝起きると、主人公宛の郵便受けに手紙が届いていた。
封を開けると、中には横浜港から出ている観光船のチケット。
しかし手紙には差出人の名前はない。
「この間の花と同じ人間から?」と不安に思った主人公はすぐハルに相談する。
ハルは誘いを無視するべきだと主張したが、主人公は「真実が知りたい。このままうやむやに過ごすのは嫌だ」と反論する。
犯人にこれ以上好きにさせるもんかと観光船に乗り込む気満々の主人公に、ハルがしぶしぶ同行してくれることになった。
さっそく2人で観光船に乗り込むが、出港してからしばらくしても何者も現れない。
「今回はただの悪戯にしては手が混みすぎている、誰がなんの目的で?」と緊張している2人。
そんな2人を見た乗船スタッフが、2人がデートで緊張しているのだろうと勘違いする。
「デートの記念に、記念写真を一枚いかがですか?」とノリノリの乗船スタッフにのせられて、2人は写真を取るために近づく。
写真を取る瞬間、船に止まっていたカモメが一斉に飛び出ち、羽音に驚いた主人公をハルが肩を抱いて守ってくれる。
驚く2人、しかしスタッフは「ベストショットが撮れました」とうれしそうにしている。
呆気に取られた2人は、なんだかデートみたいで楽しいねと笑いあったのだった。
しかしそんな2人を怪しい影が見つめていた。

練習帰り、ハルと一緒に寮まで帰る。
最近ハルは主人公の送迎を買って出てくれていたのだ。
2人で歩いていると、急にハルの目つきが厳しくなる。
彼は誰かにつけられているというのだ。
「この気を逃すものか」とハルは不届きものを捕まえに走り、ついにつけていた人物を取り押さえる。
そこには見覚えのある、以前2人に話しかけてきたハルの友人がいた。
「どうしてコソコソ隠れて跡をつけたのか?」とハルが追求すると、実は友人は主人公の大ファンだというのだ。
彼は主人公の演奏を聞いてハートを掴まれ、お近づきになりたいと様子をうかがっていたのだという。
「アプローチしていたが空振りしちゃうし…」という友人をさらに問い詰めると、これまでの不審な出来事はすべて彼が引き起こしたものだとわかった。
ベンチの下に荷物が押し込まれていたのは陽が当たりすぎて鞄あったまって中の荷物が熱くなったらと心配したため。
花はサプライズプレゼントだったが萎れるとは思わなかった。
観光船のチケットも、主人公が乗船したら船上で偶然を装って話しかけるつもりがハルが一緒で泣く泣く諦めたのだという。
主人公はあまりの結末に思わず笑ってしまうが、ハルが「馬鹿者!反省しろ!謝れ!」と呆れながらカンカンに怒る。
主人公はハルから「今までの騒動はすべて友人の仕業だった。早とちりして怖がらせてすみません」と謝られる。
しかし主人公は「ハルに守ってもらえてうれしかった」と自分の気持ちを伝えたのだった。

後日、主人公がハルと話していると、会場に主人公の忘れ物があると連絡が入る。
会場に向かおうとする主人公に、ハルが今まで通り一緒に行こうとするが、「狙う人間がいなくなったのだから、もう僕が一緒に行く理由は必要はないですよね」と思い返す。
そしてハルは会場に向かう主人公の後ろ姿を眺め、自分は彼女のそばにいる理由を失ってしまったと立ち尽くした。
主人公は会場へ無事到着したが、ハルと一緒にいられないことに寂しさを感じていた。
「事件なんか解決しなければよかったのに…」と主人公がとぼとぼ会場の外に出ると、そこにはハルの姿があった。
主人公が思わずかけよると、彼は「いてもたってもいられなくて気づいたらここにいた」と言う。
そしてハルは「自分の気持ちを自覚した。はじめはあなたを危険から守る約束がきっかけだったが、その約束はいつしか主人公のそばにいる口実になっていた。そんなものがなくても僕はあなたのそばで隣で同じ時間を過ごしたい」と告白してくれる。
主人公は自分も同じ気持ちだと伝えた。

主人公は祝勝会を抜け出してハルの元へ向かう。
そこでハルから改めて「あなたと一緒に演奏したい。そばにいたい。同じ時間をこれからも過ごしたい。あなたは僕が心から求める唯一の人で、僕はあなたのことが好きです」と告白される。
主人公が嬉しいと返すと彼は頬を紅潮させ、こんなにも嬉しいことはないと喜んでくれた。
そして彼は「これから横浜と仙台で離れてしまうが、必ず会いに行きます」と約束してくれたのだった。

東金 千秋(とうがね ちあき)

Konpeitou_1m4
Konpeitou_1m4
@Konpeitou_1m4

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金色のコルダ(ゲーム・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

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「金色のコルダ」とはコーエーから発売されている女性向け恋愛シミュレーションゲーム。原案はルビー・パーティー。それを元にキャラクターデザイン担当の呉由姫が白泉社「LaLa」で連載していた漫画作品。コミックスは全17巻。テレビ東京系6局でアニメも放映された。音楽に関して全くの素人だった日野香穂子が音楽の妖精・リリに導かれて音楽の魅力にはまり、コンクールを通して知り合った人々との交流を深めていく物語。

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金色のコルダ2(2f / 2ff / アンコール)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

金色のコルダ2(2f / 2ff / アンコール)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『金色のコルダ2(2f / 2ff / アンコール)』とは、株式会社コーエーテクモゲームス発売の女性向け恋愛シミュレーションゲーム『金色のコルダ』の続編タイトル。 『2』『2 アンコール』の順で発売、『2f』『2f アンコール』『2ff』は移植版。 季節は秋、前作の半年後のストーリー。 ヴァイオリン奏者の主人公のもとに、アンサンブルコンサートのお誘いが舞い込んでくる。そんな中、突如おとずれる学院の危機。 主人公は学院のため、仲間たちとコンサートの成功に向けて協力し、恋や絆が芽生えていく。

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金色のコルダ1(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

金色のコルダ1(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『金色のコルダ1』とは、株式会社コーエーテクモゲームスの開発チーム「ルビー・パーティー」から発売された、女性向け恋愛シミュレーションゲーム。ネオロマンスシリーズの第3作目。 現代の学園で「音楽」を通して、ライバルたちと恋愛を繰り広げる乙女ゲームである。 コンクールに向けて練習する中で、ライバルたちとの仲を深め、お互いを励まし合い、音楽と共に成長していくストーリー。 主人公はヴァイオリン奏者、作中では多数の楽曲を演奏でき、プレイしながら多彩なクラシック音楽を聴き楽しむことができる。

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金色のコルダ3(フルボイス Special)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

金色のコルダ3(フルボイス Special)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『金色のコルダ3(フルボイス Special)』とは、株式会社コーエーテクモゲームスから発売された、「音楽」がテーマの女性向け恋愛シミュレーションゲーム『金色のコルダ』の新作タイトル。 季節は夏、主人公はとある手紙をもらったことをきっかけに星奏学院に転校し、オーケストラ部に入り「全国学生音楽コンクール アンサンブル部門」での優勝を目指す。 全国各地の強力なライバルたちを相手に、仲間たちと共に勝利をつかむため暑い夏を駆け抜ける、青春恋愛ストーリーである。

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【声優】日野聡が演じた乙女ゲームキャラクターまとめ!『AMNESIA』のトーマ・『金色のコルダ』の衛藤桐也など!

【声優】日野聡が演じた乙女ゲームキャラクターまとめ!『AMNESIA』のトーマ・『金色のコルダ』の衛藤桐也など!

声優・日野聡が演じた乙女ゲームの登場人物・キャラクターをまとめました。『AMNESIA』のトーマや『金色のコルダ』の衛藤桐也など、魅力的なキャラクターばかりとなっています。日野聡が好きな方はもちろん、乙女ゲームに興味がある方もぜひチェックしてみてください。

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