グリザイアの迷宮(ゲーム・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『グリザイアの迷宮』とは2012年2月に発売されたアダルトゲームである。『グリザイアの果実』の続編で、各ヒロインのアフタールートと主人公・風見雄二の過去編である「カプリスの繭」などを収録している。「カプリスの繭」では雄二の家庭環境から雄二の姉一姫と両親が亡くなりテロリストに引き取られ殺人マシンなってしまい、後に自身の養母になる麻子に引き取られ育てられ、学園に来るまでを描く。「萌えゲーアワード2012」で、SILVER大賞・ユーザー支持賞および主題歌賞の金賞受賞。

『グリザイアの迷宮』の概要

『グリザイアの迷宮』は株式会社フロントウィング設立10年記念作品である『グリザイアの果実』の続編として2012年に発売されたアダルトゲームである。『グリザイアの果実』の各ヒロインの攻略ルートのその後を描いたアフタールートと主人公風見雄二の過去編である「カプリスの繭」が収録されている。
PC版の対応機種はWindows XP / Vista /7 Windows 8.1 / 10(PT)。
2014年には対象年齢を成人から17歳以上に下げて、新規イベントCGを追加したPSP、PS Vitaでも発売された。また、2019年には過去作『グリザイアの果実』と続編である『グリザイアの楽園』と一緒に収録された『グリザイアの果実・迷宮・楽園フルパッケージ』がNintendo Switchから発売された。
2015年にはアニメ化された。

ゲームジャンルは美少女ノベルゲームであるが前作とは違い選択肢が存在せず、1本筋のルートのみとなっている。
アダルト版のみ『デイブ教授の抜きまくりCh』が収録されており本編に登場するが前作では性交シーンが無かったキャラクターとの性交シーンを楽しめるようになっている。またショートストーリーをまとめたショートショートも収録されている。
前作『グリザイアの果実』のファンディスク扱いの作品であり公式略称は『グリマヨ』。
特徴として前作よりミリタリー色が強くなっており主人公が海兵隊に入りスナイパーとして活躍するほか前作を上回る暗い物語が展開されていく。ヒロインアフターは鬱要素と呼ばれるものはなく『グリザイアの果実』の各ヒロインルートのその後になっており主に雄二とヒロインたちの恋人としての恋愛模様や結婚に至るまでを描いている。

予約特典として冊子「グリザイアの地図」が付いた。ソフマップでは『グリザイアの迷宮 SOFMAP LIMITED EDITION』が販売された。

キャラクターデザインは渡辺明夫、フミオ両名とSDキャラクターをななかまいが務める。
シナリオ担当はヒロインによって異なり木緒なち、藤崎竜太、桑島由一、かづや、鳴海瑛二らが務める。

『グリザイアの迷宮』のあらすじ・ストーリー

榊由美子アフタールート

1年の逃亡生活を経て学園に戻って来た雄二と由美子。
家の呪縛から解放され、仲睦まじく暮らしていたある日、雄二は学園長である千鶴に学園長室へ呼び出された。美浜学園を運営していた由美子の父である道昭が失脚したことにより、ワンマン営業の膿という陰口を叩かれていた美浜は経営形態見直しに伴い年いっぱいで閉校が決まっており、それのせいで美浜にある通常運営資金とは別の学園長の判断で使用可能な「へそくり」が丸々残っている状態であった。この「へそくり」は帳簿には載せられない裏金であるためどうしたらいいのかの相談であった。
もともと「へそくり」は在校している学生が何か問題を起こした時のための金という名目であることから、千鶴は学生のために使おうと思っているのだがいい案はないかと雄二に聞く。しかし、雄二は仕事の都合上それに必要なものはすべて支給されるうえに、現状生活に不便を感じていないため欲しいものもない状態であるため、そんな自身に相談することは間違いであると言う。
そして、他の学生に相談することを提案する。

今どきの若者である彼女たちなら大金を使い果たすことが可能であると考えたのだが、蒔菜はモデルガン、幸は高級竹箒、天音は食洗器、みちるは後々金になる可能性のあるクワガタの幼虫か和牛オーナーか悩んだりと大金を使い果たすには不向きな意見のみが出て来た。そんななか由美子だけは欲しいものが浮かばないという。
天音が余った金の使い道を考えていると卒業が近い感じがするという一言から、由美子が別れが近いと言うと周りの表情が曇ってしまった。居心地のいい時間の先に別れがある事実に寂しさを感じる面々だったが、「へそくり」を使い切るまでまだ時間があるという話にまとまり、その日の晩御飯は学園長を含めた全員で取ることにした。

翌日、由美子は実家が料亭で料理上手な天音に料理の講義を受けるために部屋をあとにした。雄二はそれを見送り日課であるランニングをして帰ってくると幸が待っており、料理の講義を受けている由美子を見に行かないかと誘われる。幸曰く講義の最中は部屋にカギが掛けられており、天音の部屋を自室のように使う蒔菜でさえシャットアウトしているのが気になるとのことだった。
雄二は誘いに乗り幸と共に講義が行われている天音の部屋へ向かう。
幸の手で開錠された扉の隙間から中を覗くと真剣に料理の練習をしている由美子の姿があった。必死に大根の桂剥きに挑戦していく由美子と的確なアドバイスを送る天音を見守っていると、由美子が目標であった桂剥き1周を成し遂げる。その嬉しさから、天音の名を呼びながら由美子は天音に抱き着く。以前、寮を飛び出す前より仲良くなった2人を見て雄二と幸は安心した。
そして、午後にはみちるによるツンデレ講義が開かれているということで、蒔菜と天音に覗きを誘われた雄二は邪魔をしないということを条件についていくことに。講義が行われている教室へ向かうとみちると共に発声練習やツンデレのお決まりの台詞の練習などをしている由美子がいた。講義を行うなかで由美子はみちるに和を重んじた周りへの気遣いにより自身が孤独にならずに済んだことへの礼を述べる。その姿を見て雄二はクラスメイトという存在を誰よりも真剣に考えていた由美子の思いを知る。

幸の講義を受ける由美子

翌日、由美子は幸の講義を受けていた。幸からの講義内容は掃除に関してのことであった。由美子は自動掃除ロボを愛用しており自身での掃除を苦手としていて、掃除はロボでやってもいいのではないかと言うが幸に人間がする掃除には真心があるとの言葉を受けて頑張ることを決意する。幸は由美子に何事も形からとして由美子に合わせたメイド服を用意。中庭へ向かい掃除の基本である放棄を使った掃除から始める。掃除の大変さなどや真心を込めた掃除の気持ちよさを感じた由美子は今後掃除をするときは自身も呼んでほしいと幸に頼み、幸はこれを了承した。
そして、幸に何故苦手としていることを進んでやるようになったのか問われた。由美子は雄二に会う前はすべてを諦めた少女だったが、生まれたことを後悔していた自分を選んでくれた雄二のために頑張りたいと思うようになったのだ。

午後は蒔菜の講義で、内容は甘え方であった。雄二は年頃の男性らしかぬ反応をするので、甘えるためには抱き着き方を由美子は習得すべきだと蒔菜は考えた。由美子は蒔菜を相手に抱き着こうとするが蒔菜は「ずらし」と言われる手法で由美子の意識を外に向けさせることで抱き着きを回避する。弟子である蒔菜すら捕まえることが出来ないようであれば師匠である雄二を捕まえるのは夢のまた夢。そこで、蒔菜が由美子に教えたのは「縮地」と言われる方法であった。縮地とは体の軸をずらさずに動くことで距離感を掴ませずに動く技法である。
これを由美子は習得して見事雄二に抱き着くことに成功して、雄二に甘えることが出来た。しかし、蒔菜に痴態を見られたことでいつものように怒るが、雄二に楽しそうに見えると言われると何かを考えるようにその場をあとにしてしまう。

由美子の後を追いかけて雄二は学園の屋上にやってきた。雄二の存在に気付いた由美子が自身の気持ちを吐露する。自身がなぜクラスメイトに講義を頼んだのか。それは、自身も普通の女の子のように友達と他愛のない話をすること、一緒になにかをすること、恋人のことでからかわれて怒る、そしてみんなで笑いあうという普通のことに憧れていたからだと。ひねくれ者だったが故に気づかなかったのだと。由美子の素直な気持ちを聞いて雄二は安心するが、由美子はさらに続けて、今が楽しく幸せだからこそ不安になってしまうと言う。そんな由美子に雄二は不安や失敗を恐れることはなく、やりたいことは積極的にやっていこうと言う。由美子は雄二のその言葉に打ち上げ花火が見たいと言った。
雄二は由美子の思いに応えたいと思い、明日デートとして河川敷に絵を描きに行こうと誘う。

翌日、雄二と由美子は絵を描くための画材を買いに行くことにする。駅前にやってきた由美子はクラスメイトに会わないように警戒していたが、画材屋でなじみ深いリスの毛が使われた筆かレッドセーブル(イタチの毛を使った高級筆)にするかを悩んでいると蒔菜と天音に遭遇する。蒔菜にリボ払いで払うから画材を買ってくれとせがまれる由美子に天音が後で払うからお願いと言ったことで蒔菜と共にレジへ向かった。残された雄二は天音から由美子が最近頑張っているのは雄二のためだと知らされる。結婚の意思があるのかと天音に問われるが、雄二は由美子以外の女性とは考えられないと言う。それを聞いた天音は友達として安心した。

蒔菜たちと解散しようとしたところに蒔菜がクレープ屋を見つけて飛び込む。由美子はクレープは大好きだが最初注文するのが苦手だと渋っていたが、天音にほだされ買うことを決意。由美子が注文した特別大きなクレープを仲睦まじく女子3人で頬ぼる姿に雄二は嬉しい気持ちを抱く。その後、蒔菜たちと別れた2人は河川敷に向かう。昼食を取るためにレジャーシートを広げようと準備しているとみちると幸の声が聞こえてきた。由美子は折角の雄二との2人きりのデートを邪魔されたくないので気づかないふりを通そうとしたが、みちるたちに発見されてしまう。空気の読めないみちるに声を掛けられ一時はみちるに怒りをぶつけるが、雄二の無理やり2人をどこかへ移動させても心の底からデートを楽しめなくなるだろうとの言葉を受けて、由美子はピクニックに来た2人を受け入れた。
由美子が作ってきた弁当と幸が作ってきた弁当に4人で舌鼓を打ちながらにぎやかに過ごした。
その後夕方になりみちるたちとは別れた2人。由美子は結局イレギュラーな事態の連続で絵を描けなかったとやさぐれてしまう。そんな由美子の姿に準備をしたものが水の泡になってしまった落ち込みを理解しつつ、その代わりに得られたものの大きさに気づいていないことに歯がゆさを感じて、それに気づかせるべく行動することにする。雄二はそのために由美子を2人きりの温泉デートに誘った。

デート当日になり楽しみから早朝に雄二を学園の外に連れ出した由美子は自己嫌悪に陥っていた。早朝過ぎて交通機関も動いていない状況だったからだ。雄二はヒッチハイクでもするかと言ったところ、道路わきに派手に車が突っ込んできた。運転手の急病の可能性を疑った雄二が車へ駆け寄ると中から出て来た運転手は前作の由美子ルートに登場した関西弁の男だった。関西弁の男は女性を自宅へ送り届けるために三嶋崎まで来ていたようで、急病などではなかった。雄二の姿にフレンドリーに接する男に雄二は車をべた褒めすることで懐柔して車を借りることにした。
由美子と男を乗せて雄二は走り屋のように猛スピードを出して車の性能を味わうように走行していった。しかし、そのスピードに恐怖した由美子は魂が抜けてしまったかのように放心してしまい、車を降りると雄二はまず由美子への謝罪から始まった。

目的地である温泉街に着いた2人は仲睦まじく店を回っていく。温泉まんじゅうを食べたり土産屋を見たりと堪能したところで足湯に向かい、膝の上に広げたお弁当からおかずを雄二に食べさせていく由美子。楽しそうに振舞う由美子だが時々意識がそれていたので雄二が声をかけると、2人きりだと落ち着かなくなる時があると零す。夜になり宿へ向かい温泉を楽しんだ後2人は夜の海岸へ赴いた。星空の下を歩きながら由美子は自身の不器用さに迷惑をかけてしまうことがあるけれど、今後も雄二のために頑張りたいという気持ちと今日のデートに対するお礼を言う。その言葉に嬉しさを感じる雄二だったが礼を言うのは早いと言い、空を見るように促す。

花火を見上げる雄二と由美子

そこに大輪の花火が打ちあがった。由美子が以前に花火の話をしていたことを覚えていた雄二が、学園に残された「へそくり」を利用して私的に花火を上げたのだ。
由美子は「へそくり」が使われているという事実に申し訳なさを感じたが、クラスメイト全員が由美子のために使うと決めたのだから謝らず感謝で返せと雄二は言った。由美子はその言葉に皆に感謝することを決める。
花火を見ていた由美子はこんなにも花火が綺麗ならクラスメイト皆で見たかったと零すと雄二が2人では不満かと問う。不満ではないが、これだけが由美子の幸せの終着点ではなく、皆と一緒に過ごす時間が何よりも大切であると感じたのだと言う。その言葉を聞いた雄二が後ろの茂みに隠れていたクラスメイトたちを呼ぶ。ぞろぞろ出てくるクラスメイトたちに由美子は驚きうろたえる。全員由美子が怒るだろうと身構えていたが、由美子は先ほどの宣言通り皆に感謝を述べる。その後、みちるが気を利かせて雄二と由美子の写真を撮ってあげようと蒔菜の携帯を借りて操作していると誤って動画を再生してしまった。それは宿の部屋での由美子と雄二の情事中の音声であった。由美子は盗撮に怒り狂い久しく手にしていなかったカッターナイフを振り回してみちるたちを追いかけまわす。
その姿を見て雄二は、いつの間にかクラスメイトの呼び方が名字呼びから名前呼びに変わっていることに気づいて少し騒動が収まったら指摘して、仲直りのきっかけにしようと思った。

そして、これからもこんな日々が続くことを祈った。

周防天音アフタールート

雄二はその日も9029として仕事で呼び出されていたが、長時間待たされたあげくに何もせずに現場撤収を言い渡される。そして半民間諜報員の運転する車へ行き、支給されていた装備を返還して預けていた自身の荷物を回収する。荷物には恋人である天音が作った弁当が入っていた。雄二は以前口にした「美浜を卒業したら結婚しよう」という言葉を真剣に考えており、現在の危険が多い仕事から遠ざかるために昇進試験を受ける準備をしていた。
現在天音が美浜を卒業して3ヵ月が経っていた。天音は寮を出て美浜近くのアパートを借りる契約を済ませて引っ越しを進めているが遅々として進んではいなかった。いっそ美浜の寮母として残るというのはどうかとの提案も出ているが天音の親がなかなか首を縦に振らない状況だった。その辺の事情を踏まえたうえで近々天音は実家に話し合いのために帰省する予定であり、雄二もそれに同行して天音の父親と結婚について話し合いをしようと考えていた。雄二は以前に2回ほど天音の実家を訪れているが、その2回とも父親に会うことは出来ず、向こうから会うのを回避されているため母親と天音と連携を取りながらタイミングを計っていた。

雄二が寮の自室へ帰ると食事を用意して待っていた天音に迎えられる。雄二と仲睦まじく過ごしている天音だったが、少しの不安が付きまとっていた。それは他のクラスメイトたちも雄二に異性として好意を寄せていることであった。クラス会議により天音以外は雄二に手を出さないといったふうに決まっていはいたが不安は拭えないという状況であった。蒔菜に自分たちがどう思おうと天音を選んだのは雄二なのだから堂々としていて大丈夫と言われる。
しかし、天音は愛に飢えた他のクラスメイト達を尻目に自身だけが雄二の寵愛を独り占めにしていいのか悩む。そして、雄二の姉である一姫がOKを出してくれたなら何も迷わずに感受したかもしれないと思う。しかし、一姫は死人であり口はない。数多くの命の上で成り立っている自身が1人で幸福を手に入れることに対しても複雑な気持ちを抱いていた。その気持ちを雄二に吐露すると雄二は今後一生自身の面倒を見ることが罰であり、共にいる人間は天音以外は認めないと言う。雄二の姉を見捨てた人間でもと天音が問うと、それでも天音がいいと告げると天音は嬉しさから涙を流した。

ある日、雄二は以前行きそびれていた動物園に天音を誘う。雄二はJBに休みの申請をするが当日だっためにJBは相当渋ったが、それでも引き下がらず交渉した雄二に折れて許可を出した。そんな雄二の姿に雄二の師匠でありJBの友達であった麻子の姿を思い出し笑う。雄二が行こうとしている動物園は雄二が麻子に引き取られたときに彼女に連れられてきた動物園であった。
天音は上機嫌に今日のデートのためにお弁当を作っていた。そこに蒔菜が現れ、蒔菜も一緒に行くかと聞くが流石の自分でも空気位は読めるよと蒔菜は困った様子を見せる。天音に自分たちを気にせずもっと自信を持てと蒔菜は促すが、イマイチな反応を見せる天音に今日1日雄二とのデートでじっくり考えておいでと言う。

デート楽しむ天音と雄二を尾行している由美子とみちると蒔菜と幸

2人がデートに出ていったあと、他のクラスメイト達が集まって天音が心配になり追いかけることに。動物園に着いた2人は最後に動物園に来たのはいつだったかや天音が小さい頃に父親と来た思い出話などに花を咲かせていた。しかし、その状況でも雄二は後ろから隠れてついてきてるクラスメイト達の存在には気づいていた。それでも特に害がないと判断して天音には伝えなかった。
昼食に天音の弁当を食べ終えた人は次の動物のショーまでに時間が合わなかったことから芝生で天音の膝枕で休憩をすることにする。そして、普段睡眠が浅く、少しの音で起きてしまう雄二であったが、天音への信頼から深い睡眠に落にちていく。それを珍しいと思いながらも信頼されていることを素直に喜ぶ天音。そんな2人の信頼しあった関係に蒔菜たちは自分たちの心配は杞憂であったことを悟る。その後目を覚ました雄二に膝枕でしびれた足を小突き回されながらも楽しくデートを終えたのだった。

ある時買い物の帰りに蒔菜に2人の結婚についての話をされたことをきっかけに天音の母と結託して父親在宅時を狙って突撃する「竜巻作戦(オペレーション・トルネード)」の敢行が決まった。そして、それから4日後に作戦は実行された。天音の実家に着き母親に迎えられ、居間でテレビを見て油断している父親に会うことに成功する。古い時代の人間といったタイプである父親は大きな声で雄二を威嚇するが、物怖じせずに「天音をください」という雄二。何度か同じやり取りを繰り返したのち、しびれを切らした父親が殴り合いの喧嘩を雄二にしかける。それに雄二も応えて天音をかけての勝負が始まった。男が男であるための条件として「男には、死んでも譲れないものがある」というものがあり、父親は娘である天音を守るため、雄二は天音と結婚するために夕方まで殴り合いが続いた。
最初は観戦していた天音と母親も付き合いきれないと家の中に引っ込んでいた。
ボロボロになり地面に倒れながらも父親は心は折れていないと言いなかなか負けを認めなかった。雄二も共に地面に倒れ、父親はいかに自身が天音を大事にしているか話し、天音のためなら何でもできるが、雄二はどうなんだと問う。雄二は天音に「生きててよかった」と思わせることが出来るようにしたいと言うと父親は少し納得したように頷いた。そして、雄二の稼ぎに不安がある話から、天音のトラウマについてや美浜へ行くことになった経緯などを父親から話され、雄二は天音をきちんと養っていくと大事にすると約束をすることで結婚の許可をもらった。

翌日、雄二が昇進試験を受けに外出していて、なかなか帰ってこない中天音は時間を潰すために日課である日記をつけることにする。しかし、今日の分を付け終えていたため自身の親友である一姫にあてた届くことのない言葉を綴る。雄二のことが好きであること、どんなところが好きなのか、そして、肉親の死にかかわった人間である自身が簡単に赦されていいのかという不安という内容であった。
天音は帰ってきた雄二に素直に不安な気持ちを伝えると、雄二は自身が「普通」というものから大きく外れていること、死んだ人間はどう足掻いても生き返らないという考えがあること、そして天音が好きであるからと伝える。天音は嬉しさから涙を流した。

生まれた子供を抱く天音

その後、無事に入籍をして天音は周防から風見の名字になった。そして、その名字に慣れるころに1児の母になった。入院中に蒔菜の提案で出産報告ハガキに載せる写真を撮って、それを届くのはずのない一姫宛てに書いた。これまでも結婚の報告などを書いた手紙を住所も記入せず一姫の名前だけを書いて投函してきていたのだ。本来なら宛先不明で帰ってくるはずのそれらは不思議と1度も返ってくることはなかった。配送ミスを疑っていた天音だったが、不思議と一姫に手紙が届いているような気がして今回も葉書を出すことに。そして、その葉書も返ってくることはなかった。

松嶋みちるアフタールート

ある日雄二が日課であるランニングから帰ってくると、今年1番の真夏日にも関わらずダッフルコートに身を包んだみちるが校門に立っていた。さらにトレードマークであった金髪ではなく黒髪になっていた。他人ならスルーしているところだが、相手は恋人であったため雄二は声をかけることに。みちるは熱中症間際で意識が朦朧としていたが声を掛けられたことで意識を取り戻し、今日のデートに備えて待ち合わせ時刻の8時間前から待機していたというのだ。以前みちるがデート前日から待ち合わせ場所に待機したりするのを禁止して、さらに5時間前からの待機を禁止したというのに今回の行動に雄二は呆れてしまう。続いて、真夏日にダッフルコートを聞いている理由を聞くと、今まで何度かデートを重ねたが海まで走るくらいのことしかしていなくもっと恋人らしいデートがしたいと幸に相談したところ、夏だからダメなのではという結論に至る。(幸は夏でも恋人らしいデートが可能であると言ったがみちるが全否定した)そして、デートは冬にした方がいいと思ったみちるは「もうひとりのみちる」の呆れた声を聞いても止まらず自室にしまっていたダッフルコートなど冬服を引っ張り出して冬が来るのを待とうとしていた。しかし、現在は8月で冬は簡単に来ないことに憤慨、かわいい服を着て雄二と恋人らしいことがしたいと嘆いているところに蒔菜が現れた。
蒔菜はお菓子を探してみちるの部屋に侵入しており、みちるの話を聞いていたことでアドバイスをしようと言ってくる。それは金髪は夏っぽいので冬には合わないというものだった。その言葉を鵜呑みにしたみちるは幸を呼び出して黒髪に染めることにする。そして、幸が持っていた黒髪戻しスプレーにより黒髪になった。という話を雄二にするがわからんの一言で切り捨てられてる。

しかし、彼女なりに考えての行動を頭ごなしに否定するのも良くないと思った雄二はダッフルコートを脱がせるのも難しいだろうとということで頻繁に水分補給をすることを約束させる。
その後、デートをしている最中もみちるは徹底的に冬のデートに拘り続け、1つのミトンに2人で手を入れたいや自身のコートのポケットに手を入れてほしいなど雄二にお願いしたが蒸すから断ると切り捨てられてしまうも、それでも諦めなかった。みちるは雪合戦をすると言い製氷機で作ったブロックの氷を取り出した。もちろん当たり所が悪ければ死ぬ可能性があるほど危険なので中止。それでも諦めないみちるを諦めさせるために、遮蔽物のない場所では隠れることが出来ないから安全のために塹壕を落ちていたアイスの棒で掘れと命令した。そして、疲労と暑さから倒れ伏したところでみちるはようやく諦めた。
街中へ移動してもみちるは冬らしさをだそうと、肉まんを買おうとしたり、おでんを買ってきたりと頑張っていたがことごとく失敗する。それでも、デートらしいことをしようと映画に向かい、丁度上映中だった『マグロマン』を見ることに。

プリクラを撮る雄二とみちる

その後、ゲームセンターへ場所を移しカップルの定番であるプリクラを撮ろうとみちるが言う。そして、みちると共にプリクラをデコレーションしていく。みちるは先ほど一緒に見た『マグロマン』の感想を記念として、雄二は何を書くべきかわかっていないので国防に関することを書いてはみちるに咎められていた。そして出来上がったものは食いしん坊と軍人が書いた混沌したものになっていた。
終わった後も冬に拘るみちるに雄二は少し待っていろと言い近くの商店に入る。そこ
は化粧っ気のない女性が店番をしている骨董品や民芸品を置いている雑貨店だった。雄二が希望した商品はまだ値がついていなかったが店員はあげるよと言い包む。店員の祖父が店長をしているらしく、その店長曰く雄二が希望した商品は「願いが叶う魔法の道具」だという。外で待っていたみちるの元に戻り、買ったものを渡す。それは雪だるまのフィギュアが入っているスノードームであった。受け取ったみちるは終始嬉しそうにしてて、雄二は自身の顔がほころぶのを感じた。
しかし、寮に帰ってきたとき幸に嬉しそうに見せびらかして、みちるは雄二になにかお返ししたのかと幸に聞かれたことでみちるは気まずそうに自室へ帰ってしまった。

雄二がみちるの部屋を訪れるとみちるは疲れたのか雄二から貰ったスノードームを抱きながら眠っていた。幸の言葉を気にしすぎているみちるに上手に生きれるようになれるといいな零すと「もう1人のみちる」が目を覚ます。「もう1人のみちる」はみちるを含めて美浜にいる人間は不器用であると言う。そして、不器用であるためにデートの際に2人とも気を使いすぎて無茶をしていると指摘する。雄二は「もう1人のみちる」に何故夏に冬デートをしようとしたのか聞くと、雄二は難しく考えすぎであり今回の冬デートも着ていたダッフルコートを試着した時に可愛いと思い、雄二にもそう思ってほしいために頑張っていただけでそれ以上はなにもないという答えが返ってきた。それは男性には理解が難しい乙女心というもので例に漏れず雄二も乙女心への理解はない。どうしたらいいのか問うともっと普通でいいと「もう1人のみちる」は言う。
みちるは愛着形成に難があり、一連の行動は何かをしないと愛してもらえないという思いからくるもので、そのために無理をしてしまうのだ。「もう1人のみちる」はそれに付き合う雄二も無理をしていると指摘してもっと普通でいいと言う。しかし、雄二はみちるが望むなら夏場であろうと冬デートをすると、そしてそのために奇跡を起こすと宣言して部屋を出ていく。

1人になった「もう1人のみちる」は複雑な心境であった。雄二は「もう1人のみちる」のことを決して名前では呼ばず「オマエ」と呼ぶ。みちるが「もう1人のみちる」との共存を決めて1つの体をシェアするようになっても、あくまでも自身はみちるの居候であり、1人の人間にはなりえない。しかし、仮にみちるではない名前を貰ったとしたら、もっと自分を欲しがってしまうかもしれない「もう1人のみちる」への乱暴だけれど傷つかないようにとした雄二なりの優しさの表れであった。
みちるのことを考えると彼女はスタートした途端に後ろに猛ダッシュする性格であり、雄二のためにとしたことでもすぐに目的を忘れて目の前の処理に必死になってしまう。そして、そのみちるに合わせようとした結果アイスの棒で塹壕を掘らせる雄二の不器用さにも頭を抱える。そこで、みちるの意識を起こして1つの提案をする。それは次のデートを自分に任せてみないかというものであった。デート中の自身のアドバイスに耳を貸せば雄二といい感じになると言い、渋るみちるを納得させる。

デートの約束を取り付け、デート当日になり待ち合わせまで時間があると言うのにお気に入りのダッフルコートを着て部屋を出ようとするみちるを「もう1人のみちる」が諫める。そして、どうにか待ち合わせ時刻の15分前まで引き留めることに成功する。そして、冬らしい飲み物ということで魔法瓶に入っていたミネストローネを止めさせて、中身をウーロン茶に変える。待ち合わせ場所に雄二は待っていて、それを見て待たせてしまったと慌てるみちるをなだめて、雄二の前まで行く。
雄二がみちるの金髪に戻ったこととダッフルコートを褒めたことにより、みちるは奇声を上げるほどの喜びを見せる。さらに、みちるが時間通りにきたことを褒める。その後も比較的落ち着いているみちるにいぶかしげな眼を向けるが、「もう1人のみちる」からアドバイスを受けていることは内緒にするため普通を装う。そして、恋人らしく手を繋ぎながら街中へ向かう。「もう1人のみちる」は今日のデートが成功するんじゃないかと予感していた。

その後も「もう1人のみちる」のアドバイスの元順調にデートは進んでいく。ファミレスで仲良くケーキを食べているとみちるが好物のイチゴを落としてしまったところに雄二が自身のを差し出す。みちるはそんな何気ないやり取りから、落ち着いて向き合えば自分がしっかり愛されていると感じた。ファミレスでの食事を終えた後、みちるは不運なことに突風に煽られて落ちてきたビル清掃のクリーナー入りバケツを頭からかぶってしまう。大事になるのを恐れた清掃員からクリーニング代と僅かばかりの慰謝料を貰った2人は、みちるの服をクリーニングに出し、その間シティホテルで休憩することに。雄二はシャワーでクリーナーを落としてきたみちるを後ろから抱きしめてクリーナーがきちんと落ちているかにおいで確認する。そして、今日のデートはみちるが奇抜なことをあまりせずデートがうまくいっている雄二が言うと、みちるは困ったように「もう1人のみちる」のおかげで出来た事だと話す。
そして、「もう1人のみちる」のおかげで余計なことをせずに済んだが、これでは自身がいらない子のようだと言うみちるに雄二はみちるは「もう1人のみちる」と2人で1人であり、協力できることは協力してやればいいしみちるが引け目を感じる必要性はないと言う。
みちるはそれに納得して、協力してもらったお礼をするために雄二に「もう1人のみちる」を抱きしめてほしいとお願いする。「もう1人のみちる」も雄二が好きであり自分ばかりいい思いをしているから今日は幸せを分け合いたいという。みちるは戸惑う「もう1人のみちる」を説得して表に出てもらうことに成功して、雄二は表に出て来て緊張している「もう1人のみちる」にキスをした。

翌朝、ホテルから出て来た2人は雄二の要望で町の高台を訪れる。ここは「もう1人のみちる」と初めて会った場所であり、みちるが生死を選んだ思い出深い場所である。雄二が話をしようと座ると、みちるは別れ話をされるのではと思い不安になるが雄二はみちるのことを大事にしていると伝える。雄二のハッキリとした言葉にみちるは安心する。デートの思い出を振り返りながら、冬は逃げないしいつまで一緒であると喜ぶみちるにどうしても雪が待てないなら見せてやると雄二が言う。

スノードーム越しに写真を撮る雄二とみちる

雄二はみちるのサメポーチに入っていたスノードームを取り出し、目の前にかざして世界を見てみるように促す。スノードームの中の雪が舞い世界に雪が降っているように見える。雄二も隣に並び、携帯で写真を撮ると雪景色のなかでデートをしているようであった。
夏に雪を降らせるのは視点を変えれば簡単であり、大事なのはその時に感情がどう動いたかであるという。みちるが雄二の腕の中で幸せをかみしめていると空から白いものが降って来ていた。みちるが雪が降ってきたと驚いていると、雄二が奇跡かもしれないなと言う。みちるは雄二と一緒にいると奇跡も起きるんだと喜んだ。

しかし、なんで夏に雪が降るんだとみちるが聞くと、雄二はそれはチャフだと答える。みちるがポカーンとしていると雄二が上空を指さすとそこには戦略爆撃機が電波探索機欺瞞紙通称チャフをばら撒いていた。チャフとは敵からのレーダー探知を妨害するためのものである。雄二が今回用いた方法は大戦時におこなわれていたアルミ箔を使用した方法であり、これらが光にあたることで雪のように見えていたのだ。
雄二がパイロットに「オペレーションマナツノキセキ」終了を告げると三嶋崎を離脱いしていった。ちなみに戦略爆撃機ではあるがパイロットが個人で拾って使っている民間のものであるため咎められることはない。テキサスへ帰っていくパイロットを見送りながら、嬉しいが戦略爆撃機を使ってまで雪を降らせるなんてとみちるは複雑な思いを示した。雄二はそんなみちるを見ながら新婚旅行はテキサスの軍事博物館も悪くないと言う。それに対してもう知らないと怒るみちる。
こうして彼らの夏の奇跡は終わったのであった。

入巣蒔菜アフタールート

清夏暗殺を失敗してフロリダへ移り住んでいた雄二と蒔菜。雄二が負傷により狙撃の仕事ができなくなったため蒔菜がそのあとを継いでいた。アメリカ国内では仕事を何度かこなしてきた蒔菜は日本で仕事をするために必要なライセンスを取りに一時帰国していた。蒔菜は雄二からエースナンバーである9029を継いでいるがあくまでも観測員の扱いであり、2人で1人前数えられていることに不満を覚えていた。そんな不満を抱えつつ蒔菜は共に帰国した雄二と別れて母親への挨拶へ向かった。
一方雄二は市ヶ谷へ来ていた。蒔菜を置いてきたことを蒔菜の担当官であるキアラに咎めれるも気にせずJBと会話する。腕を無くしても蒔菜のサポート付きであれば短時間の仕事位ならできると言う雄二にJBは結局蒔菜を巻き込んでしまったことを心配していた。
しかし、雄二は蒔菜としっかり話し合った上でお互い納得しているから大丈夫だと言い、蒔菜を迎えに行くからと市ヶ谷をあとにした。その頃蒔菜は清香が居るビルから離れたビルの屋上にてケースからライフルを出して長距離射撃の準備をしていた。

清夏を狙う蒔菜

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