サイコ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『サイコ』とは、1960年公開のアメリカ映画。アルフレッド・ヒッチコックが監督を務めたサイコ・スリラー映画の代名詞である。不動産屋のOL・マリオンは、恋人との結婚のために金が必要で、仕事中に大金を持ち逃げしてしまう。しかし道中で立ち寄ったモーテルで彼女は何者かに襲われて命を落とす。原作は実在の人物をモデルにしたロバート・ブロックの同名小説。シャワールームでの絶叫シーンは、あまりにも有名。当時はサイコパスや精神異常者を扱った映画がほとんどなく、その後の映画監督たちに大きな影響を与えた。
『サイコ』の概要
『サイコ』とは1960年に公開された、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画。サスペンスの神様と呼ばれたヒッチコック監督のハリウッドでの作品だ。
『サイコ』の興行収入は5千万ドル。アカデミー賞では監督賞や助演女優賞、撮影賞、美術賞がノミネートされたが、当時としてはあまりにもショッキングな内容だったためか、受賞には至らなかった。ヒッチコック監督はハリウッドでこの前に、『ダイヤルMを廻せ!』『裏窓』『めまい』などの名作を次々に送り出していた。
『サイコ』は『北北西に進路を取れ』の次の作品で、その次は名作『鳥』へと続く。ヒッチコック監督にとっても、まさに全盛期といえるころの作品だ。
実は『サイコ』は、SFホラー作家のロバート・ブロックによる同名の小説が原作となっている。この小説『サイコ』は実在した犯罪者エド・ゲインをヒントに書かれたもの。エド・ゲインはアメリカの猟奇的殺人鬼で、逮捕されたときには全部で15人もの女性の死体があったという。
エド・ゲインは実際に殺害したのは2人で、あとは墓場から掘り起こしたと裁判で証言。遺体は全て解体され食器や家具に加工されたり、一部は食用にされたそうだ。
聞くのもおぞましいこの事件の内容と犯人エド・ゲインから、『サイコ』は誕生した。
勤務先の売上金を横領したマリオンは、そのお金を車に積んだまま恋人サムのいる町へと車を走らせる。
途中で目についた「ベイツ」というモーテルに寄ったマリオン。ベイツはノーマンと言う青年が経営する小さなモーテルだった。マリオンはベイツの応接室で、ノーマンの話を聞きながら食事をとった。ノーマンは隣接する丘の上にある屋敷に住んでいるという。そして部屋に戻ったマリオン。シャワーを浴びていると、突然何者かに刃物で襲われ、惨殺されてしまうのだった。
『サイコ』の大ヒットを受けて、劇場映画『サイコ2』(1983)、『サイコ3/怨霊の囁き』(1986)とテレビ映画『サイコ4』(1990)、及び同タイトルのリメイク作品『サイコ』(1998)が製作された。また、2013年より、ノーマン・ベイツの少年時代を描くテレビシリーズ『ベイツ・モーテル』の放送が開始。アメリカ合衆国では2016年まで全4シーズン、40回が放送された。
『サイコ』のあらすじ・ストーリー
モーテル「ベイツ」で起こった悲劇
フェニックスにある不動産会社で働くOLマリオンには、カリフォルニアに住むサムという恋人がいた。だがサムとは出張でフェニックスに来た時だけ、ホテルで会うという関係が続いていて、マリオンは結婚を迫っていた。だがサムは父親の借金と別れた妻への慰謝料の支払いがあり、金銭面から結婚できずにいた。
そんなある日マリオンは、会社の常連客から不動産を購入した4万ドルという大金を預かる。すぐに銀行に預けるはずだったが、マリオンはそのお金を持ったまま、恋人サムのいるカリフォルニアへと車を走らせた。
だが行く途中ものすごい豪雨に遭い、たまたま目に入った「ベイツ」という名のモーテルへと入る。そこはノーマンという青年が経営管理をしていた。
12部屋あるうち、12部屋空いてると笑うノーマン。隣にある自分の家で一緒に夕食を、とマリオンを誘った。だがノーマンの住む屋敷から母親がノーマンを罵る声が聞こえてくる。ノーマンは夕食を持って戻ってきて、モーテルのフロントの裏にある応接室で食べるように誘った。そこでマリオンはノーマンと少し談笑するが、疲れていたマリオンはすぐに部屋に戻った。
ノーマンは壁の額縁でふさいでいた穴から、マリオンの宿泊している隣の1号室を覗いた。
マリオンはそのままシャワーを浴びるが、そのとき何者かが刃物を持って現れ、マリオンは何度も刺されて殺されてしまう。ノーマンはマリオンを気に入っていたことで、自分の母親が嫉妬してマリオンを殺害したと思い、マリオンの存在を消すために証拠となるものは、4万ドルも含めて全て車に詰め、マリオンの遺体とともに沼の底に車ごと沈めた。
だが1号室には、マリオンの破ったメモがトイレに残されていたのだ。そのメモにはマリオンが横領した4万ドルから、車を購入した費用などを差し引いた金額が記されていて、マリオンが会社のお金を横領した証拠にもなるメモだった。
マリオンの行方を探すライラたち
マリオンを探す妹のライラは、サムを疑いカリフォルニアに向かった。だがサムは何も知らないという。
同じくサムを疑っていた私立探偵のアボガストもライラを尾行してやってきた。アボガストはマリオンが働いていた不動産会社が、警察沙汰になるのを避けて雇った私立探偵。お金が戻れば穏便に解決させようとしていたのだ。
アボガストは途中にあるモーテルを片っ端から探し、ベイツにたどり着く。
挙動不審のノーマンを疑ったアボガストは、宿帳を見せてもらい「マリー・サミュエルズ」という名前を見つける。マリオンとサムの偽名だと気づいたアボガスト。ノーマンにマリオンの写真を見せて、そこにマリオンがいたことをノーマンに認めさせた。
隣の屋敷に母がいるとノーマンから聞いたアボガスト。ノーマンの母親に会いに行くが、その屋敷でアボガストは何者かに殺害される。
ライラとサムは保安官から、ノーマンの母親は10年前に愛人を殺害し、自身も自殺したことを教えられた。戻ってこないアボガストを探しに、ライラとサムもベイツにやって来る。
そこでライラは地下にいたノーマンの母親を発見するが、それはミイラだった。
衝撃的な事件の真実
ライラに襲いかかるノーマン。だがそこにサムがやってきてノーマンを取り押さえた。
精神科医のフレッド・リッチモンドがみんなにこう説明した。
ノーマンは父親の死後、母親とふたりで暮らしていたが、母親に虐待的な支配をされていたことで精神が不安定になった。ノーマンにとって母親が全てだったが、その母親に愛人ができ自分は捨てられると思い、母親とその愛人を殺害。ノーマンは母親殺しの罪の意識から逃れるため、母親の死体を地下室に収め、母親と自分の一人二役を演じ始めた。そうすることで、母親が生きていることになると信じたのだ。だが、徐々に母親の人格がノーマンの人格を駆逐し、ノーマンに近寄る女性を次々と殺していった。全ての事件が明かされた時には、ノーマンの人格は消え、母親の人格だけが残ったというのだ。
そして沼に沈めたマリオンの車が引き上げられるシーンで映画は終わる。
『サイコ』の登場人物・キャラクター
主要人物
ノーマン・ベイツ(演:アンソニー・パーキンス)
モーテル「ベイツ」を経営し管理している青年。自宅は「ベイツ」の隣にある屋敷で、そこで母親とふたりで暮らしている、と宿泊客であるマリオンに語る。
そしてその夜、マリオンはシャワー室で何者かに惨殺される。ノーマンは自分と仲良く食事をしたマリオンに嫉妬をした自分の母親が殺害したと考え、証拠を隠すため所持品などすべてをマリオンの車に入れ、そのまま沼へと沈めた。
だが実際の殺人鬼はノーマン本人だった。
ノーマンは母親に恋人ができたとき、その恋人とともに母親を殺害しており、母親の遺体を掘り起こして自宅へ持ち帰った。その後母親と自分の一人二役を演じるようになり、母親が自分の中のもう1人となる、二重人格になっていったのだ。
マリオンに好意を持ったノーマンに嫉妬した、自分の中の母親がマリオンを殺害した。
ノーマンのモデルは実在した殺人鬼のエド・ゲインだ。
マリオン・クレイン(演:ジャネット・リー)
アリゾナ州フェニックスにある不動産屋で働いていて、カリフォルニアに住むサムという恋人がいる。
サムとは、サムが仕事でフェニックスに来るときだけ会っていた。そのため昼間にホテルで会うことしかできず、結婚を望んでいた。
サムと結婚するためにはお金が必要だったため、ある日会社の売上金4万ドルを持ち逃げするも、途中で立ち寄ったモーテルで襲われ、命を落とす。
彼女が殺されるシャワー・シーンで使われている曲は、スリラー的BGMとして多くのパロディがなされている。彼女の死後、恋人や妹のライラ、探偵がモーテルに続々とやってきて事件の真相を探り始める。
マリオンの行方を捜索する人物
ライラ・クレイン(演:ヴェラ・マイルズ)
マリオンの妹で、失踪した姉を探す。行動力があり危険もかえりみないところがある。
サムのところにいると疑ったライラは、すぐにサムのところに向かうが、そこに姉はいないという。
マリオンの行方を捜しているという私立探偵のアボガストと知り合うが、彼がモーテル「ベイツ」に向かったまま戻ってこないことで、サムとともに保安官に相談に行く。
サム・ルーミス(演:ジョン・ギャヴィン)
マリオンの恋人で、カリフォルニアにある金物店で働いている。
マリオンとは出張でフェニックスに行ったときだけ、ホテルで会うという関係が続いていて、マリオンからは結婚をせがまれていた。
だがサムには父親の借金と、別れた妻への慰謝料の支払いがあり、まだ結婚できる環境ではなかったのだ。
ライラが訪ねてきて初めてマリオンが会社のお金を横領し逃走したことを知り、ライラとともに行方を捜す。
サムとライラは、ノーマンがマリオンのお金を横取りしたと考えた。
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目次 - Contents
- 『サイコ』の概要
- 『サイコ』のあらすじ・ストーリー
- モーテル「ベイツ」で起こった悲劇
- マリオンの行方を探すライラたち
- 衝撃的な事件の真実
- 『サイコ』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- ノーマン・ベイツ(演:アンソニー・パーキンス)
- マリオン・クレイン(演:ジャネット・リー)
- マリオンの行方を捜索する人物
- ライラ・クレイン(演:ヴェラ・マイルズ)
- サム・ルーミス(演:ジョン・ギャヴィン)
- ミルトン・アーボガスト(演:マーティン・バルサム)
- その他
- アル・チェンバース(演:ジョン・マッキンタイア)
- フレッド・リッチモンド(演:サイモン・オークランド)
- 『サイコ』の用語
- モーテル「ベイツ」
- 4万ドル
- ノーマンの母親
- 二重人格
- 『サイコ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- シャワーシーン
- トイレのシーン
- ヒッチコック監督のカメオ出演
- 『サイコ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ノーマンのモデルは実在したエド・ゲイン
- 途中入場とストーリーの口外を禁止したヒッチコック
- モノクロにした理由はヒッチコック監督が真っ赤な血を見たくなかったから
- 象徴的な『サイコ』での鳥の演出
- シャワーシーンの緊張を高める効果音
- 予告編のサブリミナル効果が話題に
- 『サイコ』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:「Main Theme」