クロエのレクイエム(Chloe's Requiem)のネタバレ解説・考察まとめ

『クロエのレクイエム』とはゲームサークル「ブリキの時計」が2013年10月2日に無料配布したフリーホラーゲーム。「ブリキの時計」は当時19歳のぬばりんと16歳のななしのちよによる女性2人のサークルであり、製作者の破格の若さとゲームの完成度の高さが話題となった。主人公のミシェルはバイオリンの演奏で脚光を浴びる早熟の天才少年。そんなミシェルは家族との確執が原因で飛び出した夜、迷い込んだ先の屋敷でピアノ好きな黒髪の少女クロエと出会い、この屋敷にかかった呪いを解いてくれるように頼まれる。

クロエの部屋に飾られていた木製の兵隊の人形。ミシェルが暖炉にくべると火影となってクロエの過去を教えてくれる。

クロエ

1年前にミシェルが父親に内緒で飼っていた黒い子猫。ミシェルがピエールと大喧嘩した夜に屋敷に迷い込んで自然と居着く。ミシェルとシャルロットが庭でクロエを可愛がってるのを偶然見たピエールが父親に告げ口したせいで、寂れた裏山へ捨てられてしまった。
番外編『クロエのレクイエム-Con amore-』の主人公。クロエとノワールは同じ猫であり、少女クロエに拾われ生き延びていた真相が明かされる。

『クロエのレクイエム』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「私は人間。だれかのお人形じゃない。ペットでもない。そう思いたいのにみんなそう思ってくれない、お父様も、お母様も、みんなみんな」

ミシェルがクロエの部屋で発見した日記にあったクロエの心の叫び。父親に虐待され母親には嫌がらせを受ける辛い日々の中、クロエは自分を人間として扱ってくれない周囲への絶望と哀しみに染まっていった。この記述を読んだミシェルは、自分もまた黒猫クロエの身代わりとしてクロエを認識していた罪深さを悔やむ。クロエの悲劇的な運命と、彼女の身に起きた出来事を受け止めて反省するミシェルの真摯さが胸に迫る。

「どんなに練習しても必ず批判される、どんなに努力しても意味がないって思い知らされる!」

絶対音感に恵まれたミシェルにピアノの欠陥を指摘されたピエールの言葉。天才のミシェルと比べたら秀才どまりでしかないピエールは、夜に寝る間も惜しんでピアノの練習に没頭していたが、そんな自分が気付けなかったピアノの欠陥をミシェルは一瞬で暴いた。
それがきっかけとなり、ずっと抑圧されてきたピエールはミシェルへの怒りを爆発させる。凡人であるが故のピエールの苦悩が詰まった言葉。

「お祈り」

中庭のピアノで『夜想曲第20番』を演奏し終えたミシェルに、クロエが別れを告げるシーン。
クロエはミシェルに自分は本体の残骸でしかない事実を明かし、本体を倒して屋敷の呪いを解いてくれるように改めて頼む。消滅の間際、クロエは「お祈り」と囁いてミシェルにキスをする。アランから唯一庇ってくれたミシェルの存在は、クロエにとって夜明けを連れてくる希望の象徴だった。ミシェルに対するクロエの淡い恋心と深い信頼が伝わってくる。

「……そうだね。楽器に罪を押し付けるのはいつも、僕らのほうだ」

地下1階東物置にて、捨てられたピアノにかけたミシェルの言葉。
東物置のピアノはクロエが蓋で手を挟んでしまったのが原因で捨てられた。事情を知ったミシェルは、自分もまた何ら悪くないヴァイオリンに罪を着せて憎んでいたと反省する。クロエに演奏を聴かせている時の楽しい気持ちを反芻したミシェルは、昔は確かにあったバイオリンへの情熱を思い出す。クロエとの出会いや屋敷での体験を通し、葛藤を脱却したミシェルの成長を感じる言葉。

「あなたにクロエお嬢様を救う資格があるのか。それを、確かめたかったのです。私はこの姿になってからもクロエお嬢様のことが心配で、ずっと見守っておりました。どうかお嬢様をお救いください、私には見守ることしかできません」

クロエ主宰の晩餐会終了後、メイドDが厨房に呼び出したミシェルに告げた言葉。生前のメイドDはクロエと特別親しかったが、アランとクロエの秘密を知ってしまいクロエの母親に殺害された。しかしメイドDはずっとクロエを案じ、屋敷の呪いに取りこまれた後も陰ながら彼女を見守り続けていた。クロエにも味方がいたのだとわかり、心が温かくなるシーン。

「おやすみクロエ。もう1人のクロエも」

ラストシーン、クロエを丘の上の墓所に運んだミシェルの言葉。ミシェルはクロエを呪いから解き放ったが、何日も飢えと渇きに苛まれた彼女は衰弱しきり、朝日を目にするだけの時間しか残されていなかった。
クロエの最期を看取ったミシェルは、自分が出会った天真爛漫なクロエと病み窶れた本体のクロエ、残酷な運命に翻弄された2人の冥福を祈る。

『クロエのレクイエム』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

キャラクターデザイン担当のぬばりんは、血が繋がったキャラクターの顔は似るように心がけている

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本作のキャラクターデザインを担当したぬばりんは、もぐらゲームスのインタビュー記事にて「ミシェルとピエールはじめ血が繋がったキャラクターの顔は似るように心がけている」と言及した。
双子のミシェルとピエールは髪のはね方やアーモンド形の猫目がそっくりで、クロエとクロエの母親は髪と瞳の色のほかタレ目がちの目に共通項を見い出せる。一方でキャラクターごとに顔の描き方を変えたり、陽気なキャラクターと内気なキャラクターで笑い方に変化をもたせたりと作画のこだわりを語っている。

本作のキャラクターは皆赤いリボンをしており、呪いに毒されるとリボンの色が黒ずむ

クロエのレクイエムのキャラクターたち。服のどこかに赤いリボンを付けているのが特徴。

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ミシェルのリボンタイ、クロエのドレスのリボンなど、本作のキャラクターは服のどこかに赤いリボンを結んでいるが、この色は呪いの浸食の度合いで変化する。キャラクターが呪いに毒されるとリボンが黒ずみ、回復すると元に戻る。タイトルロゴのト音記号にもさりげなく赤いリボンが結ばれていたり、製作者の遊び心がうかがえる。

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