ID: INVADED(イド:インヴェイデッド)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ID: INVADED』とはあおきえい監督による日本のSF・ミステリーアニメ作品。2020年1月から3月までTOKYO MX他で放送された。脚本はミステリー作家の舞城王太郎。舞台は凶悪犯罪が増加した現代日本。連続殺人犯の迅速な特定を目的とする組織・蔵は、ミヅハノメと呼ばれる特殊な発明を用い犯人の深層心理が生み出す仮想世界・イドを構築した。元刑事で現囚人の鳴瓢秋人は、名探偵・酒井戸となって、様々な殺人鬼の精神世界に潜るうちに彼らの裏で糸を引く黒幕、ジョン・ウォーカーの存在へ近付いていく。

外務分析官

現場で捜査を行う外務分析官。

井戸端と連携し、現場で捜査を行うスタッフ。ワクムスビを使って思念粒子を採取したり、井戸端の連絡を受け、犯人の確保に向かうのが主な仕事。元刑事が多い。

ワクムスビ

思念粒子を検出するワクムスビ。

思念粒子の採取に用いる携帯端末。これを犯行現場に翳すと、残留する思念粒子に音と光で反応する。ミヅハノメと常にリンクしている。

ドグマ落ち

イドとは無意識の集合体であり、自分のイドに入る事は無意識を意識する事である為に矛盾が生じる。自分のイドにおいて、他者に本来の名前や素性を突き付けられた名探偵は認識の齟齬を引き起こし、自分のイドの中で永遠に彷徨い続ける。イド嵐に巻かれて座標を見失った酒井戸の状態がこれにあたる。

イド嵐

イド嵐に巻き込まれる3人。

イドの中で自分の名前や素性を思い出すと巻き起こる激しい嵐。無意識が自意識の浸蝕を防ごうとして起こすとされる。

『ID:INVADED』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「いいえ。涙の1粒くらいでこの人には丁度だと思います」

富久田の死を看取り、1粒だけ涙を流す小春。

13話で現実に帰還し、富久田の死亡を確認した小春の言葉。富久田は彼女の額にドリルで穴を開け、名探偵となる資格を与えた人物であると同時に「穴がなければ自分じゃない」という認識を共有するただ2人だけの同志でもあった。良くも悪くも自分の人生に決定的な転機を与え、イドの中で短い間だけコンビを組んだ富久田の死を悼み、小春は1粒の涙を流す。

「俺が……どこかに行くのか?違うだろ……君らがどこかに行ってしまったんだ!」

妻子においていかれた秋人は、イドの中のイドでまだ生きている綾子と椋に絶叫する。

10話。イドの中のイドで、この世界は現実じゃないと自覚した秋人が、どこへも行かないでと電話で縋る妻子に返した言葉。現実の椋は対マンに殺され、綾子はそのショックで精神を病み、秋人を置き去りに自殺してしまった。最愛の妻子においていかれて独りぼっちになった秋人は、その現実を知らない仮想世界の妻子に痛切な想いを吐露する。

「ちゃんと帰ってくるよね……?うちに……」「うん……必ず帰る。必ずちゃんと帰ってくるから」

現実を受け入れた秋人は、イドの中のイドの妻子へ別れを告げる。

10話。妻子がいない現実を受け入れた秋人は、電話越しにちゃんと帰って来るか不安がる椋に、必ず家に帰ると約束する。たとえ虚構でももう一度妻子と幸せな時間を過ごし、きちんと別れを言えた事で、秋人の心は少しだけ整理が付いた。同時に妻子を失くしてから生きる目的を持たず自暴自棄になった秋人に、「家に帰る」という叶えたい目標が芽生えたのだった。

「頑張れ。お前の世界観の証明までもう少しだからな」

花火師を話術だけで自殺に追い込む秋人。

3話終盤。秋人は花火師・冬川の「お前の娘の命に価値はない」という暴言に殺意を覚え、話術のみで彼を自殺に追い込む。多くの犠牲者が出た現場に群がり撮影する大衆を嘲り、連中を啓蒙する為に犯行を重ねたと自分を正当化する冬川の欺瞞を暴き、「お前はただ大量死が見たかっただけの俗物だ、だが独房に入れられた以上二度と見られない」と絶望させる。淡々とした口調と物腰、全てに絶望した暗い目からは、秋人の抱えた闇の深さが伝わる。

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