艦隊これくしょん -艦これ-(メディアミックス)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『艦隊これくしょん -艦これ-』とは、女性に擬人化された艦艇(軍艦)を使用したDMM.comの育成シミュレーションゲーム、およびそれを原作としたアニメ・漫画・小説などのメディアミックス作品。
ブラウザゲームと同日に配信開始した「吹雪、がんばります!」を皮切りに、設定を明確にせず、解釈の幅を広く容認することで様々なメディアミックス作品が送り出された。初期は戦記路線が中心であったが、現在は洋酒や音楽など戦い以外を扱う作品も展開されている。

艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!

著者:築地俊彦
イラスト:NOCO
発行:2013年12月12日~2016年1月7日
単行本:全7巻(3巻・4巻・5巻・7巻に特装版あり)

KADOKAWAエンターブレインのライトノベルレーベル「ファミ通文庫」から発売された「艦これ」のノベライズシリーズ。
このシリーズにおける艦娘は「旧海軍の艦艇の能力をフィードバックされた人間」という設定になっており、艦の化身というよりは軍人として描かれている。それに合わせて、ゲーム内システムについてもよりミリタリー色を強めた形で再解釈されて描写されている。
カラーイラストや描き下ろし漫画などが収録された文庫サイズ小冊子を同梱した特装版が3・4・5・7巻で発行されている。

あらすじ・ストーリー

〈第1巻〉
呉鎮守府から横須賀鎮守府に転属となった駆逐艦・陽炎は、新規に創設された第十四駆逐隊の教導を任されることとなる。しかし、第十四駆逐隊に配属されている他のメンバーは、他の駆逐隊からあぶれた問題児たちだった。気弱で積極性に欠ける潮、練習熱心だがそれが全く身につかない皐月、能力は優秀だが他人とコミュニケーションが取れない霰、射撃が壊滅的に下手な長月。そして実力はあるが反抗的で口が悪く、提督にさえ牙を剥く曙。なんとか曙以外のメンバーとは協調関係を作った陽炎であったが、依然協調性を欠片も見せない曙だけには手を焼いていた。
そんな時、演習中に輸送船団が深海棲艦に襲撃されているという情報を聞いた曙は、待機命令を無視して船団の救援に向かう。以前から曙の僚艦であった潮から、曙の棘々しい態度は初めての任務中に深海棲艦によって仲間と護衛対象を全て失ったトラウマから来るものだと聞かされた陽炎は、自らも命令を無視して曙を助けるため出撃。事情を知った他の第十四駆逐隊メンバーも陽炎と共に出撃する。
単騎では深海棲艦部隊に敵わず、轟沈の危機に陥る曙。それを救ったのは陽炎たちだった。そして、陽炎が実戦装備を勝手に持ち出したことから事態に勘付いた提督秘書艦の愛宕率いる艦隊も駆けつけていた。陽炎と愛宕たちにより深海棲艦部隊は壊滅し輸送船団は守られたが、命令違反として第十四駆逐隊は全員営倉入りの処罰を受ける。しかし、この一件によって第十四駆逐隊はようやく全員の結束が固まったのだった。

〈第2巻〉
陽炎の呉鎮守府時代の相棒であった不知火が大規模作戦のために横須賀鎮守府に一時的に転属してくることとなった。入隊の頃からずっと一緒に戦ってきた親友と再び共に戦えることを喜ぶ陽炎だったが、第十四駆逐隊の面々は複雑な心境であった。特に、ようやく信頼できる僚艦ができたと思っている曙は気が気でなかった。横須賀にやってきた不知火は、陽炎に呉鎮守府に戻るように要請。それを聞いて激怒した曙は、不知火に勝負を挑む。自主訓練の名目で激しい乱闘を繰り広げる曙と不知火だったが、決着はつかずじまいであった。
そして、呉鎮守府と横須賀鎮守府の合同による大規模作戦が開始されることとなった。作戦は順調に進んでいるかに見えたが、それは敵の罠であった。敵勢力深部で待ち受けていた深海棲艦群体の長・南方棲戦鬼の激しい攻撃により艦隊は分断され、不知火と愛宕の姉妹艦である高雄が敵勢力圏内に取り残されてしまったのだ。冷静さを欠いたまま不知火を救出すべく出撃した陽炎であったが南方棲戦鬼の苛烈な攻撃により重傷を負い、曙たちに救助されて命からがら鎮守府へと帰還する。その際、高雄だけは救助することができたが依然不知火は敵勢力に取り残されていた。
自分の姉妹艦である高雄を助けた陽炎へのせめてもの礼として陽炎の艤装改造を提督に口添えした愛宕。提督も陽炎なら改造に見合う活躍をすると判断、許可を出した。艤装改造を受けてより戦力を強化した陽炎率いる第十四駆逐隊は、南方棲戦鬼に夜陰に紛れて肉薄。激しい夜戦の末、陽炎は遂に南方棲戦鬼を撃破し囚われていた不知火を助け出した。その姿を見た不知火は、今の陽炎に必要なのは自分ではなく第十四駆逐隊の仲間たちなのだと理解し、呉鎮守府へ帰っていくのだった。

〈第3巻〉
陽炎たち第十四駆逐隊は、南方のリンガ泊地へと一時転属を命じられる。しかし、その実態は短期休暇であった。リンガ泊地にはやる気のない老提督とその秘書艦である駆逐艦・叢雲、そして輸送船団の護衛として配属された陸軍特種船のあきつ丸が待っていた。
南の海を楽しむ陽炎たちだったが、リンガ泊地には深海棲艦の潜水艦部隊と輸送部隊が迫っていた。横須賀鎮守府の提督が陽炎たちをリンガ泊地に休暇の名目で送ったのは、リンガを占領して中継基地を作ろうとしている敵の輸送部隊を撃破し補給路を断たせるためだったのだ。しかし、老提督は陽炎たちを巻き込むことを拒み、第十四駆逐隊とあきつ丸を本土に送り返して叢雲と共に泊地を守って討ち死にするつもりだった。そうすれば本土も南方航路の防衛に本腰を入れると思ったからだ。しかし第十四駆逐隊とあきつ丸はそれを拒否、リンガ泊地防衛のための戦いに臨むことを決意。その覚悟を見た老提督は、第十四駆逐隊と協力して戦うことを選ぶのだった。
修理設備も備蓄も乏しいリンガ泊地での戦いは長く苦しいものとなり、遂に敵の上陸部隊がリンガの海岸に現れた。それを撃退したのはあきつ丸だった。海の上ではさほど強くなかったあきつ丸だが、陸の上では陸軍船である彼女の剣技に勝てる深海棲艦はいなかった。そして、陽炎の手紙から異常を察した不知火の要請で出撃した横須賀鎮守府からの援軍がリンガ泊地へと到着する。重巡洋艦と航空母艦の活躍によって敵輸送部隊は壊滅し、リンガ泊地は守られた。
重要な戦略拠点と認定されたリンガ泊地は新任の部隊によって強化されることになり、老提督は自身の役目を終えたとして退役。そして叢雲は横須賀鎮守府へと転属してくるのだった。

〈第4巻〉
これは、陽炎がまだ呉の第十八駆逐隊に所属していた頃の話である。
第十八駆逐隊の陽炎、不知火、霞、霰は鬼教官として怖れられる軽巡洋艦・神通の厳しい訓練を受けていた。そんなある日、第十五駆逐隊の黒潮から「鎮守府祭」が今年も開催されるという情報を聞く。鎮守府内の行事である節分と一般公開行事の観艦式。これを併せて鎮守府祭と呼ぶ。お祭り騒ぎが好きな陽炎は胸を躍らせていたが、その陽炎は突然提督秘書艦の大淀に呼び出され、鎮守府祭開催準備に携わる駆逐艦の代表に陽炎が任命されたことを告げられる。
準備会議では、大淀から今年の鎮守府祭は呉鎮守府だけでなく他の鎮守府からも艦娘を招聘して行われること、駆逐隊対抗の駆逐艦騎馬戦が数年ぶりに復活することが発表された。張り切って準備に奔走する陽炎だったが、何事にも手を抜かない陽炎の気質をよく知る不知火と霞は、陽炎が過労で倒れることを危惧していた。
そして鎮守府祭初日、節分が開始された。今年の鬼は軽巡洋艦の4人。豆を撒く駆逐艦にとって直属の上司であり教官であるためやりにくさはあるが、日頃の鬱憤を晴らす機会だとして陽炎は皆を鼓舞する。
鬼を務めるうちの一人である鬼怒は、たまたま居合わせた横須賀からの来客である潮に鬼の面を被せて鬼役を押し付けて逃げる作戦に出た。鬼と誤認された潮と巻き添えを食らった曙は、呉の駆逐艦たちに追い回される。他の鬼役であった球磨と阿賀野、そして逃げ回った鬼怒も退治された。残るは神通ただ一人。しかし、鬼の面をつけて悠然と歩く神通を攻撃できる駆逐艦は誰もいなかった。こうして節分は鬼の勝利で終わるのだった。
翌日の一般公開日。艦娘たちが出している屋台を視察するために歩き回っていた陽炎だったが、これまでの無理が祟って遂に過労で倒れてしまう。ベッドで悔し泣きする陽炎。一方その頃、鎮守府対抗の駆逐艦騎馬戦が始まっていた。しかし、曙が霞を挑発した際に陽炎が倒れたことを揶揄したことで空気が一変。騎馬戦から本気の大乱闘に発展してしまった。殴り合いの末に次々とダウンする駆逐艦たち。最後に残った曙と霞もダブルKOとなってしまった。
その夜、たとえ殴り合いになっても終わればノーサイド、として鎮守府祭の最後を飾るパーティーが開催される。しかし、その雰囲気に馴染めない曙は潮と共に横須賀へ帰ろうとしていた。その時、曙は鎮守府近海に敵潜水艦が迫っているのを感知。かつてのトラウマからショック症状を起こし倒れた曙を助けたのは、警備のために海上を巡回していた軽空母の龍驤、航空戦艦の伊勢と日向、重巡洋艦の最上だった。呉へと戻った曙たちを偶然見かけた陽炎は、潮の話から敵が潜水艦を含めた部隊であることを知って龍驤たちの救援に向かおうとする。陽炎を制止する神通だったが、節分の時とは違い陽炎は怯まない。そして、陽炎に続いて呉鎮守府だけでなく他鎮守府の駆逐艦たちも出撃していく。苦戦していた伊勢たちだったが多数の援軍により形勢は逆転、鎮守府近海に現れた敵艦隊は壊滅した。
その翌日。大淀と神通は、昨夜の陽炎の姿を見た横須賀鎮守府の提督が、陽炎を新設駆逐隊のリーダーとして欲しがっているという噂をしていたのだった。

〈第5巻〉
リンガ泊地で戦功を挙げた第十四駆逐隊は、北方海域キス島沖の敵艦隊を排除するため幌筵(ぱらむしる)泊地へと貸し出されることとなった。辺鄙な極寒の泊地で出撃を待つ陽炎たちだったが、現在の出撃艦隊は大型艦主軸のため駆逐艦の出番はなく、陽炎たちは退屈な待機任務を過ごしていた。幌筵泊地の提督秘書艦である軽巡洋艦阿武隈は子供っぽくふわふわした雰囲気の人物で、これまで接してきた軽巡洋艦と違う印象に戸惑う陽炎たち。もう一人の軽巡洋艦である木曾はいかにも強面の人物であり、陽炎はかえって安心するのだった。そして木曾の部下と称する陸軍の潜航輸送艦・まるゆは、奇人が多いとされる潜水艦娘には珍しくおとなしい性格であった。
幌筵泊地には、陽炎とは呉鎮守府時代の顔馴染みであった伊勢と日向も貸し出されていた。伊勢たちが言うには、キス島沖の敵主力艦隊には大型艦を含んだ艦隊では何故か辿り着けないのだと語る。キス島海域突破の鍵は小型艦だと睨んだ幌筵の提督は、駆逐艦を主軸にしての出撃を模索。その中で、陽炎たちは頼りないと思っていた阿武隈が、見た目と違って歴戦の猛者であることを認識するのだった。
陽炎たちが陽動として出撃している間に、まるゆの先導でキス島に到着した輸送艦はキス島に取り残されていた観測員たちを救出、脱出に成功する。しかし、その途中でまるゆが敵襲に遭い行方不明になってしまった。戦いで負傷した曙を泊地に残した第十四駆逐隊は、まるゆを救出するために霧の深いキス島沖への突入を試みる。
キス島近くで潜航装置が故障し漂着していたまるゆを見つけた陽炎たちは彼女を連れ帰ろうとするが、敵の北方泊地から現れた追撃艦隊は容赦なく第十四駆逐隊を襲う。次々と大破して脱落していく第十四駆逐隊の面々。そして、最後に残った陽炎もまるゆを送り出して敵追撃艦隊に立ち向かい消息を絶った。
なんとか幌筵に辿り着いたまるゆは、陽炎たちが自分を助けるための盾となったことを阿武隈たちに告げる。一方、幌筵の提督は各鎮守府に要請、選りすぐりの駆逐艦を幌筵へと集めていた。その中にはかつて曙と激しく殴り合った霞や疎遠になっていた曙の同期である漣と朧、皐月と長月の僚艦だった文月、そして陽炎の親友である不知火と黒潮の姿もあった。
その頃、陽炎と合流した長月、皐月、霰は重傷の潮を守ってキス島近くの島へ上陸、救援を待っていた。しかし、潮の容態が悪化。陽炎たちは危険を承知で脱出を試みる。艤装も大きく損傷し、その上負傷者まで抱えている陽炎たちを格好の獲物と見て包囲を詰めていく深海棲艦部隊。その包囲は救援艦隊によって破られた。曙率いる駆逐艦部隊が突破口を作り、阿武隈と木曾、そして伊勢と日向が敵艦隊を蹴散らしていく。救出作戦成功と思った矢先、撃ち漏らした敵駆逐艦の魚雷が陽炎に直撃した。今度こそ死を覚悟した陽炎であったが、それを救ったのは修理を終えていたまるゆだった。
幌筵で旧交を温める駆逐艦たちだったが、彼女らは駆逐隊再編の噂を口にする。第十四駆逐隊の面々は、弱い自分を変えてくれた今の隊から離れたくないと思っていた。

〈第6巻〉
幌筵泊地から帰還し、久々の休暇を楽しめると思っていた第十四駆逐隊。しかし、第十四駆逐隊には佐世保鎮守府への一時的転属が命じられた。しかも、陽炎はその佐世保鎮守府で秘書艦を務めるように命じられたのだ。
佐世保鎮守府では、前任秘書艦である重巡洋艦・那智の指導の下で陽炎には過酷な秘書艦修業が課せられることとなった。こまごまとした大量の書類仕事、提督との会食。慣れないことばかりで戸惑う陽炎だが、秘書艦という立場においては、これまでとは違う大局的な視野が要求されるのだということをぼんやりとではあるが理解するのだった。
手荒な駆逐艦仲間からの歓迎会を終えた陽炎は、秘書艦という立場は仲間である駆逐艦やその他の艦娘を死地に追いやる覚悟をしなければならない職務であることを改めて思い、その責任の重さに恐怖する。
秘書艦業務に慣れてきた陽炎は、ようやく予定の休暇を取ることができた。佐世保の町で開かれる秋祭りに行くことになった第十四駆逐隊の面々。陽炎は、艦娘への市民感情を気にしていた。開戦初期と違い、戦線が本土から離れ市街地が攻撃されることがなくなった今はわかりやすい艦娘の恩恵が感じられないと思ったからである。しかし、レンタル浴衣を借りに行った店で、店員の女性から夫の命を救ってくれたと艦娘への感謝を告げられたことで、陽炎は自分たちの戦いは無駄ではなかったと実感するのだった。祭りを楽しむ陽炎たちだったが、深海棲艦の爆撃機が佐世保上空に侵入。鎮守府敷地と港湾周辺を爆撃していった。慌てて鎮守府へと帰還する陽炎たち。鎮守府は大きな損害を受けていた。
翌日になって、佐世保のみならず呉や舞鶴、横須賀、大湊と主だった鎮守府が同時に奇襲されたことが判明した。そして、敵の主力部隊の所在地が確認され、最も近い佐世保鎮守府が出撃拠点となることが決定された。全国の鎮守府から艦娘がこの佐世保に集結するというのだ。受け入れ態勢などで秘書艦である陽炎は激務となり、長月や霰の助力を得ながらなんとか職務をこなす陽炎。そして、佐世保の提督が考案した新規の編成である「連合艦隊」による大規模作戦が開始された。
第十四駆逐隊の仲間たちが出撃するのを見ているしかできないことに苦悩する陽炎。敵も味方も消耗が激しい中、これが最後の好機と見た陽炎は、自身も出撃することを提督に直訴する。提督は、もし鎮守府からの通信が途絶えた時には進むか退くかの権限は秘書艦である陽炎にあることを告げるのだった。
各鎮守府から推挙された艦娘による連合艦隊で決戦に臨む陽炎たち。しかし、敵本隊を目前にして霰の損傷が激しいことから、陽炎はあえて退くことを選ぶ。鎮守府に戻った後、仲間を見捨てない決断をしたことで勝機を逸したのではないかと思い悩む陽炎。平常心を失った陽炎に業を煮やした曙は陽炎に喝を入れるが、それでも陽炎の悩みは晴れない。見かねた提督は、新型装備の受領を口実に陽炎を呉鎮守府に送り出した。そこに待っていたのはリンガ泊地で共に戦った叢雲だった。開戦初期から戦い続けてきた歴戦の秘書艦である叢雲のアドバイスで平常心を取り戻した陽炎は、自分には第十四駆逐隊の仲間がいることを改めて確認する。
決意を新たにした陽炎は、撤退しようとする敵主力部隊への追撃作戦を敢行。遂に敵旗艦である空母棲姫を撃退した。祝賀ムードの佐世保鎮守府で、陽炎はレンタル浴衣の店員から送られた艦娘たちへの感謝の手紙を読み、改めて艦娘として戦うことの意味を噛み締める。一方その頃、潮はより強い力を得るために改二改装を受ける決意を固めていた。

〈第7巻〉
佐世保鎮守府での秘書艦業務を終えて横須賀鎮守府へ戻る途中に呉鎮守府へ立ち寄ることを求められた第十四駆逐隊。そこで待っていたのは、夕雲、巻雲、長波、高波、早霜、朝霜、清霜という7人の最新鋭駆逐艦・夕雲型の艦娘だった。陽炎の恩師である神通は、彼女たちの教導を陽炎に命じる。最新鋭とはいえ艦隊機動すらまだ素人同然の夕雲型の7人を横須賀へと連れてきた陽炎は、秘書艦補佐を務めながら彼女たちを教導することになった。陽炎は、夕雲型を第十四駆逐隊の全員で教育することを決める。そして、夕雲型の7人も便宜上第十四駆逐隊へと編入されることが決定した。
秘書艦補佐となった陽炎は愛宕に工廠へ案内され、「特定の型の艦娘艤装は特定の深海棲艦を倒すことで建造可能になる」という情報を聞かされる。艦娘と深海棲艦がある意味で表裏一体であることを知り、複雑な心境になる陽炎。その時、陽炎は工廠区画にこっそりと入り込んでいた夕雲と巻雲を見つける。見学だと言う二人だったが、警戒が厳重なはずの工廠区域に警備の穴を見つけた巻雲に陽炎は意外な才能を見出すのだった。その後、秘書艦補佐としての業務中に夕雲から出された工廠見学要請を見つけた陽炎は、夕雲が工廠見学に固執していることに疑念を抱く。そして、別の書類から潮が改二改装と転属を控えていることを知った陽炎は、第十四駆逐隊の解散が近いことを知るのだった。
荒天の中で基礎訓練を繰り返す夕雲型の駆逐艦たち。その初々しさに、自分たちの着任当時を思い出す第十四駆逐隊の面々。訓練の反省会の中で、陽炎たちは夕雲型の彼女たちが全員同期であること、当初から全員で同型の駆逐艦を目指していたことを知る。
それからしばらく後。陽炎は正式に横須賀鎮守府の秘書艦となり、訓練に励んでいた夕雲型もその技量が目に見えて上達していた。その一方で訓練にあまり参加しなくなった潮のことで曙は不満を漏らしていた。一人でこそこそ何かやっている、と憤る曙の前に現れたのは、改二改装を終えた潮だった。潮と共に現れた前秘書艦の愛宕は、潮が第十四駆逐隊を離れて同じく改二となった那珂の部下となること、そして他の第十四駆逐隊の面々も以前の鎮守府へと戻ることになったことを告げる。陽炎も、もう十分に強くなった自分たちは一箇所にまとまっているわけにいかなくなったのだと言う。だから夕雲型の7人に自分たちが学んだことを全て伝えるのだ、と。長月、皐月、霰は第十四駆逐隊の解散を受け入れる。その日が来る覚悟はできていたのだ。しかし、曙だけは解散を受け入れることを拒みその場を去っていった。
そして、別れの余韻を惜しむ間も与えず、深海棲艦の大規模群体が同時多発的に出現。各鎮守府は総動員で掃討作戦へと当たることとなった。陽炎は秘書艦として奔走し、潮は那珂と共に連日の出撃。そして長月、皐月、霰、曙は夕雲型の教導。そんな中で、隊の解散が決まって以降ちゃんと曙と話をできていないことを気に病む陽炎は、曙を探して軽空母の鳳翔が鎮守府内で営んでいる居酒屋へと辿り着く。そこでは、曙が鳳翔に悩みを打ち明けていた。曙は、ようやくできた大切な仲間と離れる辛さに苦しんでいたのだ。それを聞いた陽炎は、他の第十四駆逐隊の仲間と共に曙の前に現れた。隠していた本心を聞かれてしまった曙は照れ隠しで暴れるが、そんな曙と陽炎たちは全員で記念写真を撮るのだった。
作戦が続く中で、遂に訓練中の夕雲型も出撃の機会を得る。初出撃にしてはまずまずの戦果を挙げた夕雲型であったが、陽炎は夕雲たちが戦闘を終えた後に不審な行動を取っていることを訝しむ。その時、夕雲に反応するかのように手負いの空母棲姫が海域に出現した。先の戦いで陽炎が仕留めたはずの空母棲姫は深手を負いながらも逃げ延びていたのだ。
陽炎たちは戦況が変化したことで退却するが、その最中に夕雲が不審な行動の理由を話し始めた。夕雲型の候補生には、もう一人「風雲」の艦娘になるはずの仲間がいた。しかし、風雲の艤装だけ核となる艦の魂がなかったため完成しなかったのだ。夕雲たちは、風雲の魂を見つけ出すために工廠を調べようとしており、また海域で単独行動を取っていた。そして、あの空母棲姫こそが風雲の魂の鍵となっていることを確信したのだ。
空母棲姫の出現により敵勢力が活性化する中、どうしても自分たちで風雲の魂を手に入れたい夕雲たちは、巻雲の作った偽の命令書を使って無断出撃をしてしまう。その途中で、彼女たちは横須賀鎮守府を目指して航行する空母棲姫の艦隊を発見した。空母棲姫は、手薄になった鎮守府を攻め落とすべく奇襲を仕掛けてきたのだ。夕雲からの通信を受けた陽炎は、迎撃のための連合艦隊を編成しようとするが主力艦の多くは別動隊と戦っていた。艦数が足りず途方に暮れる陽炎の前に現れたのは神通、そして鳳翔だった。最強の軽巡洋艦の一人である神通と艦載機数では劣るが経験豊富なベテランの鳳翔という頼もしい助っ人を迎えた陽炎たちは、夕雲たちを救出し空母棲姫を撃破するべく出撃する。
空母棲姫を横須賀へ近づけまいと奮戦する夕雲たちは、第十四駆逐隊仕込みの戦法で粘り強く戦う。しかし空母棲姫の航空戦力はあまりに強大だった。危機に陥った彼女たちを救ったのは、陽炎率いる艦隊であった。熟練の技を見せる鳳翔と達人の動きで敵艦を蹴散らす神通。そして、帰還して鳳翔が出撃したことを知った他の空母たちは我先にと出撃、救援に駆け付けた。これにより空母棲姫は航空戦力を喪失。孤立した空母棲姫は、第十四駆逐隊の反復攻撃により今度こそ最期を遂げた。そして、空母棲姫が爆沈したその海から現れた光の玉。それこそが風雲の魂であった。
それからしばらく後。艤装が完成した風雲が着任したのを見届けた陽炎は、第十四駆逐隊の解散式に臨む。数多くの武勲を挙げた栄光ある駆逐隊の解散式とあって、大勢の艦娘が見届けに訪れていた。
それぞれ元の鎮守府へと戻っていくかつての第十四駆逐隊の仲間たち。陽炎は横須賀鎮守府に戻る大淀と入れ替わりで呉鎮守府の秘書艦となることが決まっていた。陽炎と曙は秘匿事項であったお互いの人間としての本名を教え合うと、別れの挨拶代わりに固い握手を交わすのだった。

主な登場人物・キャラクター

陽炎(かげろう)

陽炎型駆逐艦1番艦。陽気で活発な性格だがとんでもない負けず嫌い。どんな窮地にあっても常に最善手を考え、勇猛果敢に行動する。仲間のためなら我が身を省みない行動が多く、作中でもたびたび大怪我をしていた。呉鎮守府きっての鬼教官である軽巡洋艦・神通による過酷な訓練を耐え抜いたことから艦娘としての戦闘能力は水準以上で、苦手だった射撃も猛特訓で克服している。
艦娘になる前は貧しく荒んだ生活を送っていたことが示唆されており、そのためかギンバイ(註:食糧泥棒の隠語)や禁制品持ち込みも得意。自称「呉鎮守府では一番だった」。
呉鎮守府から引き抜かれて横須賀鎮守府に転属、第十四駆逐隊の教導担当となる。その後は問題児揃いの第十四駆逐隊をまとめ上げ、多くの戦場で武勲を挙げた。最新型駆逐艦への教導という最後の任務を終えて第十四駆逐隊が解散となった際に、曙と秘匿事項である本名の教え合いをした後に呉鎮守府へと帰っていった。

曙(あけぼの)

綾波型駆逐艦8番艦。周囲に敵意と憎悪を撒き散らす横須賀鎮守府きっての問題児。教導担当であった重巡洋艦・高雄も持て余し、第十四駆逐隊の一員として陽炎に任されることになる。
その性格は、かつて初めての任務であった船団護衛で深海棲艦部隊の襲撃を受け、同期の潮以外の僚艦全てと護衛対象の船団を目前で失ったトラウマの産物だった。それ以来周囲全てを信用できなくなり、自分独りで黙々と鍛錬を続けるようになる。そのため練度は高いが、誰とも組まないため出撃機会もなかった。陽炎との衝突と和解を経て周囲への不信を解消して以降は第十四駆逐隊のサブリーダーとなり、陽炎の相棒として活躍する。本来の性格は非常に情が深く仲間思いであるが、それを他人に知られることを恥ずかしく思っている。

潮(うしお)

綾波型駆逐艦10番艦。曙の同期。内気で引っ込み思案な性格。曙が全てを憎むようになった原因である船団護衛部隊の壊滅に居合わせており、それ以降は見境なく周囲に牙を剥く曙のフォローを務めていた。共に第十四駆逐隊に配属された曙が陽炎の助けでトラウマを克服し周囲との協調性を取り戻して以降は、血気に逸りがちな他のメンバーの抑え役として隊を支える。佐世保鎮守府での戦いを経た後、より強い力で人々を守るために改二改装を受けることを決断する。

皐月(さつき)

睦月型駆逐艦5番艦。佐世保鎮守府から転属してきた。陽気な筋トレマニアで、暇さえあれば腕立て伏せや腹筋に勤しんでいる。しかし、その過剰なトレーニングは自信のなさの裏返しであり、明るい態度もそれを隠すためのものであった。第十四駆逐隊に配属後は陽炎の教導によって旧型でバランスの悪い睦月型の艤装を上手く扱えるようになり、虚勢ではなく本当の意味で明るく振る舞えるようになった。鎮守府では陽炎と相部屋で、共に行動することも多い。

長月(ながつき)

睦月型駆逐艦8番艦。佐世保鎮守府から転属してきた。古風な頑固者で他者への警戒心が強い。無口でおとなしい僚艦の霰と常に行動していることから「姫を守る騎士」と揶揄されていた。しかし、本当は極端に射撃が下手で戦闘力の低い長月の方が射撃の名手である霰に依存していた。第十四駆逐隊に配属後もしばらくは陽炎と距離を置いていたが、陽炎が訓練中の誤射でパニックを起こした長月を咎めなかったことから心を開くようになる。その後、射撃下手を克服した経験がある陽炎による指導を受けて苦手な射撃が目に見えて上達した。
元々はリーダー向きの気質であり、陽炎からも自分に何かあった時の隊長代理は曙か長月だと言われている。

霰(あられ)

朝潮型駆逐艦9番艦。以前は呉鎮守府に所属しており、第十八駆逐隊で陽炎の僚艦だったこともある。陽炎より先に横須賀鎮守府に異動しており、陽炎とは再会という形になったがその時の反応は薄かった。無口で無表情、自己主張も乏しいため周囲に流されがちで、第十四駆逐隊への配属も周りが勝手に決めてしまった。社交性はないが戦闘能力は高く、特に射撃に関しては天才的。第十四駆逐隊に陽炎が着任して以降は次第に周囲とのコミュニケーションも取るようになり、他のメンバーのために尽力するようになっていく。
「情報通」という意外な特技があり、他の鎮守府における艦娘の着任・異動情報に詳しい。

不知火(しらぬい)

陽炎型駆逐艦2番艦。呉鎮守府所属時代の陽炎の僚艦。陽炎とは艦娘となった頃からの付き合いであり、陽炎にとっては最も信頼できる相棒であった。陽炎が横須賀鎮守府に転属して以降も文通で交流しており、呉鎮守府と横須賀鎮守府が合同で作戦行動を行う際にはすぐに陽炎の元へ駆け付けている。
一見冷静沈着に見えるがひとたび怒れば手がつけられないほどの暴れぶりを見せる。第十四駆逐隊のサブリーダーである曙とは折り合いが悪く、何かと陽炎を巡って張り合っている。

愛宕(あたご)

高雄型重巡洋艦2番艦。横須賀鎮守府の提督秘書艦。
駆逐艦の艦娘に「お姉ちゃん」と呼ばせて甘えさせるのが趣味だが、駆逐艦たちからは嫌がられている。しかし、それを利用して駆逐艦に用事を押し付けるという策士の面も持ち合わせている。仕事の段取りが巧く、また些細なことから異常事態を見抜く鋭い観察眼も持っているため秘書艦としては極めて有能。

高雄(たかお)

高雄型重巡洋艦1番艦。陽炎が着任するまで第十四駆逐隊の教導を任されていたが、問題児揃いであったため持て余した挙句に陽炎に教導を丸投げしてしまう。生真面目な完璧主義者だがそれゆえに心の余裕がなく、駆逐艦の指導には不向きであった。陽炎に教導を任せてしまったことを負い目に感じている。

yuku_sakana
yuku_sakana
@yukusa_kana

Related Articles関連記事

艦隊これくしょん -艦これ-(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

艦隊これくしょん -艦これ-(ゲーム)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

角川ゲームス開発のブラウザゲーム、およびメディアミックス作品群。 2013年正式サービス開始。 2015年にはTVアニメ化も行われ、同アニメの続編が2016年に映画化された。 正体不明の敵「深海棲艦」によってシーレーンが破壊された世界で、在りし日の艦艇の魂を宿す「艦娘」が深海棲艦と戦う姿を描く。

Read Article

艦娘ばかりが人気じゃない! 深き海の使者、「深海棲艦」まとめ~姫・鬼編~

艦娘ばかりが人気じゃない! 深き海の使者、「深海棲艦」まとめ~姫・鬼編~

艦隊これくしょん~艦これ~と言えば、やはり実在した船を擬人化した艦娘人気が主。 しかし、敵役の深海棲艦にも魅力あるキャラクターが多くいます。今回はそんな彼女(?)たちをまとめてみたいと思います。 今回は後半の海域やイベントで現れる強力な深海棲艦をまとめます。

Read Article

【艦隊これくしょん】改二に必要なレベル低い順まとめ【艦これ】

【艦隊これくしょん】改二に必要なレベル低い順まとめ【艦これ】

『艦隊これくしょん』といえば、少女と戦艦という組み合わせの異色さが話題になりましたよね。改造を加えることでビジュアルがどんどん変わっていきますが、そのために必要なレベルは各キャラクターで異なっています。この記事では、改二に必要なレベルについて低い順からまとめました。変化していく彼女たちのビジュアルとともにご覧ください!

Read Article

【あつ森】アニメ・漫画キャラの制服を再現したマイデザインがすごい!【マイデザインIDまとめ】

【あつ森】アニメ・漫画キャラの制服を再現したマイデザインがすごい!【マイデザインIDまとめ】

大人気ゲームシリーズ「どうぶつの森」のニンテンドーSwitch専用ソフト『あつまれ どうぶつの森』では、服やタイルを自由にデザインして作る「マイデザイン」という機能があり、人気を博している。特に人気漫画などに出てくる服を再現したマイデザインはたびたびネット上で大きな話題になっている。Switchオンラインで公開されているマイデザインは自由に使うことができるので、大好きなあのキャラになりきることも可能だ。ここでは様々な人気アニメ、漫画の制服を再現したマイデザインを紹介する。

Read Article

【艦隊これくしょん】アニメ版の登場人物・キャラクターまとめ!【艦これ】

【艦隊これくしょん】アニメ版の登場人物・キャラクターまとめ!【艦これ】

少女と戦艦という斬新な組み合わせがヲタ間で話題を呼んだ『艦隊これくしょん』。元々はゲームだったところを2015年にアニメ化され、人気にますます拍車がかかりました。この記事では、そんなアニメ版の「艦これ」に登場するキャラクターについてまとめています。作品鑑賞の参考にどうぞ。

Read Article

【あつ森】NARUTO/テニスの王子様/Fate/鬼滅の刃/七つの大罪/艦これを再現したフェイスペイントがすごい!【マイデザインIDまとめ】

【あつ森】NARUTO/テニスの王子様/Fate/鬼滅の刃/七つの大罪/艦これを再現したフェイスペイントがすごい!【マイデザインIDまとめ】

大人気ゲームシリーズ「どうぶつの森」のニンテンドーSwitch専用ソフト『あつまれ どうぶつの森』では、服やタイルを自由にデザインして作る「マイデザイン」という機能があり、人気を博している。マイデザインは服やタイルだけではなく、顔に直接ペイントすることも可能だ。ここではかわいいメイク風のフェイスペイントや、人気漫画・ゲームのキャラクターを模したフェイスペイントを紹介する。

Read Article

【艦これ】AndroidゲームをスマホやiPadでプレイする方法を紹介!【刀剣乱舞】

【艦これ】AndroidゲームをスマホやiPadでプレイする方法を紹介!【刀剣乱舞】

『艦隊これくしょん -艦これ-』や『刀剣乱舞』など、絶賛稼働中のDMMの人気ゲーム。 ここでは、これらのAndroidのシステムを利用したゲームをスマホやiPadで遊ぶ方法を紹介する。ゲームによっては「規約違反」としてアカウントを停止させられることもありうるので、使うかどうかは自己責任でお願いする。 ※2014年4月23日の艦これアップデート以降、Puffinでのプレイはできなくなりました。

Read Article

【艦これ】艦隊これくしょんレベル上げおすすめ海域&編成まとめ!

【艦これ】艦隊これくしょんレベル上げおすすめ海域&編成まとめ!

艦隊これくしょんのレベリングにおすすめの海域、編成をまとめました! 『艦隊これくしょん -艦これ-』は、角川ゲームス、『「艦これ」運営鎮守府』こと株式会社C2プレパラートが開発し、DMM系列のEXNOAが提供する『DMM GAMES』プラットフォーム上で、ブラウザゲームとして配信している日本の育成シミュレーションゲームおよび、そのメディアミックス作品群。

Read Article

【艦隊これくしょん】アニメ版のモブキャラクター(通行人)を全員紹介!【艦これ】

【艦隊これくしょん】アニメ版のモブキャラクター(通行人)を全員紹介!【艦これ】

2015年にアニメ化された『艦隊これくしょん』。魅力的な女の子揃いの中、モブキャラクター扱いの少女もたくさん登場します。この記事では、そんなちょっと不遇な登場人物たちについてまとめました。主役級の子たちに負けず劣らず可愛いんだし、もっと出番を増やしてほしかったと思っているファンは多いはず…。

Read Article

目次 - Contents