艦隊これくしょん -艦これ-(メディアミックス)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『艦隊これくしょん -艦これ-』とは、女性に擬人化された艦艇(軍艦)を使用したDMM.comの育成シミュレーションゲーム、およびそれを原作としたアニメ・漫画・小説などのメディアミックス作品。
ブラウザゲームと同日に配信開始した「吹雪、がんばります!」を皮切りに、設定を明確にせず、解釈の幅を広く容認することで様々なメディアミックス作品が送り出された。初期は戦記路線が中心であったが、現在は洋酒や音楽など戦い以外を扱う作品も展開されている。

艦隊これくしょん -艦これ- アンソロジーコミック 女子だって艦これが好き!

発行:2015年2月27日
単行本:既刊1巻

ファミ通クリアコミックスレーベルから発売されたアンソロジーコミック。少女漫画誌である「コミックビーズログ」編集部による編集で、掲載作品すべてが女性作家によるものとなっているのが特徴。

艦隊これくしょん -艦これ- ケッコンカッコカリアンソロジー

発行:2015年2月27日~2017年2月27日
単行本:既刊3巻

電撃コミックスNEXTレーベルから発売されたアンソロジーコミック。少女漫画誌である「シルフ」編集部による編集で、テーマはゲーム内における「ケッコンカッコカリ」に統一。掲載作品すべてが女性作家によるものとなっており、巻末にはそれぞれの作家による自分のケッコン艦娘についてのイラストコミックが掲載されている。

世界観・用語

ケッコンカッコカリ

『艦隊これくしょん -艦これ-』のゲーム内用語で、Lv99に達した艦娘に指輪(課金アイテム)を贈ることでレベル上限をLv175まで引き上げる儀式のことである。指輪を贈った際には特殊台詞とムービーが再生される。
ケッコンカッコカリに至った艦娘はバナーに指輪が表示されるようになり、耐久と運が一定量上昇。また、燃費が85%に減少する。また、秘書艦に設定した場合には桜吹雪が舞う特殊演出がされるようになり、母港でのボイスも変化する。

艦隊これくしょん -艦これ- 鶴翼の絆

著者:内田弘樹
原作:「艦これ」運営鎮守府
イラスト:魔太郎
発行:2014年2月20日~2016年3月19日
単行本:全6巻

KADOKAWA富士見書房のライトノベルレーベル「富士見ファンタジア文庫」から発売された「艦これ」のノベライズシリーズ。
著名な仮想戦記作家である内田弘樹を著者に迎えたミリタリー色の強い内容で、作中の艦娘は「旧軍の艦船の転生体」であり、舞台は「現代の地球によく似ているが異なる歴史を辿った世界」となっている。第1巻の第1章までは富士見書房から発行されているライトノベル雑誌「ドラゴンマガジン」に先行掲載された。それ以降も同誌には番外編が数作掲載されたが、単行本には未収録となっている。

あらすじ・ストーリー

〈第1巻〉
エンガノ岬沖海戦で沈んだ旧日本海軍の航空母艦・瑞鶴は、人間の少女の姿に生まれ変わっていた。戸惑う瑞鶴の前に現れたのは、同じく人間の姿に生まれ変わっていた姉・翔鶴だった。自分たちは「艦娘」と呼ばれる存在であること、地球によく似ているが違う歴史を辿ってきたこの世界は、深海棲艦と呼ばれる怪物によって危機に瀕していることを聞かされた瑞鶴は、この世界を救うために深海棲艦と戦うことを決意する。
この世界には、翔鶴だけでなく数多くの旧海軍の艦艇が艦娘として転生していた。その中には、かつて共に戦った第一航空戦隊の赤城と加賀の姿もあった。加賀の挑発に乗って演習で戦うことになった瑞鶴は加賀に惜敗するが、戦いの中で加賀は瑞鶴の資質を認める。商船改装空母である飛鷹も先輩風を吹かせながら演習で執拗に瑞鶴に戦いを挑むが、それもライバル心だけではなくいずれ艦隊の主力になる瑞鶴を鍛えたいという思いからであった。しかし、瑞鶴は飛鷹から言われた「幸運の空母」という言葉が引っ掛かりとなっていた。
赤城と加賀を含む艦隊の主戦力で臨んだ沖ノ島攻略戦。しかし、強力な敵航空母艦と新型の敵戦艦の前に敗退し撤退を強いられる。艦娘たちを指揮する「提督」は、瑞鶴に出撃を命じる。赤城や加賀でさえ敵わなかった相手にまだ訓練途上の自分が勝てるはずがないと尻込みする瑞鶴だったが、翔鶴はこの世界ではかつての大戦の因果が艦娘の能力に反映されており、武勲艦である瑞鶴にはその力が強く働いているのだと語る。それが「幸運の空母」だというのだ。そして、かつての大戦では不運な被弾が多かった翔鶴には負の因果が強く働いている、とも。翔鶴を被害担当にしてまで戦うことを拒む瑞鶴だったが、その瑞鶴を強く叱ったのは翔鶴だった。自らを盾にしてでも瑞鶴のために戦おうと決意している翔鶴の気持ちを蔑ろにしたことを悔やむ瑞鶴だったが、飛鷹の叱咤により自身の運命を自力で掴み、かつての大戦の因果を乗り越えることを決意する。
翔鶴と共に出撃した瑞鶴は、かつての大戦で自分たちが苦しめられた反跳爆撃戦法を使うことで敵戦艦を撃破。沖ノ島の敵泊地を制圧することに成功した。
一方その頃。この世界に艦娘として転生した戦艦・大和は、提督に自分を沈めるよう願っていた。

〈第2巻〉
潜水艦部隊の調査により南方サーモン諸島に深海棲艦が大規模な泊地を建設していることが確認され、鎮守府艦隊は泊地の完成前に早急に敵勢力を撃滅するために出撃することとなった。しかし、サーモン諸島には新型の深海棲艦である飛行場姫が出現していた。名前の通り航空基地としての機能を持ち、さらに驚異的な修復能力ですぐに被害を回復させてしまう飛行場姫を相手に消耗戦を強いられる。そして飛行場姫には護衛として南方戦棲姫が付いていた。これにより飛行場姫に挑んだ金剛型戦艦4姉妹の金剛、比叡、榛名、霧島は敗退を余儀なくされる。この戦いで金剛、榛名は重傷を負い、比叡は意識不明に陥った。
高い修復能力に加えて強力な護衛を持つ飛行場姫を撃破するには、その修復能力を上回る大火力が必要だった。しかし、この鎮守府でそれを成し得るだけの火力を持った艦娘は、頑なに出撃を拒否している大和だけであった。瑞鶴と翔鶴は大和を説得しようとするが、大和は自身の最期の戦いとなった坊ノ岬沖海戦がいかに無意味な戦いであったかを語り、人間の指揮下に入ることを拒絶する。
傷の癒えた金剛は、自分が改二改装をすることで飛行場姫に対抗する戦力になろうとする。しかし、提督はやはり大和の力が必要であると考えていた。そして、さらに厄介なことに新たな深海棲艦である泊地棲姫が出現。海上輸送路の封殺を図ってきた。
先の敗北で自信を失い戦えなくなった比叡と頑なに出撃を拒む大和。榛名は、この二人を演習で戦わせることで二人の意識が変わるのではないかと思っていた。比叡はかつての大戦で大和の兵装試験艦を務めたこともあり、通じ合うものがあると考えたのだ。大和との戦いで比叡は闘志を取り戻す。しかし、戦艦の誇りを失っていないことを見せながらも大和はまだ出撃することを拒む。その大和の前に現れたのは、かつて坊ノ岬沖海戦で大和を護衛した矢矧、霞、初霜、雪風だった。あの無意味な戦いを経験してもなお人々を守りたいと訴える4人の呼びかけに応えた大和は、遂に出撃を決意する。
泊地棲姫は霧島に倒されたが、改二となった金剛でも飛行場姫にとどめを刺すことはできなかった。しかし、大和の到着が戦況を大きく動かした。南方棲戦姫と飛行場姫は、大和の46cm砲の一斉射撃によって撃破された。これで戦いは終わったかと思われたが、その時大和を襲ったのは敵泊地の真の首魁である巨大な深海棲艦・戦艦棲姫だった。激しい肉弾戦で満身創痍になった大和は戦艦棲姫を掴み、自分ごと砲撃するよう榛名と比叡に懇願する。葛藤の末に大和の願いを聞き入れた榛名と比叡は至近距離からの砲撃で戦艦棲姫を粉砕するが、大和もその巻き添えで致命傷を受けていた。沈みゆく大和だったが、その大和へ向けて民間船舶から大量の電文が送られる。それは、海の安全を守る艦娘たちへの感謝の言葉であった。この世界での深海棲艦との戦いは、人々を守る曇りのない正しいものであることを知った大和は、喜びの涙と共に生きる気力を取り戻すのだった。

〈第3巻〉
海上封鎖を受け飢餓に苦しむ海域の住民たちを救助するため、海上交通の要衝であるAI諸島とMI島の奪回を目指す瑞鶴たち。そこは、艦娘たちが知るアリューシャン諸島とミッドウェー島に酷似した島であった。前世におけるミッドウェー海戦は、日本海軍が敗北に至る分岐点とも呼べる戦いであった。艦娘たちはそのことに前世の因果を感じるのであった。提督は、この両面作戦が愚策であるなら行わなくても良いと艦娘に提案する。しかし、かつての大戦における同作戦のように見通しの甘い無意味な作戦ではなく、人々を救う大義のある作戦だと判断した艦娘たちはこの両面作戦に臨むことを決意する。同時に、この戦いはミッドウェー海戦で沈んだ記憶を持つ赤城、加賀、飛龍、蒼龍にとって前世の因果を克服する機会でもあった。作戦前に第二航空戦隊の飛龍と蒼龍には改二改装が提案される。意気込んで改装を受ける飛龍だが、一方の蒼龍は改二改装を拒否する。
こうして開始されたMI島奪回作戦。かつての敗北の要因を割り出した上で周到に立てられたはずの作戦であったが、深海棲艦の旗艦である中間棲姫はそれを見越した上で更なる罠をこの海域に仕掛けていた。防衛網を突破してMI島に陣取る中間棲姫の本隊まで到達した赤城たち機動部隊だったが、深海棲艦は通信妨害を仕掛けた上で空母棲姫率いる伏兵による包囲を展開、苛烈な航空攻撃を仕掛けてきたのだ。これにより主力である赤城と加賀、翔鶴が大破し戦闘能力を喪失。更に追い討ちをかけてくる敵航空部隊から赤城たちを守るため盾となった護衛の駆逐艦である秋雲、巻雲も大きく損傷した。残った飛龍と蒼龍、瑞鶴の奮戦で赤城たちは辛うじて戦場から退避することに成功したが、飛龍たちとその護衛である第十七駆逐隊、そして前衛部隊であった金剛型4姉妹と利根型姉妹は戦場に孤立してしまった。そんな中で、血気に逸る飛龍と慎重策に徹する蒼龍は意見の食い違いから険悪になる。しかし、瑞鶴は蒼龍の姿に自分の盾となった翔鶴の姿を重ね、飛龍に蒼龍の真意を見極めるよう諭すのだった。
一方、敵の誘導により誤った情報を掴まされたことで赤城たちを危険に晒してしまったことを悔いる潜水艦部隊の伊168たちは、一矢報いるべく行動を開始する。

〈第4巻〉
AL諸島で戦っている飛鷹たちは、MI島攻略を担当する機動部隊が苦境に陥っているという情報を聞く。しかし、瑞鶴たちなら大丈夫だと信じる飛鷹たちは、AL諸島を占拠する深海棲艦・北方棲姫を撃破すべく決戦に臨むのだった。
孤立した飛龍たち残存機動部隊にとどめを刺すべく迫る深海棲艦艦隊。その航空攻撃を迎撃すべく、第十七駆逐隊の浜風はレーダーピケット戦術を提案。回避に優れた対空レーダー装備の駆逐艦が先行、敵航空部隊の動きを防空部隊に伝達するのだ。その代わり、先行する駆逐艦には危険が伴う。配備が間に合わなかった磯風に代わり第十七駆逐隊に加わっていた舞風はその危険な任務を引き受ける。
舞風たちの防空戦術にかく乱された敵航空隊は、囮として突出していた蒼龍を狙って攻撃に転じようとするが、そこを死角から襲いかかった飛龍と瑞鶴の率いる航空迎撃部隊が撃ち落としていく。これはかつての大戦で瑞鶴が経験したマリアナ沖海戦での敗北から学んだ戦法だった。敵の航空戦力を大幅に削り落とし、ようやく勝機を掴んだかに見えた飛龍たちは喜ぶが、深海棲艦は戦艦を主軸に据えた追撃部隊を送り込んできた。砲撃により再び危機に陥る飛龍たち。
そして、深海棲艦本隊にとってはAL諸島もMI島も本当の目的のための布石にすぎなかった。台風による荒天に乗じて、かつて大和と死闘を演じた戦艦棲姫と戦艦でありながら航空機と魚雷搭載潜航艇を備えた戦艦レ級が本土近海に侵入、呉鎮守府へと迫っていたのだ。艦隊の主力として待機していた長門型戦艦姉妹の長門と陸奥、そして訓練途上にあった大和型戦艦2番艦の武蔵は鎮守府防衛のため敵艦隊を迎撃する。
金剛型姉妹の救援でなんとか敵追撃部隊を撃退した飛龍たちだったが損耗は激しく、瑞鶴と蒼龍は戦闘不能に陥っていた。さらに飛龍の改二艤装には不具合が起きていた。蒼龍が改装を拒んだのは、この事態を怖れてのことであった。しかし、ここで飛龍たちが退いたらMI島奪回は不可能となる。瑞鶴のアドバイスで改二艤装の不具合の原因は自身の心にあると気づいた飛龍はミッドウェー海戦での後悔と向き合い、艤装の力を取り戻す。そして残存航空戦力をまとめた飛龍は、蒼龍や瑞鶴たちの願いを一身に集めて最後の戦いに向かう。
強力な敵戦艦に苦戦を強いられていた長門たちであったが、決戦に臨む飛龍が味方全艦隊に送った「飛龍は健在なり」の電文に勇気づけられて戦艦棲姫と戦艦レ級を撃破する。飛龍を迎え撃たんとする空母棲姫の艦隊は、密かに忍び寄っていた伊168たち潜水艦部隊の奇襲によって多くの護衛部隊を失っていた。そして空母棲姫自身も潜水艦部隊と飛龍の航空攻撃による挟撃を受けて爆沈した。鎮守府への奇襲も失敗し、空母棲姫を失ったことで万策尽きた中間棲姫もまた金剛や利根たちの砲撃によって爆発炎上し、艦娘たちはAL諸島とMI島の奪回に成功したのだった。
その後、激しい戦いの後始末として膨大な書類の山に埋もれる提督。赤城と加賀は、自分たちが乗り越えなければならなかったミッドウェーの因縁を飛龍と蒼龍に委ねてしまった不甲斐なさを詫びる。そして、舞風の前にはかつての大戦での僚艦であり大切な姉妹である駆逐艦・野分が現れたのだった。

〈第5巻〉
MI島での戦いから半年、深海棲艦との戦いは更に激しさを増していた。提督は艦隊の戦力を増強すべく新任の航空母艦4人をトラック環礁の泊地で訓練する。瑞鶴たちはその教官としてトラック泊地へと派遣された。そこに待っていたのは提督代理としてトラック泊地を預かる練習巡洋艦・香取と大鳳型航空母艦・大鳳、そして雲龍型航空母艦の三姉妹である雲龍、天城、葛城であった。ライバル心剥き出しで張り合う大鳳と雲龍。そして葛城は瑞鶴を「一航戦の先輩」と呼んで心酔していた。前世ではミッドウェー海戦の後に建造された葛城は、赤城と加賀が一航戦だったことを知らなかったのだ。この世界では未だ赤城と加賀が健在のため、そう呼ばれることに居心地の悪さを覚える瑞鶴。
一方、川内型軽巡洋艦3番艦の那珂も慰問コンサートのためにトラック泊地を訪れていた。那珂は、半年前に船団護衛を務めていた際に、敵襲を防ぎきれず輸送船に乗っていた避難民の子供たちを死なせてしまった心の傷から艦娘としての能力を発揮できなくなっていたが、趣味でやっていたアイドルの真似に目を付けた提督によって艦隊の広報に抜擢され「艦隊のアイドル」として芸能活動を行うことで艦娘のイメージアップを担っていたのだ。しかし、那珂の姉である川内と神通は那珂がトラック泊地を訪れることを良く思っていなかった。いつ敵襲があるかもしれないトラック泊地では艦娘としての能力を発揮できない那珂は防衛戦力にならないこと、そして何より、前世において軽巡洋艦・那珂が沈んだのはこのトラック環礁だったからだ。
トラック泊地では艦娘たちによる訓練が行われていた。瑞鶴は天城と葛城の教導を担当していたが、前世において建造された頃には既に艦載機もパイロットもなく実戦経験がなかった天城と葛城は艦載機の扱いも艦隊機動もまるで身についていなかった。一方、翔鶴が教導を担当している大鳳と雲龍は訓練こそうまくいっていたが、不仲がエスカレートして翔鶴を悩ませていた。
そんなある日の夜、宿舎の外に出た瑞鶴は同じように外に出ていた葛城と出会う。前世では外洋に出ることなく終戦を迎え、外洋に出たのは復員船になってからだった葛城は、航空母艦として戦うことに憧れと同時に怖れを抱いていた。そこに現れた那珂は、提督が艦娘たちをトラック泊地に派遣したのは訓練だけでなくもう一つの狙いがあると語る。
提督の狙い、それは艦娘たちにバカンスを楽しんでもらうことであった。訓練の合間の短い時間でも、普通の女の子らしい時間を作りたいというのが提督の願いだった。水着に着替えて海水浴を楽しむ瑞鶴たち。那珂はグラビアの撮影をしていた。そこに現れた輸送船の船員は、那珂の姿を見て「那珂を恨んでいない」と神通に伝える。その船員は、半年前の件の当事者だった。しかし神通はそれを那珂に伝えることを拒む。たとえ当事者が許しても、那珂は自分自身を許せないことを知っているからだった。
その頃、偵察を行っていた潜水艦部隊はトラック泊地へ接近する敵艦隊を確認していた。複数の戦艦棲姫や空母棲姫を含む大規模艦隊であり、その旗艦は戦艦棲姫を上回る大型戦艦・戦艦水鬼であった。この情報を伝達されたトラック泊地の民間船舶は急いで避難しようとするが、それが敵の狙いでもあった。伏兵として展開されていた敵潜水艦が輸送船を座礁させ、トラック環礁の出航水路を封鎖したのだ。トラック泊地で訓練中の艦娘たちは、逃げ損ねた民間人を守りながら鎮守府の本隊が到着するまで防衛しなければならないという厳しい戦いを強いられることとなった。訓練途上の大鳳と雲龍型姉妹も実戦投入が決定される中で、那珂は戦うために水上に出ようとするが、艦娘としての能力を発揮できない那珂は海に浮くことすらできなかった。
瑞鶴は訓練不足の後輩空母たちを実戦に送り込むことに不安を抱いていたが、大和のアドバイスを受けると泊地の工廠で改装を行う。かつての大戦末期の迷彩塗装を思わせる姿へと変わった瑞鶴は、初めての実戦となる葛城たちを率いて戦い抜く決意を見せるのだった。
朝から日没まで続いた執拗な敵航空隊の空襲をなんとか凌ぎきった瑞鶴たち。その激しい戦いの中で、雲龍と大鳳は不仲を解消していた。航空攻撃が失敗に終わったことを知った深海棲艦部隊は、戦艦を主体とした艦隊に切り替えて夜陰に紛れて攻撃を仕掛けてきた。
艦娘としての力を発揮できない中でも、香取の指導の下で密かに訓練を続けていた那珂。そして、かつて那珂の活躍で守られてきた民間輸送船の船員や避難民たちは、那珂の再起を願って灯火をペンライトのように振って応援する。彼らの後押しを受け、改二艤装を装着した那珂は艦娘としての力を取り戻した。かつての大戦での僚艦であった野分と舞風を従えた那珂は、敵旗艦である戦艦水鬼へと立ち向かうのだった。艦娘として半年のブランクがある那珂には戦艦水鬼を倒すだけの力はない。しかし、那珂の目的はあくまで時間稼ぎであった。那珂に気を取られた隙に川内と神通が率いる水雷戦隊は戦艦水鬼へ肉薄。魚雷の一斉攻撃を受けた戦艦水鬼は爆沈、壮絶な最期を遂げた。
戦艦水鬼の背後に控えていた空母水鬼率いる艦隊は鎮守府より派遣された赤城率いる主力艦隊によって撃破され、トラック泊地は防衛された。一方その頃、偵察のため西方海域へ向かっていた潜水艦部隊は一人の潜水艦の艦娘を保護する。彼女の名は伊8、西方諸国へと派遣されていた艦娘だった。

〈第6巻〉
鎮守府に連れ帰られた伊8は、西方諸国の現状を語る。艦娘たちの知るヨーロッパにあたる地域である西方諸国は、深海棲艦の海上封鎖により危機に瀕していた。西方諸国にも艦娘は大勢配備されていたのだが、各国の指揮系統が統一されないうちに深海棲艦の一大攻勢が始まり、出遅れた今は輸送船の航路を閉ざされて燃料不足となり出撃がままならない状況であった。少ない燃料でも長距離航海が可能な潜水艦である伊8は、その窮状を伝えるために戻ってきたのだ。
見返りとして得られる西方諸国からの技術供与も重要であるが、何より危機にある人々を見捨てるわけにはいかないとする提督は、西方諸国への航路を安定させるための打通作戦を行うことを決定した。
その頃、瑞鶴と翔鶴は改二改装の打診を受けていた。伊8が持ってきた西方諸国からの技術によって完成した新型カタパルトによって改装が可能になったのだ。そして、搭載数の多い通常の改二か損害に強い装甲空母の改二甲のどちらかを選択できるという。
改二改装で瑞鶴の出撃が遅れることになり、瑞鶴を欠いた状態で出撃しなければならないことに不安を見せる葛城。加賀は葛城を厳しく叱咤するが、その真意は自分たちを独り立ちさせることにあると気づいた葛城は加賀に感謝するのだった。
西方への航路の重要拠点となるリランカ島の奪回のため出撃した葛城たちは島を占拠する深海棲艦の陸上基地に打撃を与えるが、救援として空母棲姫に守られた輸送艦隊が接近していた。輸送艦隊がリランカ島へ到着すればせっかく破壊した陸上基地が修復されてしまう。連戦で消耗しながらも輸送艦隊迎撃に向かおうとする葛城たちだったが、先行して敵輸送艦隊を攻撃に向かった友軍がいることを確認する。それは、改二改装を終えて装甲空母となった瑞鶴と翔鶴であった。瑞鶴たちの活躍で敵輸送艦隊は壊滅、リランカ島の深海棲艦部隊は立て直しの機会を失い全滅に至った。奪回されたリランカ島は上陸部隊によって速やかに港湾基地建設が行われ、西方打通作戦の拠点となるのだった。
輸送艦隊との戦いで負傷し、リランカ島の施設で入渠中の瑞鶴だったが、見舞いに訪れた翔鶴は居合わせた葛城に瑞鶴と航空戦隊を組むつもりがあるかを問う。その言葉から、瑞鶴は翔鶴が自分とのコンビを解消するつもりなのではないかと疑う。
リランカ島を奪取された深海棲艦は、南方海域のFS海域(地球におけるフィジー諸島とサモア諸島)へ新型艦を含めた勢力を送り込んできた。FS海域を放棄すればせっかく確保した南方航路を再び失うことになるが、西方打通作戦を中止すれば多くの人命が失われる。提督は苦渋の決断として南方と西方の両面作戦を行うことを選択した。二正面作戦は愚策であると知りながらあえてそれを決断せざるを得なかった提督の判断を艦娘たちは受け入れる。そして、艦娘たちがそれぞれの海域へ割り振られる中で、西方諸国上層部の要望として西方へ向かうよう提督に命じられる瑞鶴。そして、翔鶴は自らFS海域へ向かうことを選ぶ。翔鶴からのコンビ解消宣言に驚く瑞鶴だったが、翔鶴は自分がこれまで瑞鶴に依存していたこと、そしてより強くなるために瑞鶴と離れる決意を固めたことを告げる。
一方、伊8を西方へ送るため2隊に分割される予定だった潜水艦部隊だが、伊8は自分もFS海域へ向かうことを懇願する。それは自分を助けてくれた伊168たちへの恩返しの気持ちからのことだった。
改めて翔鶴の意思を確認する瑞鶴に、翔鶴は瑞鶴に並び立てる強い空母になりたいという思いを語る。そして、瑞鶴が西方諸国を救い、真の「幸運の空母」となることを願っている、と。翔鶴の決意の固さを確認した瑞鶴は、葛城をパートナーとして新たな戦いに臨む。一方の翔鶴も、瑞鶴と離れて大鳳たちを率いるリーダーとなったことで勇気ある決断を下す覚悟を得ていた。
西方作戦は改二改装を終えた比叡と榛名の活躍もあって順調に進んでいたが、FS海域での作戦は敵の新型艦・防空棲姫によって航空部隊に大きな損害を出し一時撤退を余儀なくされた。戦艦以上の装甲と駆逐艦に匹敵する機動力、そして高い防空管制能力を持つ強敵を前に意気消沈する翔鶴たちだったが、大和は敵艦隊が本来の拠点から離れたところまで移動してきたところに着目。輸送部隊を根絶して勢力を削ぐ作戦を提案する。赤城や加賀、そして伊8を加えた潜水艦部隊の活躍で補給線を断たれた防空棲姫たちの艦隊は疲弊し始めていた。
瑞鶴たちは少ない航空戦力で立ち塞がる戦艦水鬼を撃破するため、新型航空機を受領して戦いに臨む。後輩の葛城とコンビを組む瑞鶴は、これまで自分を支え導いてきた翔鶴の心境を理解するのだった。
翔鶴は、深海棲艦も自分たち同様に人格があり思考する存在であるという仮説に基づき、防空棲姫の防空管制能力を飽和させる作戦に出た。航空部隊の反復攻撃により徐々に冷静な判断力を失ってきた防空棲姫の様子を確認した翔鶴たちは、本命の航空攻撃隊を向かわせる。自分の持つ不運の因果を乗り越えるために試行錯誤を重ねてきた翔鶴の戦術により防空棲姫の護衛艦隊は突破され、残された防空棲姫も至近距離から大和と武蔵の砲撃を浴びて遂に撃破された。前世の不運を克服した翔鶴もまた「幸運の空母」となったのだ。
航路に立ち塞がっていた戦艦水鬼の艦隊を撃破した瑞鶴たちは、輸送船団を率いて西方諸国へと向かう。今は離れていても翔鶴とは心が繋がっている。そう信じて瑞鶴は旅立つのだった。

主な登場人物・キャラクター

瑞鶴(ずいかく)

本作品の主人公で翔鶴型航空母艦2番艦。第五航空戦隊こと五航戦の一人。勝気で快活な性格。当初は前世の武勲によって「幸運の空母」として扱われることに拒否感を持っていたが、艦娘たちが抱える前世の因果を乗り越えていくために自ら幸運の空母として戦うことを決意。やがて艦隊の主戦力へと成長していく。他の艦娘たちも瑞鶴に感化され、前世の因果を乗り越えることを目指すようになる。

翔鶴(しょうかく)

翔鶴型航空母艦1番艦。瑞鶴と共に五航戦を務める。穏やかで物静かだが芯の強い性格。瑞鶴のことを大切に思っており、戦場においては瑞鶴を守る盾として共に戦う。しかし、いつしか自分が瑞鶴に依存していたことに気づき、最終巻において自身の因果を乗り越えるため瑞鶴と離れて戦うことを決意。瑞鶴を西方打通作戦へと送り出す。
提督のことを憎からず思っている節があるが、瑞鶴に何かと提督との仲を邪魔されている。

赤城(あかぎ)

航空母艦。第一航空戦隊こと一航戦の一人。鎮守府における航空母艦のトップであり、早くから艦隊の主力として活躍してきた。温厚で謙虚な人柄で、食いしん坊という親しみやすい一面もあるため、駆逐艦の艦娘たちからは頼れるお姉さんとして慕われている。瑞鶴と翔鶴には、「自分たちでは成し得なかったことをやってくれる存在」として期待をかけている。

加賀(かが)

航空母艦。一航戦のもう一人。クールでプライドが高く、そのプライドに恥じないだけの腕前の持ち主。当初は何かと瑞鶴に当たりがキツかったが、それは期待の裏返しであった。自分たちはかつての大戦ではミッドウェー海戦で沈んでしまい大戦末期を経験していないことを気に病んでおり、瑞鶴なら前世の因果を乗り越えることができると思っている。

飛鷹(ひよう)

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@yukusa_kana

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艦隊これくしょんのレベリングにおすすめの海域、編成をまとめました! 『艦隊これくしょん -艦これ-』は、角川ゲームス、『「艦これ」運営鎮守府』こと株式会社C2プレパラートが開発し、DMM系列のEXNOAが提供する『DMM GAMES』プラットフォーム上で、ブラウザゲームとして配信している日本の育成シミュレーションゲームおよび、そのメディアミックス作品群。

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【艦隊これくしょん】アニメ版のモブキャラクター(通行人)を全員紹介!【艦これ】

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2015年にアニメ化された『艦隊これくしょん』。魅力的な女の子揃いの中、モブキャラクター扱いの少女もたくさん登場します。この記事では、そんなちょっと不遇な登場人物たちについてまとめました。主役級の子たちに負けず劣らず可愛いんだし、もっと出番を増やしてほしかったと思っているファンは多いはず…。

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