東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

「東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)」とは、日本ファルコムより発売されたPlayStation Vita専用のアクションRPGである。主人公の高校生・時坂洸が、ヒロインの同級生・柊明日香と出会い、謎の世界「異界」に挑んでいく物語を描いている。日本ファルコムを代表とする人気ファンタジーRPG「イース」「空の軌跡」とは一風変わって、現代の日本を舞台にしたストーリーと世界観が大きな特徴となっており、ファルコムの新たな時代展開を象徴する一作として注目を集めている。

大激闘の末、洸たちと祐騎がアストラルウィドウを打ち倒したことにより、葵の精神も無事に戻り、祐騎の部屋で呑気そうにあくびをした。そしてこの後の弟からの電話で、元通りの弟バカっぷりを発揮する。

現実世界へ洸たちと共に戻ってきた葵を見て、祐騎はすぐさますがりついて呼び起そうとする。が、苦しげにゆっくりと目を見開いた葵のその瞳には光がなく、暗くて虚ろなもので、生気が感じられなかった。思わぬ事態にさらに戸惑う祐騎、そして洸と空。この様子を見ていた明日香は「これはまだ終わっていない……『元凶』は他にいるわ」と険しい表情で言った。明日香によると、今の葵は精神を抜き取られた状態で、今は命に別条はないがこのままでは危険だという。また、先ほどのエルダーグリードはこの神様アプリの異変の元凶ではなく、先ほど現れて、葵から精神を抜き取った謎の光を放ったその何かが本当の元凶で、それは別の異界にいるとも明日香は言った。途方に暮れかける洸と空。そして祐騎はひどく狼狽えて「は、はは……さすがに頭が追いつかないって。僕が作ったアプリが、姉さんをこんなことにしたって……!? そんなこと、本気で言ってんのかよっ!?」と、叫ぶが、明日香に「アプリのせいじゃないわ。あくまで元凶は『異界』の化け物……その『きっかけ』になったのは、残念ながら確かみたいだけど」と、冷たく一蹴され、深く項垂れる。
それからすぐさま元凶を追いかけようとした洸たちだが、その行方が途絶えてしまった。そして祐騎も、気を取り直して自室のパソコンを使って神様アプリの本体を調べようとしたが、逆に元凶からウイルスを流し込まれてパソコンをクラッシュさせられてしまう。こうして八方手詰まりとなりかけるが、洸がここで、杜宮学園にいる永遠に協力を求めてはどうかと提案する。そこで洸たちと祐騎は杜宮学園に向かい、永遠に頼んで端末室に運び込まれた最新型のパソコンを使い、行方をくらました神様アプリの本体の追跡にかかるが、複数のサーバーを使った目くらましを何度もかけられて思うように追うことができない。そんな時、永遠が「ちょっと失礼するね」という一言と共に、パソコンの操作を始めた。そして、あっという間に神様アプリの本体が、杜宮市内の複合商業施設「七星モール」のサーバーにあることを突き止めてみせた永遠の手際の良さに、洸たちと祐騎は息を呑んだ。
そして、七星モールのサーバールームに辿り着いた洸たちは、元凶が待ち受けている異界への「門」を発見するが、祐騎が突然「……だったら、僕はここまでだな。引き籠もりの不登校児なんて、さすがに足手まといだろうしね」と、浮かない表情で匙を投げてきた。洸たちが振り返ると、祐騎は自分の胸中をこう語った。自分は小さい頃から一人で何でもできることから「天才」と持て囃されるあまり、自分以外の人間は相手にする価値も興味もないと見下していた。しかし、葵が危険な目にあった時、狼狽えて、洸たちが力を尽くしてくれるのを黙って見ていることしかできなかった。その上で、バカにしてサボっていた学園には、永遠というもう一人の天才がいて、彼女に助けてもらったことで自分がどれだけ未熟だったか、世界というものを知らなかったのかを徹底的に思い知らされた、と祐騎は唇を痛いほど噛みしめた。そんな自分の恥を痛いほど忍んで、祐騎は洸たちにこう縋るように言った。「ついていけないのは、はっきり言って悔しいけど……どうか、姉さんのことを、よろしく頼むっ……!」その瞬間、祐騎の体が金色の光に包まれた。洸たちが目を見張ったさらに次の瞬間、祐騎が自然と何もない空間に右手をかざし、「ブート……『カルバリーメイス』!!」と、叫ぶと、彼の右手の中にビットのついた槌型のソウルデヴァイスが現れた。自分の未熟さを受け止め、自分を心配してくれたただ一人の味方である姉を取り戻したいという祐騎の思いが、祐騎自身を適格者として覚醒させたのだ。こうして、適格者となった祐騎を仲間に入れて、洸たちは異界へ乗り込み、その最奥で待ち受けていた神様アプリの異変の元凶、巨大な蜘蛛の姿をしたエルダーグリード「アストラルウィドウ」を大激闘の末に撃破する。同時にアストラルウィドウに捕らえられていた葵の精神も元に戻り、葵も無事に目を覚ましたのだった。
その後、神様アプリは自動ハッキングツールを利用した祐騎によってすべての利用者のサイフォンから完全に消去され、不吉な占いによる被害の可能性も消えた。そして祐騎も、「アンタらみたいなのがいるなら学園も面白そうだと思ってね……それと今後、《異界》関係で何かあったら手伝ってあげるよ」と、減らず口を叩きながらも学校への登校を始めると共に、洸たちに協力を申し出てきたのだった。

夜の駅前広場で、買い物の帰りに不良たちに絡まれる純。ちなみにこの不良たちは第1話にも登場していた2人組だった。

そんな純を助けに現れたのが、学園最強の不良として恐れられている男・志緒だった。

さらに昨日に続いて再び現れた不良たちは、このように目を赤く輝かせ、禍々しいオーラを放ち始め、信じられない力を洸に振るってくる。

そしてダンスクラブで洸共々不良たちに囲まれた空だが、さすがは玖州の古流空手の師範の一人娘だけあり、思った以上の気概を見せつけて対峙する。

ある夜、駅前広場で純がパーカーを着た不良たちに囲まれ、カツアゲされそうになった。しかしそこへ、ひとりの精悍な大柄の青年が現れ、それを止めに入る。「……見ないうちに変わったな、お前ら。そんな下らないマネ……どこで覚えやがった?」と、静かだが剣幕のきいた声でそう誰何してくる青年。不良たちはその青年に覚えがあるらしく、「あ、アンタは……!?」と、たじろいだ。
その青年のおかげで事なきを得た純は、翌日、学校で洸たちにこのことを話した。青年のことを聞いた遼太は、「高幡、志緒かっ!?」と、大仰に驚いた。遼太によるとその精悍な大柄の青年は「高幡志緒」という名前らしく、学園最強の不良としても有名で、下級生はもちろん、同級生でも近づくことを恐れる者が多いということだった。また、純は自分を襲った不良たちについては、彼らが着ていたパーカーにアルファベットで書かれたエンブレムから、「BLAZE」という杜宮でも有名だった不良チームではないかという可能性が浮上した。遼太によると、BLAZEはかつて、チンピラや親父狩りなど悪事を働く連中を成敗し、金品など彼らに奪われたものを取り返すなど、「弱きを助け強きを挫く」という言葉がよく似合うほどの男気のあるチームで、去年の初めくらいに突然その存在自体が行方知れずになり、解散したか何かなど様々な噂が流れたが、その真相はわからずじまいだった。しかし最近、その行方知れずだったBLAZEが復活したという噂が流れ、カツアゲや暴力など昔とは違って悪事を働いている話しか聞いた試しがないという。
その日の夜、アルバイトを終えて帰ろうとした洸は、BLAZEメンバーと思しきパーカーを着た不良に追いかけられている帽子の少女を発見。見て見ぬ振りができずにその場に割って入るが、次の瞬間、不良たちは目を赤く輝かせ、炎を思わせる赤く凶々しいオーラを体から放ち始め、洸に襲いかかろうとした。するとそこへ、精悍な大柄の青年・志緒が現れ、間に割って入る。「その『力』……一体どうやって手に入れた?」鋭い眼光を湛えて睨みつけてくる志緒だが、BLAZEメンバーたちは興が削がれたと言いたげにオーラを消し、目の色を戻し、その場から歩き去っていった。そして洸は、とりあえず志緒に礼を言おうとしたが「礼なんざいい……とっとと帰れ。もう、こんな夜中に出歩くなよ」と、志緒は素っ気無く言い残してどこかへ去ってしまった。翌日、洸は明日香、空、祐騎と学校で落ち合い、最近騒ぎを起こしているというBLAZEに何かあるという結論に至った。そこで放課後に、洸と空、明日香と祐騎の2ペアにそれぞれ手分けをして情報収集をすることになった。そして、地道に情報収集を続けた結果、洸と空は最近BLAZEメンバーが溜まり場に使っている場所として、蓬莱町に「ジェミニ」というダンスクラブがあるということに辿り着けた。そこでBLAZEメンバーたちに気取られないようにダンスクラブでさらに情報収集をするが、運悪くBLAZEメンバーに見つかってしまい、一触即発の危機に陥りかける。

ついに姿を現わすBLAZEの現リーダー・戌井彰宏。毒々しい赤に染めたトサカ頭の髪型はもちろん、目つきや表情からして異様な雰囲気を強く醸し出している。

さらにメンバーと同じく目を赤くしてオーラを放つだけでなく、異界の門までもを呼び出して志緒を引きずりこませるという離れ業を見せつけた。

彰宏によって引きずり込まれた先の異界の最奥で、志緒はエルダーグリード「ブレードレックス」に素手で果敢に挑みかかっていった。

その後、洸たちから経緯を聞き、明日香から手を引くよう言われるが、志緒はどこか遠い目をして「アイツに顔向けできない」と言い残し、去ってしまった。

するとそこへ、三たび志緒が現れて間に割って入り、BLAZEメンバーたちに睨みを利かせて洸と空を外へ連れ出した。洸は志緒もBLAZEについて何か調べていると踏み、彼にも尋ねようとしたが、「お前らには関係ねえ……とにかく、これ以上首を突っ込むのはやめておけ」と、志緒は突き放すように言う。しかしその時、「アンタもだよ……志緒さん」と、あざ笑う獰猛な男の声が投げかけられた。振り返ると、そこにひとりの赤く染めたオールバックの髪型をした異様な雰囲気の男が立っていた。その男こそが、BLAZEのリーダーである戌井彰宏だった。「久しぶりじゃねえか……志緒さん。俺のBLAZEに、何か用でもあんのかよぉ……?」気のふれた獰猛な笑いを浮かべて聞いてくる彰宏に、志緒は険しい顔になってこう叫んだ。「用なんざ……あるに決まってるだろうが。一体お前らは、BLAZEは何をやっている? 答えろアキっ! どういうつもりだっ!?」気迫のある叫びだったが、彰宏は動じた様子を見せず、肩をすくめて笑い出したかと思いきや、ポケットから一つのタブレットケースを引き抜き、その中から血のような赤いタブレットを取り出した。「せっかくだからアンタに見せてやるよ……俺たち新生BLAZEに滾る『熱(ヒート)』ってヤツを!」と、彰宏が嘲笑いながらタブレットを口へ放り込むと、彼の瞳が赤く染まり、メンバーたちと同じように凶々しい赤いオーラが立ち上る。それに洸と空、志緒が目を疑うと、彰宏は志緒に向けて手をかざした。すると、志緒の背後に門が現れ、一瞬のうちに彼を捕らえて引きずり込んでしまった。
「無事に出られたら話ぐらいは聞いてやるよォ。そんじゃあ、お疲れっスゥ〜」彰宏は引きずり込まれていく志緒を嘲笑いながら、その場を歩き去って行った。この一幕を呆然と見つめていた洸と空だったが、そこへ駆けつけてきた明日香と祐騎と合流し、門の中へ飛び込む。そして、その異界の奥にいる巨大な恐竜を思わせるエルダーグリード「ブレードレックス」を倒し、志緒を救出することに成功したのだった。そして、現実世界へ戻って志緒は改めて洸たちから経緯を聞かされ、半信半疑ではあるが実際異界と怪異を目の当たりにしているため、否定はしなかった。また、明日香と祐騎は、BLAZEのこれまでの暴力現場で見つけてきたというあの血の色のタブレットを志緒に見せ、これは異界に関わる素材を調合した「異界ドラッグ」という薬物だと説明した。その上で明日香は、志緒にこの件から手を引くよう勧告するが、「昔の仲間が得体の知れないドラッグなんぞに関わっている……そんな話を聞いてケツまくったら『アイツ』に顔向けできねぇからな」と言い残し、志緒はまたどこかへ去ってしまった。

祐騎が見つけてきた、BLAZEの元ブログのページの中にある、かつての志緒たちの写真。その真ん中にいる白いシャツの男が、志緒の親友で、彼と同じBLAZEの元リーダーであった竜崎一馬だった。

ダンスクラブで再び手がかりを探りに来た洸と明日香の前に、鷹羽組の若頭・梧桐英二が現れる。極道組織のNo.2の地位を務めるだけあって、佇まいと雰囲気は鋭く、明日香も気を揉みそうになるほどだ。

そこへ更に美月が現れ、梧桐に迫られそうになった洸と明日香に助け舟を出す。極道組織のNo.2である梧桐を前にしても毅然としているこの態度からして、彼女も只者ではない。

ガード下で異界ドラッグによる急激な強化と、凶暴さを増した彰宏に一方的に叩き伏せられる志緒。しかし、その表情からして気圧されてはいなく、逆に腕を掴み返し、闘志と怒りの籠った瞳で睨みつけた。

次の日、洸たちは祐騎のマンションに集合し、昨日の情報交換をすることになった。明日香と祐騎が見つけてきた情報は異界ドラッグだけでなく、志緒がBLAZEの以前のリーダーで、さらにもうひとりのリーダーに「竜崎一馬」という名の男がいたという情報だった。そして志緒と一馬がリーダーだった頃、彰宏は「特攻隊長」として勇名を馳せた存在だったという。その情報を元に次の手がかりをどう探すかを考えようとした矢先、事態の急変を告げるニュースが届く。それはなんと、BLAZEが蓬莱町を拠点にして活動している広域指定暴力団「鷹羽組」と諍いを起こし、鷹羽組の構成員が病院送りにされたというのだ。おそらくこれにも例の異界ドラッグが関わっており、このまま暴力団が BLAZEへの報復に動いて、異界ドラッグがさらに使われることになればただの抗争どころでは済まなくなる。それを危惧した洸は、明日香と共に蓬莱町へと様子を確かめに向かうことになった。そして、例のダンスクラブをもう一度調べてみると、あの異界ドラッグが入ったケースと、素材と思しき異界の植物を発見する。するとそこで「……やれやれ、本当にあったとはな」と、精悍な男の声が後ろから飛んできた。振り返ると、白いスーツを着た精悍な顔つきの男が歩いてきた。男の名は梧桐英二。この蓬莱町を拠点とする暴力団「鷹羽組」の若頭である彼は、構成員がBLAZEに病院送りにされた背景に異界ドラッグの存在を掴み、それを調べにBLAZEの拠点であるこのダンスクラブを調べに来たという。そこで梧桐は、洸と明日香がただの一般人ではないと見抜き、ここで何をしているのかと尋ねようとしたが、そこへ「失礼します」と涼しげな声が割り込んでくる。振り返ると、美月が秘書と思しきスーツ姿の女性を連れて現れた。意外な人物の登場に驚きを隠せない洸たちだが、梧桐は美月と面識があるらしく、肩をすくめて苦笑した。美月は梧桐にある程度の事情は把握しているといい、洸たちは鷹羽組の敵ではないことは保証するからこの場は引いてほしいと伝える。これに対し梧桐は了解はしたが「鷹羽組にもメンツというものがある。BLAZEの連中については落とし前をつける以外にない……そいつは、わかっていますね?」と、釘を刺すように言った。それに美月が頷くと、梧桐は黙ってその場を去って行った。それから美月は洸と明日香に、自分は今回の件に介入するつもりはなく、ただ個人的な知り合いである志緒、そして一馬が作ったチームであるBLAZEが気になったから様子を見に来ただけだと言った。そこで洸が、一馬はどうしているのかと聞くと、美月は少し迷ったような素振りを見せた後、一馬なら1年半ほど前に亡くなっていると言い、BLAZEが解散した理由、そして今回、彰宏たちが起こしている事件の鍵にもなっていると伝え、この場を後にした。
その直後、洸のサイフォンに空からの電話がかかる。なんと空は、ガード下で志緒と彰宏が対峙しているのを見つけたというのだ。洸たちに助けられたとはいえ、異界から無事に戻ってきた志緒に再び問われ、戻ってきたら話をするという約束に従い、彰宏は嘲笑を浮かべながらも目的を語った。自分たちは明日にでも部下最大の悪名を轟かせる不良集団「ケイオス」に戦いを仕掛ける。1年半ほど前にこのガード下で命を落とす切っ掛けとなった彼らを殲滅しなければ、BLAZEは新たな始まりを迎えられない、と。そしてケイオスは勢力は大きいが、この異界ドラッグがあれば雑魚も同然だと高笑う。それに志緒が表情を険しくする中、彰宏は「どうだ志緒さん……? そろそろ戻っちゃこないか? アンタがケイオス狩りに参加すりゃ、士気も上がるだろう。何だったら、リーダーの座だってアンタに返してもいいんだぜ……?」と、嘲笑を浮かべながら呼びかけた。それに対する志緒の答えは「断る」だった。そして、一馬は敵討ちなんか望むようなヤツじゃないと彰宏を諭そうとするが、彰宏は逆上して異界ドラッグを再び手に取る。「逃げたアンタに一馬さんを語る資格なんてねえんだよォ……! 弔合戦の肩慣らしに、この手でブチのめしてやらあァ!!!」と、凶々しいオーラをまとった彰宏は狂気の咆哮をあげ、志緒へと襲いかかる。これに対し志緒も説得は無駄だと悟り「一馬に代わって、てめえの目を醒まさせてやる……!!」と、叫んで拳を構え、迎え撃った。洸と明日香が駆けつけた頃、志緒は彰宏に一方的に捩じ伏せられていた。助けに向かおうとした洸たちだが、彰宏は凶々しい殺気と威圧感で彼らを威嚇する。それを見た志緒は、「手を……出すんじゃねえ……! てめえの相手は、この俺だっ……!!」と、満身創痍になりながらも彰宏の腕に縋りつき、抵抗する。これに彰宏は興が削がれたのか、志緒を振り払い、とどめの蹴りを叩き込んで黙らせた。「残念だよ……アンタにゃ失望したが、これで心残りはなくなったぜ」そう退屈そうに、だが寂しそうに言い放った彰宏は、ケイオスとの戦争は今日中にすると宣言し、意識を失った志緒と、彼に駆け寄る洸たちを残し、狂気じみた高笑いを挙げながら去っていった。

まだ傷が治りきっていない状態で彰宏の元へ向かおうとする志緒に、背を向けながら宗介が諭すようにこう言い放つ。その言葉に、志緒は一度足を止めた。

志緒の回想シーン。暴走したCHAOSのリーダーによる兇刃から彰宏をかばって命を落とす一馬。この悲劇は志緒の心に深い傷を残しただけでなく、彰宏の心を大きく歪ませてしまうことになった。

そうした過去の悲劇から、宗介から「彰宏と同じように周りが見えなくなっている」と言われても、志緒は彰宏を歪ませた責任から一人で決着をつけようとしていた。

しかし、洸たちの説得を受けて、志緒は再び共に戦う仲間を持つことを決意する。

志緒が意識を取り戻すと、彼は九重神社にある宗介と永遠の家の客間に寝かされていた。そのそばには心配そうな洸たちと永遠、そして宗介がいた。志緒は世話になったと言って、まだ回復しきれてない身体を抱え、洸たちの制止も聞かずに彰宏の元へ向かおうとするが、宗介の「お前さんも、その彰宏とやらと同じじゃな」という一言で足を止める。自分だけですべてを背負うなどただの驕りに過ぎず、彰宏も同じ心境ではないのか、と問いかけてくる宗介に、志緒は返す言葉がなく、そのまま膝をついてしまう。そして洸たちに宥められた志緒は、もうしばらく体を休めることに専念することになった。そしてある程度体力と落ち着きを取り戻したところで、志緒は明日香にBLAZEなら自分たちに任せてほしいと再び勧告される。彰宏らBLAZEが持つ異界ドラッグの力ならば、同じ異界の力を持つ武器であるソウルデヴァイスで対抗できるから、と。それを理解した志緒は「……それでも俺はその役目を他人に譲る訳にはいかねえんだ」と、否定する。その理由として、志緒は自分の過去をこう語り始めた。物心ついた時から孤児院で育ってきた志緒には最初の友人として一馬がいて、彼は自分以上の度胸と根性があり、面倒見も良かったから孤児院では兄貴分として慕われていた。しかしそのうち、孤児院で虐待騒ぎが起きるようになり、その時に志緒は一馬と共に虐待を行っていた院長を叩きのめし、院長の虐待の証拠を明るみにして孤児院を飛び出した。それから死に物狂いで2人で働き、生活を軌道に乗せるうちに、彰宏をはじめとした自分たちによく似た境遇を持つ少年たちの面倒を見るようになり、ついにチーム「BLAZE」の結成に至る。いじめや暴力、金に汚い大人たちなど世の中の全ての理不尽と戦い続けることを目的に掲げ、志緒と一馬は彰宏たちと共に漢気溢れた活動を続けていたが、その最中、仲間を加えてチームとして大きくなっていくBLAZEを障害と認識したケイオスが、杜宮へと侵攻を仕掛けてきた。BLAZEは杜宮を守るために何度もケイオスと抗争を繰り広げるが、ある日、隙を突かれて彰宏に人質に取られてしまう。そして、志緒と一馬はあのガード下に誘き出され、数倍以上の人数の挟み撃ちにあったが、すべてを返り討ちにし、彰宏を取り戻した。しかしその矢先、逆上したケイオスのリーダーがナイフを構えて彰宏めがけて突っ込んできて、一馬がこれをかばい、代わりにナイフを受けて命を落としてしまう。
その後、抜け殻のようになった志緒はBLAZEを解散させ、杜宮学園に編入して1年半の高校生活を過ごした。それで志緒は過去を全て捨てたつもりだったが、その一方で彰宏は一馬を死なせたのが自分だと思い込むと共に、ケイオスへの怒りと憎しみを日々募らせていった。そしてついに、異界ドラッグという分不相応な力を手に入れ、それに溺れるあまり周りが見えなくなってしまったのだろう、と、志緒は締めくくった後、改めてこう言った。「これで分かっただろう……コイツは、あくまで俺の役目だ。どんな『力』を持ってようが、お呼びじゃねえんだよ、お前たちは」すると洸が「アンタ、ちょっと頭が固すぎるんじゃねえか?」と、啖呵を切った。それに志緒が振り返ると、洸は彼にこう訴えた。宗介の言うとおり、自分だけで全部を背負うのはただの驕りで、何かをやり遂げる必要があっても手に余るものがあるなら、どうして誰かの助けを借りないのか、と。そして自分たちもこの杜宮でこれ以上の騒動は続いてほしくなく、異界ドラッグも出回ってほしくないが、それを止める鍵はBLAZEと彰宏が握っていて、そこに辿り着く道が見えていない。だからこそ、自分たちと協力してほしい、と洸は訴えた。それを聞いた明日香も、お互いの目的を達成するためにも拘りや矜持は一旦置くべきだと諭すように言ってきた。これに志緒もついに折れて「いいだろう……お前らの力、改めて貸してもらう。俺と彰宏の、最後の決着に付き合ってもらうぞ」と、洸たちの協力を受け入れたのだった。

大量投与した異界ドラッグでさらなる力を引き出そうとするが、逆に異界化を引き起こし、巻き込まれてしまう彰宏。異界の力に溺れ過ぎていたせいで、他ならぬ自分で墓穴を掘ってしまったことに気づかなかった。

そして、彰宏を救い、BLAZEの「魂」を自分の言葉で伝えたいという志緒の思いもまた、志緒の中にある適格者の力を呼び覚まし、ついに異界に対抗する力を与えた。

yuri_rryp5
yuri_rryp5
@yuri_rryp5

目次 - Contents