東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)のネタバレ解説・考察まとめ

「東亰ザナドゥ(Tokyo Xanadu)」とは、日本ファルコムより発売されたPlayStation Vita専用のアクションRPGである。主人公の高校生・時坂洸が、ヒロインの同級生・柊明日香と出会い、謎の世界「異界」に挑んでいく物語を描いている。日本ファルコムを代表とする人気ファンタジーRPG「イース」「空の軌跡」とは一風変わって、現代の日本を舞台にしたストーリーと世界観が大きな特徴となっており、ファルコムの新たな時代展開を象徴する一作として注目を集めている。

エルダーグリード「ドレッドゴーレム」に素手で果敢に挑みかかる空。しかし、ダメージを全く与えることができず、逆に薙ぎ払われ、意識を失ってしまう。

その翌日、空を連れて洸と明日香の前に現れる麻衣。彼女の口から、千秋が退部届けを出して失踪したという驚きの報せが聞かされる。

そして杜宮記念公園で洸と明日香と再会した千秋は、空に対する思いの全てを打ち明ける。

しかしその直後、今度は千秋自らが異界化に巻き込まれてしまうことになる。

そこで辿り着いた異界の奥では、空が鋼の巨人を思わせるエルダーグリード「ドレッドゴーレム」に素手で挑みかかっていた。しかし力の差は歴然で、空はドレッドゴーレムに薙ぎ払われ、気を失ってしまう。それを見た洸は、無我夢中で明日香と共にドレッドゴーレムに挑みかかり、これを撃破する。その後、異界から戻ってきた洸が空の様子を確かめると、彼女の命に別状はなかった。明日香は千秋が異界化の原因である可能性が高いと言い、空のような次の被害者を出さないためにも調査をする必要があるといった。その時、悲しげな表情で千秋の名を呟いたのを見て、洸は「俺にもそいつを手伝わせてくれ……これは『俺自身の問題』だ。『裏の世界』だからって見過ごす訳にはいかねぇんだよ……!」と、明日香に言った。栞や空、そして千秋という自分の友人たちが巻き込まれているという理由だけで、強引にこじつけてくるような物言いに明日香は呆れるが、遊びや冗談でもないその表情を見て、説得できそうにないと理解した。結局、溜め息をつきながらも明日香は洸の協力を許可したのだった。
翌日の放課後、洸と明日香は千秋に話を聞こうとしたが、空手部の部長である寺田麻衣が慌てた様子で空を連れてやってきた。「千秋、どこに行ったか知らない?」と、いきなりそう尋ねてきた麻衣に洸が首を傾げると、麻衣は千秋が突然早退して行方をくらましたと言った。しかも、顧問の先生に突然退部届を押し付けるようにして出して、さらに家にも帰ってないらしく、サイフォンも電源を切っていて連絡を取ろうにも取れないというのだ。この話を聞いた明日香は、千秋が異界化の原因だと確信に至り、一人にさせておくのは危険だと言った。その理由として、人間の怒りや妬みなど負の感情につられて怪異が現れ、異界化を引き起こすというケースを挙げ、このままだと千秋自身が異界に取り込まれる危険性があると語った。こうして洸と明日香は、杜宮市を駆け巡って千秋を探し続け、ついに日暮れ近くになった頃、街の西にある杜宮記念公園のベンチにひとりで佇む千秋を見つけたのだった。千秋はすっかり沈んだ表情になっていて、洸と明日香に声をかけられても、関係ない、と追い払おうとしたが、洸に麻衣や空たちが心配していた、と言われて、胸を痛める。そして千秋は、「……もう、疲れたのよ。これ以上、惨めな思いをしたくないの……」と、言ってから、自分の胸中をこう語り始めた。
空が入部してきて間もない頃、千秋は空がやってきたことを心から嬉しく思っていた。明るくてまっすぐで人懐っこくて、さらに玖州でも有名な古流空手の師範の一人娘であるという1年生でありながら将来有望な後輩であることから、この空手部でどこまで強くなっていくのかを確かめるのもまた、千秋は楽しみにしていた。しかし練習の最中、瞬発力にパワー、体幹の強さとバランス感覚といった空の人並み外れた素質と才能を見て、千秋は恐怖にも似た嫉妬を覚えてしまった。今はギリギリ自分が上だが、いつかはすぐ、あっという間に追い抜かれる。そう思うようになってから千秋は空に笑顔を返せなくなり、可愛い後輩だったはずの彼女に辛く当たるようになってしまった。そしてあの夜、空に嫉妬と怒りの叫びをぶつけてから、千秋は自分が情けなくなり、嫌気も差してきて、空手部を続けることに意味も見出せなくなってしまったという。そんな千秋の胸中を聞いて、洸は「俺も少しは分かるような気がするぜ」と、千秋に言った。洸は自分も宗介の道場で空と一緒に空手の稽古をしていた頃があり、その時の空は心から楽しそうにただ真っ直ぐに空手の稽古に打ち込んでいたと語った。しかし、自分が中学時代に宗介の道場に突然行かなくなってしまったのは、自分には空のように心から楽しんで武術に取り組める気持ちがなかったからかもしれないとも言った。
それから洸は、千秋にこうも言った。「別にそれでもいいんじゃねえか? 嫉妬なんて、誰にでもあることだろ」その言葉に千秋がハッとなると、洸は、千秋が空に嫉妬しても別に恥ずかしがることじゃないし、空だって完全無欠の天才という訳でもなく、現にちょっとしたいざこざ程度で心が揺らぎ、稽古に集中できなくなるくらいだとも言った。だからこそ、先輩とか後輩とか一旦抜きにして空と向き合ってみることから始めたらどうだ、と洸は優しく諭すようにして締めくくった。その言葉に千秋は心を動かされたが、「もう……遅いわよ。だってあたし、空にあんな酷いこと言っちゃったんだよ……? 今更、許してもらえるわけないじゃないっ!」と、悲痛な表情で叫んだ。すると突然、千秋の後ろに門が現れ、洸と明日香、そして千秋が目と耳を疑ったその瞬間、門は禍々しい光を放って千秋を引きずりこんでしまった。

千秋を諦めたくないという一途な思いが応えてくれたかのように、空もついに適格者として戦う力を手に入れる。

そして、異界の最奥で千秋を見つけた空は、涙を滲ませながらまっすぐな思いを彼女にぶつける。

だが、そんな空の思いを嘲笑うかのように、エルダーグリード「グレアファントム」が姿を現し、襲いかかってくる。

そして激しい戦いの末に洸たちと共にグレアファントムを打ち倒し、千秋を救出した空は、改めて千秋と和解し、もう一度女子空手部で一緒に頑張っていく約束を交わした。

その時、引きずり込まれる際の千秋の悲鳴を聞きつけてきたらしく、空がその場に現れた。そして、千秋が異界に引きずり込まれたと洸たちから聞かされた空は、自分も連れて行ってほしいと二人に頼んできた。そして空は、この公園は悩んだり落ち込んだりした時に走り込みに来ればいいと千秋に教えてもらった場所であると言い、千秋がここに来ていたということは、やっぱり彼女も悩んでいたからだと言った。「あんなに面倒見が良くて優しかった千秋先輩が、わたしのことで……だから、わたしがこの手で先輩を助けてあげたい! そして今度こそ、正面から向かい合いたいんです!!」涙を浮かべながら空が叫んだ瞬間、彼女の体が金色に輝き始めた。洸と明日香が目を見張った瞬間、空は両腕をかざしてこう叫んだ。「轟け、『ヴァリアントアーム』!!」その叫びと共に、空の両腕にナックル型のソウルデヴァイスが現れた。
こうして、適格者として覚醒を果たした空は、洸と明日香と共に千秋が引きずり込まれた異界へと乗り込み、並み居る怪異を蹴散らしながら最奥にいる千秋の元へと辿り着いた。「バカッ!! なんで来たのよ!? 助けるだなんて、あたしにそんな価値ない……!!」と、泣きそうな顔で拒絶する千秋だが、空も泣きそうな顔でこう叫んだ。「そんなこと、言わないでくださいっ……!! わたしは、それでも千秋先輩のことは尊敬していますっ!」その涙ながらの叫びに千秋が再びハッとなった時、空はこう思いをぶつけた。玖州からやってきて間もない頃、新しい生活に馴染めるか不安だったが、千秋と出会い、千秋に支えてくれたからこそ救われた。そこで本当の強さは単なる力や技ではなく、人を勇気づけられる強さだとわかれたからこそ、千秋を尊敬しているのだ、と。「わたし、これからも先輩と一緒に頑張っていきたいんです……! そして、本当の意味で強くなりたいっ!! だから、だからぁっ……!!!」ついに涙を思いと共に溢れさせた空に、千秋が嬉しくなって微笑みかけたその時、彼女の体からどす黒いオーラが湧き上がった。そしてそのオーラが悲鳴をあげた千秋を飲み込むと、黒い悪霊を思わせるエルダーグリード「グレアファントム」がオーラの中から姿を現し、空に襲いかかった。それから激闘の末、空は洸と明日香と共にグレアファントムを打ち倒し、千秋を救い出すことに成功する。異界から戻ってきた先、空に抱き起こされた千秋は、弱々しく笑いながら、空に暴言を吐いたことを詫びた。「情けないけど……あたしもまだまだ未熟だわ。これからも、一緒に切磋琢磨してくれる……? 部長たちのいる、あの女子空手部で……」千秋のその言葉に、空は涙を流しながらも笑顔になり、「はい……もちろんですっ……!」と、頷いた。
そして翌日、学校で洸は明日香に今後異界絡みで事件が起きたら、自分にも手伝わせてほしいと頼んでいた。最初はたまたま上手くいっただけでヒーロー気取りだとは頂けない、と明日香に反発され、手厳しいと零しながらも洸はそれを受け止めて、それでも千秋や栞のように目の前の知り合いや、彼女らと一緒に生きる今の日常が脅かされるのだけは見過ごせないと言った。「だからこそ『手が届くもの』くらいはせめて守れるようになりたい。お前とならそれができる……ような気がしてな」と、洸が最後にそう締めくくると、明日香は呆れながらも「……わかった。気が向いたらお願いするわ」と頷いた。それからその場へ現れた空も、恩返しがしたいという気持ちで自ら進んで協力を申し出てきて、明日香は彼女の協力も受け入れたのだった。

ユウキ・シオ編(第3話・第4話)

これが神様アプリの不吉なお告げの画面。最初は明るく可愛らしいイラストとカラーリングだったが、何故かこのように禍々しいものへと変わり、音声もノイズまみれのものに変質してしまっている。

そのお告げがあった当日、遼太は事故にあってしまったが、不幸中の幸いにも腕を骨折する程度で済んだ。

美月の初登場シーン。最初は生徒会長として神様アプリの開発者の生徒(祐騎)の情報は教えられないと言ったが、代わりに通知書を通す形でその住所を教えてくれた。

そして洸たちと初対面を果たす祐騎。弱冠16歳だがIQは160越えで、高校1年でありながらアプリ開発や株売買などをこなして生計を立てている、文字通りの「天才」である。

ある時、的中率がほぼ100%であることで知られる占いアプリ「神様のいうとおり」、通称「神様アプリ」が、杜宮学園で流行し始める。洸の友人でクラスメイトである伊吹遼太も、神様アプリをインストールして早速使い始めたことを洸と栞、そして同じく洸の友人でクラスメイトである小日向純に紹介がてら自慢していると、突如アプリの画面が不気味なものに変化し、さらに音声も不気味に変質したものになって「今日ノアナタハ最悪デショウ。交通事故ニアッチャウカモ♪ 楽シイ一日ハアットイウ間ニオシマイ。心ノ準備ダケハシテオキマショウネ♪」と、どこか不吉な占いを告げていた。遼太は不可解な気分になったが、いい占いが出た時に素直に受け取ればいい、という栞の言葉に従い、この不吉な占いについては気にしないことにした。しかし放課後、洸がいつものようにバイトをしてから帰ろうとすると、遼太から電話がかかってきたが、その途中、車が激突したような衝撃音と破壊音が響き渡り、そこで電話が途切れてしまった。そして洸は、神様アプリのあの不吉な占いを思い出すや否や、どこへともなく走り出していた。
次の日、遼太は登校してきたが、その右腕にはギブスをはめていた。彼の話によると、近くを車で走っていたドライバーの運転ミスが原因で起きた事故らしいが、その時、ドライバーの車に搭載されたカーナビが突然滅茶苦茶な誤動作が起きて、それでドライバーは驚いてハンドル操作を誤ってしまったというのだ。こうした一件から、洸はこの神様アプリも異界の力が関わっているかもしれないと踏み、放課後にすぐさま明日香と空と落ち合い、遼太の他にも神様アプリを使っていた生徒を中心にして聞き込みによる情報収集をして回る。そして、杜宮学園の生徒会長である北都美月から一人の不登校の生徒の通知書を通して、アプリの開発者が「四宮」という名の生徒であることを突き止めた。
通知書に書かれた住所を頼りに洸たちが向かった先は、杜宮記念公園に隣接するひとつの高層マンションだった。洸たちがゲート前のインターホンで四宮が住んでいるという部屋に呼び出しをかけてみたが、返事はない。出かけているのかと思いながらももう一度かけてみると、「……うるっさいなあ、何度も押さないでよ。居留守使ってるのがわかんないわけ?」と、うんざりしたような少年の声がインターホンから聞こえてきた。それに少し辟易させられながらも、洸と明日香が生徒会からの通知書を持ってきたことと、神様アプリについて聞きたいことがあると伝えると、少年はインターホンの向こうで息を呑んだ後「面白そうじゃん。いいよ、入ってきても」と、ゲートを開けた。そこで洸たちがマンションの中へ入って部屋へ向かうと、奥のほうで8つのディスプレイ付きのテーブルを前に、ファンシーなラップ音楽を聴きながらキーボードで作業をしている眼鏡の少年がいた。「四宮祐騎……一応、杜宮学園に所属している1年生さ。さて、どんな面白い話を聞かせてくれるのかな?」と、そう名乗った眼鏡の少年こと祐騎は、眼鏡を押し上げて不敵な笑みを浮かべた。

祐騎の姉・葵の初登場シーン。美人で優しい性格の持ち主で、どんなに冷たくあしらわれても祐騎に対しての愛情は本物で、弟バカと言っていいほどのものである。そして、これが空が祐騎に積極的に関わろうとする理由となった。

次の日、昨日とは打って変わって、祐騎は姉が行方不明になったことに狼狽えている。さらに明日香からも神様アプリが関わっていると言われ、否定はするも動揺していた。

クレイドルに落ちていた葵の携帯に、神様アプリの不吉なお告げの画面が表示されていた。祐騎はこれを見るのは初めてらしく、こんな画面になるほどのプログラムは組んでないと動揺しながらも否定する。

そしてクレイドルに現れた異界で、葵を発見すると共にエルダーグリード「ヘイズフェアリー」が現れる。洸たちはこれと対峙し、戦いの末に撃破するが、異変はこれで終わりとはならなかった。

洸たちは、祐騎から神様アプリについてのあらましを聞いた。祐騎は腕の立つハッカーとしての顔を持っており、そのハッカーとしての技術を神様アプリにも活かしているという。まず、アプリに悩み事が入力されると同時に、アプリのAIが自動的にサイフォン内にサーチをかけ、そこで見つけた使用者の個人情報と、SNSやブログ、はてはネット上にある心理学のデータや悩み相談の類似ケースなどの情報ソースを元に、使用者に合わせた適切なアドバイスを一瞬で自動生成している、と、祐騎は語った。こうした高度なアプリをたったひとりで組み上げた祐騎に息を呑む洸たちだが、不吉な占いについて尋ねてみると、祐騎はそれについても一応調べてはみたが異常はなく、事故や怪我がアプリのせいと考えても普通に有り得ないと一蹴する。そこで明日香が、普通じゃないことが起きていたらどうだろう、と尋ねてみ他が、祐騎は呆れ返って、そういうオカルト話は基本的に信じてないとさらに一蹴。完全に興醒めになり、洸たちを追い返そうとしたその時、突然チャイムが鳴った。「祐くん、いるよね〜? 入っちゃうよ〜?」という優しげな女性の声が聞こえてきた時、祐騎の顔が強張った。続けてドアが開く音が聞こえ、ひとりの優しげな女性がちょっとムッとした表情で現れたが、部屋にいる洸たちの姿を見た途端、驚きに目を見開いた。そしてすぐに、ぱっと顔を輝かせて、「祐君、もしかして……お友達が来ていたのっ? お姉ちゃん、何の準備もせずに来ちゃったじゃない!」と、嬉しそうに大声で言った。それに洸たちも戸惑う中、彼らを祐騎の友人だと思い込んだ優しげな女性はひとり盛り上がるあまり、もてなしの準備をしようとする。これにパニックになるあまり、祐騎は大声で「ああもうっ、いきなり来るなって言っただろぉ!? とっとと帰れっ!! 頼むから帰ってくれぇぇ〜〜!!」と、喚いて、洸たち共々優しげな女性を部屋から追い出してしまった。
公園のカフェに場を移した洸たちは、その優しげな女性で、祐騎の実の姉である四宮葵から話を聞いていた。祐騎には省庁勤めの父親がいるが、父親はかなり厳格な人物で彼との折り合いが悪く、今年に入って中学を卒業した祐騎が独立を言い出したのを機に、「勝手にしろ」とあっさりと認める形で父親は彼を実家から追い出した。また、祐騎はネットで株をやっていたらしく、その株でかなりのお金を貯めており、マンションの家賃も問題なく払えて悠々自適な一人暮らしをしているが、葵はそんな弟が心配でよく様子を見に行っているが、いつものように鬱陶しがられていた。だから洸たちが弟の部屋にいたのを見た時は、友達だと勘違いしてしまったが本当に嬉しかったという。こうした葵の身の上話を聞いた空は、「神様アプリの件、ますます放っておけませんねっ!」と、鼻息を荒くした。それに洸と明日香が驚くと、空は自分は一人っ子でだから兄や姉や弟に憧れていて、祐騎にはあんなに優しい姉がいて、しかも心配してくれているのに邪険に扱っていることが許せないというのだ。だから神様アプリの件を一刻も早く解決して、一言言ってやらないと気が済まないと闘志を燃やす空に、洸だけでなく明日香も思わず尻込みさせられるのだった。その翌日、洸のサイフォンに見知らぬ番号からの電話がかかってくる。その相手は、なんと祐騎だった。昨日と打って変わって血相を変えた彼に洸が不自然に思うと、祐騎は大声でこう叫んだ。「今朝から連絡が取れないんだ……葵姉さんと!!」
その後、明日香と空を呼び、タワーマンションで祐騎と落ち合った洸は、祐騎から話を聞いた。洸たちの話が気になり、サーバーの記録を調べてみたところ、洸たちと別れてすぐの時間帯に、葵のサイフォンに神様アプリがダウンロードされていた。そこで朝を迎えてから、葵に電話をしてみたところ全くつながらず、さらに勤務先の美術館にも出ていないらしかった。この話から明日香が神様アプリがまた不吉な占いを出したかもしれないと推測し、そして葵が仕事関係で何度も出入りしていたという「クレイドル」という画廊に、洸たちはすぐさま向かった。クレイドルに辿り着くと、誰もいない画廊の床に葵のものと思しきサイフォンが落ちていた。そのサイフォンの画面は神様アプリが表示されていて、「今日ノ運勢ハうるとら絶不調♪ あんらっきーすぽっとハ仕事先……醒メナイ眠リニツイチャウカモ☆」と、不気味な画像と音声による占いの結果が告げられたままとなっていた。祐騎はそれを見るのは初めてらしく、こんなプログラムは組んでいないと動揺する。そして洸たちは遼太の時と同じくこの不吉な占い通りに何かが起こったと踏んで、一人だけついていけない様子でいる祐騎をその場に置いて、突如現れた「門」から新たな異界へと飛び込む。そして、異界の奥で倒れている葵を発見し、同時にそこで待ち受けていた歪な妖精の姿をしたエルダーグリード「ヘイズフェアリー」を撃破する。これで葵を助けられた、と洸たちが安心したのも束の間、どこからともなく怪しげな光が現れ、葵の体から何かを抜き取っていった。それに目を疑う洸たちだったが、確かめるまでもなく、葵と共に現実世界へと戻されてしまった。

端末室のパソコンを使い、神様アプリの本体の追跡に協力する永遠。その手際の良さに洸たちだけでなく、祐騎も驚かされる。

実の姉に危機を招いてしまった己の過信と未熟を理解し、改めて姉を助けに行きたいという祐騎の思いに応え、祐騎の中にある適格者の力が覚醒する。

そしてついに、異界の最奥で神様アプリを侵食していた真の元凶であるエルダーグリード「アストラルウィドウ」と対峙する。文字通りの蟲(バグ)という毒々しいその外見に、祐騎は舌打ちさせられた。

yuri_rryp5
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@yuri_rryp5

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