刀使ノ巫女(とじのみこ)のネタバレ解説・考察まとめ

『刀使ノ巫女』とは、studio五組が製作するアニメ。日本刀を使って戦う「刀使(とじ)」と呼ばれる少女たちの、戦いや日常を通して友情を紡いでいく様を描く。魅力的なキャラクターや日本文化を色濃く反映した世界観などが人気を呼んでいる。ストーリー面は二部構成になっていて、少女たちが逃亡劇を繰り広げながら、刀使を陰で操る敵と戦う「波瀾編」、少女たちの日常を絡めながら新たな戦いを描く「波瀾編」に分かれている。

「重たそうだから、半分私が持つよ」(衛藤可奈美 第4話)

出典: pbs.twimg.com

フリードマンと連絡を取り、石廊崎で合流することになった可奈美と姫和は伊豆の山中を歩く。夜、雨宿りをする二人。そこで姫和は自分が折神紫を討とうとする理由を語り始める。

20年前に起きた「相模湾岸大災害」で姫和の母・柊篝は大荒魂を討伐する特務隊のメンバーの一人で、荒魂をその身をかけて鎮める役割を担っていた。この一件で篝は一命こそ取り留めるものの、命を削ったことで衰弱していき、1年前に亡くなった。
しかし、大荒魂は実は討伐されておらず、折神紫を乗っ取ることで生き延びていた。舞草から篝にあてて書かれた手紙を読んだ姫和はそのことを知り、自身が紫を討つ決意を固める。その理由の一つは母が打ち漏らした大荒魂を自分の手で倒すという使命感だったが、もう一つの理由は母の人生を狂わせ、命を奪った大荒魂に敵を討ちたいという私怨だった。
姫和は動機の半分が私怨である以上、無関係の可奈美がこれ以上復讐に付き合う必要はないと告げる。その話を聞いた可奈美が姫和の手を取りながら言ったセリフ。

この「半分持つ」というセリフは、その後もシリーズ全体に渡って登場する。
第7話では美奈都が可奈美に「私も友達の為なら命の半分くらいは惜しくないし」と語っている。その言葉通り、美奈都は過去に自らの寿命を削って友人である篝を救っていた。
第21話でも、大荒魂を取り込んだまま一人で隠世に向かおうとする姫和に対し可奈美は「半分持つって言ったでしょ! もっと信頼して預けてよ!」と、姫和とともに戦う決意を語っている。

相手のことをすべて理解してあげることはできないし、相手の重荷をすべて背負うこともできない。それでもせめて半分持つ。何もかも一人で抱え込みやすい性格の姫和だからこそ、この「半分持つ」という可奈美の姿勢によって救われた部分は大きいはずだ。

「ああ!」(十条姫和 第5話)

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真希と寿々花から襲撃を受ける可奈美と姫和。可奈美は寿々花と、姫和は真希と剣を交えるが、御前大会を2連覇した真希に姫和は歯が立たない。一方、可奈美は寿々花と戦いながらも、しきりに姫和の名前を呼ぶ。姫和は可奈美のこれまでの行動から、可奈美が常に冷静に状況を分析し、必ず突破口を見出すことに気づき、その可奈美がただ自分の心配をして名前を呼んでいるのではなく、何か策があるのではないかと考える。そして、可奈美の策に気づいたとき、数分前の可奈美の「私のこと、信じてくれてるよね」という言葉を思い返し、この言葉を口にする。

その後、可奈美は姫和に合図を出して、自分の御刀を姫和の方にめがけて投げつける。姫和は可奈美の合図で身をかがめ、御刀は真希の眼前に迫る。真希はその御刀を弾き返す。しかし、足元の姫和に対して大きな隙が生まれ、姫和の突きをくらって崩れ、その隙に可奈美と姫和は親衛隊の二人から逃れた。

これまで可奈美のことを突き放すような態度だった姫和だったが、ともに行動するうちに可奈美のことを理解するようになり、このセリフで初めて可奈美への信頼を言葉をした。

「そのくせね。本当に困ってる時に限って助けて~なんて絶対に言わないの。おかしいね。ばればれなのに」(柳瀬舞衣 第7話)

雪那にノロを入れられそうになった沙耶香は初めて反抗し、雪那のもとを飛び出す。しかし沙耶香は行くあてもなく、舞衣に連絡を取る。舞衣は沙耶香のもとに駆けつけるが、自分の気持ちを伝えることが苦手な沙耶香は、舞衣にうまく言葉で助けを求めることができない。沙耶香の様子から助けを求めていることを察した舞衣は、自分の妹の話を始める。舞衣に対して反抗期の妹だが、本当に困っている時は言葉には出さないものの舞衣に助けを求め、舞衣もそのことを察してあげる。

うまく言葉で伝えられない沙耶香を気遣って、直接に沙耶香のことを話すのではなく、妹の話を引き合いに、沙耶香が助けを求めていることは舞衣にちゃんと伝わっていることを示す、なかなか高度な描写だ。

「私はこれを……これを失くしたくない!」(糸見沙耶香 第7話)

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雪那にノロを入れられそうになった沙耶香は初めて 雪那に反抗し、鎌府を飛び出してしまう。行く当てのない沙耶香から連絡を受けた舞衣が沙耶香と合流するが、沙耶香を連れ戻しに来た結芽に見つかってしまう。沙耶香の「雪那のもとには帰りたくない」という思いを尊重する舞衣は、御刀を手に結芽と戦うが、劣勢になる。だが、舞衣は「私は沙耶香ちゃんよりもお姉ちゃんだから。理由なんてそれだけで十分!」と、沙耶香を守ろうとする。

その言葉を聞いた沙耶香は、以前に可奈美に会った時のことを思い出す。それまで「天才刀使」と呼ばれるも、雪那からは荒魂を倒し紫に仕えるための感情を持たない道具として扱われてきた沙耶香。また、本人もそれでいいと考えてきた。だが、可奈美や舞衣のように、沙耶香を同世代の女の子として優しく接する人間に出会うことで、「からっぽでいい」と思っていた沙耶香の中にも、熱い感情が芽生えるようになった。
だが、それも雪那にノロを入れられればなくなってしまう。そして、可奈美や舞衣に会うこともなくなる。そう感じた沙耶香はこのセリフとともに、舞衣を助けるため結芽に戦いを挑んだ。

その後、雪那が沙耶香の前に現れ、鎌府に帰るように命令するが、沙耶香は「私はあなたが望むような刀使にはなれない。ううん、ならない」と、自分の意志と言葉で、雪那に決別した。

「姫和でいい。舞衣、後は任せたぞ…!」(十条姫和 第10話)

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沙耶香とともに成り行きで可奈美と合流し、舞草の里に滞在していた舞衣。だが、舞衣にはこれと言って折神紫と戦う理由はなく、このまま自分は可奈美や姫和たちと一緒にいていいのかと悩む日々を送っていた。
しかし、舞草の里が夢に襲われ、お世話になった人たちが次々と倒れていくのを目の当たりにし、舞衣は「せめて自分の目の前の人だけでも守りたい」と、可奈美たちとともに戦う決意を固める。
舞衣の決意を聞いた姫和は、舞衣の指揮力を信頼し、折神家突入後は舞衣に指揮を任せたいと持ち掛ける。
その際、姫和のことを「十条さん」と呼ぶ舞衣に対し、姫和が返したのがこのセリフ。

このセリフを機に、舞衣は姫和のことを「十条さん」ではなく、「姫和ちゃん」と呼ぶようになる。
姫和が舞を何と呼んでいたのかは実は明記された箇所がないが、姫和が沙耶香のことを「糸見」と呼んでいたことから、舞衣のことも名字で「柳瀬」と呼んでいたのではないかと推察される。だが、このセリフにも「舞衣」とあるように、このシーンを機に「舞衣」と呼ぶようになる。
第2話では戦っている舞衣と姫和だが、このシーンでは互いに信頼し始めたことを物語っている。

「なんにもいらないから…覚えていてくれてれば…それでいいんだよ…」(燕結芽 第11話)

折神邸での決戦時、結芽は薫・エレンのペアと対決する。可奈美との戦いを望む結芽は「時間がない」と苛立ち、薫とエレンを討ち取るとすぐさま可奈美のもとへと向かう。しかし、途中で力尽きて倒れてしまう。
結芽は将来を期待され、神童とまで呼ばれる刀使だった。しかし、病魔に侵され刀使の夢を立たれ、家族に見捨てられてしまい、病院で一人、死を待っているような状態だった。ノロを体内に入れることで病気をごまかして戦っていたが、それでも体が限界を迎え、結芽は可奈美との対決が叶うことなく息を引き取った。これはその結芽が息を引き取る直前の、一番最後のセリフである。
それまで、強さを誇示することに狂気じみた執着を見せていた結芽だったが、すべては自分の死後も誰かに自分の存在を覚えていてほしいからだったことが明かされる。己の命の灯が短いことを悟った少女の、たった一つの願い。それまで完全に「ヤバい敵キャラ」だった結芽の行動のすべてに納得がいくセリフであったと同時に、結芽役の水瀬いのりの好演もあり、この一言に結芽の切実さがにじみ出ていた。

なお、結芽の死後、結芽の持っていたストラップを真希が持っている描写がなされ、最終回でも真希がそのストラップを見ながらも物思いにふけるシーンがある。結芽の「覚えていてくれればそれでいい」という願いは果たされた。

「わかってない…痛いのはあなたが可哀想だから…」(糸見沙耶香 第12話)

折神邸での決戦時に沙耶香が雪那に対して発したセリフ。沙耶香と舞衣は夜見を倒し、沙耶香は雪那に御刀を向ける。もともと、雪那の指示通りに行動していた沙耶香だったが、可奈美たちと出会い、雪那の『道具』でしかない自身の生き方に疑問を抱くようになる。舞草で仲間たちと過ごすようになりその想いはさらに強くなり、ついには雪那に御刀を向けた。それは雪那への決別を意味するものだった。

しかし、沙耶香は雪那に御刀を向けることで胸が苦しくなると吐露する。雪那は自分に許しを請えば、そのような痛みを覚える不要な感情は取り除くと沙耶香に語りかける。その時、沙耶香が返した言葉がこのセリフである。

雪那のもとを離れて舞衣や可奈美たちと共に過ごし、友情をはぐくんできた沙耶香。彼女の心に宿った感情は、すでに雪那の想像を凌駕するものであったが、雪那はそのことにすら気づかず、自分の元に戻ってくれば、再び以前のような自分の『人形』に戻せると勘違いしていた。
沙耶香に宿った感情の強さにすら気づかない時点で、実は雪那の方が人間的な感情を失った『人形』に近い存在だった。だからこそ、「かわいそう」と沙耶香は発したのである。
沙耶香が仲間たちとの短くも濃厚な日々の中ではぐくんできた感情の大きさが垣間見れるセリフである。

「らしいね。でもこうして戦ってる!」(衛藤可奈美 第12話)

折神邸でのタギツヒメとの決戦に臨む可奈美たちだったが、6人がかりでもタギツヒメには敵わない。タギツヒメは、折神紫を越える刀使はこの世にはいないと言おうとするが、可奈美は「紫、久しぶり!」と、まるで自身が母親である藤原美奈都であるかのような発言をし、さらには美奈都を彷彿とする動きを見せてタギツヒメを驚愕させる。その際のタギツヒメの「あり得ない…藤原美奈都は死んでいる!」との言葉に返したセリフ。

「すでに死んでいる」と言われても否定するどころか、「らしいね」と自身が死者であることを笑みを浮かべながら平然と肯定するところに、美奈都の芯の強さが垣間見れる。

当初は美奈都が可奈美に乗り移ったものと捉えられていたが、夢の中で美奈都は何もしていないと明言。可奈美自身の言葉、可奈美自身の強さであったことが明かされる。夢の中で美奈都が可奈美に稽古をつけることで、美奈都の強さは確実に可奈美に継承されていた。タギツヒメが「折神紫を越える刀使はこの世にいない」と言いかけた時に、すでに他界している母ならきっと紫を越えられる、と可奈美が母の強さを信じてたことも伺える。親子二代の絆の強さも分かるセリフである。

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