クジラの子らは砂上に歌う(クジ砂)のネタバレ解説・考察まとめ

「クジラの子らは砂上に歌う」とは、「梅田阿比」による漫画作品。2017年にJ.C.STAFF製作でアニメ化。砂の海に浮かぶ巨大な船「泥クジラ」には、超能力「情念動(サイミア)」を操る「印」と、操れない「無印」がいた。印である主人公「チャクロ」は泥クジラの歴史を綴る記録掛りをしていた。チャクロはある日、砂の海を漂流してきた島で謎の少女「リコス」に出会う。

『クジラの子らは砂上に歌う』の概要

「クジラの子らは砂上に歌う」とは、作者「梅田阿比」による漫画作品。
2013年からミステリーボニータで連載を開始。
2016年には舞台化し、2017年にJ.C.STAFF製作でアニメ化。
「このマンガがすごい!2015」オンナ編で10位にランクインし、「次にくるマンガ大賞」にもノミネートした。

砂の海に浮かぶ「泥クジラ」という島のような巨大な船を舞台に、主人公で記録係の「チャクロ」達の運命を描く。
超能力「情念動(サイミア)」を操れる「印(しるし)」と、操れない「無印(むいん)」の二種類の人間が存在し、印たちは短命の運命を背負っていた。
第3話からは帝国と呼ばれる国が攻めてきて、平和に生きてきた泥クジラの住民達が虐殺されるショッキングな内容となる。
何故泥クジラの住民が虐殺されなければならないのか、泥クジラとは何なのか、次第に秘密が明らかになっていく。

『クジラの子らは砂上に歌う』のあらすじ・ストーリー

主人公の14歳の少年「チャクロ」と、”泥クジラ”と呼ばれる砂の海を漂う漂流船を舞台としたそこで生きる人々の運命を描く作品となっている。
泥クジラの住人は、総勢513名。そのうち9割が情念動=サイミアを使用できる印(しるし)と呼ばれる。残り1割が使用できない無印(むじるし)と呼ばれる。
印の寿命は短命で30歳前後、無印は印より寿命が長く、泥クジラの指導者もしくは長老会の一員となる。
泥クジラとは何なのか、なぜ印は短命なのか次第に秘密が明らかになっていくストーリーとなっている。

リコスとの出会い

チャクロに振り払われて気絶してしまうリコス

主人公で印のチャクロは、泥クジラの記録係をしており何でも記入せずにはいられない過書の病(ハイパーグラフィア)で、好奇心も旺盛であった。
泥クジラにはこみ上げる衝動を耐える時に指を組むという風習がある。チャクロは感情を抑えられずに涙を流してしまう時もあったが、自分の書く記録には感情を入れなかった。
チャクロは幼馴染の少女で印の「サミ」とよく一緒におり、サミの兄で無印の次期首長候補「スオウ」を尊敬していた。
スオウは短命の印を憂い、寿命を延ばす研究をしている。

砂の海を漂流している流れ島が泥クジラの近くまで来ており、泥クジラの住人たちは物資調達のために偵察に向かう事になった。
偵察隊の一員になったチャクロは流れ島で謎の動物に出会い、うつろな目をした少女「リコス」に出会う。
リコスはチャクロに襲い掛かるが、チャクロが振り払うと気絶してしまう。
チャクロはリコスを謎の動物とともに泥クジラに連れ帰る。
目を覚ましたリコスは、泥クジラのことを”ファレス”と呼び、なぜか自分は捕虜になったと思い込み投降すると宣言する。

泥クジラでは規則を破ったものを”体内エリア”と呼ばれる地下の牢獄に入れる規則がある。理由は不明だがそこではサイミアが使用できなくなる。
いつも体内エリアにいる問題児たちのグループは”体内モグラ”と呼ばれている。体内モグラのリーダーで泥クジラ一番のサイミアの使い手「オウニ」は、外の世界に憧れを抱き泥クジラを出たいと思っていた。
泥クジラの外から来たリコスに興味を持ったオウニは、リコスとチャクロを無理やりさらい流れ島に連れて行く。

流れ島で三人は地下にある部屋へ行き、そこには”魂形(ヌース)”と呼ばれる生き物が居た。ヌースは感情を食べる代わりにサイミアの能力を人間に与える存在であった。
リコスもヌースに感情を捧げて生きていた。
そしてこのヌースの名がリコスであり、リコス(と呼ばれている少女)が持っていた服についていた名も、ヌース・リコスを現すナンバリングのようなものであった。
リコス曰く泥クジラの外の世界は、ヌースに感情を食べられて感情を無くした兵士”アパトイア”が戦争をする世界だと言う。
何かを隠している長老会はかなり保守的な傾向が強く、現在の首長「タイシャ」は長老会のあり方に疑問を持っていた。
しかし首長には政治権力はなく、泥クジラの民達に愛される象徴である事が求められた。
タイシャと、側近の「クチバ」が話をしていると、外から船が泥クジラに近づいて来るのが見えた。
リコスはスオウに、「ファレナ(泥クジラ)の罪人たちは狙われている」と言う。
その頃、チャクロとサミの前に仮面を付けた複数の兵士達が現れ、いきなり射撃される。
とっさにチャクロを庇ったサミは、銃弾を浴び絶命した。

帝国の襲撃

突然やってきた謎の兵士達に、泥クジラの人々は次々に虐殺されていく。
サイミアを人に向ける行為は泥クジラでは悪事とされており、誰もサイミアで抵抗するという咄嗟の判断ができず、一方的に虐殺をされていく。

兵士たちはリコスと同じ国出身の、ヌースに感情を食べられたアパトイアであった。リコスはチャクロたちの元に駆けつけるが、兵士達に仲間と認識され、国へ戻るように言われる。
リコスも元々は帝国のアパトイアで、目的はファレナ(泥クジラ)の民の殲滅であった。
そしてリコスはファレナ殲滅総指揮官「オルカ」の妹なのだという。リコスは国へ戻れという指示を拒む。

襲撃で、サミやタイシャを初めとした多くの者が亡くなった。
泥クジラの民の罪とは何か、そもそも泥クジラとは何なのか。何故襲撃を受けなければならないのか、襲撃をしてきた人たちは一体誰なのか。分からない事だらけであった。

泥クジラに責めてきたアパトイアは、元々は泥クジラの民と同じ国(帝国)の人間であり、泥クジラの民はある理由で流刑にされた人々の末裔であるという。その流刑は今でも続いており、帝国は泥クジラの民即ち罪人達を処刑する決断をしたのだと長老会のメンバー達は言う。

帝国は泥クジラを征服するために襲ってきたのではなく、皆殺しにするために襲ってきたのである。そして七日後にある襲撃で殺されるぐらいなら、みなで自決し泥クジラを砂の海に沈めることが長老会の決定であった。

スオウは罪も無い人々が死んでいいはずがないと反対する。
スオウが長老会に詳細を聞こうすると、自警団の団長「シュアン」に気絶させられ拘束されたうえ、体内エリアに閉じ込められてしまう。

チャクロは泥クジラが何処へ向かっているのかわからないうえ操縦も出来ないのに、長老会が泥クジラを沈める方法をなぜ知るのを不思議に思っていた。リコスが誰も立ち入らない場所はないかと聞くと、チャクロは体内エリアに進入禁止エリアがあると気づき、二人はスオウを助けつつそこを目指す事にした。

チャクロたちは進入禁止エリアを見つけ、チャクロ・リコス・マソオは進入禁止エリアに向かい、ロウとネズはスオウを助けに向かった。
禁止エリアには流れ島のヌース・リコスとよく似た”ヌース・ファレナ”がいて、傍らには長老会の世話係のネリがいた。リコスが泥クジラをファレナと呼んでいたのは、ヌースの名前だったのである。

泥クジラを守るための決断

ヌースとは砂の海に浮かぶ船のコアであり、ヌースを破壊すると船は沈む。そこへ長老会が自警団を連れて現れ、泥クジラのヌースを攻撃しはじめる。

リコスは泥クジラが沈み皆が死ぬことを良いと思わず、また泥クジラの民が罪人とも思わないと言う。泥クジラの人々は、リコスたちアパトイアが失った”感情”を持つ人間達で、今は世界の希望だと思っていると語る。
その言葉を聞いて長老会のメンバーはリコスの手当てをして、チャクロやリコスの泥クジラを沈めたくないという意見に同意する意志を示した。

チャクロ・スオウ・マソオそして無印たちは、リコスの話を聞くために集まる。
リコスは様々な事情を彼らに明かした。
・泥クジラを襲いに来るのはヌース・スキロスとスキロスに感情を取られたアパトイアたちで、ヌースを所持し指揮しているのがリコスの兄・オルカであるということ。ヌース・スキロスを破壊することができればヌースを乗せた船を沈めることができること。
・帝国に敵対する国が泥クジラの敵とは限らず、泥クジラの民の殲滅を考えているのは帝国だけで、帝国の敵国はそもそもファレナの存在を知らないということ。つまり泥クジラの民にとって、帝国と帝国が所持する8つのヌースとアパトイア兵が敵であるということ。
・帝国が泥クジラを敵視するのは、ファレナは他のヌースとは違い人の感情を食べない異質なヌースだからであるということ。泥クジラの民はヌースによる支配を拒み、感情を持っている事を選んだ民達の末裔なのであるといこと。
ヌースによって人間の感情を消すことで人々を支配しアパトイア兵を生み出していた帝国は、ヌース・ファレナに感情を取られたくない人々を押し込め流刑にしたのが泥クジラだったのだ。

帝国の民は、ファレナとは野蛮な人間達が憎しみ合って暮らす地獄のような場所だと教えられている。
帝国の敵国たちが段々と砂の海へ活動範囲を広げたことで、ファレナを発見され奪われては不都合になる。かといってファレナを受け入れる事は出来ないためファレナの民(泥クジラの民)を全員処刑という決断に至ったということ。

チャクロは、帝国の敵が泥クジラにとって敵とは限らないのなら、世界の誰かが泥クジラの存在を認めてくれないのだろうか。認めてくれる仲間が現れるまで泥クジラを守り、敵国と戦うことは出来るかとリコスに聞いた。
リコスは泥クジラの皆がそれを望むのなら、自分の全てをかけて泥クジラに協力すると微笑んだ。

スオウは泥クジラの民達を収集し、あと四日でまた帝国が攻めて来ること。戦わなければ生き残れないこと。戦うためにはサイミアを持った印たちに戦ってもらわなければならないことを語った。印の短命を嘆いていたスオウは、印たちに命をかけて戦ってくれと言わなければいけない事に涙する。

そこにオウニが現れ、印たちはとっくに自分の運命を受け入れている、あとはスオウが堂々と戦えと言えばいいのだと叱咤する。泥クジラの民達は残り四日で帝国を迎え撃つための訓練などの準備に取り掛かった。

スキロス防衛戦

襲撃の日、オウニの仲間である「ニビ」が突撃メンバーに入れろと押しかけ、ニビも突撃メンバーに入る事になった。
泥クジラの印たちは襲撃に来た帝国のアパトイアを迎え撃つ。突撃隊はスキロスの内部に入る事に成功するが、スキロスの総司令「アラフニ」に気づかれていた。
戦いの中で、リコスは泥クジラの印のサイミアは帝国の人間より強い事に気づく。

突撃隊はヌース・スキロスのいるヌースの間に到着する。そこから先はサイミアが使えなくなるエリアで、チャクロ・オウニ・ニビ・ギンシュと一部の自警団が扉の入り口を守り、シエナ・リコスと残りの自警団たちはヌース・スキロスを倒しに向かう。
シエナがスキロスに近寄ると、隠れていた兵士達が一斉射撃し、リコスと自警団の少女ウルミ以外の全員が射殺された。
扉を守っていたオウニは銃声に気が付くとヌースの間に入って行き、その後をチャクロが追った。

オウニが兵士を止めている間にチャクロとリコスがヌースの元へ行こうとしたその時、オウニがアラフニに銃撃される。
扉を守っていたニビは、オウニのピンチを感じ取り、ヌースの間へ急ぐ。

オウニはアラフニに撃たれた後も抵抗し、斬り付けられ重傷を負う。アラフニはオウニを”デモナス”と呼んでいた。
ニビが到着しオウニのピンチを救い、オウニと連携を取り次々と兵士を倒していく。しかしニビはオウニを庇い、槍を受け致命傷となり絶命してしまう。

オウニは親友のニビの死に我を忘れ、サイミアが使えないはずのヌースの間でサイミアを暴走させる。暴走したオウニのサイミアは周りのものを直接攻撃し、ヌース・スキロスを破壊した。

第三勢力「スィデラシア連合国」の登場

とりあえず難を逃れた泥クジラの民達は、今回の戦いで死んでいったハクジを初めとする人たちを弔った。泥クジラの民達は段々と日常を取り戻して行ったが、スキロスから帰還してからオウニはずっと寝たきりであった。

オウニの側にはずっと体内モグラのメンバーの少女「キチャ」がついていた。キチャはオウニを初めとした仲間達が傷ついたり死んだ事に納得できず、スオウに怒りを向ける。
スオウはキチャにもう誰も戦わないし戦わせない、戦わなくて良い方法をみつけて、今度は自分が皆を守ると約束した。
島で孤立していたオウニであったが、島のために戦ったことから、民達から好意を持たれつつあった。

長老会の会議でヌースは帝国にとって敵国から自分達を守るためにも重要な物であり、その一つを失ったことは帝国にとってかなりの痛手となるとリコスは語った。
その責任はファレナ殲滅作戦の発案者であるリコスの兄・オルカの大失態と判断されるはずである。そのため帝国からの攻撃はしばらくないとリコスは語る。

ヌース・リコス(離れ島)からリコスとともに泥クジラへ運ばれた謎の生き物が、チャクロに渡された丸く渦を巻いた形状の”コカロ”を引っ張ると、コカロもまた同じ姿の謎の生き物になった。コカロは生き物であったのである。

泥クジラの民達が皆で水浴びをしている最中、帝国の敵である第三勢力の青い砂時計の紋章を掲げた船が泥クジラに漂着する。スオウは泥クジラに味方が出来れば皆の助けになると意気込み、船から降りてきた客人たちに挨拶へ行った。

しかし自分達が水浴びをしていることをすっかり忘れ、スオウは全裸で出て行ってしまう。
客人たちのリーダー「ロハリト」は長い名前を名乗り、スオウはその名前を即暗記して違えずに暗唱して挨拶をした。だが自分が全裸であることを忘れていたスオウは、ロハリトに泥クジラの民は裸族で文化レベルの低い島の民だと誤解をさせしまう。

ロハリトは自分の支配下に入れて庇護するから全権力を譲渡しろと要求したが、スオウが反論すると銃器をスオウに向ける。シュアン率いる自警団がサイミアで銃器を取り上げ、ロハリトたちは自警団に囲まれ、彼の部下達は降伏するように進言する。

ロハリトは受け入れなかったが、部下の一人のお腹が鳴り、スオウはとりあえずご飯にしようと提案した。振舞われたご飯にロハリトは不味い不味いと言いながらほお張り、よほど気に入ったのか島ごと持ち帰ると言い出す。
しかし泥クジラは操縦不可能で何処を移動しているのか分からず、行きたい場所にいけるわけでは無いのだとロハリトに説明する。

チャクロはコカロを貰ったことをエマに報告し、コカロが何なのかエマに問う。
エマは、ヌースを乗せた船は舵を取り行き先を決めているが、ファレナは流刑の島であるため舵が奪われた状態であったという。
コカロとは、ヌースを乗せた船を動かす舵であるのだという。

その夜、印たちは小さな少女が耳の中へ入り歌い出す夢を見た。

泥クジラのこれから

帝国では、オルカに対する査問会が最高議会の魂召会(エクレシア)によって開かれた。
急務ではなかったファレナ殲滅を急ぎ、結果ヌース・スキロスを失ってしまった事で、オルカと部下たちは処刑を言い渡される。
しかしオルカはファレナにはヌースの力によって作られた最強の戦士”デモナス”(オウニ)が居たと報告し、脅威であるデモナスを自分こそが掌握できるとエクレシアを言葉巧みに言いくるめる。
そしてアラフニに罪をなすりつけ、オルカは処刑を免れた。

泥クジラでは少女が歌う夢を見た印たちが集まり、手を取り合って歌う。
その行為でコカロは舵として覚醒し、泥クジラを任意の場所へ操縦することが可能になった。

その光景を見ていたロハリトたちは、泥クジラは若者の割合が多すぎる事に気づく。ロハリトはスオウに何故若者しか居ないのかと尋ねると、スオウは印が短命であることを話す。
しかしロハリトが知っている限り、帝国のアパトイアたちは特に短命ではなく、他の種族でも泥クジラの印ほどの短命な者はいない。
スオウは印が短命である理由を知らず、だからこそ寿命を延ばすための薬を作る実験を繰り返している。

ロハリトは外の世界を知らないスオウに海図を見せ、泥クジラが何処にあるのかを示した。
泥クジラは海流が乱れた特異な場所にあり、今までずっと同じ場所をグルグルと回っていたのであった。
外から他の船が近づいても海流によって彷徨ってしまう魔の海域で、ロハリトたちはそこを乗り越えて、泥クジラを発見した。

これまで海流を自分の意志で操り舵が取れたのは、ヌースの居る帝国の船だけであった。つまり、ファレナの流刑とは帝国の船以外は近づけない魔の海域に閉じ込める自然の檻だったのである。
帝国はスィデラシア連合王国にとっての敵であるため、ロハリトは泥クジラが自分の傘下に入るのなら、力を貸してやらないこともないという。

思いつめた様子のリコスに呼び出されたロハリトは、リコスから泥クジラの印が短命の理由を調べるのを止めるようにと言われる。
通常、ヌースは人々の感情を食べ、代わりにサイミアの力を授ける。しかし泥クジラにいるヌース・ファレナは感情を食べず、代わりに印たちの命を食べているのであった。

リコスは初めからこの事実を知っていたが、真実を知った印たちの事を考えると言って良い事か分からず口を閉ざしていた。
だがリコスとロハリトの会話をチャクロは偶然聞いてしまう。この話は長老会も既知のことであった。
ロハリトに隠しても隠さなくても辛いと諭されたことや、チャクロに話を聞かれてしまったことでリコスは真実を語り、スオウたち無印は初めて事実を知る事になった。

泥クジラの舵が取れるようになった今、今後住民達が泥クジラを離れるという選択肢を選ぶことが可能になったということである。
スオウは泥クジラの歴史を学びなおし、無印たちは短命の印が自分の命の短さを前に絶望せず人生を謳歌できるように、短命の理由を隠し続ける誓いを立てるという「印のための無印の誓い」を知る。

真実を隠すことで平穏を守っていた泥クジラであったが、これからは変わらなければならないと、スオウは印たちに真実を告げる決意をする。印たちに泥クジラから離れ外の世界に出るか、泥クジラに留まるか、短命だからこそ後悔しないよう自由な選択をさせてあげたいと考えた。

スオウは住人達を全員集め、短命であることの真実を話した。
住人達はその真実に戸惑う。

するとシコンとシコクが、無印たちは足手まといの上に自分達が助かるために印の命を使っていたのも同然だと言い出し、スオウを人殺しだと罵って石を投げた。
オウニはシコンとシコクに、戦いで死んでいった印は無印に騙されて無駄死にしたのではなく、皆泥クジラを守るために死んでいったのだと言う。
無印だろうと印だろうと関係なく、真実を知らなかったとしても、死んでいった者達を自分は忘れないと力強く宣言した。

スオウは、歴代の無印たちは皆印を自分達のために印を使っていたのではない。真実を話さなかったのは、短い生涯を恨みながら生きて欲しくなかったからだ。人生が短くとも精一杯謳歌して欲しかったからなのだと訴えた。
そして、これからは全ての情報を皆で共有し、外の世界にいるかもしれない新たな仲間を探し、皆で自由の大地を目指そうと呼びかけた。

リコスは自分が真実を喋ってしまったことで、真実を知ったチャクロが傷ついたのではないかと心配していた。チャクロは落ち込んだが、黙っていたリコスを恨まず、全てをファレナのせいにするのは違うと言った。
リコスは命を削る事になっても、このまま泥クジラでチャクロたちと一緒に居たいと言う。

チャクロたち泥クジラの民は、自分達は泥クジラで生きる泥クジラの子だ。ここに生まれて良かった、皆と出会えて良かった、そしてこの先もずっとそうでありたいと思うのであった。
泥クジラは、ファレナの檻と呼ばれた魔の海域を抜け、スィデラシア連合王国のあるアモンロギアへと舵を向けた。

『クジラの子らは砂上に歌う』の登場人物・キャラクター

泥クジラ

チャクロ

CV:花江夏樹

印。14歳。本作の主人公。
泥クジラの記録係をしており、何でも記録せずにはいられない過書の病(ハイパーグラフィア)。
泥クジラで起きた出来事を細かく記録し、あくまで記録であるとし私情を入れない。
しかし、帝国の襲撃以降は私情を入れた個人的な日記となる。
そしてこの日記はただの記録保持ではなく、世界の人々に自分達が生きた証を残す手記となる。
普段は紙に書いているが、紙は貴重なためか記録とは関係ない個人的な気持ちは壁などに書く。
サイミアの制御が下手で、泥クジラの仲間たちからは「デストロイヤー」と呼ばれている。
しかし帝国が襲撃してきた際にはサイミアを使って戦っており、能力そのものは低くは無い。
サミとは幼馴染で、お互いに両想いであったが、それがお互いに伝わったのはサミの死後であった。
スオウとも幼い頃からの付き合いであるが、思春期の照れやスオウが首長候補であることなどから、スオウに対し敬語で話すようになった。
友人には色々なアイテムを作り出す工房に居る、ロウとネズなど。
帝国とサイミアで戦って抵抗していたことからギンシュに話しかけられ、ギンシュを「ギンシュ姉さん」と呼んだことでギンシュに好かれる。

流れ島(ヌース・リコス)でリコスに出会い、その後オウニに連れられもう一度流れ島へ行き、ヌース・リコスを見る。
その繋がりからリコスの事をいつも気にしており、オウニからは他の住人よりは多少気を許されている。
襲撃でサミを失ったことで自暴自棄になるが、ネリの見せた投影でサミやタイシャに励まされる。
ヌース・スキロスとの戦いでは、スキロスに潜入する突撃メンバーの一人になり、ヌース・スキロスの格であるオリヴィニスからコカロを貰う。

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