おやすみプンプン(浅野いにお)のネタバレ解説・考察まとめ

『おやすみプンプン』とは、2007年~2013年に『週刊ヤングサンデー』(~2008年)及び『ビッグコミックスピリッツ』(~2013年)に連載された浅野いにおによる漫画である。少し内気で自意識過剰、どこにでもいる普通の少年「プンプン」が転校してきた同い年の少女・田中愛子に一目惚れするところから、彼女との関係を軸に彼らの人生が導かれるように破綻していく様が叙情的、かつ実験的な手法とともに描かれる。

自殺した愛子を背負ってどこへともなく歩くプンプンが独白したセリフ。
内気で夢想的、優柔不断で何事にも強く主張しないプンプンが求めた確からしいことは、人知れず消えて誰の記憶からもいなくなることだった。願わくば大好きな愛子の手によって。結局最後まで果たされることがなかったプンプンの倒錯的で、退廃的な願望を表す印象的な一コマ。

「子供の頃は見えないものを見えるって言い張って、見えなくてもどこかにあるって信じる事が唯一の希望のときもあって、今はその過去を捨てる事で一歩前に進んだ気分になってる。」

漫画家として軌道に乗り始めた幸が、かつて「十代の記憶」がテーマの絵画展に出品した天の川が描かれた作品を捨てる際に言ったセリフ。
夢や希望、妄想が入り混じった10代の心によって脚色されたことさらに美しい星空。幸は実際には見たことのない天の川を星空の絵に配置することで自分の理想の世界を表現していた。絵を捨て、そうした夢想的な情景を心の中に描いた頃の自分と決別し、現実の道を前に向かって歩き出す幸。
愛子と手をつなぎ無垢な心で見上げたみそ工場跡地での思い出の星空を眺めながら、自身の死によって破滅的な願望を完結させようとするプンプン。
星空を軸にした二人の対比によって、大人/子ども、現実/理想といった浅野作品に通底するテーマを際立たせる一言になっている。

「ごめんね。僕は嘘つきだよ。」

愛子の死後、プンプンが夢の中で愛子に語りかけたときのセリフ。
「もしあたし達が離れ離れになったとしても、七夕の日にはお互いのことを思い出そうね」。愛子と最後に交わした約束だが、日々の生活をこなそうとしているうちにプンプンの中から愛子の思い出が薄れていく。現実を生き抜くということと、美しい思い出と一歩ずつ疎遠になるということ。読み手としてはいささか極端に思えるほどピュアで切ない一言である。

mo1so2kyo30
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