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k_afreaksのレビュー・評価・感想

ミッドナイトスワン
9

いつか彼女がお母さんになれる日を

新宿のニューハーフショークラブで働くトランスジェンダーの凪沙は、ある日育児放棄されていた親戚の中学生の一果を、養育費目当てに預かりました。
子ども嫌いの凪沙と心を閉ざした一果は、当初ぎくしゃくした共同生活を送っていたものの、接するうちに凪沙に母性が目覚めて凪沙と一果は親子のように心を通わせていきます。バレエの才能があると知った一果のために、自分の身を犠牲にしてでも凪沙が生きようとするストーリーです。

2人の心が近づいていく「凪沙が一果に夜の公園でバレエを教わるシーン」や「凪沙と一果が一緒に食事するシーン」など、愛おしい描写が印象に残っています。一果のバレエ教師に「お母さん」と呼ばれたとき、嬉しさを隠し切れない凪沙が見せた笑顔のシーンも、とてもよかったです。
一果にバレエを続けさせるために男の格好に戻り、倉庫で仕事を始めた凪沙を一果が怒るシーン。そんな一果の頭を凪沙が優しく「よしよし」と撫で、本当の子どものように慰めるシーンに涙が出ました。

監督が何人も取材した、トランスジェンダー当事者の日常の機微を知れたことがよかったうえ、主演の草彅剛さんの引き込まれる演技も素晴らしかったです。マイノリティの生き難さが真正面から描かれ、見ていて苦しくなる場面も多かった中、人間愛が心に強く残った作品に「本当に出会えてよかった」と思えた見応えのある映画でした。

パティ・ケイク$ / Patti Cake$
10

がんじがらめな人生に光を見出す人間賛歌ラップムービー

「ダンボ」とけなされながら、ラップスターになる夢を抱く巨体女子、パティ。物語はパティを取り巻く鬱々とした生活とともに進む。貧困層の、引力に引きずり込まれそうなぎりぎりの生活を、パティの夢見がちな歌詞を背にリアリティをもって突きつけてくる。見どころはパティと心やさしき善き親友、ジェリーとのアツい友情だ。後に最高のチームとなるバスタードとナナを加えた”PBNJ"は、最高のエンターテイメントを感じさせてくれる。もう一つ、この作品の要であるテーマは「母と娘」だ。夢破れ自暴自棄に酒と男に溺れる母を、健気に支え続けるパティ。目が合えば罵倒され、別れた父親の愚痴を垂れ流す母親。分断されてもおかしくない程に荒んだ母娘関係だが、パティは母親を見捨てない。パティは自らの夢を叶えるのと同時に、親友たちの夢、そして母親の閉ざされた過去の夢までにも光を当ててしまうのだ。恵まれない環境に決してくじけないパティ。しかしこの作品の尊さは、その”説教くさくなさ”にある。頑張れば報われるだの親には感謝すべきだだの、金が無いのに夢など追うなだの、そんな悲しいメッセージは一切無い。そして嘘のようなミラクルドリームも起きない。パティはただひたすらに、彼女の人生を生きてみせるのだ。

鬼滅の刃 / Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba
7

言葉選びが面白い作品です。

絵はかなり人を選ぶと思います。今どきの漫画と比較するとかなり線が太いかと。絵に抵抗ない方は読めると思います。
内容はよくある鬼と家族を失った少年の話で新しくもないのですが、それを新鮮なものに感じるのは、作者の言葉選びのセンスだと思います。
冒頭が、「なぜこんなことになったのか」という主人公の少年の問いかけから始まります。
主人公の家族は1話で妹を残し他界してしまうのですが、主人公の長男というひとつのワードが、彼のキャラクターを濃いものにしていきます。ファンの間で「長男力」と言われる程にこの長男力がすごい主人公。どんな苦境にいても長男だからという理由だけで生き残ってるのではないかという程です。
その他のキャラクターも各々面白い言葉を発します。物語自体は目新しくない、作風的に、絵柄も物語も一昔前のような作品なのに、どのキャラクターも本当にイキイキと誌面上で動いているので、新しく感じ、人気が出た作品だと思います。特に主人公の妹は、1話以降セリフが1度もありません。話せないからです。
ですが、この妹の表情だけで感情が読み取れるほどに表情の描き分けが上手いです。とても面白くオススメです。

ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 / The Lord of the Rings: The Two Towers
9

指輪物語の第二弾!戦いのスケールはより壮大なものに!

ロードオブザリングの2作目です。今回の見どころはやはり戦闘シーンになります。1作目でも戦闘はありますが、今回は城の攻防戦になるので戦いの規模が本当に大きいです。敵の策略により味方300人対敵1万人という絶体絶命の状態での戦闘になるのですが、そこで活躍するのが人間のアラゴルンです。誰もが諦めかけていた中で最後まであきらめずに戦おうと先頭に立って指揮をとります。その勇敢な行動に、最初は仲が悪かったドワーフのギムリと、エルフのレゴラスも共闘して戦いに加勢します。この3人がめちゃくちゃ強くて本当にかっこいいです。敵を倒す時もすごく上手なアクションで華麗に倒してくれます。敵1万人なので相当な量の敵なのですが、今作品もCG技術がすばらしくて、本当に1万人と戦っているかのようなスケールの壮大さを味わうことができます。
また今作品は旅の仲間がバラバラに活躍をするのですが、指輪をもっているフロドの心理描写も必見となってきます。温厚なホビット族さえも指輪の悪の力により闇に染まりかけていきます。そのフロドを支えているのがフロドの付き人のサムです。サムのフロドに対する忠誠心と友情が1作目よりも深く描かれている作品です。

こぐまのケーキ屋さん
9

癒してくれるケーキ屋さん

こぐまがケーキ屋さんの店長として切り盛りしている中、一人の青年が店員として一緒に働き始めます。店長はもともと森の中で暮らしていた普通のくまでしたが、天才パティシエだったおじいさんに出会い、ケーキ作りの楽しさを教わり、自分でお店を開いたのです。天然で愛らしい店長が、生活していく中でたくさんの素敵なこと、大事なことを学んで少しずつ成長していってます。一番好きなのは、2巻の書き下ろし漫画で、海に向かって(世界中の人に向けて)店長が叫ぶ場面です。店長のセリフにちょっと感動して泣きそうになっちゃいました。
かわいいタッチの絵柄とお話の内容がとてもよく合っていて、優しい世界観に癒されます。自分の予想外のことが起きてガーン!とショックを受けたときの店長の表情や、ちょっと難しい言葉を言えない店長、店員さんを大切に思っている店長がかわいくて大好きです。まるで絵本のように子どもでも気軽に読める内容です。本の紙質もこだわっていて手触りが良いし、『この漫画を大切に作りました』という感じが伝わってくるようです。私は寝る前によく読んでいます。これを読むと優しい気持ちになれるので、良い気分で眠れます。20代女性にとくにオススメです。