パティ・ケイク$ / Patti Cake$

k_afreaksのレビュー・評価・感想

パティ・ケイク$ / Patti Cake$
10

がんじがらめな人生に光を見出す人間賛歌ラップムービー

「ダンボ」とけなされながら、ラップスターになる夢を抱く巨体女子、パティ。物語はパティを取り巻く鬱々とした生活とともに進む。貧困層の、引力に引きずり込まれそうなぎりぎりの生活を、パティの夢見がちな歌詞を背にリアリティをもって突きつけてくる。見どころはパティと心やさしき善き親友、ジェリーとのアツい友情だ。後に最高のチームとなるバスタードとナナを加えた”PBNJ"は、最高のエンターテイメントを感じさせてくれる。もう一つ、この作品の要であるテーマは「母と娘」だ。夢破れ自暴自棄に酒と男に溺れる母を、健気に支え続けるパティ。目が合えば罵倒され、別れた父親の愚痴を垂れ流す母親。分断されてもおかしくない程に荒んだ母娘関係だが、パティは母親を見捨てない。パティは自らの夢を叶えるのと同時に、親友たちの夢、そして母親の閉ざされた過去の夢までにも光を当ててしまうのだ。恵まれない環境に決してくじけないパティ。しかしこの作品の尊さは、その”説教くさくなさ”にある。頑張れば報われるだの親には感謝すべきだだの、金が無いのに夢など追うなだの、そんな悲しいメッセージは一切無い。そして嘘のようなミラクルドリームも起きない。パティはただひたすらに、彼女の人生を生きてみせるのだ。