南極料理人

南極料理人

『南極料理人』とは、西村淳の著書『面白南極料理人』『面白南極料理人 笑う食卓』を原作とした、2009年の日本映画である。海上保安庁に勤務する「西村」は、同僚スズキの代理で、南極観測隊として派遣されることになった。そこでは、様々な個性やクセを持った7人の隊員と共同生活を送らなければならない。初めは打ち解けずトラブルもある隊員たちだったが、次第に南極での生活を楽しみ始めることとなる。この映画は人との関わりを考えさせつつも、くすっと笑えるポイントが随所にちりばめられた、ヒューマンコメディ作品である。

南極料理人のレビュー・評価・感想

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南極料理人
8

家族の話だった。

ラーメンにおにぎり、どれもおいしそうでした。南極で仕事をするというのは本当に大変なことだと思います。ずっとそこにいなきゃいけないし、絶対単身赴任になるだろうし、もとさんの奥さんが怒る気持ちがわかります。もとさんはしたい仕事が南極での仕事だったから仕方がないと言っていたけど、ほんとそうなんだろうなと思いました。もとさんだって、奥さんやむすめさんをほったらかしにしたいわけではないのでしょう。奥さんもそれはわかっているから、行くのは許したけど、でも腹が立っていたんだろうなと思いました。
また、若い人は振られていたけど、それも仕方がない気がしました。
主人公の料理人の家族は結構さっぱりしていて、いい人たちだなと思いました。南極基地のみんなの話でもあり、家族の話でもあったと思います。一つ、不満があるとすれば、主人公の話で息子が全然話題にのぼらないことです。娘は、娘はって話をしていたけど、本当は絶対息子のことも気にしていたと思います。そんなまだしゃべらないうちのことだったとか、2人目だからでもあそこまで無視したつくりにしなくてもいいと思いました。南極から帰ってきた描写で息子もいて、あ、息子っていたっけと思ってしまいました。

南極料理人
7

ハードで優しい南極仮想体験!

何となく選んだこの作品。
南極というからにはホワイトアウトとか瀕死状態とか、精神ギリギリを攻めてくるかと思いきや、何て優しい作品なのかと!
南極が舞台なので、もちろん日常生活からは想像できない凄まじい環境が描写されているものの、
視聴者から離れることなく「確かに。それだけ寒いんだからそうなるよね!」と冷静に受け止められる優しい描写。
特に南極勤務の料理人に焦点を当てているので、自分自身の日常と南極とを優しく繋いでくれて一緒に生活している感覚になる。
しかも出てくる料理が一つ一つめちゃくちゃ美味しそう。自分の料理も見直さなきゃと静かに見直してしまった。
人物の描き方もとても魅力的で、やたらリアル。観た後に調べてみたら、実際に南極で料理人をしていた方の書籍を映画化していたということでかなり納得。
キャストもそれぞれぴったりで、リアルさとポップさとシュールさと全てがぎっしり。何なら仲間に入りたいくらい、心地よい空気感が漂っていた。
淡々と描かれているので、途中飽きるかなと思いきや、なんてことなく最後までしっかりと見ることができた。
しばらく経ったら、多分もう一度観たくなるような、優しくも中毒性のある作品だと感じた。

南極料理人
9

何も起きない、でもそれがいい

日本から遠く離れた南極、そこに南極観測隊として派遣された8人の男性たちの約一年を描いた作品。
寒過ぎてペンギンやアザラシはおろか、ウイルスですら生存不可能な極寒の地にあるドームふじ。麻雀や漫画など娯楽もごく限られたものしかない。その中で日々の楽しみとなるものが食事だ。極寒の中で作業した後に食べるほかほかのおにぎり、隊員たちのリクエストで高級食材の伊勢えびはエビフライになり、隊員の誕生日には肉汁たっぷりな肉の丸焼きが出てくる。贅沢な食材を使った料理はどれもとてもおいしそうだ。しかし本当においしそうに見えるのは、持ち込んだ分をすべて食べきってしまい、あり合わせの材料で試行錯誤して作ったラーメンだったり、料理人・西村のお守りが採掘場の穴に落ちてしまい、ふて寝してしまったときに他の隊員たちが作った鶏のから揚げだったりする。特別なものもいいけれど、普通が一番。そう思わせてくれる映画である。この映画には大きな事件は何も起きない。ただ、仕事をずる休みしたり、仕事仲間と険悪になったり、恋人に振られたりと小さな事件は起こる。実際の生活もそんなものだ。映画で日常の中の非日常を体験するものいいけれど、非日常の中の日常を体験するのもいいものだ。見終わった後、きっと家族が作ってくれた料理が恋しくなるはずだ。

南極料理人
8

非日常での日常、ご飯を食べるのが楽しくなる映画

南極調査基地のドームふじ基地で実際に料理担当として過ごした本人の書籍をもとにした映画であり、基地での日常をご飯を中心に描かれた作品です。
この映画見たことが無い人に面白さを伝えるのはすごく難しいんですよね。なにせ南極の調査基地で8人の男たちの日常風景をご飯を中心に描いた作品なんですから。世界の危機を救うわけでもなく、未知の発見を目指す一大プロジェクトでもないんです。起こる事件といえばシャワーの水使いすぎとか、通常のプロジェクトとか、サプライズの誕生日会か、ラーメンを作るぐらいしかありません。それでもその狭い基地で生活している隊員たちにとっては、大事件だし一大プロジェクトなんです。その全力の姿を見ていると大爆笑はしないまでも終始ニヤニヤしてしまいます。
ご飯を食べてるシーンが美味しそうなんですよ。食べている物がおにぎりでも伊勢えびのエビフライでも、なにがどう美味しいなんて解説は一切ありません。只食べているだけなんです。だけど美味しそうに食べるんです。料理のシーンも丁寧に手元を映してくれています。
最後の朝食のシーンでは誰も座っておらず、料理も並んでいません。このテーブルに次々と料理が運ばれていき、最後に全員が席に着き食事がはじまるのですが、このシーンはワンカットの長まわしで映し出されるんです。一番何てことないシーンなんですが、一番この映画らしいシーンでした。

南極料理人
9

キャストが最高です

エッセイが原作の映画です。南極のドームふじ基地に観測隊の食料担当として派遣された主人公のストーリーです。登場するご飯がとにかくおいしそうで、見ているだけで楽しい気持ちになれます!この映画の冒頭で長い机で食事するシーンがあって、そこのカメラワークがものすごく好きです。上から撮る構図がこれで好きになりました。
キャストも素晴らしいです。堺雅人さん、生瀬勝久さん、きたろうさん、高良健吾さんなどとても雰囲気の良いメンバーが揃っています。呑んで騒いでいるシーンなんか本当に楽しそうで混ざりたいぐらいです。
ドームふじ基地のセットもリアリティがあります。原作がエッセイなのでもちろんストーリーや設定に矛盾がなく、余計な疑問を持たずに最後まで見れます。
セリフまわしがナチュラルでわざとらしいシーンが全くなく、私はそれがすごく気になるのでストレスなく見れて良かったです。余計なセリフがない感じ。顔の演技をしっかり楽しめるシーンもありつつ、その理由がしょうもなかったりしてあたたかいコミカルさがあります。キャストの誰も演技が浮いていない感じがしました。これは地味だけどかなり重要なポイントではないでしょうか。