心の琴線に触れる作品です
暗くて不気味、近寄り難い「貞子」、爽やかで良い人「風早」というレッテルを貼られた高校生二人が、悩みもがきながら成長していく物語です。
不器用ながらもまっすぐ誠実に相手に向き合う姿、相手に心が届いた瞬間…。涙無しでは読み進められません。
どのキャラクターも心情が丁寧に描かれていて、みんな何かしらに悩んだり、どこか心の弱さがあります。きっと自分や友達に重なるところもあって、愛おしい気持ちになるのではないでしょうか。
千鶴と龍の2人は幼馴染ということもあり、恥ずかしがっているところも素敵です。2人の駆け引きの無い真っ直ぐな気持ちは応援せずにはいられません。
優しくて思いやりのあるあやねちゃんは自己肯定感がとても低くて、どんなに周りが褒めてくれても自分を好きになれないという心情に、共感できるところも多かったです。
大人になっても、高校生くらいの頃の思い出は、宝物のように覚えている方が多いんじゃないでしょうか?
小さなことに一喜一憂して、楽しいことも赤面するほど恥ずかしかったことすら、宝物。
「高校生」という繊細で敏感でまっすぐな時期だからこそ感じ取れる大切なモノが、この作品にはギュッと詰まっています。
なかなかの長編ですが、全体を通して寂しさと優しさに満ちています。みんなと一緒にいるのに何だか寂しい、時間が止まってほしいと思う程かけがえのない瞬間、友達では埋まらない心…。そんな想いがキャラクター達を突き動かしていています。
読んで損はない作品です。