容疑者Xの献身 / The Devotion of Suspect X

『容疑者Xの献身』とは、西谷弘が監督を務め2008年に公開された、東野圭吾の小説を映画化した作品。東野圭吾の短編小説を原作としたテレビドラマ『ガリレオ』の劇場版として同ドラマのスタッフやキャストにて制作された。興行収入は49.2億円を記録。大学の准教授・湯川学(ゆかわまなぶ)役を演じる福山雅治にとっては初の主演映画となった。
本作は第33回報知映画賞で高校の数学教師・石神啓哉(いしがみてつや)役を演じた堤真一が主演男優賞を受賞。第32回日本アカデミー賞で優秀作品賞、堤真一は優秀助演男優賞、石神の隣人で弁当屋「べんてん亭」の従業員・花岡靖子(はなおかやすこ)役の松雪泰子が優秀助演女優賞、作品部門で話題賞を受賞した。
天才数学者の石神が、秘かに愛していた隣人・花岡のために、自分に罪を全て着せるように仕向けていく。そのアリバイ工作の解明に天才物理学者の湯川が挑むという、天才同士の頭脳戦が描かれるサスペンス映画である。

容疑者Xの献身 / The Devotion of Suspect Xのレビュー・評価・感想

容疑者Xの献身 / The Devotion of Suspect X
10

東野圭吾が贈る 儚くも美しい愛のミステリー「容疑者Xの献身」を紹介!

今回紹介させて頂くのは、東野圭吾作『容疑者Xの献身』です。

まず簡単に紹介させていただきます。

東野圭吾の推理小説でガリレオシリーズの第3弾にあたります。
国内の主要ミステリランキングである『本格ミステリ・ベスト10 2006年版』『このミステリーがすごい!2006』『2005年「週刊文春」ミステリベスト10』においてそれぞれ1位を獲得し、3冠と称されました。またそれから他2賞も取り、最終的に5冠となりました。

このように輝かしい受賞の数々。世間からの賞賛の声を欲しいままにしている推理小説になります。

それではあらすじを紹介していきます。

舞台は東京。
アパートに住む花岡靖子と娘の美里を軸に物語は進んでいきます。
娘と平穏な日々を送っていた靖子と美里ですが、ある日急に家を訪れてきた元夫、冨樫慎二と喧嘩になります。

そして暴力を振るわれている母・靖子を助けるために娘の美里は後ろから慎二を殴り、殺害してしまいます。

ことの重大さに怖気付き、パニック状態の二人にまた一人訪問者が来ます。
その男は隣人の天才数学者・石神でした。

石神は物音から、訪ねてきた人物と喧嘩になり殺害してしまったことに気づき、手を差し伸べてきます。
頼ることしかできない二人は見ず知らずの一人の男・石神に家族の命運を託すように指示に従っていきます。

そして、日は経ち、旧江戸川にて一人の遺体が発見されます。
その男は『冨樫慎二』と断定され、内海・草薙刑事は捜査を進め、ある容疑者に辿り着きます。
それが『花岡靖子とその娘・美里』です。

動機・人物との関係・そして何より刑事の勘がこの二人を犯人であると示してくるのです。

だが、それよりも不自然なほどに強力なアリバイが捜査の行く手を阻みます。

困り果てた二人は協力者を訪ねる。
その男とはこのガリレオシリーズの主人公『天才物理学者・湯川学』 です。
内海刑事は事件の概要を説明するとともに、容疑者または関係者の名前を挙げていきます。
そこで不意に出た石神の名前に湯川が過剰に反応するのです。

そう。二人は学生時代の盟友(ライバル)でした。
また湯川が初めて『天才』と思った人物こそ『石神』であったのです。

このことをきっかけに湯川は石神に会うことにします。

『容疑者』としてではなく『友達』として。『捜査』としてではなく『再会』として。

久しぶりの再会、また久しぶりに話が合う人に話が弾む二人。
やはり二人は紛れもない『友人』なのです。
昔と何も変わっていないと語り合う二人。

そんな再会を経て、湯川はこの事件の捜査に協力することになります。
ですが、事件は解決に向かうにつれて湯川が知りたくない事実へと誘うのでした。

湯川が気づいてしまった、石神のほんの些細な『変化』。
石神の指示、そして存在そのものに恐怖を感じるようになりながらも指示に従うしかない 『花岡靖子とその娘・美里』。
見ず知らずの隣人を殺人の容疑から守り続ける石神の真意とは。
そしてどのように二人に完璧なアリバイを作らせたのでしょうか。

「愛」と「正義」。人間として守り続けたい二つの思い。
その両者が対立した時にあなたはどちらを優先しますか?

最後に明かされる、石神が仕掛けた天才級のトリックとは。
儚くも美しく切ない究極のサスペンスをお楽しみください。

容疑者Xの献身 / The Devotion of Suspect X
9

天才VS天才

「容疑者Xの献身」は、東野圭吾さんの小説を原作にした映画です。以下、ネタバレを含みます。

「偶発的に起きた事件を隠そうとする数学教師」と「真実を明らかにしようとする化学者」の天才同士が対決する話です。全体的にシリアスな雰囲気で笑える場面は少ないです。数学教師の石神(堤真一さん)は、好きな女性(お弁当屋さんの店員・松雪泰子)の罪を隠すために殺人を犯します。さらに好きな女性が別の男性と仲良くしているとその男性のことを調べます。殺人も調査も徹底的に行うので、とても怖いです。また、終盤で「別の男性が信用に値する人であり、自分が全ての罪を被るからその男性と幸せになって欲しい」というメッセージを残して警察に捕まります。「どんなに好きな人でも、私には絶対に無理だ」と感じました。元カノには「元気でいてほしい」とか、「幸せな生活をおくってほしい」とは思います。犯罪、しかも人を殺すなんて、想像もできないです。石神は「人生に絶望していたので、出来た事かな」と感じました。最終的に女性は「人を犠牲にして自分達だけが幸せになる」という結末に耐えられず、自ら出頭して、石神の計画は失敗に終わります。「せめて、服役後、石神と女性が一緒に生活できれば良いなぁ」と映画では描かれていない部分を想像しました。最後はテーマ曲の「最愛」がながれてスタッフロールへと入ります。「最愛」の曲調と歌詞が映画の内容とぴったりフィットするので、しっかりと映画の余韻を楽しむことができます。

容疑者Xの献身 / The Devotion of Suspect X
10

この作品の真の主人公は湯川ではない

東野圭吾原作のガリレオシリーズ初の劇場版にして、邦画の最高傑作の作品。
特筆すべきは湯川の大学の同級生で、現在は高校の数学教員を務めている堤真一演じる石神の存在だ。
原作の中で石神は湯川と対極の冴えない存在として描かれていたので堤真一を配役したのは美化しすぎではないかと鑑賞前は心配になったが、全くの杞憂だった。スクリーンの中の彼は完全に堤真一ではなく「冴えない数学教員の石神」そのものだった。
その石神が暮らすアパートの隣人である花岡親子を思うあまりに起こした行動は正に献身以外の何物でもない。善悪ではなくただただ純粋に彼女達を助けたいと思う気持ちが彼を犯罪へと駆り立て、残忍な方法で自らが盾となり2人を守ろうとした。
友人が凄惨な殺人に手を染めてしまった事に気が付いた湯川が内海に対して「僕がこの謎を解いた所で誰も幸せにならない」とこぼす姿には、いつもの「事件の理論だけを知れればそれで良い」、というドライな心情は欠片もない。
事件が明るみとなり連行される際、全てを悟った花岡靖子が石神に対して涙ながらにかけた「私も罰を受けます」という言葉に、今まで全く感情を表に出す事のなかった石神が「どうして」、と言葉にならない声をあげ、嗚咽しながら連行されていく姿は救い様のない悲しさと共に石神の人間らしい一面、そして数学の天才と称された彼が唯一愛だけを解明する事が出来なかったという事実が表れている。どうしても涙なしには見る事の出来ない悲しい結末だ。

容疑者Xの献身 / The Devotion of Suspect X
7

警察の殺人事件の捜査協力をするうち、自分の大学時代の同級生石神が関わってきて彼と頭脳比べをすることになる物理学者湯川学の人生の無常

なんともやるせない話である。天才的な頭脳を持つ数学者が、高校教師の職に生きがいを見出せず、人生の生きる気力も失って最後に自分を賭けたのは隣に越してきた親子を守るための偽装殺人トリックだった。もし私が石神だったら自分の持つ数学の天才的な頭脳を活かして大学の研究室に残り研究を続けるとか、高校教師をやっているのだったら未来の天才となる資質を見出して高校生たちの数学力を伸ばすことに生きがいを見つけるとか、いくらでも選択肢はあり自殺まで考えるくらい追い詰められることはなかっただろうと思う。首を吊ろうとしていたまさにその時、隣に越してきた花岡親子の挨拶に気をそがれ、近くでお弁当屋をやっている花岡に惹かれていく。親子を守るのだって犯した殺人の偽装工作ではなく、ちゃんと自首を勧め、服役してくるまで待っていてあげてそれからの苦労を共に歩む生き方もあったはずだ。花岡親子の犯した殺人だって夫の暴力を防ごうとした事故過失なのだから情状酌量の余地も残っていたはずだ。それを自分が罪をかぶり一人死刑を待つという自己破滅的行動に出てしまった。石神が描く花岡親子の将来には自分の姿はなく、ただ自分が身代わりの犠牲になって親子の将来を守るというものである。だが果たしてそれで将来花岡親子が幸せに暮らせるだろうか。自分たちの罪を石神に着せたという強い後悔をずっと引きずっていくに違いない。真相を暴いた湯川学のセリフだが、君のその天才的頭脳をこんなことのために使うなんてとても残念だ。大学時代の親友と本当は一杯酌み交わしながら数学談義でもして過ごしたかったろうに、親友の人生を左右する重い決断を下さなければならなかった湯川学の人生の悲哀。唯一の救いは花岡親子が自首してきて石神の計画をぶち壊したことくらいではないだろうか。この事件で誰も幸せになったものはなく、苦い人間の一面を強く描き出した作品であった。

容疑者Xの献身 / The Devotion of Suspect X
3

ひどい話。

東野圭吾のガリレオシリーズの映画化です。あまり、湯川さんが目立つ話ではなく、犯人側に焦点を当てた話です。なんか、この話を美談だという人もいるけど、はっきりいってすごくひどい話だと思います。1人、殺される必要のない人が殺されているのに、それをあまり大したことないみたいな感じにして、そこまでするなんてすごい、感動とか言っている人を見ると、はあ?と思います。女の人に殺された人はひどい男だし、襲われてた面もあるんだから、そんなに罪が重くならないように支えてやればいいんだし、だいたい大した関係のない男にあそこまでされたら気持ち悪いです。それに映画は男を堤真一がしていますが、彼だとカッコ良すぎます。原作は、女が相手にしないような男で、それならそんなこともするかもなと思うし、そんな男が見返りを求めないところが良かったと思います。堤真一だと、いくら暗かったって、1人の女に執着する必要がないし、なんかおかしいなと思ってしまいます。そりゃ映画的にはかっこいい人を使ったほうが観客動員数を伸ばせそうですが、ここは思い切ってバイプレーヤーをつかってほしかったです。かっこいい担当は福山くんだけで十分だと思いました。そうしていれば新しい映画て感じですごく良かったと思います。