剣で名をはせた男が抱えた孤独と葛藤
本作は『スラムダンク』の作者として国内外問わず人気のある漫画家、井上雄彦が、吉川英治の「宮本武蔵」を原作として、講談社モーニングで1998年から連載されている人気歴史漫画だ。
宮本村の山に一人で住む17の歳新免武蔵(後の宮本武蔵)が、幼馴染の本位田又八と共に関ヶ原の戦いに参加し、2人が加勢した西軍の敗北となったところから物語は始まる。
武蔵は剣術で有名な新免無二斉の息子で、幼いころから厳しい父に憧れと恐れを抱き、いつしか父を超える唯一無二の強い剣士になりたいと、強く志すようになる。
武蔵は作中で様々な武人たちと戦っていくのだが、戦闘シーンや武蔵の下剋上ストーリーだけが見どころではないのが本作の魅力であろう。
武蔵の中にある孤独や、人を斬ることへの心の葛藤、本当の強さとは何か、という大きなテーマが、読む人を長年魅了し続けている理由だ。
武蔵だけでなく、敵役として出てくる人物も皆それぞれキャラクターが立っていて、性格や立ち振る舞いまで非常に細かく表現されている。
ただひたすら強い者をギリギリのところで倒して、次はもっと強い者をまたギリギリで倒しての連続、というストーリーより、繊細な感情描写も欲しい!という人には、強くおすすめできる作品だ。