強さって、なんだろう?
伝説の剣豪、宮本武蔵の物語を「スラムダンク」で有名な井上雄彦が、吉川英治の「宮本武蔵」を原作に描いた作品。
物語の概要は、現在の岡山県北部、美作の国で生まれた宮本武蔵が、剣豪を目指し諸国を流浪して行く中で、本当の強さとは何かを見つけていく物語。
圧倒されるようなダイナミックな画力と、宮本武蔵の常人には真似できない生き方様が、読者を物語に引き込んでくれるだろう。
筆者が感じたこの漫画の注目すべきポイントは、旅が進むにつれて武蔵の心境が様変わりしていく過程を体感できる点である。
物語の序盤、中盤、終盤(この漫画はまだ完結していないが)と進むにつれ、様々な強者と出会い立ち会う中で、
野獣のように人の命を奪っていた武蔵が徐々に命の人の大切さを知り、人の命を奪うことは、斬り合いとはいえ果たして正しいことなのか?
罪の意識と剣の道を目指すことへの矛盾、その葛藤の中でどう生きるか、本当の強さとは一体何なのかを見つけていく姿を是非見ていただきたい。
そしてこの漫画は、さらにもう一人の主人公として、武蔵のライバルと知られている佐々木小次郎の物語も描かれている。
関ケ原の戦いでの二人の邂逅や、小次郎が聴覚に障害を持っている点など、オリジナルを感じさせる要素も数多く加わっているため、
完全な史実に基づく物語ではないと思われる。しかし、それ以上に一読の価値がある作品である。
特に何かひとつの道に志を持っている方、これから持ちたい方、特別になりたい方は、是非読んでみてはいかがだろうか。