大人気漫画家が描くリアルな宮本武蔵
青春漫画の金字塔『SLAM DUNK』の作者である井上雄彦が、吉川英治原作の『宮本武蔵』を題材に人間の深部をリアルに描く人気漫画。ただ、井上氏の興味範囲の広さや時間への概念、健康問題などにより2015年から休載に入っている。
作州で生まれ育った宮本武蔵は、同郷の友人である本位田又八と共に天下分け目の大戦、関ヶ原の戦いに赴くが敗走し、浪人(バガボンド)となる。「面白そう」というただの興味本位で戦に志願した武蔵であったが、幾多の強敵と戦うことで自分が本来持っていた「天下無双になる」という願望を抑えきれなくなり、自分よりも強き者を斬り続けていく。そんな折、宝蔵院で余生をおくる槍の使い手である胤栄や、「無刀」で一国の主となっている柳生石舟斎と出会い、斬り続けることが果たして天下無双につながるのか、武蔵の中で疑問が生まれ始める。心の内が葛藤にある中でも、ひたすら強敵を求めて旅を続け、強敵を殺めていく。
武蔵の想い人であるおつう、会う度に武蔵に生き方を問い続ける僧・沢庵、又八の母であるおばばなど、周りの人間たちの成長も魅力のひとつ。人を殺めていくシリアスな描写がある一方、武蔵や彼の理解者らが持つコミカルな感情表現もあり、読み始めたら止まらなくなる至高の漫画だ。