すべての描写に心がギュンとする
私がオススメしたいのは新海誠監督の映像作品、「言の葉の庭」です。
新海誠監督といえば、2016年公開の「君の名は。」や、2019年公開の「天気の子」を追い浮かべる方が多いかもしれません。
まずは概要です。「言の葉の庭」は、2013年公開の作品になります。主な登場人物は、靴職人になることを夢見る男子高校生と、社会の中でうまく生きることができなくなってしまった高校教師の女性。雨の日がそんな彼らを繋ぎます。映画となると長いイメージがありますが、「言の葉の庭」は40分程度のショートムービーで、気軽に鑑賞することができます。
次に、私のオススメポイントを2つ紹介します。1つめは、圧倒的な映像美です。新海誠監督の作品はその描写の美しさで名高いですが、この「言の葉の庭」も例に漏れず、どのカットも繊細で美しい描写にあふれています。自然も、高層ビルも、ベランダの枯れた植物でさえ、すべてが「作品」として洗練されています。
2つめは、対照的な2人の登場人物です。大人になるとはどういうことなのかをわからないでいる高校生。がむしゃらに生きる中で、彼には彼の悩みがあります。将来への不安、自分の思いと他者の願いに葛藤することもあるでしょう。一方で、大人になるとはどういうことなのか、社会の現実を突きつけられ、その波に揉まれてしまった高校教師。すべてが怖くなってしまって、何を取り柄に生きていけばいいかを見失った彼女にもまた、彼女の悩みがあります。すっかり弱くなってしまった自分が情けなく感じて仕方がないことでしょう。そんな、違った境遇にある2人の思いを、それぞれの視点で寄り添うことができます。彼ら視点の台詞も多く、察することが苦手な方でも彼らの思いを十分にくみ取ることが出来るでしょう。特に年齢が近い若い方は、高校生と社会人両者の気持ちに共感することができるかもしれません。
鑑賞終了後には、とても暖かく穏やかな気持ちになります。2人の決断を最後までぜひ見届けてください。ちなみに、小説版ではさらに細かな心情描写や、気になる彼らの未来についても言及がされています。そちらもぜひ。