雨宿りから始まった“孤悲”
靴職人を目指す男子学生のタカオは、雨の朝は学校をサボって新宿御苑で靴のスケッチを描いている。
そこで偶然出会った年上のミステリアスな女性ユキノと雨の日のベンチで逢瀬を重ね、心を通わせていく。
あの時感じた日常のふとした一瞬を切り取る、新海誠のテクニックが冴えわたる作品。
作中ではBGMのピアノと環境音の描写で登場人物の心情を際立たせ、46分の長さで過不足なく見事に表現されている。
「あの人に会いたいと思うけれどその気持ちを抱え込んでいるだけではガキのままだ」。
バイトをしながら靴職人になるための努力を惜しまず、現実にもしっかり向き合うタカオは賢く大人びている。
「私、まだ大丈夫かな」。
仕事や人間関係に躓き、動けないでいる成人女性のユキノは自分の至らなさばかり目につき、心身に影響が出てしまう。
キャラが全く異なる二人を対比させて学校で再会する展開は、テンポが良くストーリーに引き込まれた。
疲れきったユキノと厳しい現実から脱却しようと自分の目標に向かってひたすら走るタカオの切ないストーリーは、必見。
それにしても、思いを寄せる年上のお姉さんとの会話にうつつを抜かさず、自分の目標に向かってひたすら走る男子学生は稀少。