良くも悪くも人間らしさが露呈した映画
作は「映像が奇麗」だと評価されることがあるが、私は人間模様を評価したい。
舞台は新宿。靴職人を目指す高校生・孝雄と心身ともに疲弊した女性教師・雪野は時同じくして新宿御苑で出会った。お互いに学校、会社をサボった雨の日の庭園。次も、また次も、と雨の日に出会う二人は惹かれあっていく。
設定が非常によくできている。
・雨の日の新宿
・都会にぽつりと存在する新宿御苑
・そのなかに安らぎを求める悩める男と女
互いに不器用なのは生き方だけでなく、性格である。なぜかといえば、夢追う孝雄は大人に反発しつつも現状を受け入れようと苦しみ、社会の枠からはずれた雪野は立ち直ろうとしつつも一人で苦しんでいる。そんな彼らに必要だったのは心安らぐ時間、そして人間だったのだろう。
心の開ける人間が身近な人とは限らない。その現実はネット社会が物語っている。孝雄の求めたものは理解してくれる大人。その理想は”母”である。しかし肝心な実母は遊び呆け頼りにならない。孝雄は雪野という大人の女性に惚れていく。
雪野の求めたものはすべてを受け入れてくれる人。孤独感、罪悪感に苛まれた雪野には癒され笑う時間が必要だった。それが孝雄。
彼らは親密になればなるほど、その差に気付いていく。高校生の孝雄、女性教師の雪野。年齢も違えば社会的地位も違う。生きている場所も異なる。共通するのは生きていく支えを求めることのみ。はたしてともに生きていけただろうか。
鑑賞後には都会のじめじめとした雨に一点の光を差すような、すがすがしい気持ちを味わえるかもしれない。