FALL/フォール

FALL/フォール

『FALL/フォール』とは、2023年に公開されたサバイバルスリラー映画。監督はスコット・マン。出演はグレイス・フルトン、バージニア・ガードナー、メイソン・グッディング、ジェフリー・ディーン・モーガンなど。落下事故で夫を亡くしたベッキーを元気づけようと、親友ハンターはクライミング計画を立て、現在は使用されていない超高層テレビ塔に登ることに。2人は頂上へ到達したが、老朽化した梯子が突然崩れ落ち、鉄塔の先端に取り残されてしまう。地上600メートルの超高層鉄塔に取り残された2人がどうなるのか、目が離せない作品である。

FALL/フォールのレビュー・評価・感想

FALL/フォール
7

終始、高所と展開にハラハラドキドキする

主人公ベッキーの夫ダンが、フリークライミング中に落下し、ベッキーの目の前で亡くなってしまう。その事故が原因でベッキーは憔悴してしまうが、親友のハンターに半ば無理やり連れられる形で、今は使われていない地上600メートルのテレビ塔の頂上まで登らされる。
設定には無理があるかもしれないが、ストーリーがさくさく進むので観ていて違和感を感じなかった。
いざテレビ塔を登るときに2人は塔を見上げるのだが、高所恐怖症の人だったら、「これ登るの…」と絶望感を感じるかもしれない。
ベッキーとハンターが塔を登りだすと、老朽化がすすんでいる鉄塔はきしんだ音をたてる。きぃ…きぃ…と不穏な音は、登り進んでいく2人が無事にてっぺんにたどり着けるのか、観る者を不安にさせる。さらに鉄塔の連結部分のクギが、2人が登り進めるときの揺れではずれてしまうのだ。
そんな不安をかきたてられるところに、ベッキーとハンターはエッフェル塔の高さくらいまで登っていく。見下ろせば随分と建物などが小さく見えて、こちらの足元もすくむような気分になる。2人はさらにこの脆い鉄塔を登っていき、ついにてっぺんまでたどり着くのだが、その映像が高所すぎてゾクゾクしてしまう。
ベッキーとハンターはそこでダンとの決別をし、帰ろうとするのだが、なんと鉄塔のはしごが壊れて帰れなくなってしまう。2人はそこで救出を待つのだが、ドローンを飛ばすも充電がなくなったり、非常用の簡易花火を打ち上げるも無視されたりと非情な事態が2人を襲う。
終始シンプルなストーリーながらも、だからこそ地上600メートルから取り残された恐怖がリアルに迫ってきて、あっという間に終わってしまった作品だった。

FALL/フォール
6

高所恐怖症の人には注意!ハラハラドキドキさせられる2時間

最愛の夫を亡くし立ち直れない主人公が、友人と共に登った地上600mのテレビ塔に取り残される、というサバイバル映画です。タイトルとメインビジュアルから想像していた展開を良い意味で裏切る、ハラハラドキドキさせられる2時間でした。場面展開も少なく、ほぼテレビ塔の頂上というワンシチュエーション、登場人物も少なくシンプルな作品。そうであったにも関わらず、映像だけでヒヤッとさせられるシーンや、想像を超えるクライマックスの展開に、常に手に汗握る状態でした。テレビ塔に登るシーンや高いところから落ちるシーンも多くあり、高所恐怖症の方には注意が必要です。かなり高いテレビ塔に登るという無謀な行動なのに軽装備である点や、立ち入り禁止のエリアに不法侵入する点など、ツッコミ所が万歳の設定ではありましたが、結果として楽しく視聴することが出来ました。生きて帰るための手段が1つずつ失われていく中、友人と泣き夫の秘密を知ってしまい、極限状態になった主人公と友人は、どう考えどんな行動を起こすのか、生きて帰ることができるのか。恐怖に恐怖が重なる現実離れした内容ではありますが、スリルを求める人やサバイバル映画が好きな人におすすめの作品です。

FALL/フォール
8

サバイバルスリラー映画ハラハラドキドキ!高所恐怖症の方は覚悟してみてください

主人公の女性ベッキーは、フリークライミングが趣味ですが、夫のダンともにクライミング中にダンが滑落し死んでしまい、ショックを受けて立ち直れなくなってしまいます。
そこでベッキーを心配した友人のハンターは、ベッキーを励まそうと変わったフリークライミングを一緒に行おうと計画を立てます。その計画とは600メートルの高さのテレビ塔を2人で登るという危険なものでした。
ハンターはダンの死のショックに深さから普通の方法では立ち直らせるのは難しいと考え、あえてリスクの高いクライミングに挑戦させようとしたのです。そしてベッキーもハンターの励ましで勇気をもって、この困難なクライミングに挑戦します。
いざクライミングが始まるとベッキーもやる気を出してハンターとともにテレビ塔を登っていきますが、老朽化したテレビ塔の階段が途中で崩壊して、2人は降りれなくなくなってしまいます。2人はテレビ塔に取り残されますが、砂漠の真ん中にあるテレビ塔に人がいることなど知るはずもなく、絶望します。しかしたまたま通りかかった車に上から助けを求めますが、車の連中は2人に気づかず希望を失いそうになります。それでもなんとか救助を求めようと携帯してきたドローンを飛ばして、この状況を人に知らせようとしますが次々に困難が襲い掛かるのです。

FALL/フォール
7

高所恐怖症の人は閲覧注意!上空600mに取り残された絶望の数日間

アクション映画に定評のあるスコット・マン監督が描く、上空600mのワンシュチュエーションスリラー。
過去のトラウマを乗り越えるため、老朽化したテレビ塔に登ることにした女性クライマー2人は、あろうことか塔のてっぺんに取り残されてしまう。スマホは圏外、誰にも声も姿も届かない、落ちたら間違いなく即死。まさに絶望的な状況の中、彼女たちは決死の脱出を試みる。

脱出系のスリラーはたいてい絶望的な気持ちにさせられるものだが、本作はとにかく「高さ」の描写がリアルである。ギシギシと頼りなく軋むハシゴ、釘のゆるむ音、突発的に吹く強風、足を踏み外したときの一瞬の浮遊感。落ちたらどうなるのかが想像できてしまうだけに、ずっと内臓がザワザワして落ち着かない気持ちにさせられる。実際の山頂に「塔」のセットを一部建設して撮影したため、俳優たちの恐怖におののく表情はかなりリアルに近い緊迫感があったようである。

たった2畳ほどしかない鉄塔のてっぺんで、登場人物も2人だけ。それでも1時間半もの上映時間を持たせることができるのは、脚本と演出の手腕あってこそ。次から次へと巻き起こるハプニングや、隠されていた過去の真実、そして度重なる脱出へのチャレンジと、視聴者をまったく飽きさせない。伏線もしっかりと張り巡らされており、最後までハラハラ、ドキドキしながら楽しむことができた。

何をレビューしてもネタバレになってしまう本作、百聞は一見に如かず。このスリル、ぜひご自身の目で確かめてみるのをおすすめする。

FALL/フォール
8

「変わらない」を楽しむ映画

スコット・マン監督のスリラー映画「フォール」は、非常に単純明快な物語の構造である。主人公は友人とともに、高さ数百メートルの廃鉄塔に上るが、梯子の崩落により吹き曝しの頂上に取り残されてしまう。そこからどうやって地上に戻るか方法を探るのが1時間半続いてゆく。従ってカメラの映すシーンは常に頂上を映して代わり映えしないし、登場人物も少ない。それにもかかわらず本作品では飽きを感じさせないのである。
それは前述した2つの要素によって、観客が主人公の心理の複雑さ、そして映画全体の伏線構造により意識を割くように導いているからだろう。
例えば主人公にとって鉄塔に上るきっかけは、夫を亡くしたトラウマを克服するためだった。それが、友人と夫をめぐる不貞があきらかになり、鉄塔の頂上で2人は常にともに居続けなければならないジレンマが生じるのだ。登場人物が少ないからこそ、主人公とその友人、そして死んだ夫との三角関係という強烈なドラマに物語の強烈な推進力が生まれるのである。
そして、冒頭から前半部にかけての伏線が、後半になって次々と回収されていく一連の流れも、観客に緊張感を生み出してゆくだろう。伏線が必ずしも登場人物たちの状況を好転させるものにはなっていないが、その中でも伏線の白眉はやはり主人公の幻覚の場面であると思う。途中友人は命を落とすが、主人公はそれを受け止められず、常に隣にいるかのように友人の幻覚を見続けた。それが観客に知らされるのは、友人の死からずいぶん経ってからである。その事実が知らされた観客は、まるで記憶のページをめくるように、それぞれのシーンで感じた違和感に思いを巡らすことになる。この叙述トリックは主人公の疲労と恐怖という極限状態に置かれていることによって説得力を増しているのである。
観客は常に代わり映えしない風景を見続けて、その場しのぎは成功するが、根本的解決に至らない焦燥感を最後まで持ち続けるだろう。本作はそんな「変化しない」ことを楽しむための映画なのである。