キャラクター(映画)

キャラクター(映画)のレビュー・評価・感想

New Review
キャラクター(映画)
5

現実とリンクする事件と悪役のキャラクター

長崎尚志/原案・脚本、企画・川村元気、プロデューサー・村瀬健で、10年以上構成された完全オリジナル作品です。映画公開は2021年6月。ノベライズ版が同年5月に発売。コミカライズ版は『月刊!スピリッツ』2021年5月号から7月号まで連載されました。

【あらすじ】
本作は凄惨な殺人現場を目撃した漫画アシスタントの山城圭吾(菅田将暉)が、犯人である両角(Fukase)に出会い、侵食されていきます。
山城は偶然目撃した殺人事件の犯人・両角の姿が忘れられず、両角をモデルとしたキャラクターが登場する『34(さんじゅうし)』という漫画を描き上げます。漫画『34』は大ヒットしたため山城はたちまち人気漫画家となりますが、両角は山城に執着するようになり、漫画を模倣した連続殺人事件が発生します。

10年以上も構成を練られた本作『キャラクター』は、主人公の山城圭吾役を菅田将暉、ミステリアスな殺人鬼・両角役をFukase(SEKAI NO OWARI)が演じています。
山城圭吾はお人好しな性格で魅力的な悪役を生み出せず、漫画の連載も決まらない挫折の日々に夢を諦める寸前の絶望感を生きていました。しかし両角と出会って、彼をモデルとしたミステリアスで魅惑的なキャラクター「ダガー」を生み出した途端、山城は売れっ子漫画家として成功するも次第に人生を狂わせていきます。

山城は元々お人好しで「良い人すぎて人生損する」タイプの物静かな人物ですが、両角との繋がりが生まれてからは狂気に追い詰められ、大切な人を疎ましく思うほど悪役にどんどんのめり込んでしまいます。
「両角」という”無慈悲な殺人鬼でミステリアスな青年”という2面性を持った難しい役に向き合い、見事演じられたFukaseさんは、この映画に向けて演技のワークショップにも通ったといいます。

アーティスティックなオーラが魅力的な悪役・両角の他にも、神奈川県警察本部捜査第一課の警部補の真壁孝太(中村獅童)、真壁の部下・清田俊介(小栗旬)という優れた才能を持つ刑事のバディの関係性。敏腕漫画雑誌編集者の大村誠を、あたかも実在する人のように感じさせる、俳優・中尾明慶の自然な演技が見どころの1つです。

『キャラクター』はノベライズ版、コミカライズ版、映画版でそれぞれ異なる展開とエンディングが描かれているので、ぜひご鑑賞ください。

キャラクター(映画)
10

サイコパス殺人鬼×サスペンス漫画家の創る死

菅田将暉さんが演じる売れない漫画家・山城圭吾と、SEKAI NO OWARIの深瀬さんが演じる殺人鬼の二人からなるサイコサスペンス映画、''キャラクター''。
漫画家である山城圭吾は、深夜に一軒家をスケッチをしていたところ、その一家を殺した犯人の横顔を見てしまいます。
血塗られた廊下と椅子に縛り上げられた家族、ナイフを持った殺人鬼。
サスペンス漫画で売れたかった山城圭吾は、実際に見た殺人鬼をモチーフに漫画を描き、自身が実際の殺人現場を目の当たりにしたことにより、今までにないリアルな殺人現場の雰囲気とサイコパスな殺人鬼の奇行を表現し、世間に知れ渡る漫画家へとなりました。
幸せそうな家族を狙った残酷な殺人事件を追うストーリー。
四人家族にこだわる殺人鬼による、漫画を忠実に再現した事件。
実際に接触してくる殺人鬼と抗う山城圭吾。
真実を隠し、お互いの存在を認識したまま続く連載。
殺人鬼と漫画家が織りなす関係に恐怖を感じる作品です。
なぜ四人家族にこだわるのか。目的は何なのか。
時が経ち、山城圭吾の妻に双子の命が宿り…。
四人家族のみを狙う殺人鬼と事件に終止符を打ちたい山城圭吾による、連載漫画最終回とリアルを交えた死と隣り合わせの結末とは。

キャラクター(映画)
7

しっかりしたサスペンス映画

サイコサスペンスの漫画と同じ殺人事件が起きる物語なので、血まみれや痛いシーンが多いです。それらが苦手ではない方なら、観て損はないはず。
グロさやビジュアルだけがメインではなく、物語の発端や捜査過程、事件の背景などもしっかり描かれていて、終盤に向けてのハラハラ感もあります。
菅田将暉、高畑充希、小栗旬に中村獅童という演技力に定評のある俳優のキャスティングのおかげで、違和感なく物語に入り込めました。またそんな中で、演技初挑戦というミュージシャンFukaseの演技がとてつもなくスゴいことに驚きました。
ありがちなサイコ野郎っぽさも踏まえつつ、この物語だからこその人物像が滲み出ている雰囲気が、観ていてとても恐ろしかったです。
全てのキャストが、この俳優じゃないと出来ない役だな、と思わせる、それこそその「キャラクター」に合った演技で物語の魅力が作られていたと感じました。
また、劇中の漫画もプロの漫画家が手掛けていることもリアリティを感じるひとつでした。
漫画を手書きで描くのとタブレットで描く作業、ペンを走らせる音やタブレットをタップする音など、普段見たことのない漫画制作現場が、どれだけリアルなのかは分かりませんが、純粋に興味深かったです。
漫画家の下積み時代の部屋、成功後の部屋、殺人鬼の部屋の作り込みが印象的で、物語の流れにとても深く関係させているな、とも感じました。
サスペンスが好きな方なら、出演俳優にこだわることなくしっかり楽しめる作品だと思います。

キャラクター(映画)
9

セカオワFukaseの俳優デビュー作品『キャラクター』は本格サスペンスだった!

2021年6月11日に公開された永井聡監督作『キャラクター』。
主演の菅田将暉ら豪華キャストに加え、SEKAI NO OWARIボーカルのFukaseのデビュー作とあって注目を浴びた作品だ。

【漫画家が原作を担当】
日本の漫画作品の映画化が一般化された映画業界だが、『キャラクター』という作品は逆輸入をした。
原作は『20世紀少年』など多くの作品で浦沢直樹とタッグを組んだことで知られる漫画家・長崎尚志だが、『キャラクター』の漫画が発表されたのは映画公開直前の5月である。映画の話題性を高めるために漫画を発表した形だ。
安定した興行収入を求め、人気作品を映画化する映画業界においてこういった手法は珍しい。

【セカオワFukaseは話題性だけのキャスティングではない】
『キャラクター』が最も話題を呼んだのはセカオワFukaseの俳優デビュー作品だったということだ。
この作品は菅田将暉演じる売れない主人公が偶然Fukase演じる殺人鬼の起こす殺人現場に居合わせたことで物語が始まる。
主人公は遭遇した殺人現場を忠実に漫画にし連載をスタートさせるが、漫画内で起きるフィクションであるはずの殺人が次々に殺人鬼によって再現されていくというストーリーだ。
この中でFukaseは漫画内の殺人を再現するサイコパスな殺人鬼という難しい役を演じるのだが、その演技は「話題性のためだけにキャスティングされたわけではない」と感じさせるものだ。
慣れない初めてのぎこちない演技が、サイコパスさを感じさせゾッとするような凄みを帯びている。

Fukaseファンにもサスペンス好きにもおすすめの『キャラクター』、ぜひご覧になってみてはいかがだろうか。