キャラクター(映画)

sirowain0528のレビュー・評価・感想

キャラクター(映画)
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現実とリンクする事件と悪役のキャラクター

長崎尚志/原案・脚本、企画・川村元気、プロデューサー・村瀬健で、10年以上構成された完全オリジナル作品です。映画公開は2021年6月。ノベライズ版が同年5月に発売。コミカライズ版は『月刊!スピリッツ』2021年5月号から7月号まで連載されました。

【あらすじ】
本作は凄惨な殺人現場を目撃した漫画アシスタントの山城圭吾(菅田将暉)が、犯人である両角(Fukase)に出会い、侵食されていきます。
山城は偶然目撃した殺人事件の犯人・両角の姿が忘れられず、両角をモデルとしたキャラクターが登場する『34(さんじゅうし)』という漫画を描き上げます。漫画『34』は大ヒットしたため山城はたちまち人気漫画家となりますが、両角は山城に執着するようになり、漫画を模倣した連続殺人事件が発生します。

10年以上も構成を練られた本作『キャラクター』は、主人公の山城圭吾役を菅田将暉、ミステリアスな殺人鬼・両角役をFukase(SEKAI NO OWARI)が演じています。
山城圭吾はお人好しな性格で魅力的な悪役を生み出せず、漫画の連載も決まらない挫折の日々に夢を諦める寸前の絶望感を生きていました。しかし両角と出会って、彼をモデルとしたミステリアスで魅惑的なキャラクター「ダガー」を生み出した途端、山城は売れっ子漫画家として成功するも次第に人生を狂わせていきます。

山城は元々お人好しで「良い人すぎて人生損する」タイプの物静かな人物ですが、両角との繋がりが生まれてからは狂気に追い詰められ、大切な人を疎ましく思うほど悪役にどんどんのめり込んでしまいます。
「両角」という”無慈悲な殺人鬼でミステリアスな青年”という2面性を持った難しい役に向き合い、見事演じられたFukaseさんは、この映画に向けて演技のワークショップにも通ったといいます。

アーティスティックなオーラが魅力的な悪役・両角の他にも、神奈川県警察本部捜査第一課の警部補の真壁孝太(中村獅童)、真壁の部下・清田俊介(小栗旬)という優れた才能を持つ刑事のバディの関係性。敏腕漫画雑誌編集者の大村誠を、あたかも実在する人のように感じさせる、俳優・中尾明慶の自然な演技が見どころの1つです。

『キャラクター』はノベライズ版、コミカライズ版、映画版でそれぞれ異なる展開とエンディングが描かれているので、ぜひご鑑賞ください。