アス / Us

アス / Usのレビュー・評価・感想

アス / Us
7

自分と同じ顔の人にって

自分と同じ顔の人に襲われるのってかなり怖いと思います。こっちは攻撃しにくいですし、特に子どもたちは、あっちは自分と同じ顔の人を殺すことを前提に育ってるから思い切りもあるだろうけど、こっちは人と本気の喧嘩なんてって感じだから無理でしょって感じです。1人だけだったら、私の勘違いかなって気もするけど、家族全員分の同じ顔が揃うなんて、襲われるんじゃなくても怖いなと思いました。オチはなかなか衝撃的ですが、読めます。序盤もヒントもあるので、感がいい人はすぐわかると思います。それでも面白くはありました。ただ、ちよっとその説得感はあまりないです。クローンをいっぱい作るのはいいとして、一箇所に集りゃ暴動とか起きそうだけどなと思います。私の理解力不足かもしれませんが、なぜあんなところにたくさんいたのか、わかりませんでした。この話は貧困層、富裕層の話とかがその背景にあるようです。たしかに私ももしお金持ちの私がいたらとか子どもの時考えたし、逆にホームレスの子供を見たら、私がそうだったらと考えたりしますもんね。この監督さん、発想が面白いと思います。ただ、私はアメリカの階級制とかあまり詳しくないので、そこら辺の裏テーマはよくわかりませんでした。もっと勉強してから見たら、いろいろ風刺がわかってより面白いかもと思いました。

アス / Us
8

武器がハサミって

自分の家族と同じ顔のアスが襲ってくるという話です。ドッペルゲンガーとかよくある都市伝説ですが、ただ現れて不気味とかいつの間にか居場所を奪われるとかではなく、殺しにくるというのが怖いし嫌だなと思いました。自分はもちろん、自分の子どもと同じ顔の人なんか戦いにくいし、しかもハサミをもって襲ってくるというのが痛そうだし、長引きそうだし嫌です。でも倒さないと家族がやられるし、すごく怖いなと思いました。話のオチは最初の遊園地での出来事を考えると読める話でした。ああ、やっぱりねという感じです。そして、ドッペルゲンガーがたくさんいる理由については、ちょっとよくわからなかったです。クローンの話はよく作られているけど、それを地下に閉じ込める意味とかわかんないし、んー、なんだかなあです。それにそんな人たちが強い気もしないし。まあ、ちょっとわからないところもありますが、それは私の理解力の問題かもしれません。自分と入れ替わろうとする人がいるという世にも奇妙な物語的な恐ろしさ、ハサミで襲ってくるというサイコキラー的な怖さもある、面白い作品だと思います。世にも奇妙な物語的な話って、結構みんな好きだし、気にいる人が多い作品かなと思いました。

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8

自分は誰か

ある日、目の前に自分の家族とそっくりな人々が現れて…というホラーです。映画評論家の町山さんの話を聞いて見に行きました。外国の世にも奇妙な物語的な話が元だそうです。目の前に自分とそっくりな人が来て、自分の人生が乗っ取られるかもという恐怖と、自分や自分の子供と似た顔の人を倒さなければいけないという恐怖といろんな怖さが混じってとても怖かったです。監督が子供のころ、ホームレスの子どもとかをみて、自分の中流階級の生活も運なんだと思って怖くなったことなどが原案だそうです。日本も格差社会になってきましたし、アメリカの風刺で関係ないとはいえない状態になってきました。見ていてとても怖かったです。音楽も不気味で聞いていると気が狂いそうになる感じでした。同じ顔というのは世にも奇妙な物語ぽいなと思いましたが、その人らがハサミで襲ってくるので、映画的な派手さもあり、怖いなと思いました。オチは結構ありがちな話だし、ちょっとSF小説とかが好きな人なら、最初の遊園地のシーンで読めてしまいそうですが、オチがわかっていても怖かったし、一度見てからもう一度見ると、伏線が張り巡らされているなと思えて、また面白いです。この監督の映画は前作も怖かったし、ハズレがないなと思いました。

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8

メタファー込みでの良作

アカデミー脚本賞を受賞した、「ゲット・アウト」のジョーダン・ピール監督の作品です。
ある幸せな一家を、ドッペルゲンガーの自分たちが襲いに来るというホラー。
ですが、コメディアンでもある監督の作風なのか、ところどころにクスッと笑えるシーンが差し込まれていて、
緊迫した中にも和む瞬間があります。ただただ恐ろしい思いをしたい!という方には、すこし期待はずれかもしれません。
この作品に出てくるドッペルゲンガーたちは、実はクローン技術で作られた人造人間です。
しかし魂のクローンまでは作ることができなかったため、地上にいる人間(対になる存在)と魂を分け合っています。
といっても、クローンたちの方が不完全な存在のため、基本的には言葉を話すこともできず、複雑なことを考えることもできません。そのため、臭いものに蓋をするように、地下に大勢のクローンたちが閉じ込められているという設定です。
とてもリアルとは言えない設定ですが、これは格差社会へのメタファーなのだそうです。
地上を自由に歩き回り、話し、生活している人間と、地下に詰め込まれ、自我もなく、ただ死ぬのを待っているクローン。
それは、富裕層と貧困層の対比を示しています。
主人公アデレードと、そのクローン、レッドの幼い頃の秘密が明かされることで、そのメタファーが痛烈に感じられるようになっています。
ホラー映画と一口に言っても、ただ恐ろしいだけの作品ではなく、考えさせられるタイプの良作でした。

アス / Us
8

人種問題を巧妙に描いた技巧派サスペンスホラー

新たなホラー作品の境地を切り拓いた『ゲット・アウト』がアカデミー賞の脚本賞を受賞した、アメリカ人監督ジョーダン・ピールの2019年のホラー作品。本作もピール自身が脚本まで手掛けている。
『アス』は夏休みを過ごすため幼少期を過ごしたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れた主人公アデレードの一家が、その街で自分たちとそっくりな謎の存在と出会う中での恐怖を描いたサスペンス・ホラー作品である。謎のそっくり集団「わたしたち/us」の出現とアデレードが忘れていた自身の過去のトラウマが渦を巻くように絡み合い、物語は単純なホラー作品を超えて展開されていく。主人公アデレートを演じるのは『それでも夜は開ける』でアカデミー助演女優賞を受賞したルピタ・ニョンゴだ。
本作は前作『ゲット・アウト』同様に、あえて黒人を物語の中心に据えて描かれている。人種問題にはほぼ触れられずに物語は語られていくが、物語を追うごとになぜ主人公一家に黒人という設定が必要であったのか、黒人が社会の中でどのような立場で見られている存在なのかに合点がいくようになり、『アス』という映画内のサスペンスと現代社会の人種問題とが巧妙に対比され語られていることに気がつく。本作品は現代社会のメタファーのような理知的なホラー作品だ。
映画史の中でホラーというジャンルは、純粋なスリルを味わうための娯楽ではなく、魔女やフリークスと呼ばれ虐げられてきた人々に焦点を当てる社会的な機能としても役割を果たしてきた。その重要性を踏襲して作られた『アス』は、娯楽映画として純粋なスリルとサスペンスを楽しめながらも、鑑賞者が社会を考えていくきっかけを与える良作である。